神々の塔

「このままやとどうなってたか」
「わからんかったやろ」
「それで薩摩藩それに新政府の邪魔になると思ったら」
「結構幕府にもつてあったしな」
　勝海舟を通じてだ。
「そんな人がおったらな」
「邪魔になる可能性がある」
「それでや」
　西郷がそう判断してというのだ。
「刺客送ったという可能性もな」
「ゼロやないか」
「ほんま当時は新選組がやったと言われてたけどな」
　切れ者であった岩倉もそうみなすまでにだ。
「実際はな」
「新選組やなかったか」
「ああ、それで実行犯とされるモンの流派からな」
「薩摩藩西郷さん黒幕説がやな」
「言われてるわ」
「何かイメージちゃうな」
　シェリルはここまで聞いて首を傾げさせた。
「西郷さんというたらな」
「物凄い器の人やね」
　綾乃が応えた。
「当時一番と言ってええ位の」
「そやな」
「ほんまに総大将に相応しい人で」
「暗殺なんかはせん感じやけど」
「そうした一面もあるんやね」
「そうみたいたな」
「李君がよお言うてるけど」
　綾乃は韓国出身の星の者である彼のことを話した。
「龍馬さん恰好ええって」
「言うてるな、確かに」
「それで正岡君ともよおあの人のこと話してるけど」
　同じ地の星でしかも龍馬の故郷高知生まれてかつ龍馬に憧れている彼とである。事実正岡は龍馬を尊敬していると公言している。
「別に西郷さんも嫌いやないし」
「あの子嫌いな日本人おらんやろ」
「あっ、川上哲治さん嫌いやって言うてるわ」
「巨人の監督やった」
「あんなんなったらあかんって」
　兎角色々評判の悪い人物である、自分の監督の地位を脅かしそうな人物を片っ端から巨人から排除しただけではないのだ。
「そう言ってるけど」
「あんな人は嫌って当然やろ」
「それもそやね」
　綾乃もそれは納得した。
「八条学園って巨人ファンの人ほぼおらんし」
「二十一年連続勝率一割台ダントツ最下位不祥事のオンパレードのチームやからな」
「その昔の栄光の象徴なんて」　
　それこそというのだ。
「誰も好きやないね」
「そやな、それでその李君がかいな」
「龍馬さん好きやけど」
「若し西郷さんが黒幕やと」
「どう思うやろな」
「そこが気になるな」
「ほんまそやね」
　こうした話をしていた、そして。
　一行は今自分達がいる階を見回した、そこをそうして中里は言った。
「まさに当時の都やな」
「ああ、幕末のな」
　芥川が応えた。
「そうしたな」
「階やな」
「それで隙あれば」
　ここでだ、芥川は。
　物陰からいきなり槍を繰り出そうとしてきた新選組の服を着たゴブリンの男を右の掌から放った火球で倒してからこう言った。