魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第3章】SSXの補完、および、後日譚。
【第3節】新暦78年、6月から9月までの出来事。
さて、新暦78年の6月、なのはやはやてたちが、みな揃ってミッドから遠く離れている間に、一連の〈マリアージュ事件〉が、とうとうミッドにやって来ました。
3月に〈管8フォルス〉から始まり、〈管3ヴァイゼン〉を経由して、〈管1ミッドチルダ〉へと続いた、動機のよく解らない「連続猟奇殺人事件」です。
【これは、本来ならば、担当者は執務官ではなく、広域捜査官でも良かったはずの事件なのですが、『ティアナは「フォルスの第二首都ガスプシャルス」で偶然に「二人目の事件」に遭遇してしまったため、そのままこの案件を担当することになり、現地の陸士隊で検死官をしていたルネッサを臨時の補佐官にした』という「解釈」で行きます。】
この事件では、スバルやティアナやエリオやキャロが活躍した他にも、ルーテシアやアギト、ギンガや元ナンバーズの面々、さらにはヴィヴィオもこれに関与しました。
また、ルネッサ(18歳)は密かにマリアージュの「軍団長」を利用して、一連の殺人と破壊活動を行なっていたのですが、ティアナに正体を見破られ、ヴァイス陸曹らの協力もあって、無事に逮捕されました。
【なお、「SSX」では、ルネッサは「管理外世界オルセアの、南部内戦地区の生まれ」と表現されており、その言い回しだと『オルセアの北部は内戦状態になっていない』という意味にも受け取れてしまうのですが……それだと、トレディアが他の世界にまで戦乱を広げようと考えていた理由が、かえって解りにくくなってしまいます。
(つまり、「オルセアの北部で安穏と暮らしている連中」に思い知らせてやれば、それで済む話になってしまいます。)
そこで、この作品では、『オルセアは、旧暦の時代からずっと「世界規模(惑星全体規模)での内戦」が続いている悲惨な世界である』という設定で行きます。】
その過程で、ミッド首都の東部近郊では、内海に面した「マリンガーデン」ビルが炎上し、その地下にある海底遺跡の中で永い眠りに就いていた「古代ベルカの冥王」イクスヴェリア(不老不死で、肉体的には永遠に9歳児のまま)が「予定外に」目を覚ましてしまいます。
彼女はスバルの手で(ティアナの協力もあって)炎の中から助け出され、極端に厭世的な気持ちからも立ち直ることができました。
しかし、そこでまた一旦、眠りに落ちてしまいます。
【この場面での「厭世的な」セリフの幾つかは……特に『あれもこれも失敗作だった』の件は……この作品の基本設定にも抵触してしまうので、この作品の時間線としては「無かったこと」にさせていただきます。】
そして、イクスヴェリアは(一旦、例の「海上隔離施設」に送られてから)聖王教会本部に保護されて、翌7月に、もう一度だけ目を覚ましました。
そこで教会の人たちに「自分に関する話」をした後、駆けつけたスバルとも語らい、ヴィヴィオとも通話で話し合ったりしたのですが、その後、また改めて「いつ覚めるとも知れぬ」永い眠りに就いてしまったのでした。
【なお、「SSX」では特に描写が無かったようですが、この作品では『イクスヴェリアは、この時点で教会の人たちに「自分に関する情報」を時間の許す限りいろいろと喋っていた』という設定で行きます。】
一方、ルネッサは一旦、通常の拘置所に送られた後、7月には「禁固12年」の実刑判決を受けて南洋の「海上特別拘置所」へ移送されました。
(一時期、ナンバーズの更生組やイクスヴェリアが入所していた「海上隔離施設」は、内海にある施設で、これとは全くの別物です。)
この一件で、管理局は「執務官の補佐官制度」の見直しを余儀なくされ、翌79年度には新たな法制度を施行したため、新暦80年以降は、ウェンディやフェネイザ(シャッハの姪、後述)のような「特例措置」の場合を除いて、新たに補佐官となるためには「補佐官試験に合格すること」が必須の条件となりました。
【この制度改革に関しては、また「背景設定3」で詳しく述べます。】
さて、ここでまた話はがらりと変わりますが……。
新暦78年の7月。〈マリアージュ事件〉が正式に終了した後には、今年もまたIMCSの地区予選が始まりました。
新暦53年に始まったIMCSも、今年でもう26回目になります。
【なお、この作品では、『一般には「絶対に秘密」の話だが、IMCSは元々が「広く民間から優秀な人材(若手の陸戦魔道師)を発掘し、局が早期にそれらの人材を確保すること」を「裏の目的」とした大会だった』という設定で行きます。
(古くは、新暦40年生まれのメガーヌや41年生まれのクイントも、最初の5回の大会で大活躍した結果として十代のうちに管理局に確保された人材でした。)
それ故、すでに「正規の局員」になっている者にはIMCSへの参加は推奨されません。必ずしも明文で禁止されている訳ではないのですが、局にとっては今さら何のメリットも無い行為なので、十代の若手局員が参加を申請しようとしても、上司が「それとなく」止めに入るようです。(笑)
(それでなくても、現実には、若手の局員が「大会の日程に合わせて休暇を取る」ことなど、ほとんど不可能なのですが。)
一方、ルーテシアは、79年の段階では、まだ一介の「嘱託魔導師」でしかなかったので、個人の意志で普通に参加することができました。
しかし、彼女は79年の第27回大会に一度出場しただけで、(ファビアとともに)IMCSからは完全に姿を消してしまうことになります。】
【ちなみに、私は、Vividの物語で『個々の出来事が、時期としては何月のことなのか』を特定しようと思い、改めてコミックス全20巻を読み直してみたのですが……。
まず、第1巻では、魔法学院で「始業式」が行なわれますが、その時点でもう「通り魔事件」は起きており、その後に「ヴィヴィオとアインハルトの出会い」があります。
そして、第2巻では、いきなり「一学期前期試験」が描写され、その直後の「四日間の試験休み」を利用して、一行はカルナージでの訓練を行なっているのですが、第3巻では、その訓練の三日目に、ヴィータが『5月も終わりだぜ』と発言しています。
ということは、一学期前期試験は「5月下旬」のことであり、また、学校内の試験というモノは一定期間の授業をした後に行なわれるはずのモノなので、やはり、始業式は普通に「4月上旬」のことだと考えて良さそうです。
つまり、『アインハルトは3月のうちから(自分がまだ中等科に入る前から)一連の通り魔事件を起こしていた』ということになります。
また、同3巻の最終ページには『予選開始まであと2ヶ月!』と書かれているので、IMCSの地区予選は「7月下旬」から始まるものと考えて良さそうですが、第8巻を読むと、その地区予選の最中にも、主人公たちは普通に学校へ通っています。
もう8月になっているはずなのですが……もしかして、ミッドには「夏休み」という概念が無いのでしょうか?(考え中)
また、第13巻の内容は、『イクスヴェリアの小さな分身と一緒にプール遊び→ 学期内試験→ 学院祭→ 学院の制服が秋服に衣替え→ 地区予選の準決勝→ 連休を利用してルーフェンへ』という流れで、その後に(第16巻で)「地区予選の決勝戦」が行われているのですが……。
まず、プール遊びは、いかにも「8月っぽい行事」ですね。(笑)
学期内試験は、もしかして「学期末試験」の誤植でしょうか。学院祭は、別に何月でも開催可能ですが、秋服に衣替えは、いくら早くても「10月上旬」以降の話でしょう。
一方、地区予選は、4回戦(準々決勝)までは7月のうちに(割と過密な日程で)行なわれたので、結果として、衣替えの後(10月以降)に行なわれる準決勝は、準々決勝から少なくとも丸二か月は間が空いてしまっています。
さらに言えば、予選決勝においても『ミウラは、ルーフェンでの経験が役に立った』というような描写が全くありません。
そこで、誠に勝手ではありますが、この作品では、物語の都合上(と言うより、説明の便宜上)「出来事の順序」を以下のとおりに変更させていただきたいと思います。
『地区予選は、7月下旬から8月下旬にかけて行なわれるが、イクスヴェリアの分身が現れたのは8月上旬のことで、一般の学校では、同じ頃に学期末試験があり、その後に(日本に比べれば短いけれど)半月あまりの夏休みがある。そのため、予選決勝は例年、夏休みの前半の行事となる。
(ちなみに、「ルーフェン編」は、夏休みの後半の出来事である。)
9月からは二学期で、同月の末には学院祭があり、10月上旬には秋服への衣替えとIMCSの都市本戦が、11月上旬には都市選抜が、12月上旬には世界代表戦がある』
つまり、IMCSとは、DSAAが一年の後半に(正確には、5月から12月にかけて)開催している「無階級制」の競技会であり、一年の前半には(正確には、前年の11月から6月にかけては)DSAAは「原則としては階級制」のU‐15大会やU‐19大会を開催しているのです。
なお、こちらの大会は基本的に「武器は使用禁止」で、魔法の使用にも相当な制限があり、事実上、「身体強化魔法」ぐらいしか使えないことになっているため、ミウラやリオやコロナには全く向いていません。
「Vivid Strike!」では、ミウラがU-15大会に出場していたかのような描写がありましたが、この作品では、それは「無かったこと」にします。】
そして、同じ頃(78年の7月下旬)、アインハルト(11歳)の祖父エーリク(66歳)は、唐突に不治の病に倒れました。
「この七年余で、覇王流の『基本』はすべて、お前に伝えた。お前が覇王クラウスにどこまで近づけるかは、これから先の、お前の努力次第だ」
祖父の言葉は「呪縛」と化して、アインハルトの心を縛り上げて行きます。
また、祖母イルメラ(66歳)は、可愛い孫娘が来春からは「普通に」中等科へ進学できるように取り計らってくれましたが、彼女もじきに夫と同じ病に倒れ、半年後には、二人そろって早々とこの世を去ってしまったのでした。
また、その年の8月には、〈永遠の夜明け〉の脅威も無くなったため、カレルとリエラ(6歳)も地球を離れ、ミッドに転居しました。
クロノとエイミィは、今までずっと〈本局〉で生活していたのですが、子供はやはり地上で育てた方が良いだろうと考え、クロノはこの機会に首都旧市街の北部、なのはの家からもさほど遠くはない場所に「普通の一戸建て」を購入して、子供たちをそこに住まわせました。
しかしながら、二人はともに仕事の関係で、実際にその家で寝泊まりをすることはなかなかできなかったため、カレルとリエラはほとんど「住み込みのメイドたち」によって育てられる形となり、やがて実の親に対しては心理的にやや距離感を覚えるようになります。
また、カレルとリエラから見れば、なのはやフェイトは「叔母」と言うよりも、単に「時々遊びに来てくれる人」といった程度の認識でしかありませんでした。
カレルとリエラはミッド語の習得を済ませた後、翌79年の4月からは地元の魔法学校の初等科に通うことになります。
【この時点では、まだ面識はありませんが、後述のアンナは同じ学校の先輩です。】
また、8月のうちには、ユーノ司書長も無事に退院しました。
そして、翌9月の上旬には早速、無限書庫の管理室で、ダールヴ・スクライアからの報告を受けます。
彼は、二年前からユーノと「ベルカ在住のスクライア一族」との連絡役を務めており、最近では考古学者のフランツ・バールシュタイン博士とも親しくなっていました。
【ちなみに、76年に発掘調査が始まって以来、ベルカ世界からは続々と新たな知見が集まって来ており、ユーノはいずれ、それらに基づいて著書を執筆する予定でいました。
(そして、後に述べるとおり、新暦84年には、実際に出版されます。)】
また、ダールヴは今や、ほとんどユーノの個人的な「従者」と化しており、ユーノは彼にベルカ世界のことばかりではなく、ドルバザウムのことも頼んでいました。
そこで、今回はドルバザウムについての報告です。
さて、12年前(新暦66年)の「ちょっと奇妙な追加調査」の依頼とは、『すべての遺体が本当に「同じ時期に」死んだものかどうかを確認してほしい』というものでした。
そんなことを確認して一体何になるのか、スクライア一族の人々にもよく解りませんでしたが、ともかく、先月には「すべての遺体の確認作業」がようやく終了したのです。
『特に急ぐ話ではない』と言われたのを真に受けて少人数でこつこつと作業を進めたため、十年以上もかかってしまいましたが、その結果、「その遺跡の墓地」に埋葬されていた遺体は、すべてが間違いなく「全く同じ時期」に、おおよそ760年前に死亡したものであることが確認されました。
ダールヴはユーノに語りました。
「あの時代のベルカにも、すでに『祀り上げ』の風習はあったはずなんですが、ドルバザウム遺跡の集合墓地には、祀り上げの行なわれた形跡が一切ありません。一度建てられた墓標が後から撤去された実例は、ひとつも見つからなかったそうです」
「つまり、最初に死者が出てから、最終的に全滅するまで、30年もはかかっていない、ということか?」
「30年どころか、ほんの数年……いや、下手をすれば、一年たらずかも知れませんね。やはり、ドルバザウムの遺跡は、やや小型の移民船で一度に百人あまりがやって来て、それからさほど時間を置かず、一気に全滅したものである可能性が高いようです。おそらくは、疫病か何かで」
「そう考えれば、あの『雑な埋め方』にも納得がいく、ということか……」
「そうですね。乳幼児や小児の遺体が全く見つからなかったのも、現地では子供を作っている余裕など無かったからだと考えれば、納得できます」
「他には、何かあるかい?」
「はい。今回、ベルカで新たに見つかった古文書によれば、やはり、当時はベルカから『大回り』をせずに、直線的にドルバザウムへ行くことが可能だったようです。
その古文書によると、今から760年ほど前に、ベルカ世界の近傍領域で何本もの次元航路が一斉に崩壊する、という大事件がありました。それ以前には、今では使えない航路も数多くが本当に航行可能だったようです」
「それでは、彼等はファルメロウや地球などを経由して来てはいない、ということか?」
「ええ。ドルバザウムの自然環境は当時から決して人間に優しいものではなく、あそこよりも住みやすい世界など、他に幾らでもありました。他の世界を経由して来たのなら、その世界にそのまま居付いた方がずっとマシだったはずです。わざわざドルバザウムを選ぶ理由が解りません。
特に、ファルメロウは、今と同じく自然も豊かな上に、当時はまだ無人の大陸が幾つも残っていて、理想的な入植地だったはずです。やはり、彼等はベルカ世界から直接にやって来て、その直後に航路が崩壊して『帰りたくても帰れない』という状況に陥ったと考えるのが妥当でしょう」
そこで、ユーノはふと考えました。
(今から760年前と言えば、地球では「元寇」とかの時代だったはずだが、古代ベルカ人がその頃に、地球にまで来ていたと考えるのは、さすがに無理がある、ということか。
しかし、次元航路が崩壊した後、その移民船では燃料や航続距離の問題で「大回り」で帰ることもできなかったのだとしたら……その移民船は今、一体どこに? 大破したのだとしても、多少の残骸ぐらいはどこか遺跡の近くに残っているはずだ。何故、見つからないのか?)
ダールヴからの報告が終わると、まるでそれを見計らったかのように、今度はヴィヴィオが入室して来ました。ダールヴはヴィヴィオに会釈をして、入れ替わりに退室します。
その様子を見て、ヴィヴィオはいかにも申し訳なさそうに、ユーノに頭を下げました。
「何だか、お邪魔しちゃったみたいで、申し訳ありません」
「いや、構わないよ。ちょうど話は終わったところだ。ところで、何だったかな?」
「えっと……大航海時代の資料はざっと分類しておいたんですけど……この『マルデルの手記』という本だけは時代が違うんじゃないかと思って、確認してほしくて持って来ました。素人考えですが、とても新暦の10年代や20年代に書かれた内容だとは思えないんです」
ユーノは、ヴィヴィオから手渡された本をパラパラとめくって見ました。
内容的には、どうやら、技術開発者の「日記兼アイデア帳」のようです。文字はかなり少なく、ほとんど手書きの図面ばかりでしたが、その内容はあまりにも現代的(もしくは、近未来的)で、ユーノの目にも、とても50年以上も前に書かれたものには見えませんでした。
「うん。確かに、そのようだ。よく見つけてくれたね。ありがとう」
そう言って頭を撫でてあげると、9歳児は恥ずかしげに、それでも満面の笑顔を浮かべます。
「この本は、僕の方で預かっておくよ」
「よろしくお願いします。用件はそれだけです。では、失礼します」
何か他に用事でもあるのか、ヴィヴィオはそれだけ言うと、足早に退室しました。
(そう言えば、4月には『ストライクアーツの練習に付き合ってくれるクラスメートができた』とか言って喜んでいたなあ。)
ユーノにとっては、6歳の頃からいろいろと面倒を見ていた子なので、その成長ぶりが嬉しくもあり、また、ちょっぴり寂しくもあります。
そして、ユーノはその後も多忙を極めたため、彼が『マルデルの手記』の「本当の価値」に改めて気がつくまでには、ここからなお幾年もの歳月を要したのでした。
一方、ヴィヴィオはその後、同じようなタイトルの本に興味を持ち、目録を検索して「エレミアの手記」というタイトルの本を見かけました。
【この「エレミアの手記」については、Vividのコミックス第9巻を御参照ください。】
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