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胡蝶の花

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第一章

    胡蝶の花 
 中国雲南省に伝わる話である。それも古い話であることは言っておく。
 この省に胡蝶泉という輝く鏡の様に澄んだ水をたたえる泉がある、この泉は古いネムノキ達に覆われていた。
 泉の近くに村がりそこには文姑というきらきらとした黒目がちの大きな目と細面で白い顔に流麗な眉と見事な長い黒髪の少女がいた、文姑は父と共に暮らしていてだった。
 霞朗、大柄で逞しい身体と優しい顔立ちを持つ猟師と恋仲であり結婚の約束までしていた、だがこの地はだ。
 高倉という蟷螂の様な顔で病的に肌が白い領主に治められていた、この輩は兎角底意地が悪く強欲で自己中心的で無教養で粗野であった。
 権力を好き放題に使うだけであり悪政を敷いていた、民に重税を課していて搾取するだけ搾取していた。
 その高倉がだ、文姑のことを聞いて言った。
「俺の妾の一人にするぞ」
「ですがその娘は既にです」
「ある猟師と結婚の約束をしています」
「ですから」
「それは」
「黙れ」
 高倉は周りの謹言に殴ってから言った。
「俺がここの領主だぞ」
「だからですか」
「それで、ですか」
「ここでは俺が法なんだぞ」
 不遜な態度で言うのだった。
「だからだ」
「その娘をですか」
「妾にされますか」
「すぐにここに連れて来い」
 こう言って村に兵を送ってだった。
 文姑を自身の屋敷に連れて行かせた、その際彼女の父が何とか止めようとしたが兵達に難しい顔で言われた。
「わかるだろう」
「ご領主様のお言葉だ」
「従うしかない」
「諦めるんだ」
「これ以上逆らうと知らないぞ」
「だからだ、わかれ」
「そんな・・・・・・」 
 父は項垂れるしかなかった、そしてだった。
 兵達は嫌がる文姑を連れて領主の屋敷に戻った、だが。
 狩りを終えて村に帰ってきた霞朗がその話を聞くとだった、彼は強い声で言った。
「すぐに文姑を助け出す」
「しかし相手は領主様だぞ」
 文姑の父は彼に深刻な顔で述べた。
「だからな」
「逆らえないか」
「あの娘を助け出したとしてどうするんだ」
 例えそうしてもというのだ。
「一体」
「俺は漁師だ、山のことはよく知っている」
 だからだとだ、霞朗は文姑の父に答えた。 
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