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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第5章】エクリプス事件の年のあれこれ。
   【第3節】同81年の10月以降の出来事。(前編)



 また、はやては今回の一件で、「新暦72年の春に地球の中学を卒業してミッドチルダに転居して来てから、九年半に亘って住み続けていた海辺の自宅」をテロリストに爆破されてしまったため、(しかも、少しばかり怖い目に遭った小児(こども)らの親たちからもいささか非難を浴びてしまったため)全く不本意ながらも、その「爆破された家屋の残骸」つきの土地を「業者の言い値」で叩き売った後、一家そろってまるで「夜逃げ」のように大急ぎで転居することを余儀なくされました。

 特務六課の「強制解散」と同時に、運よく見つけることができた新たな転居先は、首都新市街の北部郊外に建つ、実に広々とした「意外なほど安値」の物件でした。
 聞けば、『昨年の夏に、前の持ち主が屋内で何か「やらかして」死んでしまったため、妙な残留思念が残っていて、なかなか買い手がつかなかった』とのことで、どうやら、それが理由で格安になっていたようです。
(実際、近隣の住民たちからは「幽霊屋敷」と呼ばれており、その外観もまるっきり、日本で言うところの「古びた洋館」でした。)
 しかし、IMCSの都市本戦が終わる頃に、わざわざカルナージから出て来てくれたルーテシアとファビアの協力で、その残留思念を(はら)い、少しばかりリフォームをすると、その屋敷は八神家にとって、なかなかに暮らしやすい家となりました。
(実は、残留思念関連の作業もまた「魔女の(わざ)」の得意分野のひとつなのです。)
なお、偶然ながら、そこは、「アラル市の南東地区にある高町家」からも、「首都新市街の北部にあるナカジマジム」からも、さほど遠くはない立地でした。


 また、後日、はやては〈エクリプス事件〉の犠牲者らの鎮魂のために聖王教会を訪れ、上級司祭らとともに、特別待遇で『今はもう日常的には使われていない』という〈はじまりの聖堂〉に(おもむ)きました。
 オリヴィエの存命中に、最初に建てられたという、とても小さく質素な聖堂です。
【なお、この作品では、「教会」はあくまでも組織の名前で、建物の名前は「聖堂」であるという設定で行きます。】

 そして、はやてはそこで、ひととおりの懺悔(ざんげ)をした上で、「(はらえ)の儀式」を受けました。
 と言っても、外見的には、ただ『長々と伸ばしていた髪をバッサリと切り落とし、それを形代(かたしろ)として、オリヴィエの時代からずっと燃え続けているという「聖なる炎」で焼き払った』というだけのことです。
 はやて自身は公的には「鎮魂」のつもりで、私的には単なる「供養」のつもりで(また、アギトの無事回復を祈って)したことであり、間違っても「政治的パフォーマンス」の意図など無かったのですが……。
 後に、この儀式の映像が「何故か」外部に流出してしまうと、はやてのこの行為を肯定的に(とら)える人々と否定的に捉える人々との間で、「本人そっちのけ」の言い争いが始まってしまったのでした。
【その後、はやては短い髪に合わせて、バリアジャケットも元の形(帽子つき)に戻しました。】


 一方、なのはとフェイトは、と言うと……。
 新暦65年の〈闇の書事件〉の際には、二人とも、基本的には『リンカーコアからただ「力」を抜き取られただけ』だったので、(さらに言えば、身体(からだ)そのものがまだ「成長期」だったので)またすぐに回復することができたのですが、今回はコアの「構造」そのものが傷ついてしまっていたため、二人とも、コアの回復には相当な時間が(理論上、最低でも丸三年。普通なら五~六年。下手をすれば十年ちかくも)かかってしまうようです。
 航空戦技教導官も執務官も、魔法なしでは全く務まらない職業(おしごと)なので、二人は仕方なく、この年の10月から「最低でも三年間」は休職することになりました。

 また、管理局は事件終了の直後に、ヴァンデイン・コーポレーションに「解散命令」を下すとともに、エクリプス関連の知識と技術を「すべて」封印しました。
 魔法が全面的に使えなくなったら、それこそ「野蛮な質量兵器の時代」に逆戻りしてしまうのですから、これは、「ロストロギアの管理」と「質量兵器の廃絶」を目指している時空管理局としては「当然の措置(そち)」だったと言って良いでしょう。

 なお、翌82年の〈モグニドールの惨劇〉の(のち)には、デバイスの重武装化という「方向性」それ自体も否定されました。
(この一件に関しては、また「第6章」で述べます。)
 新たな法令により、第五世代デバイスの多くが「広い意味での質量兵器の一種」と見做(みな)されるようになってしまい、その上、管理局の〈上層部〉からは『いわゆる「魔道殺し」どもが完全に消滅した今、「それへの対抗策」など、もう必要ない』と判断されてしまったからです。
(あえて良く言うならば、これは「管理局の軍縮」です。)

【実のところ、エクリプスウイルスやゼロエフェクトやAEC武装など、Forceシリーズに登場した数々のネタは、いずれも、私としては今ひとつピンと来ないモノばかりだったので、上記のような設定にさせていただきました。
 この設定によって、Forceシリーズにおける新設定は「すべて」一旦はキャンセルされたものとお考えください。
(ただし、人型機械端末の「ラプター」だけは、十年以上も経ってから、ようやくその普及版が「機械兵」の名前で出回ることになります。)
 また、〈フッケバイン〉に関する公式設定のうちの幾つかは、あまりにも特殊すぎて「他の設定との整合性」が全く取れていないため、最初から「無かったこと」にさせていただきました。
そんな訳で、以下、Forceのネタやキャラは基本的に登場しません。

 正直に言ってしまうと……『これぐらいなら、もうForceシリーズそのものを「無かったこと」にしてしまった方が早いんじゃないのかなあ』とも思ったのですが……結局は、なのはとフェイトに長期休暇を取らせるなど、幾つかの出来事の「理由づけ」として、このシリーズを利用させてもらうことにしました。
 トーマもリンカーコアが(なのはやフェイト以上に)激しく「損傷」して、当分は魔法を全く使えない「普通の人間」になってしまったけれど、リリィが犠牲になってくれたおかげで肉体的にはそれほどの負傷をせずに済んだので、『新暦81年の12月には普通に退院して、正式にゲンヤ・ナカジマの養子になった』ということにしておきます。
 Forceファンの方々は、悪しからず御了承ください。
(なお、感染者の特殊能力や自己対滅などに関しては、「一応の説明」を考えておきましたので、「背景設定5」の末尾を御参照ください。)】


 また、この年の10月には、ミッドでも遅ればせながら同性婚が合法化され、同時に、生殖医療も「ある程度まで」解禁されました。

【ただし、女性同士で子供を作る場合には、当局への申請と認可が必要です。次の世代における「近親婚」を未然に防ごうと思うと、新生児の遺伝上の両親は、最初から特定できているに越したことは無いからです。】

 クローンの大量生産などを懸念するあまり、ミッドでは旧暦の時代から一貫して、生殖に関する技術は「地球以上に」厳しく規制されて来たのですが……。
 (こよみ)が新暦になって以来、(他の世界では、ともかくとして)ミッドでは平和な時代が続き、平均寿命も延びた結果、近年はそれに伴う女性の晩婚化や少子化なども進んで、実のところ、移民の奨励にもかかわらず、ミッドの総人口はじりじりと減少し始めていました。このままでは、遠からず10億の大台を割り込んでしまいます。
 そこで、ミッドチルダ政府は『産みたがっている女性にはどんどん産んでもらおう』と考え、管理局の了解を得て旧来の「厳しく規制する方針」を大きく転換したのでした。

 これによって、法律の上では『1.互いに近親(3親等以内の親族)ではない二人の人間が、
 2.合意の上で半分ずつ遺伝子を出し合って、他の遺伝子を混ぜることなく新たな個体を作り、
 3.一方の「遺伝子提供者」である女性が、みずから望んでその子を自分の子宮で育てて産む』
という三つの条件さえクリアしていれば、もう何をしても構わない(必ずしも「法的に」正式な結婚をしていなくても構わない)といった状況になりました。
【ミッドでは「クローンの大量生産」などを未然に防ぐためにも、上記の第三条件によって、いわゆる「代理母」は今もなお厳しく禁止されています。】


 そこで、なのはとフェイトも、ついに〈卵子融合〉による子作りを決意しました。
 二人はまず、はやての忠告に従って〈エクリプス事件〉の(ほとぼり)が冷めるまでの間、慎重に人目を避けることにしました。入院先も、まだ一昨年に開業したばかりの、クラナガン東部郊外にある管理局直営の「局員専用病院」です。
(ギンガとチンクも、今ではエリオも、こちらに収容されています。)

【ちなみに、この81年には、後に「リンカーコア研究の第一人者」となるグラスト・ブラーニィ魔導医師もまだ19歳で、一介の研修医でした。
 また、新暦90年に「フェイトの現場担当補佐官」となり、93年には「グラストの妻」ともなるマルセオラは、この当時まだ9歳で、入院中の祖父(この春に70歳で定年退官したディアス・タグロン(もと)広域捜査官)のお見舞いに、しばしば祖母とともにこの病院を訪れていました。
(外見上は「9歳当時のなのは」ともよく似た感じの美少女なのですが、『実は、彼女はここで、リハビリ中のフェイトやその付き添い役のグラストとも出逢っていた。また、入院中のエリオや彼を見舞いに来たキャロとも面識を得ていた』という設定です。)】


 そして、なのはとフェイトが半年ほど入院している間にも、一般の世間では、さまざまな出来事がありました。
 まず、今年もまた、10月上旬には、IMCS第29回大会の「都市本戦」が始まります。
 リオ(12歳)は、今回が都市本戦初出場で、それなりに緊張もしていたのですが、陸士訓練校を「半年の短期プログラム」で卒業したハリー(17歳)が、例の三人娘を連れてリオの選手控え室まで応援に来てくれたため、だいぶ緊張が解けました。
 そのおかげで(?)1回戦は、見事に勝利を飾ります。
【なお、他の1回戦は、描写を省略します。】

 しかし、後日、リオは2回戦で、シード選手の「老練なる」グラスロウ・エベローズ(18歳)に無念の判定負けを(きっ)しました。
 単純な「力比べ」なら、もちろん、リオの方が(まさ)っていたのですが、グラスロウは「ラウンド制ならではの時間の使い方」や「リングの上でのポジショニング」など、「試合の上での技術」という面ではリオをはるかに上回っていたのです。
【なお、他の2回戦は、描写を省略します。】

 そして、ベスト8による3回戦の組み合わせは、以下のとおりとなりました。

 アインハルト(14歳)対グラスロウ(18歳)
 ザミュレイ(19歳)対クヴァルゼ(14歳)
 ヴィクトーリア(19歳)対テラニス(18歳)
 シャンテ(16歳)対ヴィヴィオ(12歳)

 第一試合では、アインハルトが、リオの(かたき)討ちとばかりに圧勝しました。
 第二試合も、ザミュレイの貫録勝ちです。クヴァルゼは、巧みな技術で善戦しましたが、ついに及びませんでした。
 外見的にも、クヴァルゼは「小柄で童顔」なので、「獅子のような」ザミュレイの隣に立つと、見るからにヒドい対比になっています。
(もちろん、ザミュレイにとっては、見た目だけで「悪役あつかい」をされるのは、相当に不本意なことだったでしょう。)
 第三試合のヴィクトーリアとテラニスは、一昨年以来の再戦でしたが、何故かしら、今回もまた「壮絶なドツキ合い」となってしまいました。結果は、またヴィクトーリアのKO勝利です。
 第四試合では、ヴィヴィオも善戦しましたが、シャンテの分身に翻弄(ほんろう)されて、判定負けとなりました。それでも、「12歳でベスト8入り」は、IMCS史上、初の快挙です。

 また、同日の午後には、5位から8位までの決定戦が行なわれました。組み合わせは、ヴィヴィオ対クヴァルゼ、テラニス対グラスロウ、となります。
 クヴァルゼは完全にスタミナ切れで、やや一方的な展開でKOされてしまいました。
 グラスロウも、午前中の対アインハルト戦によるダメージが抜け切っておらず、やはり、一方的な展開でそのまま判定負けに追い込まれます。
 そして、7位決定戦はお互いにヘロヘロの泥試合になってしまいましたが、実に微妙な判定で、グラスロウが勝利を収めました。一方、5位決定戦は、ヴィヴィオもよく戦いましたが、テラニスの「力押し」で押し切られてしまいます。
 テラニスが採用したのは、『まともに打ち合わず、相手の体をリングの外へ投げ飛ばして、ポイントを取る』という戦術でした。ほとんど相撲(すもう)のような戦い方ですが、これならば、相手の「対打撃防御」がいくら固くても関係がありません。
 結果は、テラニスが5位、ヴィヴィオが6位、グラスロウが7位、クヴァルゼが8位となりました。

 そして、最終日。
 準決勝は、ザミュレイ対アインハルト、ヴィクトーリア対シャンテの組み合わせとなりました。後者は、一昨年の地区予選以来の再戦です。
 アインハルトは序盤で思わぬポイントを取られ、あとは巧みに逃げ回られて、判定負けになってしまいました。
 シャンテも善戦はしましたが、今一歩、及ばずに無念の判定負けとなります。

 午後の決勝戦は、割と一方的な展開となり、今年の都市本戦は、ヴィクトーリアが問題なく優勝しました。
 ザミュレイは、2年連続で準優勝です。残念ながら、アインハルトは3位に、シャンテは4位に終わりました。


 なお、全くの余談ではありますが、この決勝戦のわずか数日後に、エドガーの祖父グスタフが76歳で死去しました。以後しばらくして、エドガーはまた本来の職務に復帰したのだと言います。


 
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