魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第6章】なのはとフェイト、結婚後の一連の流れ。
【第7節】背景設定6: 次元航路と次元世界の海図について。
前書き
この項目の冒頭部は、説明の便宜上、前の章の「背景設定5」と少しばかり文章が重複しております。悪しからず御了承ください。
さて、実を言うと、次元航行船も「次元の海」(亜空間)の中をそれほど自在に航行できる訳ではありません。実際には、『世界と世界(可住惑星と可住惑星)を「直線的に」結んでいる〈次元航路〉の中を(可住惑星と同等の直径を持つ巨大なチューブ状の「特殊な亜空間」の中を)航行できるだけ』なのです。
亜空間は真空ではありますが、空間そのものに或る種の「抵抗」が存在しているため、通常空間における宇宙空間のような「慣性飛行」ができません。惑星表面での、車や列車などによる移動と同様に、一定の速度を保つためには一定の推力を維持しなければならないのです。
そして、その「亜空間抵抗」が、〈次元航路〉の中に限っては、通常の亜空間のざっと120分の1にまで小さくなっています。
つまり、推力が同じならば、航路外での速度は「航路内での速度」のおよそ120分の1となり、当然、特定の世界までの所要時間はおよそ120倍になってしまうのです。
しかも、通常の亜空間には、或る種の「海流のような流れ」が存在しているため、次元航行船にとっては、ただ直進するだけでも困難な作業となります。
それ故、次元航行船は古来、必ず〈次元航路〉の中を通ることになっているのです。
【なお、航路の途中で(先端部以外の場所で)推力を失って停止したモノはすべて、次元航路そのものが持っている「自浄作用」によって、せいぜい十日あまりで「航路の外」の亜空間へと排除されてしまうのですが……次元航路というものは基本的に、可住惑星の近傍に開いている「先端部」からしか進入することができません。
つまり、一度航路の途中で「外」(通常の亜空間)に排除されてしまった艦船は、もう決して「その地点から元の航路に戻ること」もできず、また当然に、どこかの世界(可住惑星)に帰り着くこともできません。そのため、「推力を失って航路から排除されること」は、事実上の「死」を意味しているのです。】
また、現在、知られている「600あまりの諸世界」は、実はすべて平面的に分布しており、そのため、それらの位置関係を、すべて一枚の平面図の上に描くことが可能です。
そうして描かれた図面のことを、次元世界全体の〈海図〉と言います。
と言っても、諸世界は決して「完全に同一の平面上に」並んでいる訳ではなく、「一定の厚みを持った、平たい円盤状の領域の内部に」分布しているだけなので、そうした海図の上で二本の次元航路が交差していたとしても、実際には『互いに違う高さですれ違っている』ことの方が圧倒的に多いのですが……航路同士が極めて近接している場合には、或る種の引力が作用して、二本の航路が互いに融合してしまう場合もあります。
そうなると、結果としては、亜空間内に「十字路」が出来上がってしまう訳ですが、それ以外にも、次元航路のすぐ脇に別の世界が存在している場合には、時として、その世界からその次元航路に向かって「ごく短い航路」が形成され、「三叉路」と言うか、「ごく短い分岐路のある航路」が出来上がることもあります。
なお、そうした「十字路」や「三叉路」は空間の安定性が微妙に損なわれるため、決して一等航路にはなりません。一等航路はすべて必ず「間違えようの無い一本道」なのです。
【ちなみに、諸世界が何故もっと立体的に分布していないのかは「謎」です。(笑)】
また、亜空間における距離の単位としては、管理局では伝統的に「ベルカ式の単位」が今も広く用いられており、当時の一般的な次元航行船の巡航速度(1モルド、もしくは1000ニィモルド)で、1刻かかる距離のことを「1ローデ」と言います。
1刻は、1日の120分の1のことなので、『丸1日も飛べば120ローデは進める』という計算になります。
しかし、技術の進歩により、「現行のBU式駆動炉による通常の巡航速度」は三分の四モルド(およそ1333ニィモルド)に達しているため、今では『丸1日で160ローデ進める』という状況になっています。
【現在では、この速度を「100%の速度」と呼んでいるので、『昔の船は、現在の「低速船」と同じように、普段は75%の速度で巡航していた』という計算になります。
誠にメンドくさい設定で申し訳ありませんが、『20ローデごとに、普通なら3時間、低速船なら4時間かかる』と御記憶いただければ幸いです。】
そして、既知の諸世界はすべて「ミッドを中心とする半径600ローデほどの円」の中におおよそ収まっています。
(円盤の厚みは、おおよそ50ローデほどです。……もっとも、本当の「中心」は、ミッドチルダではなく、アムネヴィアなのかも知れませんが。)
一方、旧暦の時代には、ミッドでは全部で100個ほどの世界しか知られていなかった訳ですが、それらの諸世界はおおむね「ミッドを中心とする半径200ローデの円」の中に収まっていました。この円の内側が、いわゆる〈中央領域〉です。
なお、大航海時代に「既知の世界が分布する領域の半径」はほぼ3倍に、つまり、その「広さ」はほぼ9倍にまで拡がったのに、「世界の数」それ自体はおよそ6倍にしか増えていません。
その理由は、ひとつには、「世界の分布」そのものが、〈中央領域〉の方が「やや」密になっているからですが、もうひとつには、〈中央領域〉の外側には「半径100ローデ前後の、次元航路が全く存在していない空白領域」が六つほど存在しているからです。
これを〈ヴォイド〉と言います。
もしかすると、〈ヴォイド〉の中にも〈世界〉は存在しているのかも知れませんが、航路がつながっていない以上、実際にその世界へ行くことは「事実上」できません。
そのため、『アルハザードも、今はそうした〈ヴォイド〉の中に隠れているのではないか?』と考えている人たちも大勢いるようです。
また、以前は〈中央領域〉以外の領域を全部ひっくるめて〈辺境〉と呼んでいましたが、今では「ミッドを中心とする半径400ローデの円」の内側にある諸世界の多くはそれなりに発展を遂げており、それらを一律に「辺境の世界」と呼ぶのは、もはや用語としても適切ではありません。
そこで、新暦70年代の末頃からは「半径400ローデの円」の外側だけを〈辺境領域〉と呼び、その内側にある「中央領域以外の領域」のことは〈中間領域〉と呼ぶようになりました。
【以上のような設定に基づいて、自分なりに手書きで〈海図〉を描いてみたのですが……自分用の書き込みだらけで、とてもネット上にアップすることなどできません……。
仕方が無いので、以下、「おおよそのところ」を文章で説明させていただきます。暇な人は適当な縮尺で作図してみてください。(苦笑)】
それでは、まず、ミッドの近傍および北側の領域から説明します。
〈第1管理世界ミッドチルダ〉では古来、〈第1遺失世界ベルカ〉の方角を便宜的に「北」と呼んで来ました。
ミッドチルダから見ると、直線距離で「真北へほぼ200ローデ」の地点に、ベルカ世界があります。しかし、直通の航路は存在しないので、実際にはミッドから「ほぼ真北へ60ローデ」の地点にある〈無5マニクヴァリス〉を経由して行くことになります。
【かつて、「管理局の創設者たち」(後の三脳髄)は、このマニクヴァリスを始めとする幾つかの「ベルカ世界への中継拠点となる無人世界」を軍事的に制圧しておくことで、ベルカ世界への渡航が「事実上」できない状況を無理矢理に維持していました。】
そして、ベルカ世界の北方やや東寄りには、ベルカからだいぶ距離を置いて「次元世界で最大の(半径およそ140ローデの)ヴォイド」が、次元世界の「縁」に届く辺りにまで広がっており、これを俗称で〈北方ヴォイド〉と言います。
また、ベルカ世界からおよそ100ローデの圏内にある20個ほどの「近隣の諸世界」は、すべて「大昔からの植民地」でしたが、ベルカ世界における戦乱の巻き添えとなって、今ではもう完全に滅び去っています。
(ただし、そのうちの半数ほどは、当初から無人の世界だったようです。)
ちなみに、かつて「聖王家直轄領」だった12個の世界は、すべて、ミッドから60ローデ以内の領域にまとまって存在しており、オルセアとパドローナとゲボルニィ(および、ミッドそれ自体)以外の8個の世界は、それぞれにミッドと直接に結ばれています。
その中でも、ミッドから「真西やや南寄りへ60ローデ」の地点にある〈管3ヴァイゼン〉と、同じくミッドから「北東やや東寄りへ40ローデ」の地点にある〈無1アムネヴィア〉は、「一等航路」でミッドと結ばれています。
【なお、ミッドに接続している「安全な航路」は、全部で18本もあり、そのうちの5本までもが一等航路となっています。
(これらの数値は、次元世界全体で見ても、ほぼ「最大級」です。)
一方、「現在のベルカ」に接続している「安全な航路」は、全部で8本しか無く、しかも、一等航路は一本もありません。
第二戦乱期の初期に「次元震動兵器」によって何本もの重要な航路が崩壊した上に、その後は、ベルカ世界そのものも荒廃した結果、今では次元航路を支える「世界の生命力」それ自体が相当に弱くなっており、「近隣の諸世界」につながる航路もみな「潜在化」しているからです。】
そして、そのアムネヴィアの上空から亜空間に入ってすぐのところに、(以下に述べる「広大な外湾」の中に)時空管理局の〈本局〉がある訳ですが……。
このアムネヴィアは、可住惑星としては相当に大型で、質量は標準値のおよそ4倍もあります。それだけに、重力も強く、大気も濃密で相当に蒸し暑く、立って歩くことはおろか、普通に呼吸をすることすら困難で、人間が居住するには全く適していません。
(よく訓練された陸士ですら、生身では1刻と保たないほどです。)
そのため、この世界は「本局のお膝元」であるにもかかわらず、今なお「全く文字どおりの意味で」無人の世界のままとなっています。
(つまり、自然保護隊や観測要員ですら地上には駐留していません。)
しかしながら、人間以外の動植物は大いに繁栄しており、その莫大な「生命力」を背景とした「世界の魔力素」も大変に強大なものとなっています。
そして、これほど「余剰魔力素の大きな世界」ともなると、ただ単に『その分、多くの次元航路が接続する』だけでは無く、それらの次元航路の「先端部」同士が亜空間内で互いに融合して広大な「外湾」を形成し、その結果、他の世界から来た船は亜空間内でそのまま別の航路へ自由に「乗り換える」ことができるようになります。
つまり、『一旦、通常空間に降りてから、また改めて別の航路に入り直す』という手間をかける必要がありません。
こうした世界は、現行の次元航路網における重要な「中継拠点」となっています。
【現在確認されている600個あまりの世界の中でも、こうした「広大な外湾」を持つ世界は、全部で30個ほどしか存在していません。
アムネヴィアやミッドチルダ、デヴォルザムやクレモナやファルメロウの他、後述のカラバスやルビオーネも、そうした諸世界のうちの一つであり、一般に「4本以上の一等航路が接続していること」が、広大な外湾が形成されるための「必要条件」となっているのですが、ヴァイゼンの事例を見ると、それは必ずしも「十分条件」では無いようです。
なお、次元航路の「先端部および外湾」では、先に述べた「自浄作用」が働かないので、推力の無い〈本局〉も排除される心配はありません。】
また、この作品の設定としては、『一等航路に限り、最大で80ローデまでならば「個人転送」が可能である』ということになっています。
これは、転送ポートを使った即時移動とは違って、かなり特殊な「資質」が要求される魔法なのですが、個人転送で直接にアムネヴィアへ行くと、当然ながら、惑星アムネヴィアの「地表」に到着してしまうので……たとえどれほど充分な「資質」の持ち主であったとしても、〈本局〉へ行くには必ず転送ポートを利用しなければなりません。
結果として、今は『ミッドから「一回の個人転送」で直接に行ける世界は、ヴァイゼンだけ』という状況になっています。
(もっとも、互いに「第一大陸」の経度や緯度がズレているため、ミッドの〈東半部〉や「ベルカ自治領」から個人転送をすると、ヴァイゼンではおおむね「海の上」に出てしまうのですが。)
なお、航路の等級は時代によって変化することも多く、統合戦争が始まった頃までは「真南やや東寄りへ40ローデ」の地点にある〈管2ガウラーデ〉もミッドとは一等航路で結ばれていたために、個人転送での往来が可能でした。
また、アムネヴィアから見ると、ベルカ世界は「真北やや西寄りへ180ローデ」の地点にあり、〈無2カルナージ〉は「真南やや西寄りへ38ローデ」の地点にあります。
ただし、これらの航路は二等航路なので、〈本局〉からカルナージへ行くにも(ミッドからカルナージへ行く時と同じように)次元航行船が必要となります。
一方、ミッドから見ると、実のところ、カルナージは「最寄りの世界」であり、「ほぼ東南東へ27ローデ」の地点にあります。
さらには、ミッドから「ほぼ北西へ50ローデ」の地点には〈管4ファストラウム〉(リンディの故郷)があり、そこからさらに「西南西やや西寄りへ40ローデ」の地点には〈管5ゼナドリィ〉(エリオの故郷)があります。
ただし、ゼナドリィはヴァイゼンと一等航路で結ばれているので、管理局の魔導師がミッドからゼナドリィへ行く際には、普通はヴァイゼン経由で「即時移動」をします。
(ミッドチルダとゼナドリィを直接に結ぶ航路は、存在していません。)
なお、ヴァイゼンから「南南西やや南寄りへ35ローデ」の地点には〈管8フォルス〉があり、フォルスから「ほぼ南東へ50ローデ弱」の地点には〈管7モザヴァディーメ〉があり、そこからさらに「西南西やや西寄りへ40ローデ弱」の地点には〈管6パルドネア〉(キャロの故郷)があります。
上記の三本の航路は、みな一等航路ですが、一方、ミッドから「直接に」フォルスやモザヴァディーメやパルドネアへ向かう航路は、すべて二等航路なので、魔導師がミッドから、例えばパルドネアに行く時には、(かなり大回りになりますが)普通はヴァイゼンとフォルスとモザヴァディーメを経由する形で「即時移動」を繰り返して行きます。
(パルドネアから見ると、フォルスは「北方やや東寄りへ44ローデ」の地点にありますが、残念ながら、こちらも二等航路になっています。)
なお、ミッドから「ほぼ北北東へ92ローデ」の地点には〈外10ビストナージ〉があるのですが、この世界は伝統的に鎖国政策を続けており、(キルバリスやシャグザードと同様に)非友好国の艦船が「上空を通過すること」自体を認めていないため、大半の管理世界にとっては「航路がつながっていないも同然」の世界となっています。
(ただし、歴史的に複雑な経緯があって、管理世界の中でもセクターティとイラクリオンだけは、全く例外的にビストナージから「友好国」という扱いを受けています。)
また、ミッドから「ほぼ北北西へ80ローデ」の地点には〈外9コリンティア〉(ブラウロニアの故郷)があり、同じくミッドから「北西やや北寄りへ105ローデ」の地点には〈管9ドナリム〉があります。
ミッドとドナリムを結ぶ航路は一等航路であり、また、ドナリムはかつての〈九世界連合〉の一員でもあるため、この二つの世界を結ぶ「直通の転送ポート」は、今も相当な規模のモノが維持されています。
そして、ドナリムから「北西やや西寄りへ138ローデ」の地点には〈管61スプールス〉があり、そこから「ほぼ真東へ40ローデ」の地点には〈無34マウクラン〉があります。前者は二等航路ですが、後者は一等航路です。
【だから、スプールスからミッドまでは、普通に次元航行船を使えば、合わせて36時間あまりもかかるはずなのですが、「SSX」には、『エリオとキャロが、スバルから連絡を受けた次の日の昼には、もうミッドに着いている』という描写があります。
そこで、この作品では、『二人はスプールスからドナリムまでは、普通に船に乗って来たが、そこからミッドまでは、転送ポートを使って「即時移動」で来た』という設定を採用します。
また、新暦87年の〈デムロクス事件〉、つまり、「アインハルトが執務官として最初に担当した案件」が、ドナリムを舞台とする大事件に発展してしまった時に、普段から執務官としてあちこち飛び回っているフェイトやティアナだけでなく、ミッドからはなのはとスバルが、スプールスからはエリオとキャロが、すぐに駆けつけることができたのも、上記のような位置関係のためだった、という設定です。】
なお、ミッド旧暦462年(新暦では前78年)の〈次元断層事件〉によって「ベルカとドナリムとスプールスに囲まれた領域」にあった幾つかの世界はすでに滅び去っており、その領域内では、次元航路もまた大半が崩壊(潜在化)してしまっています。
(今も「その領域の外部」とまともに航路がつながっているのは、かつては大変に富み栄えていた〈無30レガルミア〉ぐらいのものでしょう。)
次に、ミッドの西側の領域について述べます。
ミッドから直通の航路は存在しないのですが、直線距離で「ほぼ真西へ160ローデ」の地点には〈管16リベルタ〉があり、また、前述のとおり、ミッドから「ほぼ南西へ108ローデ」の地点には〈管6パルドネア〉があります。
そして、リベルタから見ると「ほぼ南南西へ100ローデ」の地点、パルドネアから見ると「真西よりわずかに南寄りへ135ローデ」の地点に、先史時代には大いに栄えていた〈管23ルヴェラ〉があります。
【なお、Forceシリーズに登場する他の諸世界は、すべて、この「ミッド・リベルタ・ルヴェラ・パルドネア」を結ぶ四角形の内側に分布しています。
Forceシリーズに限らずに名前を列挙すると、管3ヴァイゼン、管8フォルス、管12フェディキア、管13マグゼレナ、外2オルセア、外18イスタ、無14ともう一つの無人世界(無15)、合計で8個の世界がその四角形の内側にあります。
ちなみに、フォルスとリベルタを結ぶ航路も、一等航路ではありますが、その長さは105ローデに達しています。普通ならば決して「個人転送」などできる距離ではないはずなのですが、「第5章」で述べたとおり、ハーディスは「原初の種」の能力で、それをやってのけました。】
さらに、リベルタから「真西やや南寄りへ120ローデ」の地点には〈管58アンドゥリンドゥ〉があり、そこから「真西やや北寄りへ100ローデ」の地点には〈管72カラバス〉があります。
この世界は、今でこそ管理世界の一員となり、「西部辺境への玄関口」という非常に重要な役割を果たしていますが、大航海時代には『周辺の諸世界と連合して「ジェブロン式魔法」を駆使し、次元世界の覇権を賭けて管理局と「三年戦争」を繰り広げた』という、なかなか物騒な世界です。
(その際、アンドゥリンドゥは「かなり積極的に」管理局の味方をしたので、カラバスの人々は、今でもアンドゥリンドゥのことを「裏切り者」扱いしています。)
カラバスでは、今も民衆の間に「管理局システム」への不満がくすぶり続けており、新暦92年には、後に〈カラバス動乱〉と総称されることになる一連の事件が起きました。
テロリスト集団が一般民衆に「実弾の銃器」を始めとする小型の質量兵器を大量に無料配布して扇動した結果、『カラバス世界の各地で同時多発的に暴動が発生し、一部にはこれに同調する陸士隊まで現れて、首都ドラスティンでは「内戦勃発の一歩手前」まで行った』という大事件です。
同年の9月、管理局は〈本局〉から「相当の兵力」を投入し、「力ずくで」これを鎮圧することしかできませんでした。
(この一件における高町一等空尉の活躍は、凄まじいモノだったそうです。)
一方、ルヴェラの側から見ると、「ほぼ真南へ58ローデ」の地点には、新暦89年には〈バルギオラ事変〉の舞台となる〈外44ケイナン〉があり、また「南西やや西寄りへ180ローデ」の地点には、彼の悪名高き〈遺失世界ジェブロン〉があります。
第三に、ミッドの東側の領域についてですが……まず、ミッドから直線距離で「ほぼ北東へ470ローデあまり」の地点には〈外97地球〉があります。
しかし、ミッドと地球を結ぶ直線上(ベルカ世界から見ると、ほぼ真東)には、半径100ローデあまりの〈ヴォイド〉があるので、実際にミッドから地球へ行くにはこれを大きく迂回して、その南側を左回りに進んで行かなければなりません。
ベルカ経由で、この「北東ヴォイド」の北側を右回りに行こうとすると、「北方ヴォイド」との間の「かなり狭くなっている箇所」をすり抜けて行かなければならないのですが、現代では、途中の航路がひとつ「潜在化」して四等航路になっており、地球の側にまでは「安全な航路」が一つもつながっていないからです。
一等航路と「外湾のある世界」だけを選んで行くとなると……まずはミッドから「東南東やや東寄りへ123ローデ」で、何かと話題の多い〈管15デヴォルザム〉に。そこから「真東やや北寄りへ192ローデ」で、「東部辺境への玄関口」ともなる〈管46クレモナ〉に。そこからまた「北東やや北寄りへ166ローデ」で、まだ文明が中世の段階にある〈外72ファルメロウ〉に。そこからさらに「真北やや西寄りへ(北東ヴォイドの外縁部をかすめるようにして)196ローデ」で、ようやく地球に辿り着きます。
(すべて一等航路なので、魔導師ならば「即時移動」も可能ですが、次元航行船で行くとなると、100%の速度でも優に四日以上はかかってしまう道程です。)
そして、地球からさらに「真西やや北寄りへ100ローデ」の地点には、かつてユーノがジュエルシードを見つけた世界、〈無128ドルバザウム〉があります。
最初に発見された頃には、この航路もまだ一等航路だったそうですが、無人世界なので、さすがに転送ポートなどは設置されませんでした。
(なお、この航路は、新暦20年頃には二等航路に変わってしまいました。)
【ちなみに、「リリカルなのはStrikerS サウンドステージ01」では、六課メンバーがミッドから地球まで一気に「即時移動」したように描写されていますが……この作品では、それも、『四本の一等航路が途切れることなく、すべて「外湾」でつながっていたからこそ可能な荒技だったのだ』という設定にしておきます。そうしないと、「即時移動」の設定があまりにも便利な御都合主義になってしまうからです。
なお、現在の技術では、このように必要に応じて「連結」することのできる一等航路の本数は、四本が上限となっています。】
また、〈外97地球〉には8本の次元航路が接続していますが、そのうち一等航路は今では2本だけになっています。
(これらの本数は、〈辺境領域〉においてはおおむね標準的なものです。)
そのうちの1本は、上記のとおり〈外72ファルメロウ〉への航路で、その長さはほとんど200ローデにも達していますが、もう1本は〈無127パニドゥール〉への航路で、その長さは80ローデどころか、その半分ほどしかありません。結果として、この無人世界は、地球から個人転送で行くことができる唯一の世界となっています。
【この作品では、『A’sのTVアニメで、ヴィータたち守護騎士が魔法生物を狩っていた舞台も、このパニドゥールである』という設定で行きます。】
また、クレモナから「南東やや東寄りへ60ローデ」の地点には、〈無81ナバルジェス〉があります。
(一般には内緒の話ですが、ここがユーノ司書長の「本当の」生まれ故郷です。)
そして、ミッドから見ると、「真東やや北寄りへ60ローデ」の地点には〈管10ルーフェン〉があり、そこからさらに「北東やや北寄りに48ローデ」の地点には〈管11セクターティ〉があります。
また、〈管11セクターティ〉は(無1アムネヴィア)から見ると、「ほぼ東北東へ70ローデ」の地点にある世界ですが、『旧暦の時代には〈九世界連合〉と政治的に激しく対立していた』という歴史的な経緯から、この世界には今なお「ミッドチルダに対する反感」が色濃く残っています。
そして、セクターティから「ほぼ北北東へ70ローデ」の地点には〈管17イラクリオン〉が、そこからさらに「ほぼ真東へ40ローデ」の地点には〈管18ラシティ〉があります。
この「イラクリオンとラシティ」は、俗に「双子の世界」と呼ばれるほど互いによく似ており、また、両世界を結ぶ40ローデの航路も一等航路なので、この二つの世界は「個人転送」で自由に往来することができます。
なお、ミッドから「南東やや東寄りへ66ローデ」の地点には、今も多種多様な竜族が暮らしている〈無10アペリオン〉があります。
(ただし、直通の航路は無いので、実際には、〈管2ガウラーデ〉か〈無2カルナージ〉を経由して行くことになります。)
【この世界は、アムネヴィアと一等航路で結ばれていますが、現在では惑星全体が「特別自然保護区」となっているため、転送ポートなどは一切設置されておらず、自然保護隊も観測要員も「地上には」全く駐留していません。】
また、白天王が棲む〈外35号天〉は、ミッドから直線距離で「真東やや北寄りへ216ローデ」の地点にありますが、これも直通の航路は無いので、実際に行くとすれば、〈管10ルーフェン〉か〈管15デヴォルザム〉を経由して行くことになります。
【二度にわたる〈次元震〉によって幾つもの重要な次元航路が失われた結果、現在の〈号天〉は、『接続する航路の本数それ自体も10本に満たず、しかも、一等航路は一本も無い』という、現在のベルカ世界と同様の厳しい状況に陥っています。】
最後に、ミッドの南側の領域について述べます。
まず、ミッドから「ほぼ南南東へ100ローデ」の地点には、かつては「交通の要衝」とも呼ばれていた〈管14シガルディス〉があり、統合戦争の前期(新暦で前63年頃)には、この航路も一等航路となりました。
そして、そこから「ほぼ南西へ80ローデ」の地点には〈管19ゲルドラング〉があり、新暦で前63年頃までは、逆にこちらの航路の方が一等航路でした。
また、そこからさらに「真西やや北寄りへ65ローデ」の地点には〈管20ザウクァロス〉があり、こちらの航路は今もなお一等航路です。
(また、モザヴァディーメとザウクァロスを結ぶ二等航路には、全長わずか3ローデの短い分岐路があり、その分岐路の先には、先史ルヴェラ文明の遺跡が今も大量に残されている〈無12ユゲナポリサ〉があります。)
なお、シガルディスから「ほぼ東南東へ80ローデ」の地点には〈管21ヴェトルーザ〉があり、これ もまた一等航路になっています。
また、ヴェトルーザからさらに「ほぼ東北東へ78ローデ」の地点には〈管22ハドマンド〉があり、一方、先に述べたデヴォルザムから「ほぼ南南東へ146ローデ」の地点には〈管29ジルガーロ〉があります。
そして、上記の二本の航路は亜空間内で融合して「十字航路」を形成しており、後者の航路は、前者の航路に対して「ほぼ完全な垂直二等分線」となっています。
こうした「十字航路」は、次元世界全体でもわずかな数しか存在していませんが、その中でも、これほどまでに「幾何学的に整った形」をしているのは、この航路のみであり、それ故に、この航路には〈聖十字航路〉という特別な固有名称が与えられています。
【ちなみに、『接続する四つの世界が、すべて管理世界である』という十字航路も、次元世界全体でこの航路のみであり、その意味でも、この〈聖十字航路〉は特別な航路となっています。】
また、ジルガーロから「ほぼ南東へ68ローデ」の地点には、新暦38年に〈ディファイラー〉の襲撃を受けた〈管40グザンジェス〉があります。
一方、ジルガーロから「ほぼ南南西へ154ローデ」の地点には、先史時代に巨大な勢力を誇っていた〈管68サウティ〉があり、今では、この世界は「南部辺境への玄関口」ともなっています。
(ちなみに、ゲルドラングから見ると、ジルガーロは「真東やや南寄りへ172ローデ」の地点に、また、サウティは「南南東やや東寄りへ192ローデ」の地点にあります。)
そして、サウティからさらに「真西やや南寄りへ165ローデ」の地点には〈管76ルビオーネ〉があり、その上空(広大な「外湾」の中)には、新暦91年に〈第一支局〉が設置されました。
ミッドからルビオーネは直線距離だと360ローデですが、実際にはゲルドラングとルビオーネの間に拡がる「南方ヴォイド」を、サウティ経由で迂回して行かなければならないので、航路上の距離だと「ミッド→ シガルディス→ ゲルドラング→ サウティ→ ルビオーネ」で、合計はほとんど「540ローデ」にもなります。
ただし、一番目と三番目と四番目の航路はともに一等航路なので、魔導師であれば、次元航行船を使わざるを得ないのは二番目の航路(およそ80ローデ)だけです。
【つまり、転送ポートさえ利用できれば、実際の移動には、事実上「12時間」しか(たとえ低速船でも「16時間」しか)かかりません。】
また、サウティから「ほぼ東南東へ122ローデ」の地点には、かつて栄華を極めた〈遺失世界ズムド〉があり、そこからさらに「ほぼ南西へ156ローデ」の地点には、『ほんの600年ほど前までは無人の世界だった』という〈管85ゼヴィーレ〉があります。
ちなみに、次元航路の長さには明確な「下限」があり、理論上、「24ローデ」以下の航路は存在できません。世界と世界が近すぎると、或る種の「干渉」が起きてしまい、かえって航路の安定性を維持することができなくなってしまうのです。
【実際のところ、〈外4パドローナ〉が、〈無1アムネヴィア〉や〈外3シャグザード〉や〈管10ルーフェン〉に接続していないのも、また、〈外1キルバリス〉が、〈管2ガウラーデ〉や〈無2カルナージ〉に接続していないのも、これが理由です。
なお、世界と世界との距離がこれほど近くなるのは、(現時点で確認されている限りでは)全く〈中央領域〉に特有の現象であり、〈辺境領域〉では大半の場合、最寄りの世界でも軽く40ローデぐらいは離れています。】
また、次元航路の長さの「上限」は、理論上は「400ローデ弱」ということになっていますが、現実には「全長が200ローデを超える航路」はほとんど存在していません。
これは、現在では一般に『たった二つの世界から余剰魔力素が供給されているだけでは、全長が200ローデを超えるほどの長大な航路を維持することは極めて困難だから』であるものと考えられています。
【以上に述べた中では、地球とドルバザウムとパニドゥールとズムドとゼヴィーレの五世界だけが、ミッドから直線距離で400ローデ以上も離れた〈辺境領域〉に属しており、また、第一部の舞台となる「新世界ローゼン」も〈辺境領域〉に属しています。
ちなみに、カラバスやジェブロンやファルメロウは、かなりギリギリですが、〈中間領域〉の側に属しています。
また、〈中央領域〉でも〈中間領域〉でも〈辺境領域〉でも、有人世界と無人世界の割合はほぼ半々なのですが、有人世界の中の、管理世界と管理外世界の割合は「どこでも同じ」という訳ではありません。
〈中央領域〉および〈中間領域〉においては、管理世界と管理外世界はほぼ半々で、どちらも二つの領域を合わせて七十数個あるのですが、〈辺境領域〉においては、有人世界の軽く八割以上が今もなお管理外世界のままとなっているのです。】
【……こんな感じで、大体お解りいただけたでしょうか?(汗)
正直な話、距離の設定に関しては、もう少し改めた方が良い箇所もあるかも知れませんが、今回は、取りあえずこの設定で行ってみたいと思います。】
なお、末筆ながら、この機会に、次元航行船の「物理燃料」についても述べておきましょう。
普通の恒星(主系列星)の内部では、まず「水素からヘリウムを作る核融合反応」が進行しますが、実際には『四個の軽水素原子核(陽子)が集まって、いきなりヘリウム4原子核(いわゆる、アルファ粒子)が形成される』という訳ではありません。
典型的な「陽子‐陽子連鎖反応」では、以下のような三段階の反応を経て、ヘリウム4原子核が形成されます。
1.まず、陽子と陽子が合体して、重水素原子核(陽子一個と中性子一個)ができる。
(つまり、一方の陽子は、中性子に「変化」している。)
2.その重水素原子核に、さらに陽子が合体して、ヘリウム3原子核(陽子二個と中性子一個)ができる。
3.そうしたヘリウム3原子核同士が合体して、陽子二個が飛び出し、残りがヘリウム4原子核(陽子二個と中性子二個)となる。
いずれも大変な高温と高圧を必要とする反応ですが、中でも、1の反応は「現在の人類の技術では、とても実現は不可能なレベルの高温と高圧」を必要とするため、次元世界では古来、もっぱら3の反応ばかりが利用されて来ました。
【ちなみに、現在の地球における核融合実験施設では、「重水素‐三重水素反応」ばかりが研究されていますが、これは、ひとつには『必要とされる条件(温度と圧力)が他の反応よりも相対的に緩いから』であり、もうひとつには『地球上では、重水素や三重水素が(ヘリウム3に比べれば)割と入手しやすい原料だから』です。
しかし、この「重水素‐三重水素反応」には、ひとつ重大な問題があります。
それは、『大量の「高エネルギー中性子」が発生してしまう』ということであり、電荷を帯びていない中性子は磁場で制御することができないため、周囲の人間の「中性子線による被爆」を防ごうと思うと、分厚い金属の壁などでそれらの中性子を物理的に減速させるしかありません。
つまり、このタイプの核融合反応炉は必然的に巨大なサイズになってしまい、なかなか小型化や軽量化ができないのです。
これに比べると、3の反応は(技術的には、より難しい条件が要求されますが)完全に陽子とアルファ粒子しか発生しないため、魔導技術の応用によって維持される「強大な磁場」だけで完全に制御することができます。
また、可住惑星でこそ、ヘリウム3は大変に希少な元素ですが、巨大ガス惑星の大気圏内には、事実上「無尽蔵に」存在しています。
(一般に、巨大ガス惑星の大気は1割ほどがヘリウムで、そのヘリウムのうち、7000分の1ほどがヘリウム3です。)
そのため、星系内での惑星間航行技術が進歩し、巨大ガス惑星の周回軌道上に専用のプラントを築くことができるようになると、ヘリウム3は「大変に低コストで得られる燃料」となります。
だからこそ、次元世界では古来、「核融合」と言えば、もっぱら「ヘリウム3同士の融合反応」のことなのです。】
現代の次元航行船は、大気圏内では一般に「魔力駆動炉の出力」によって上方への浮力を得て、「核融合炉の出力」によって前方への推力を得ています。
核融合炉の出力とは、具体的には「陽子やアルファ粒子の噴射」ですが、それらは大気圏内では即座に電子を捕獲して水素原子やヘリウム原子となります。
また、それらは大変に高温なため、水素は即座に大気中の酸素と反応して水蒸気になりますが、これらはいずれも(熱が冷めさえすれば)人体には完全に無害であり、間違っても、核分裂反応のような「放射能汚染」は生じません。
【現在の地球では、核融合と核分裂を同列視してしまっている人々も少なくは無いようですが、実際には、両者は全くの別物なのです。】
魔導機関の技術水準が高くなればなるほど、次元航行船における核融合炉への依存度は減少していきますが、現在の人類の技術では、まだ「物理燃料(ヘリウム3)への依存」を完全にゼロにすることはできません。
〈ゆりかご〉だけは、魔力駆動炉の出力が100%で、物理燃料を一切使用していませんでしたが、あれは〈アルハザードの遺産〉なので全くの例外です。
【新暦75年の事件においても、〈ゆりかご〉はただ「大気圏を離脱するだけ」に何時間もかけていましたが、それも「物理燃料による推力」が全く無かったからなのです。
実のところ、あの時の〈ゆりかご〉は魔力によって重力の束縛を断ち切り、ただゆっくりと上昇していただけで、特に前進はしていませんでした。
かなりの低速で西へ向かって飛んでいるように見えたのも、実際には、ただ『惑星ミッドチルダの(西から東への)自転運動に対して少々「置いてけぼり」を食らっていた』というだけのことだったのです。】
また、次元航行船の核融合炉はそれなりに巨大な代物ですが、管理世界の地上では随所に、より小型の核融合炉が設置され、安価な発電施設として利用されています。
(その施設の大きさは、せいぜい「小学校の体育館」ぐらいです。)
そのため、管理世界では一般に「都市と都市をつなぐ巨大な送電線網」などという無粋な代物は存在していません。電力など、都市ごとに(田舎ならば、家ごとに)「自給できて当たり前」だからです。
そうした普及型の核融合炉で「一般住民、二十数万人分」の電力を簡単に作り出すことができてしまうので、電力不足という現象もまずあり得ません。
それぐらいの規模の核融合炉が昔からあまりにも広く普及しているため、今では多くの管理世界で、都市の人口は(少し余裕をもって)二十万人程度を「基本単位」としています。つまり、二十万人を超えたら、あとは人口の増加分に応じて普及型の核融合炉(発電施設)の数を増やしてゆけば良い、という考え方です。
(実際には、施設のメンテナンスや不慮の事態に備えて、多くの都市がそうした発電施設をひとつ余分に保有しています。)
そのためでしょうか。実のところ、管理世界では「人口が百万人を超える大型の都市」は、意外と少なくなっています。
逆に言えば、「人口が数十万人規模の地方都市」が、やたらと多くなっています。
それぐらいの規模の方が、微妙な差ではありますが、メンテナンスの費用まで計算に入れれば、「単位人口あたりの、都市インフラにかかる費用」がかえって少なくなり、経済的だからです。
【結果として、管理世界で「百万都市」と言えば、それは一般に「かなりの大都市」であり、多くの場合、その地域における「中核都市」となります。】
また、そうした核融合炉からは「産業廃棄物」として、軽水素とヘリウム4が発生する訳ですが……まず、ヘリウムガスの方は、主に「飛行船」を浮揚させるために使われています。
ミッドでは、昔からテロ対策として、「ドローン」や「ジェット機」が全面的に禁止されているため、「魔力なしで空を飛ぶ乗り物」と言うと、「プロペラ機か、ヘリコプターか、飛行船」という三択になるのです。
飛行船は、日常的には「上空からの警邏や定点観測」などにも広く利用されており、また、非常時には、例えば『震災で道路も寸断され、空港も使えなくなった』といった状況下の土地で、被災者を収容して搬送したり、孤立した土地に物資を届けたりするためにも多用されています。
(また、大型の無人船は、無線通信用の滞空基地局、いわゆる「成層圏プラットフォーム」としても利用されています。)
一方、水素ガスの方は、一般には「水素吸蔵合金」などを利用した安全な形で、「内燃機関用の水素燃料」として安価に販売されています。
なお、全く日常的に、余剰電力は「水の電気分解」に消費されており、そうして得られた水素もまた「水素燃料」として普通に流通しています。
ミッドでも、オートモービル(自動車)のエンジンや、家庭用の小型発電機などは、大半が水素ガスを燃料に使った内燃機関なのです。
ただし、魔導師の家では、新暦85年に建てられた「八神家の新居」のように、小型の魔力駆動炉を家庭用の発電機として利用する場合もあります。
(経済的にはかなり割高になるので、一般の魔導師の家庭で利用されることは、あまり多くはありません。)
また、さらに小型の動力としては、バッテリー(蓄電池)の類も広く普及しています。
ちなみに、核融合炉からの排熱は「惑星規模での大気の高温化」の主な原因となっているため、どの管理世界においても、なかなかに頭の痛い問題となっています。
ミッドでは古来、そうした排熱の有効利用策として、水を沸騰させて蒸気タービンを回したり、温水娯楽施設を作ったりもして来ましたが、もちろん、それで「排熱そのもの」が減る訳ではありません。
そこで、新暦30年代頃からは、『ごく緩やかな気象操作によって「夜の側でだけ」雲を散らし、自然な放射冷却を促す』などといった取り組みも始まっています。
(管理世界の夜空で「雲が無く、星がきれいに見えること」が多いのも、実は、こうした取り組みの結果なのです。)
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