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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第3章】SSXの補完、および、後日譚。
   【第1節】事件当時の各人の動向。(前編)

 
前書き
 この章の内容は、おおむね「無印とA’sの主要登場人物たち」が〈マリアージュ事件〉には全く登場しなかったことの理由づけと、Vividの前日譚です。
「SSX」の内容それ自体については、あまり「丸写し」のような紹介はできませんが、皆さんも、できればどこかで聴いてみてください。
 なお、現実の話としては、「SSX」は西暦2008年に発表されました。つまり、StrikerSの初放送の翌年、VividとForceの連載開始の前年のことです。
 察するに、「SSX」は、かなり厳しい日程の中で造られた作品だったのでしょうか。「単品」としてはそれなりに出来の良い話なのですが、StrikerSやVividとの間には、少し「つながり」の悪い点があります。
 例えば、「SSX」の中では、6月の末に、スカリエッティが『ドゥーエの命日が近い』と発言していますが、StrikerSでは、ドゥーエが死亡したのは9月のことのはずです。
 また、「SSX」では、『ミッドでの〈マリアージュ事件〉は、78年6月末の出来事である』という描写になっているのですが、それだと、『その事件の終了からVividの開始まで、丸10か月も()()いていない』ということになります。
 そんな短期間のうちに、ノーヴェがヴィヴィオに格闘技を教え始めてから、あれほどの腕前にまで成長させたり、ルーテシアがマウクランからカルナージに引っ越してから、あれだけ多くの施設を整えたり、できるものなのでしょうか。
 あくまでも個人的な感想ですが、ちょっと無理っぽい気がします。

 そこで、この作品では、『あの「SSX」は「正編」とは少し別の時間線の話なのだ』ということにして、「プロローグ 第2章」でも述べたとおり、『ノーヴェがヴィヴィオに格闘技を教え始めたのも、ルーテシアがカルナージに引っ越したのも、新暦77年のうちの出来事だった』という設定で行きます。
 結果として、『この作品は、「正編」とも「SSX」とも少しばかり別の時間線の話だ』ということになってしまうのですが……悪しからず御了承ください。

 

 


 明けて、新暦78年。
 4月も下旬になると、ユーノ司書長(22歳)がまたもや珍しい病気にかかり、8月まで長期入院することになりました。
 なのはとフェイトはそれを知ると、早速、見舞いに行きましたが、ユーノはその病室で「七年前に主治医から聞かされた話」を初めて、この二人だけにそっと打ち明けます。
 それは、あくまでも「ひとつの仮説」でしかありませんでしたが、『ユーノの生まれつきの免疫力が普通の人よりもかなり低い』という事実の理由づけとしては、確かに納得のゆく仮説でした。
十五歳の時点で早くもこれを知らされていたのなら、ユーノが恋愛や結婚などに対して前向きになれずにいたのも当然のことだった、と言って良いでしょう。(←重要)
 随分と重い話を聞かされてしまいましたが、なのはとフェイトは『この件については決して他言しない』ことを約束してから、家に帰りました。

 その晩、夕食の席で母親たちから『司書長が入院した』という話を聞かされると、ヴィヴィオも翌日、学校が終わってから、すぐに〈本局〉内の病院の「特別待遇」の病室を(たず)ねました。
 主治医ウェスカ・ラドール(52歳)の許可を得て、ユーノはヴィヴィオ(9歳)と普通に会話をします。
「感染するような病気じゃないから安心していいよ」
 ユーノがそう言って「おいで、おいで」をすると、ヴィヴィオは喜んでベッドの脇に駆け寄り、『ようやく司書の資格も取れたし、検索魔方陣も幾つか覚えたから、いろいろと調べてみたい』という内容の「お願い」をしました。
「そうだね。じゃあ……もし暇があったら、大航海時代の資料をざっと分類整理しておいてくれないかな。昨年に亡くなった〈三元老〉の意向で、一昨年の夏に無限書庫に運び込まれたんだけど、忙しくすぎて全く『手つかず』のままになっているんだよ」
 ヴィヴィオが快諾すると、ユーノは彼女に「認証キー」を渡します。
 そして、ヴィヴィオは、以前にユーノから教わった「検索魔方陣」の練習を兼ねて、ユーノからの依頼を実行に移したのでした。
(このスキルは、後に〈マリアージュ事件〉の際にも、大いに役に立ちます。)


 ちなみに、リンディ(51歳)は、この年の5月の末に「三度目の里帰り」をしました。
 もう少し具体的に言うと、母ディサの「祀り上げ」のため、父ヴェラルドの祀り上げ以来、実に15年半ぶりで故郷の〈管4ファストラウム〉をまた「ミッド経由で」訪れたのですが、まだ少し時期が早かったため、〈マリアージュ事件〉などには全く出くわさずに済みました。
 思えば、いつの間にか、母親(享年、46歳)よりも、自分の方が年上になってしまっています。リンディにとっては、これも何と言うか、大変に感慨深いものがありました。
そして、祀り上げの儀式の後、リンディは「墓標と遺骨の撤去」を墓地の管理人に任せて、またミッド経由で地球に戻りました。
『これで、私がファストラウムを訪れる機会は、もう無いのかも……』
 リンディはふとそんなことを思いましたが、実際には新暦94年の11月に、彼女はもう一度だけ故郷の土を踏むことになります。


 さて、〈マリアージュ事件〉の頃、(ミッドでは、新暦78年の6月から7月にかけて)なのはやフェイトやはやてたちは、皆それぞれに別の世界へ行っており、長らくミッドからも〈本局〉からも遠く離れていました。
(ただし、ユーノだけは上記のとおり、ただ単に〈本局〉内で入院中でした。)
 その時期の各人の動向は、以下のとおりです。
【当初の想定よりも文章がだいぶ長くなってしまったので、二つの節に分けました。はやての動向については、また次の節でやります。】


 まず、クロノ提督(27歳)は、ついに犯罪組織〈永遠の夜明け〉の本部所在地を突き止め、6月の末日には、艦隊を率いてこれを強襲しました。
 場所は〈管13マグゼレナ〉第一大陸の北方に拡がる山岳地帯。ごく平凡な岩山の内部が大きく()()かれて、巨大な「地下基地」が築かれていたのです。
 クロノ提督は過剰戦力の投入でその地下基地を一気に制圧すると、一介(いっかい)の執務官だった頃のように、みずから先陣を切って基地の最奥部へと向かい、単身で組織の首領ドラクレオス(74歳)と対峙(たいじ)しました。
 場所は、組織内では「謁見(えっけん)()」と呼ばれている大広間です。
 しかし、ドラクレオスはその「若造(わかぞう)」に対して一方的に説教(?)を垂れ流した後、同席していた自分の妻子をも巻き込んで自爆してしまいました。

 工作班によるシステムへの介入がギリギリで間に合い、基地全体の自爆は何とか()い止めることができましたが、「謁見の間」は半ば崩落してしまい、首領とその妻子は、やはり助かりませんでした。
 遺体を調べてみると、首領の妻クラウゼスカ(70歳。通称、クラウザ)は夫と似たような年齢に見えましたが、その1男1女は、どう見てもまだ二十代の若者です。
 その後、押収された資料から判明したのですが、その男女はやはり〈プロジェクトF〉によって造られた「二人の本当の子供たち」のクローンでした。
 また、もう二十年以上も前から半身不随となっていた首領ドラクレオスはただの「顔」で、それ以来、組織運営の実権は「黒耀(こくよう)のクラウザ」の手に渡っていたようです。

 何はともあれ、クロノの部下たちは、自爆し(そこ)ねた「組織の幹部たち」全員を拘束しました。
 その中に、クラウザの妹ヴァルブロエム・レニプライナ(61歳。通称、レニィ)の姿があったのは、まったく「予想外の幸運」だったと言うべきでしょう。
【なお、マグゼレナ人の名前は、苗字、個人名の順なので、「ヴァルブロエム」の方が苗字です。主要な管理世界の中では、他にも、モザヴァディーメ人とデヴォルザム人とゲルドラング人がこの順となります。】

 その直後、クロノはレニィの口から直接に、〈プロジェクトF〉に(たずさ)わった「他の二人」についての証言を得ることができました。
 そのうちの一人は、もちろん、プレシアなのですが、実のところ、もう一人の、ギンガとスバルを造った人物については、今まで何ひとつ解ってはいなかったのです。
「カウラ・ゼレミードは、背後関係の無い『フリーの技術者』だったわ。あれからすぐに別の研究施設へ移されたと、私は聞いたけど……アレは『人間(ひと)としての、当たり前の倫理観』が全く身についていないタイプの、イカレた女よ」
 レニィは、自分のことは棚に上げて、嫌悪感も(あら)わにそう吐き捨てました。すでに観念したのか、彼女は他にも貴重な情報を幾つかクロノたちに漏らしてくれます。

「プロジェクトFも『個々の工程の具体的な意味』となると、私にもすべては把握できてないわ。すべてを正しく理解していたのは、多分、プレシア・テスタロッサとドクター・スカリエッティの二人だけよ。……私もそれなりに優秀な人間のつもりでいたけれど、あの二人は、私やカウラなんかとは根本的にレベルが違う……。
 まったく、プレシアはあれで『本来の専門分野は遺伝子工学じゃなかった』と言うんだから……『私なんて、本当に大した存在じゃなかったんだ』と思い知らされたわ。それに、あのドクターは元々『人間』では無いと言う話だから、プレシアはきっと『人間としては』管理局史上で二番目の大天才なんでしょうね」
「二番目? それでは、一番目は誰なんだ?」
「それは、もちろん、〈グランド・マスター〉よ! 決まってるじゃないの!」
 レニィは、親が子供に「当たり前のこと」を言って聞かせる時のような口調で、クロノにそう言い放ちました。
 しかし、その名前を聞いてもなお、クロノたちの表情からは疑問符が消えません。それを見て、レニィもまた驚愕の表情を浮かべます。
「ホントに知らないの? あの〈アルカンシェル〉を造った人物なのに!」
 そこへ、別動隊から緊急の報告が来て、クロノは一旦、その場を離れてしまったのですが、(あと)にして思えば、それが「一生の不覚」でした。
 その時点で、レニィは『すでに喋りすぎた』と激しく後悔していたのです。


 工作班が地底基地全体の自爆指令を間一髪で無効化した結果、別動隊はその基地の情報管制室で組織の秘密データを幾つも無事に押収(おうしゅう)していました。
 その中には、〈プロジェクトF〉の「具体的な工程」に関する情報も、「おおよそのところ」が含まれています。(←重要)

 ただし、クロノが呼ばれたのは、全く別の件でした。〈永遠の夜明け〉全体の組織図が、とても解りやすい形で出て来たのです。
 この組織には、ここマグゼレナの「本部」以外にも、他の六つの世界に一つずつ、合わせて六つの「支部」がありました。
 ただし、新暦70年には、〈管14シガルディス〉で管理局の地上部隊が『莫大な犠牲を出しながらも、そうした支部のひとつをようやく殲滅した』という話なので、残る支部はあと五つということになります。
 組織図によると、どうやら、それらの支部は〈管12フェディキア〉と〈管19ゲルドラング〉と〈管20ザウクァロス〉と〈管23ルヴェラ〉と〈外31バゼレニケ〉にそれぞれ一個ずつあるようですが……これにマグゼレナとシガルディスを加えた七つの世界は、まるでパルドネアを取り囲むように、その周囲に位置していました。しかも、それら七つの世界はいずれも、パルドネアとは一本の次元航路で直接に結ばれています。
 また、別のデータによると、どうやら、『この組織も昔はパルドネアに本部を置き、周囲の七つの世界に支部を置いていたが、統合戦争の時代の末期にパルドネア本部を丸ごと潰されてしまったため、生き残った幹部らの中では最有力者だった「ドラクレオスの祖先」が新たな首領となり、自分たちのマグゼレナ支部を新たな本部にした』という歴史的な経緯(いきさつ)があったようです。

 なお、組織全体が弱体化すると同時に、本部が西方へ移転した結果として、組織の勢力圏の東端に位置していたシガルディス支部にまでは「本部の統制力」が届きにくくなってしまい、他の支部には無い「特別のテコ入れ」が必要となったのでしょう。
 別のデータから、『ドラクレオスは、新暦33年に父親ラスカブロスから29歳で「首領」の地位を継承すると、すぐに自分の片腕で相婿(あいむこ)でもあった「パディリム・ロゲルモス」をシガルディス支部へと送り込み、その支部の新たな支部長に任命した』ということが解りました。
相婿(あいむこ)とは、相嫁(あいよめ)の男性版。つまり、「妻同士が実の姉妹であるような、男性同士の関係」を指す親族用語です。)
 さらに、『レニプライナは、裏の世界では有名な「ヴァルブロエム三姉妹」の末の妹だった』ということも解りました。
 つまり、『ロゲルモスと結婚したのは(消去法で考えて)クラウゼスカの上の妹(レニプライナの下の姉)だった』ということです。

【さらに後の調査で、その三姉妹の次女「ゲイラヴァルデ」は、新暦29年に〈管6パルドネア〉の首都アロムディを恐怖のドン底に陥れた連続猟奇殺人犯「血浴(けつよく)のゲイラ」(当時、16歳)と同一人物であることが判明しました。】

 また、ドラクレオスとクラウゼスカの間には、もう一人、マブザウロスという末子がいました。普通に生きていれば今年で42歳のはずですが、どうやら、彼は「ロゲルモスの長女アモルデ」と従兄妹(いとこ)同士で結婚し、あちらへ婿入りしたようです。
 確かなことは解りませんが、おそらくは、その二人も新暦70年の「シガルディス支部殲滅戦」で死亡したのでしょう。

 しかし、その頃、クロノたちがその場を離れている隙に、レニィは隠し持っていた毒薬で自決していました。
(あとは頼んだわよ、私の可愛いアモルデ……。)

 以上が、マグゼレナ第一大陸における「6月末日」の事件の概要です。
【この件に関しては、また「インタルード 第2章」で詳しくやります。】

【なお、クロノ提督はその後、まだ正確な所在地がよく解らない他の五つの支部についても捜査を進めました。
 そして、六年後(新暦84年)には、「管理外世界にある支部」を除いた他の四つの支部をすべて殲滅することに成功したのですが……実は、新暦70年に、シガルディス支部はただ闇に(ひそ)んだだけで、まだ決して滅び去ってはいなかったのでした。】


 次に、高町なのは一等空尉(22歳)は、他の世界における「航空戦技教導隊」を拡充するため、「教導官の指導員」として、幾つかの世界を巡回していました。
 今回は、まず5月には、〈管5ゼナドリィ〉の首都圏へ。次に6月には、〈管12フェディキア〉の首都圏へ。翌7月には、〈管8フォルス〉の第二首都圏へ。各々、一か月ちかく滞在します。
 そういう訳で、なのはは6月にも、父・士郎の「50歳の誕生日」のお祝いには出席できませんでしたが、リンディが通信用の設備を高町家の側に持ち込んでくれたので、美由希の夫・ロベールがまだ喫茶碧屋の方にいる間に、管理局の宿泊施設の部屋からリアルタイムで顔を見せ、父・士郎にお祝いの言葉を贈ることができました。
 以下は、その後の雑談です。

 美琴(0歳9か月)「あー、あー」(空間モニターに投影された映像に興奮気味。)
 なのは(22歳)「はーい。ミコトちゃーん。おぼえてるかなー? なのはおばちゃんですよー。(笑)」
【なのはは、昨年の末には長期休暇を取って地球の実家に滞在し、母親のお店の手伝いや姉の育児の手伝いなどを精力的にこなしていました。この件に関しては、前章の「第8節」の末尾を御参照ください。】

 美由希(30歳)「何言ってるのよ、なのは。0歳児が半年も前のことなんて覚えてる訳ないじゃないの。(笑)」
 士郎(50歳)「いやあ、それにしても、孫がいる生活ってのは、幸せなモノだなあ」
 桃子(46歳)「三十代で一度は死にかけた人だものね。正直に言うと、あの当時は、こんなにも長生きしてもらえるとは思っていなかったわ」
 士郎「当時は、医者からも『もう常人(ひと)並みの天寿が得られるとは思わないでほしい』とか言われたけどな。おかげさまで、まだ十年や二十年は何とか生きられそうだよ」
【二人は、孫バカで、今もラブラブです。(笑)】


 そして、フェイト執務官(22歳)は、4月の末から某事件の捜査を継続中でした。
 5月の末に、事件は〈管6パルドネア〉から〈管7モザヴァディーメ〉へと舞台を移して新たな展開を迎え、現地の「連邦首都パミカローデ」出身の執務官、カデロゼーパ・ヴィラーガ・ルキーテとの合同捜査となります。

【モザヴァディーメ人の名前は、氏族名、家族名、個人名の順です。カデロゼーパ氏族は元々武門の一族で、中でもヴィラーガ家は「諸侯」の家系でした。もちろん、現代では身分制は廃止されていますが、ヴィラーガ家が今も相当な名家であることに変わりはありません。】

 ルキーテは、フェイトと同い年ですが、執務官としてはまだ二年目の新人。つまり、ティアナと同期でした。
(彼女は「個人転送資質」の持ち主なので、モザヴァディーメからパルドネアやフォルスへは独力で即時移動をすることができます。)
 時間はかかりましたが、7月には、その事件も円満に解決されました。この事件は、後に現地名で〈ニジェムーガ事件〉と呼ばれることになります。

 そして、事件が無事に終了した後、フェイトは「同い年の先輩」として、また「友人」として、ルキーテから二人きりで個人的な相談を受けました。
 ひとつは、『仕事と家庭生活は両立するのだろうか』という、よくある話です。
 さらに、『補佐官のヴァニグーロは、乳兄弟でハトコだけど、実は恋人でもある。しかし、局でも……必ずしも明文で禁止されている訳ではないのだが……「配偶者を直接の部下に持つこと」はあまり歓迎されていない。もうひとつには、それで悩んでいる』とのことでした。

 フェイト(そう言えば、クロノ兄さんも、エイミィと結婚したのは、艦長になって執務官を事実上、廃業してからだったし、エイミィも産休明けには〈アースラ〉を離れて、〈本局〉に異動している。やっぱり、夫婦で同じ職場にいると、公私混同とかが起きやすくて良くないのかしら。)
 ルキーテ「それから……私は変な風習だと思うんですけど……ここモザヴァディーメでは昔から『乳兄弟との結婚』は『実の兄弟との結婚』に(じゅん)ずるほどの『重大なタブー』だと考えられているんです。もちろん、現代の法律では、禁止されてはいないんですけど」
 フェイト「ああ。昔ながらの『(ちち)()に準ずる』という考え方ね」

 実際、母乳は乳腺組織で血液を原材料として造られているのですから、『乳は血に準ずる存在である』という考え方は、ある意味では間違っていません。
 だからこそ、古代ベルカでは、「乳母(うば)の身分」も相当に高いものでしたし、「乳兄弟との結婚」も、やはり重大なタブーとされていたのです。(←重要)
 しかし、今時(いまどき)そんな理由で「結婚の自由」を制限するのは、決して合理的な判断とは言えないでしょう。
 フェイトは、『個人的に二人を応援する』とルキーテに約束しました。

【そして、三年後(新暦81年)に、二人は周囲の反対を押し切って結婚し、遠く故郷を離れて、フォルスの「第二首都ガスプシャルス」の近郊に新居を構えました。
 しかし、新暦83年の10月末、ルキーテはその新居で妊娠し、産休を取っている最中に、夫ヴァニグーロとともに消息を絶ち、そのまま行方不明になってしまったのです。】


 また、この時期、シグナム一等空尉とヴィータ二等空尉は〈無3バラガンドス〉で、他の尉官たちとともに「長期間の隊長研修」を受けていました。
(これ以降、二人は正式に「空士の」小隊を指揮することができるようになります。)
 なお、アギトは、シグナムの研修には「付き添い」が認められていなかったため、しばらく家で大人(おとな)しく留守番をしていましたが、あまりにも暇すぎたので、6月の末には管理局の許可を得て、独りルーテシアの許を訪れました。

【物語としての内容は「SSX」と同じですが、この作品では、『ルーテシアは、この時点ですでに、カルナージに転居していた』という設定で行きます。
(実際のところ、ミッドから見ると、マウクランまでは相当な距離がありますが、カルナージまでならば、さほどの距離ではありません。)】


 
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