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イベリス

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第百二十四話 相手の好みその十二

「幸せよ」
「それはあるわね」
「日本で生まれなくても」
 そうでなくともというのだ。
「ああした国に生まれないなら」
「それだけで幸せね」
「地上の楽園って言ってるけれど」 
 北朝鮮の自国への宣伝文句の一つだ、誰が豊かで心配もなく暮らせる国だと喧伝しているのである。
「誰も信じないわね」
「地獄でしょ」 
 それだとだ、咲も言った。
「あそこは」
「そう思わないならおかしいでしょ」
「そうよね」
 咲もそれはと返した。
「どう見ても」
「地上の楽園なのは将軍様だけでね」
「他の人は食べものも自由もない」
「娯楽だってないわよ」
「アニメもゲームも漫画もラノベも」
 咲は自分の趣味の話もした。
「日本みたいにはね」
「ある筈ないでしょ」
「変なプロパガンダだけよね」
「そんな国が楽園なんてね」
「絶対に違うわね」
「あの国に生まれなくてよかったって」
 母は心から言った。
「何度思ったか」
「あの国について聞くと」
「軍隊にばかりお金使うしね」
「何か自衛隊よりも凄いわね」
 金の向ける先がとだ、咲は言った。
「昔の日本軍よりも」
「日本軍なんか比べものにならないでしょ」
「あそこの軍隊と比べたら」
「もうね」
 それこそというのだ。
「先軍政治って言ってる位でしょ」
「まず軍隊があるのね」
「予算も人もかなり割いてるのよ」
 あの国の国家予算の四分の一、そして一説によると国民の二十人に一人が軍人であるのだ。当然こんな軍隊は他の国にはそうはない。
「日本軍と比べてね」
「全く違うわね」
「あっちの方が遥かにね」
 こう言っていいまでにというのだ。
「日本軍よりもよ」
「それで自衛隊よりも」
「大きくてしかも将軍様の軍隊だから」
「比べものにならないわね」
「軍隊と将軍様の贅沢にばかりお金をかけて」 
 北朝鮮という国はというのだ。 
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