魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第3章】SSXの補完、および、後日譚。
【第7節】背景設定3: 管理局の歴史とその諸制度について。(後編)
また、現在の管理局では、普通に陸士訓練校を卒業して来た新人陸士は、『その人が実際にどれほどの能力を持っているか』には関係なく、最初は全員が自動的に「三等陸士」に任ぜられます。
その後は、本人の意欲と能力と実績によって、「年度ごとに」昇進していきます。
それらが充分であれば、(たとえ「秋からの採用」であったとしても)二年目には「二等陸士」に昇進できますが、そこから先は(捜査官など、特別の「資格」を取得しない限りは)原則として陸士隊で「二年続けての昇進」はあり得ません。
つまり、『最速ならば、四年目で「一等陸士」に、六年目で「陸曹」に、八年目で「陸曹長」に昇進する』という訳です。
【さて、原作には、下士官の階級が「曹」と「曹長」の二つしか出て来ません。自衛隊などでは、この「曹」がさらに「一等陸曹、二等陸曹、三等陸曹」の三階級に分かれているのですが……この作品では、素直に原作に従っておくことにします。】
現在、管理局の陸士隊では、下士官が直接に指揮することのできる陸士の人数は、一般に「数名から、せいぜい十数名程度」であり、また、下士官には「陸士たち一人一人の能力や適性を正確に把握した上で、適材適所を考えた緻密な現場指揮を取ること」が要求されています。
ここまでは、個々の陸士が「個性の無い、単なるユニット」ではなく、「個性を持った個人」として扱われます。つまり、一般の陸士の側から見れば、下士官は「いつも現場まで一緒に来てくれる、血の通った上官」なのです。
一方、士官には、下士官とは逆に、陸士を単なるユニットと見做すような「突き放した視点」が要求されます。
士官には必ずしも個々の陸士の能力や適性を把握する必要は無く、また、自分が前線に出る必要もありません。むしろ個々の現場を超えた「全体の状況」を俯瞰して「適切な後方指揮」を取る能力が(いわゆる「指揮スキル」が)要求されるのです。
このように「要求される能力」が全く違っているため、下士官が純粋に「その経歴だけで」直線的に士官に昇進することはあり得ません。士官になるためには、最初から「士官学校」で指揮スキルを学び取るか、後から独学で指揮スキルを習得して「キャリア試験」に合格するか、二つに一つしか無いのです。
また、一般論として、士官は「尉官」と「佐官」と「将官」に分類されます。
そして、〈九世界連合〉の頃のミッドでは、尉官と佐官と将官は、それぞれさらに四つの階級に細分されており、当時の用語ではそれらを下から順に、准尉、少尉、中尉、大尉、准佐、少佐、中佐、大佐、准将、少将、中将、大将、と呼んでいました。
【しかし、後に「准佐」は廃止されました。理由はいろいろありますが、ひとつには、ミッド語の語彙の中に「より頻繁に使われる同音異義語」があり、大変に紛らわしかったからです。】
なお、当時のミッドの「陸軍」では、詰まるところ、そうした階級は「その人物の指揮下に組み込むことができる兵卒の総数」による区別でしかありませんでした。
そして、当時、尉官は一般に「数十名から百数十名程度」の兵卒を指揮し、佐官は一般に「数百名から数千名程度」の兵卒を指揮していました。
(万単位の「方面軍」を指揮するのは、将軍の仕事です。)
そのため、現在の管理局でも、各陸士隊における陸士の総数はおおむね数百名程度(昔の用語で言う「大隊」の規模。実際には、魔導師だけなら平均で350名程度)なので、その部隊長は一般に「三佐」もしくは「二佐」なのです。
やがて、その当時のミッドの「海軍」にも、同様の基準が適用されました。
(なお、ここで言う海軍は、後の時代の管理局で言う「次元航行部隊」のような存在のことです。歴史的に見て、ミッドには昔から「惑星表面の海を行く海軍」は存在していませんでした。)
そして、当時、大型の次元航行艦は、交代要員も含めて「数百名規模」の船員らが乗り込まなければ、まともに動かすことができない構造だったために、その「兵卒の総数」から考えて、海軍の艦長は「陸軍の大隊長と同格」という扱いになったのです。
現在の管理局でも、次元航行部隊の艦長職が一般に「三佐」もしくは「二佐」なのは、このためです。
【なお、現在の地球上の諸国家の海軍では、一般に大型艦の艦長は「大佐」になるようですが、管理局の次元航行部隊では、それらの海軍よりも「保有する艦船の総数」がはるかに多いので、階級をひとつ下げた形で設定してみました。
ちなみに、管理局の次元航行部隊で「一佐」と言うと、普通は「小規模艦隊の司令官」の階級であり、これ以上の階級と「艦隊指揮の権限」とを併せ持つ人物は、みな「提督」と呼ばれます。
一方、英語圏の「Admiral(提督)」は、海軍で「准将以上の将官に対する敬称」として用いられる用語なのですが……原作の設定では、クロノは20歳で(新暦71年の段階で)すでに提督になっています。
私は、個人的に『戦時中でもないのに、弱冠20歳で「すでに階級が将官」というのは、さすがに無理がある』と思い、今回はこのような設定を組んでみました。
また、この作品では、少しズラして、『クロノが提督になったのは、実際には新暦71年度の末(つまり、新暦72年の3月)のことである』という設定で行きます。】
しかし、現在では艦船のAI化も進み、特に小型艦では『交代要員まで含めても、百名もの乗組員は必要では無い』という状況になり始めています。
そのため、管理局全体としては、『そもそも、階級とは「指揮する兵卒の総数」に基づいたものなのだから、その原則に従い、小型艦の艦長の階級は引き下げられるべきだ』という議論もあるのですが、次元航行部隊は今も、個々の戦闘艦の「具体的な作戦行動における独立性の高さ」を根拠として、『個々の戦闘艦は個々の陸士隊に匹敵する「部隊」なのだから、その部隊長である艦長の階級は、たとえ小型艦でも、やはり三佐が妥当である』との主張を全く崩していません。
管理局内では、「小型艦の艦長」に専用の階級として、かつての「准佐」を復活させようという意見もあり、現在では「特任三佐」などという名称も提案されています。
【当然ながら、これは「三佐の中でも特別な人物(つまり、普通の三佐よりも上)」という意味の用語ではなく、「艦長として行動している限りにおいて、特別に三佐としての待遇を受けることができる人物(つまり、普通の三佐よりも下)」という意味の用語です。
(そして、『新暦100年代以降、次元航行部隊では、小型艦の増加に伴って、実際にこの階級が多用されるようになってゆく』という裏設定です。)】
一方、空士は「絶対数そのもの」が陸士よりも格段に少ないので、さすがに同じ基準を適用する訳には行きませんでした。
現在の管理局では、下士官は多くの場合、単なる「優秀な空士」として扱われており、空士隊では一般に尉官になってようやく(陸士隊における下士官のように)わずか数名規模の分隊、ないしは十数名規模の小隊を率いることができるようになります。
(空士隊では、数十名規模の部隊はもう「大隊」という扱いになるので、それを率いるのは、当然に佐官の仕事となります。
また、空士隊では、陸士隊と違って、「尉官や佐官になっても現場に出ること」が全く珍しくありません。)
なお、空士は陸士以上に「個々人の能力の格差」が大きいため、『スキルと実力次第では(陸士だったら、あり得ないほどの速さで)ポンポンと昇進してしまう場合がある』というのも、空士の特徴です。
【StrikerSのTVアニメでは、はやてが『空士の階級なんて飾りみたいなものです』という趣旨の発言をしていましたが、それは、あくまでも「陸士の階級に比べれば」の話です。】
また、いわゆる「特秘事項」にも、実際には三段階の等級があります。
「第三級」の特秘事項は、士官(准尉以上)であれば、誰にでもその情報を知る権利が認められています。具体的には、執務官や一般士官の「個人データ」などが、これに該当します。
「第二級」の特秘事項は、「佐官以上の階級の持ち主」でなければ知ってはならないデータのことであり、一般の陸士隊で言えば、「部隊長さえ知っていれば、それで良いこと」です。また、公表されれば「管理局全体の不利益」にもつながりかねないような話も、多くはこの等級の特秘事項とされます。
「第一級」の特秘事項は、一般には将官(准将以上)にしか開示されることの無いデータであり、その多くは「第一級指定ロストロギア」などに関連した危険なデータです。管理局全体の不利益に「明らかに直結」するような話も、しばしばこの等級の特秘事項とされます。
さて、最後に「魔導師ランク」についてですが……。
Wikipediaの「魔法少女リリカルなのはシリーズ」にも、『シリーズ中でも特に紆余曲折が見られる設定の一つである』と書かれているとおり、公式の設定も時期によって内容がかなり変わっています
実際、初期には『魔力量や魔法の運用技術を総合的に評価した、強さの指標』とされていましたが、StrikerS以降は『達成可能な任務の規模の指標で、個人の強さと直接には関係しない』という話になっています。
そこで、この作品では間を取って、「おおよそ両者の要素を兼ね備えた指標」であるものと考えておくことにします。
現在、管理局の魔導師ランクは形式的には「FからSSSまで」の11段階ですが、実際にはFは「ランク外」なので、「ランクそのもの」としては10段階です。
まず、〈九世界連合〉の時代には、兵卒が状況に応じて「他の世界の軍」にも貸し出されるようになり、そうした「貸し借り」を互いに対等な(等価な)ものとするために、兵卒を「その実力によって」ランク分けする必要性が生じました。
具体的に言うと、Fランクは、多少の魔力はあるけれど「魔導師としては」役に立たないレベルで、バックヤードにおける一般の作業員などがこれに該当します。
次に、Eランクは、訓練校を卒業したばかりの新人に「一律で」与えられるランクであり、まだ危なっかしくてとても実戦へは出せないレベルの「訓練兵」です。
現代では、『丸三年たってもEランクのままなら、そろそろ「廃業」を考えた方が良い』とまで言われていますが、そういう人は「大半が」訓練校の段階でふるい落とされてしまうので、実際には、そういった陸士や空士の割合は、ごく限られたものとなっています。
(なお、ここまでは、他の世界への貸し出しの対象にはなりません。)
また、今で言う「Dランク、Cランク、Bランク、Aランク」は、昔の「陸軍」では、それぞれ「下級兵、中級兵、上級兵、特級兵」と呼ばれていました。
これらの兵卒が貸し出しの対象です。
当然ながら、士官は貸し出しの対象とはならないので、当時はまだ、士官をランク分けする必要などありませんでした。
しかし、〈時空管理局〉の創設とともに、初めて士官をもランク分けする必要が生じました。
当時は、統合戦争の時代であり、今以上に「実力主義」だった時代です。
士官の中には、一般の兵卒よりも「魔導師として」明らかに格上の人物が多かったため、当初は『兵卒ランク(EからAまで)とは別個に、その上に士官ランク(EからAまで)を新設しよう』という意見もありました。
しかし、現役の士官たちの多くがこれに反対し、『用語が「同じE、D、C、B、A」では、何かの拍子に「士官ランク」が「兵卒ランク」と混同されてしまう危険性がある』と主張したため、結局は両者を一本化することになりました。
こうして、「士官ランクの五段階」は、それぞれ「AA、AAA、S、SS、SSS」という、「他では滅多に見られない奇妙な用語」で表現される結果となったのです。
【我ながら、巧みな正当化だ!(笑)】
ちなみに、現在の管理局では、まず陸士に限って言うと、「Bランク試験」が相当に高い「壁」であり、全陸士のおよそ三分の二が「生涯、C~Dランク止まり」となっています。
また、Aランクまでは(元々が「兵卒ランク」なので)魔導師ランクはほぼ純粋に「その人自身の個人的な能力の高さ」によって決まりますが、AAランク以上になると(本来は「士官ランク」だったので)魔導師ランクも『どこまで大きな任務をその人物に任せることができるか』という問題まで加味して決められるようになります。
(当然に「指揮スキルの高さ」も判断材料とされるため、はやてのように最初から「固有戦力」を持っていると、魔導師ランクを取得する上では極めて有利になります。)
また、俗に「エース」とか「ストライカー」などと呼ばれるのは、一般的には「AAランク以上の実力の持ち主」のことですが、そこまで行ける陸士は全体のおよそ2%もいません。
(つまり、通常の陸士隊における陸戦魔導師350名の中では、最大でも七人ぐらいしかいません。そして、当然ながら、彼等の大半は、すでに「一般の陸士」ではなく、下士官か士官です。)
さらに、Sランク以上となると、全体の0.1%未満となります。
(つまり、『大半の陸士隊が、Sランクの陸士など一人も保有していない』というのが、ミッド地上における陸士隊の現状です。)
【この作品では、「魔導師の総数」をだいぶ多めに設定した分、上級者の比率は、原作よりもやや低めに設定されています。】
空士の場合、それらの割合はもう少しだけ高くなりますが、それでもやはり「オーバーSランク魔導師」はあくまでも「特別な存在」です。
だから、当然、「本来は」一個の小部隊に何人もの「オーバーSランク魔導師」が所属していてはいけません。
StrikerSでは、「一部隊における魔導師ランクの総計規模」が規制されていたために、機動六課は「能力限定」という裏技に頼らざるを得なかった訳ですが……局の立場としては、『戦力を或る程度までは「偏り無く」配置する必要がある』ので、そうした規制も、〈上層部〉の判断としては「ごく当たり前の措置」なのです。
また、ランクとスキルは、本来は無関係のはずなのですが、現在では「汎用性が高いスキル」の幾つかは、魔導師ランクと結び付けた形で考えられています。
具体例としては、空士で言うと、「慣性コントロール」はおおむねAAランクのスキルであるものと、「音速超え」はおおむねAAAランクのスキルであるものと考えられています。
【なお、劇場版の「第4作」で描写されていたような「自力での大気圏離脱」は、この作品では、『(真竜ならば、ともかく)人間の能力では絶対に不可能だ』という設定にしておきます。
また、『自分の体の周囲に空気をまとって、真空中で活動する』という行為は、必ずしも不可能ではありませんが、はやてほどの魔導師であっても、せいぜい1刻程度(12分ぐらい)が限界のようです。】
ちなみに、『名は体を表す』という諺があります。これは、『物の名前が、その物の実体や本質をそのまま表現している』という意味です。
もちろん、それは『必ずそうなる』という話ではなく、本来は『そうであってほしいものだ』という程度の話なのですが……実のところ、『そのモノに不適切な名前をつけた結果、後に、その本質までもが歪められてしまう』というのも、時には起こり得る現象です。
「Sランク」というのも「ただの名前」であり、本来は、ただ単に「士官ランクの第三位」という意味しか無かったはずなのですが、今では「その名前から判断して」何か「特別なもの」を持っているランクであるものと、しばしば解釈(誤解)されてしまっています。
結果として、現在では上記のような『本来は、ただの「士官ランク」だった』という歴史的な経緯は脇に置かれて、普通は『何らかの「特殊なスキルや資質」を持っていなければ、Sランク以上にはなれない』という状況に、つまり、『通常スキルしか持っていない魔導師は、どれだけ能力値を上げてもAAAランク止まりになる』という状況になってしまっています。
もちろん、このような状況は決して望ましいものでは無く、『早く是正すべきだ』という意見もあるのですが、今のところ、その方面の改革は遅々として進んでいません。
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