イベリス
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第百二十五話 品選びその五
「そんなに勉強になるんだな」
「大学はかなりの学部があって設備も充実してるみたいです」
「神戸の方のか」
「高等部もかなり大きくて」
「あれだろ、学科もクラスも多いんだよな」
「相当なマンモス校なんですよ、敷地内に動物園や植物園もあって」
「水族館とか博物館もあるんだよな」
マスターもこう返した。
「美術館や劇場も」
「そんな学校他にないですよね」
「殆ど街だからな」
「そこまで大きいですよね」
「俺は行ったことないけれどな」
それでもとだ、マスターは言うのだった。
「噂は聞いてるよ」
「兎に角凄い学校ですね」
「相当大きくてな」
「ずっと東京にいたくて」
咲はやや微妙な顔になって話した。
「大学の方も」
「東京の大学かい?」
「そちらにと思ってましたけれど」
それがというのだ。
「お父さんもお母さんも卒業してますし」
「八条大学にかい」
「行こうかなとも考えています」
「いいんじゃないかい?」
マスターは咲に微笑んで答えた。
「時には東京を離れるのもな」
「いいんですね」
「ここは確かに凄い街さ」
東京はというのだ。
「けれど東京だけが世界じゃないしな」
「大学もですね」
「他のところの大学に行ってもな」
そうしてもというのだ。
「悪いことはないだろうな」
「いい勉強も出来ますか」
「ああ、神戸もいい街だよ」
八条大学があるこの街もというのだ。
「関西に旅行に行った時に神戸にも行ったけれどな」
「いい街なんですね」
「大阪や京都もいいけれどな」
「神戸もいい街で」
「あそこの大学に行くなら損はないさ」
「そうなんですね」
「それで本当に大学時代でも他の街もっと言えば他の国のところに行ってもな」
マスターは日本以外の国の話もした。
「いいと思うぜ」
「他の国ですか」
「流石にオックスフォードとかソルボンヌとか言わないけれどな」
「どっちも世界最高峰の大学ですね」
「だから言わないけれどな」
それでもというのだ。
「東京から離れるのもな」
「いいんですね」
「ああ、東京にずっといてもな」
「よくないですか」
「悪くないけれど他の街に行ったり一時でも住んでもな」
そうしてもというのだ。
「いい経験になるんだよ」
「そうですか」
「嬢ちゃん東京のあちこち巡ってるよな」
「従姉のお姉ちゃんと一緒に」
「それもいいけれどな」
それでもというのだ。
「他の街もだよ」
「行ってもですか」
「それで住んでもだよ」
「大学に通っても」
「いいさ」
「そうですか、それなら」
咲はマスターの話を聞いて決心した顔になった、そのうえでマスターに対してあらためて言ったのだった。
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