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神々の塔

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第四十三話 新選組その十

「しかしな」
「それでもやね」
「刀で人を斬ったことはな」
「なかったんやね」
「そやったわ」
「そんな人やってんね」
「新選組とも渡りあえたやろ」
 龍馬の剣の腕ならというのだ。
「そやけどな」
「戦わんかったんやね」
「ああ、ただ物凄い不用心で」
 傍目から見てもだ。
「それで伊東さんに注意されたみたいやな」
「新選組に気を付けろって」
「新選組の人からな」
 その様にというのだ。
「今の話みたいに」
「そやねんね」
「ほんま新選組が一部の人にしてもな」
「あの人狙ってたんは事実やったんやね」
「そういう根拠があって」
 それでというのだ。
「伊東さんも忠告したし」
「岩草さんも新選組がやったって言うたんやね」
「そやった」
 これがというのだ。
「ほんまな」
「思われるには根拠がある」
「そういうことや」
 こうした話をしながらだった。
 一行は階を進んでいき神霊達の前に来た、すると四角い顔立ちの細い目の男が強い声で言ってきた。
「よくぞ来た、ではこれよりだ」
「勝負ですね」
「うむ、我が名は近藤勇」
 綾乃に自ら名乗った。
「覚えておくがいい」
「貴方が近藤さんですか」
「覚えておくがいいと言ったが知っているな」
「はい、よく」
「そうだな、尚この勝負我等は一柱ずつ来るのでだ」
 近藤は戦の仕方の話もした。
「闇討ち等はだ」
「されへんですか」
「必要ならば行うが」
 それでもというのだ。
「この度の様な時はな」
「正々堂々とですか」
「士道に従いな」
 そのうえでというのだ。
「戦う」
「そうですか」
「はっはっは、そうする故安心せよ」
 色白の大男が笑って言ってきた、その手には鉄扇がある。
「存分に戦おうぞ」
「そう言う貴方は」
「芹沢鴨」
 彼もまた自ら名乗った。
「近藤君と共に新選組の局長を務めている」
「そうですね」
「まあ最初は浪士隊といったが」
 芹沢はこのことも話した。
「神霊の中ではな」
「新選組ですか」
「そうなっておる、あとそっちの世界ではわし等は殺し合ったが」
「ここではそうしたことはない」
 今度は面長で整い知的な雰囲気の青年が言って来た。
「安心するのだ」
「伊東さんでしょうか」
「左様、伊東甲子太郎」 
 綾乃の問いに自ら名乗った。
「宜しくな」
「こちらこそ」
「諸君等の起きた世界での我々はそうしただ」
「裏切り裏切られで」
「殺し合う中にあったが」
「こっちの世界ではですか」
「世界を司り守護する神霊としてだ」
 その中にあってというのだ。 
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