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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
  【第10節】キャラ設定1: ニドルス・ラッカード。(後編)

 さて、「時空」という単語は本来、『時間と空間は互いに不可分の存在である』という事実を前提として、「その一塊(ひとかたまり)となった時間と空間の総体」を()して言う用語です。
 これは、人間の立場からすれば、『我々が所属している、この「時空連続体」全体のことだ』と言い換えても良いでしょう。
 それを考えると、〈時空管理局〉という名称はいかにも大袈裟(おおげさ)な代物ですが、もちろん、これは一種の「比喩(ひゆ)表現」です。
 例えば「天国」とか「地獄」とかいう単語も、本来は「霊的な次元に在る特定の領域」を指して言う用語のはずなのですが、日常的には、むしろ「物理次元に存在する特定の状況」を指して比喩的に用いられることの方が多くなっています。
(地球で言えば、「歩行者天国」や「借金地獄」の(たぐい)です。)
 それと同じように、〈時空管理局〉という時の「時空」も、実際には「人間が現実に行ける範囲内」としての「この〈次元世界〉全体」の意味でしかありませんでした。

 それでも、この次元世界には何百個もの「世界」が存在しているのですから、「わずか13個の世界」から成り立っているに過ぎない「地方組織」が、『次元世界全体を管理する』と主張し始めた時には、多くの世界がこれを「身のほど知らずの大言壮語」と(あざ)笑いました。
 実のところ、〈時空管理局〉が、発足直後のミッド旧暦465年(新暦で前75年)に「質量兵器の廃絶」と「ロストロギアの管理」を理念に(かか)げて〈統合戦争〉を始めた時には、遠方の諸世界は大半が『できるものなら、やってみるがいいさ』と、これを冷ややかな目で見ていたのです。
 そして、実際に、〈統合戦争〉も最初の十年ほどは「目に見えるような形」での進展は特に見られず、そのため、戦場にならなかった遠方の諸世界では『それ見たことか!』という論調が大勢を占めていました。

 しかし、そんな状況も、賢明なる「管理局の創設者たち」にとっては全く想定の範囲内でした。実を言えば、最初の十年ほどは、管理局の理念を周辺の諸世界にも周知徹底させるための、単なる「準備期間」でしかなかったのです。
 ミッド旧暦479年、幾つかの幸運にも助けられて、管理局がまず〈シガルディス〉を陥落させると、統合戦争の戦況は一気に傾き始めました。
 それからわずか4年後の旧暦483年には、〈デヴォルザム〉の「英明王」バムデガル九世が早くも管理局との停戦に合意し、さらに、旧暦495年には、何かとプライドの高い〈リベルタ〉までもがついに停戦に合意します。
 デヴォルザムやリベルタを支援していた、より遠方の(中央領域の外側に位置する)諸世界には、かつてないほどの衝撃が走りました。


 一方、聖王教会は以前から『ミッドチルダは聖王陛下に選ばれた世界である』との主張を続けており、組織としては「ミッド中央政府」や〈時空管理局〉から一定の距離を保ちながらも、事実上は「管理局による統治」を強く支持していました。
 理想論と言われようが、何と言われようが、「質量兵器の廃絶」や「ロストロギアの管理」は、聖王オリヴィエも強く望んでいたことだったからです。
 なお、ベルカ世界からの〈大脱出〉の時代に(ミッドの旧暦で言う272年から321年までの五十年間に)生き残ったベルカ人たちはバラバラに分かれて六十余の世界に移り住みました。そして、最初は「故郷を失って散り散りになったベルカ人たちのための相互扶助組織」として始まった聖王教会も、今では強固な宗教組織となり、それら六十余の世界に「一定の」勢力を築いていました。
 また、中央領域に属する五十個あまりの有人世界は、その八割以上が「それら六十余の世界」の(うち)に含まれており、そのため、聖王教会ミッド総本部の主張は〈中央領域〉の大半の有人世界で一定の支持を得ていました。
 つまり、それらの世界におけるベルカ系住民の大半が、「聖王陛下に選ばれた世界」を中心とする〈時空管理局〉との戦争を忌避(きひ)していたのです。

【なお、広い意味での「ベルカ文化圏」は次元世界の北半分をほぼ覆い尽くし、さらには南半分の側にも少し越境するような形で中央領域を丸ごと含んでいました。広さで言えば、次元世界全体の六割あまりを占めていた、と言って良いでしょう。
 つまり、次元世界全体では200個にも近い数の有人世界が、歴史的には「多かれ少なかれ」古代ベルカから直接に何らかの影響を受けていたのです。
 裏を返せば、次元世界の南方に位置する100個あまりの有人世界は、歴史上、ベルカ文化の影響を受けたことが一度も無く、その後も長らく、管理局の側から見れば「異質な文化圏」であり続けたのでした。】

 実のところ、リベルタでは「大脱出の終了」から百数十年を経て、「ベルカ系移民の子孫たちと聖王教会」はもう社会的に無視することができないほどの勢力となっていたのですが、リベルタが管理局の軍門に(くだ)ったのも、「ひとつには」彼等が一貫して反戦運動を続けていたからでした。
 また、「聖王オリヴィエの昇天」はミッド旧暦で260年の出来事だったので、聖王教会はミッド旧暦500年に「聖王昇天240年祭」を大々的に(もよお)し、〈時空管理局〉を公式に祝福します。
 これによって、『管理局は古代ベルカの正統な後継者である』との認識が広まって行き、最初のうちは管理局をバカにしていた遠方の諸世界も、次第にその考えを改めざるを得なくなっていったのでした。
(なお、この時期に、シガルディスとデヴォルザムとリベルタは(あい)()いで「新たな管理世界」として認定されました。)


 旧暦500年以降も、いわゆる「南方の四世界同盟」だけは『我々には質量兵器やロストロギアを保有し、必要に応じて使用する権利がある』と主張して、なおも管理局との〈統合戦争〉を続けていましたが、実のところ、『もはや劣勢を挽回(ばんかい)することは絶望的』という状況でした。
 それでも、『戦後の「自分たちの世界」の外交的な立場』というものを考えると、このまま一方的に負けてしまう訳にもいきません。
『多少なりとも反撃し、敵に一定の損害を与えてから停戦に持ち込んだ方が良いはずだ』
少なくとも「四世界の首脳陣」らはそう考えて、辛抱(しんぼう)強く反撃の機会を(うかが)い続けました。

 しかし、旧暦520年代になると、長らく中立を保ち続けて来た〈イラクリオン〉と〈ラシティ〉が(あい)()いで管理局システムへの参加を表明し、旧暦531年には実際に〈第17管理世界〉および〈第18管理世界〉と認定されました。
 そして、それを契機として、南方の四世界は『もはや、これまで』とばかりに、『勝てないまでも、せめて一矢(いっし)(むく)いよう』と、いささか無理のある「最終計画」を実行に移したのでした。
 ミッドの旧暦で言う536年、四世界の合同艦隊は、まずモザヴァディーメを強襲し、半数はそこからさらにフォルスへと進攻しました。
 結果としては、この進攻作戦は「期待されていたほどの戦果」を()げることができず、事実上の「失敗」に終わったのですが……。

 ちょうど同じ頃、マグゼレナでは、『首都ディオステラのほぼ全域が一夜にして炎に()まれ、何百万もの住民が一斉(いっせい)に焼き殺されて、都市インフラも崩壊する』という「完全に原因不明」の大事件が起きました。
 これが、いわゆる〈ディオステラの悲劇〉です。
 (かり)にも「戦時中」の出来事だったので、マグゼレナ政府も当然ながら、当初はこれを「四世界同盟の卑劣な奇襲攻撃」と受け止めたのですが、実際には、そんな証拠は全くありませんでした。いや、そもそも「その時期に、四世界同盟軍の艦船がマグゼレナにまで来た形跡」それ自体が無いのです。
 そこで、次には、マグゼレナ政府は『何らかのロストロギアを使った、工作員による自爆テロの(たぐい)だったのではないか』と主張しましたが、これもまた、根拠は特にありませんでした。

 さらに言えば、当時の四世界同盟の立場から考えると、もし本当にそんな「殺傷力の高いロストロギア」を持っていたのなら、もっと別の世界で使っていたはずなのです。
 実際、シガルディスの陥落後、ほぼ20年に(わた)って、同盟軍の工作員はミッドやヴァイゼンで断続的に爆破テロを繰り返しましたが、それらはいずれも、軍事施設に対する破壊活動であって、人的被害は最大でも百人未満の、いわゆる「中規模」のテロ行為でしかありませんでした。
 そして、マグゼレナは(少なくとも軍事的には)ミッドやヴァイゼンなどとは比較の対象にすらならないほどの小国です。貴重なロストロギアを、わざわざマグゼレナなどで消費するべき理由は何もありません。
 実際、停戦に向けた秘密会談の席でも、四世界の全権大使たちは口を揃えて、『その悲劇には、我々は一切関与していない。いくら戦勝国でも、このような事実無根の言いがかりは決して許されるものでは無い』と激しく反論して来ます。
 結局のところ、マグゼレナ政府も公式には『ディオステラの悲劇は、何者かが何らかのロストロギアを「間違って」暴走させてしまった事故である』と結論せざるを得ませんでした。

 こうして〈統合戦争〉が終結し、旧暦540年に「新暦の時代」が幕を開けると、ほんの何十年か前までは〈時空管理局〉をバカにしていた諸世界も、多くがこぞって「管理局システムへの参入」を希望するようになりました。
 そして、同じ頃に、BU式駆動炉の普及によって「大航海時代」が始まった訳ですが、それからカラバス連合との「三年戦争」を経て、その時代がおよそ四半世紀をもって終了した頃には、管理世界の数はすでに60個を超えていました。
 しかし、新暦20年代や30年代のうちは、管理局の次元航行部隊が保有する艦船の数もまだ決して充分なものではなかったため、中央領域の外側はまだ、御世辞にも『治安が良い』とは言えない状況でした。
 特に、次元世界の「南方の辺境領域」は、歴史的に「ベルカ文化」の影響を受けたことが一度も無い、管理局にとっては全くの「異質な文化圏」です。そこに分布する100個あまりの有人世界の大半は、中央領域の人々とは似ても似つかない宗教意識を持ち、その後も長らく、管理局システムへの参入を積極的に拒み続けました。
 ニドルス・ラッカードが、執務官を経て次元航行部隊の艦長となったのは、まさにそういう時代の出来事だったのです。


 新暦31年の11月、とある大きな事件を解決した後の「私的なお祝いの席」で、ニドルス執務官(21歳)は補佐官のジェルディスとともに、クレスト艦長(33歳)から改めて彼の妹マリッサ・ハラオウン(19歳)を紹介されました。
 場所は、かなり高級なレストランの個室です。
 少し酒が入ると、クレストは順々に次のようなことをニドルスに語りました。
 まず、自分は三年戦争の終結後、新暦22年に24歳で艦長になったこと。
 その直後に両親が事故で死亡し、自分と妹はこの世で二人きりの身内になってしまったのだが、妹のマリッサは当時まだ10歳で、生まれつき少しばかり体質(からだ)が虚弱だったこと。
 翌23年に慌ててルシアと結婚したのも、幾許(いくばく)かは妹の世話を頼むためであり、妻には今も本当に感謝していること。
 その後は、マリッサも人並み程度には元気になり、息子のクライドも今年で5歳になったので、あとは妹が結婚して幸福な家庭を築き、息子が無事に成長して一人前になってくれれば、自分にはもうそれ以上は何も望むことなど無い、ということ。

 ニドルスには『自分は今、遠回しに彼女との結婚を打診されているのだ』ということも解りましたし、さらには『それが、自分にとっては願っても無いほどの良縁なのだ』ということも理解できましたが、そうした理解にもかかわらず、彼の態度は今ひとつ()え切らないものでした。
 それでも、マリッサの側からは大変に気に入られたようで、その後は、休日の(たび)に、ニドルスはデートに誘われるようになります。
 しかし、年末年始に幾度かデートはしてみたものの、ニドルスはずっと『本当に俺だけがこんなにも幸せになってしまって良いのだろうか』という気持ちを(ぬぐ)い去ることができませんでした。
 ニドルスは今でも〈ハルヴェリオス〉やジェルディスを見る(たび)に、ふと「最初の友人」のことを思い出します。あの日の悲しみが、まるで昨日のことのように思い出されます。
 そして、わずか12歳で「約束されていたはずの人生」を唐突に断ち切られてしまったディオーナのことを思うと、ニドルスはどうしても、「自分の目の前に、思いがけず差し出された幸運」を素直に受け取ることができなかったのです。


 しかし、翌32年の1月中旬、ニドルスはまた久しぶりに「ディオーナの母親」から呼び出されました。管理局の「ミゼット提督」からではなく、あくまでも「ヴェローネおばさん」からの呼び出しです。
 ただし、彼女はすでにミッド地上には土地や家屋を所有していなかったので、場所は〈本局〉における「ミゼット提督のオフィス」となりました。
 ニドルスは全く約束どおりの時間にそこを(おとず)れ、提督の秘書に奥の()(とお)されると、まずは他人行儀な口調でミゼット・ヴェローネに丁重な挨拶(あいさつ)をします。
「長らく御無沙汰しておりました」
「いいのよ、ニドルス君。そんなにかしこまらないで。私も今日は休暇なんだし、第三者に聞かれたくない話をするのに、他に良い場所を思いつかなかったから、ここへ呼んだだけで」
 私服姿のミゼット・ヴェローネ・クローベル(53歳)はそう言って、「もしも娘が生きていたら自分の義理の息子になっていたかも知れない若者」を席に座らせました。
 自分は向かいの席に座り、手際よく二人に茶を出した秘書を『しばらくプライベートな話をするから』と言って、そのまま控えの()退()がらせます。

 そして、作法どおりに互いに少し茶を飲んでから、ミゼット・ヴェローネはこう言って話を始めました。
「二人きりで『仕事抜きの話』をするのは、もう随分と久しぶりね」
「そうですね。……もしかすると、本当にジェルディスを(いただ)いて以来のことでしょうか?」
「それなら……もう6年と3か月ぶりかしら?」
「はい。自分も執務官になって、もうすぐ満6年になりますから」
「じゃあ、もうそろそろ『新人』は卒業して『ベテラン』の仲間入りね。(ニッコリ)」
「いや。『ベテラン』はさすがに言い過ぎでしょう。実際には、まだようやく『中堅』になれたかどうか、といったところですよ」
 ニドルスがそう言って苦笑すると、ミゼット・ヴェローネも穏やかに笑ってうなずき、もう一口ゆっくりとお茶を飲んでから、ようやく本題を切り出します。
「実は……先日、実家の兄とも相談して来たんだけどね。やっぱり、ディオーナの身魂(みたま)は今月末の命日に、10回忌でもう『祀り上げ』にすることにしたわ」
(ええ……。どうして……。)

 普通に天寿を(まっと)うした者であれば、祀り上げは「30回忌」で行なうのが原則ですが、30歳未満で早死にした者の場合は「享年」で祀り上げにするのが「通常の」作法でした。
 だから、ニドルスも単純に、ディオーナの祀り上げは「12回忌」で行なわれるものだとばかり、まだ2年は先のことだとばかり思い込んでいたのです。
 しかし、30歳未満で早死にした者に限って言えば、『享年から5年単位で端数(はすう)を切り捨てる形で祀り上げを前倒しにする』というのも、実は古来、正式に認められている作法でした。
 ただ、ニドルスは個人的に、その方面の知識には(うと)かったのです。

 ニドルスの表情からそれを察すると、ミゼット・ヴェローネは早速、「端数(はすう)切り捨て」の作法を説明した上で、さらに、次のような「聖王教会の正統教義」についても語りました。
 要するに、『生者がいつまでも死者のことを(おも)い続けていると、それがかえって、死者の心に「現世への執着心」を()き立たせる結果になってしまうので、「祀り上げ」が済んだ死者のことは、みんなで早く忘れてあげた方が、むしろ死者の心の安寧(あんねい)につながるのだ』という教えです。
 随分と薄情な言い方のようにも聞こえますが、「死後の魂」や「輪廻転生」が本当に在るものと仮定した上で、「遺族の気持ち」よりも「死んだ本人の将来」を優先させつつ物事を論理的に突き詰めて行けば、確かにそういう結論に辿(たど)り着いてしまうのでしょう。
 ニドルスには、その結論の「真偽」などはこれっぽっちも解りませんでしたが、ただ間違いなく解ったのは、『ミゼット・ヴェローネ自身は、本気でそれを信じた上で、そう語っている』という事実でした。
【聖王教会の教義について、詳しくは「背景設定10」を御参照ください。】

「だから、私はもう、あの子のことでは()やまないことにしたの。もちろん、人間なんだから、機械のように記憶(メモリー)消去(デリート)できる訳ではないんだけど……あの子のためにも、これからはもう、時おり思い出しては悲しみをそっと抱きしめるだけにしておくわ。その方が、あの子のためになると信じるから」
 ミゼット・ヴェローネは毅然(きぜん)としてそう述べましたが、それでも、その口調はさすがに少し寂しげなものでした。
 ニドルスは、思わずやや前のめりになり、何かを言おうとして口を開きましたが、実際には何も言葉が出て来ません。
 一拍おいて、ニドルスは言葉を諦め、また口を閉ざし、姿勢を元に戻してしまいました。

 ニドルスのそんな煩悶と葛藤の所作を見た上で、それでも、ミゼット・ヴェローネはこう言葉を続けます。
「だからね。私はあなたにも……あの子のコトは、もう忘れてあげてほしいの」
「本当に……そうした方が、良いんでしょうか?」
 ニドルスは満面に悲しみを(たた)えていましたが、ミゼット・ヴェローネはそれ以上に、悲しみを深く静かに心の奥に刻み込んだような、すでに「覚悟」の決まった表情をしていました。
「ええ。その方がきっとあの子も『次の転生』に向けて前向きになれるだろうと思うわ。だから、あなたも、これからはもう『あなた自身の人生』を歩んで。
 さんざんデバイスや使い魔など渡しておいて今さらこんなことを言うのは、我ながら身勝手な話だとも思うけど……これからはもう、あなたが『あなた自身として』前向きに生きて幸せになってくれた方が、あの子もきっと『向こう側』で満足してくれるだろうと思うの」

 ニドルスは、元々あまり宗教的な人間ではありません。正直なところ、「死んだ本人の将来」とか、「次の転生」などといったコトは、今まで一度も真面目に考えたことがありませんでした。
 しかし、「実の母」であるミゼット・ヴェローネ自身が覚悟を決めてそう言っているからには、本来は「赤の他人」でしかない自分がここでディオーナに関して何かを言い立てるのは、ただの我儘(わがまま)でしかないのでしょう。
「解りました。今後は、(おっしゃ)るとおりにします」
 ニドルスは決然とそう(こた)え、またしばらく世間話などをしてから、ミゼット提督のオフィスを(あと)にしたのでした。


 その夜、ニドルスはジェルディスともその件で話し合いましたが、その使い魔はミゼット・ヴェローネの言葉を伝え聞くと、深くうなずき、自分の主人(あるじ)に向かってこう語りました。
「私も提督の言うとおりだと思います。……あなたの気持ちもよく解りますが、このままあなたが立ち止まり続けていたのでは、『私やハルヴェリオスは、あなたの心を過去に縛り付ける「呪いのアイテム」も同然だ』という話になってしまいます。
 私もハルヴェリオスも、そんな評価は望んでいません。それに……私自身は、もう彼女のことを何も(おぼ)えていないのですが……猫だった頃の私を育ててくれた少女も、きっとあなたの心を過去に縛り続けることなど望んではいないはずです。
 だから、お願いです。今はもう、過去(うしろ)ではなく、未来(まえ)を向いてください。『あなたとともに未来を(あゆ)んでいきたい』と望んでいる(ひと)が、今、現実にあなたを待っているのですから」

 ニドルスはその言葉を聞き入れ、自分自身もよく納得した上で、次のデートの際に自分の側から改めてマリッサに求婚(プロポーズ)しました。
 それは、マリッサにとっても、もうだいぶ前から待ち続けていた言葉です。彼女は喜んでそれを受け入れ、二人は早速、その年の3月に結婚しました。
 ニドルスにもマリッサにも、家族や友人がほとんどいなかったので、〈本局〉内部で行なわれた結婚式そのものはごく簡素なモノになりましたが、ミッド地上では、クレストが事前に「今も自分が妻子とともに暮らしているハラオウン家」からごく近い場所に「二人のための新居」を用意してくれていました。
 ニドルスとマリッサは遠慮なく、その新居で慎ましくも幸福な新婚生活を送ることとなります。
(なお、余談ではありますが、それと同じ頃、ミゼット・ヴェローネ・クローベルは中将に昇進しました。)

 また、同32年の初夏には、首都クラナガンで「遷都150年祭」が盛大に(もよお)されました。ミッド地上はどこも祝賀ムード一色で、マリッサにしてみれば、まるで自分たちの結婚を『世界が祝福してくれている』かのようです。
 その一方で、ニドルスは結婚の直後から、愛する妻のため、義兄となったクレスト艦長の支援を得て、全力で「艦長資格の取得に向けた努力」を始めていました。
 艦長資格の取得試験で最も難しいのは「指揮スキル」の問題なのですが、幸いにも、ニドルスはもう長らく、クレストが率いる戦闘艦の艦橋(ブリッジ)で彼の巧みな指揮ぶりを間近に見て来ています。
 そのおかげもあって、翌33年には、ニドルスはなかなか優秀な成績でその資格取得試験に合格し、新暦34年の春には24歳で早くも艦長の地位に就きました。
 そして、クレスト艦長は「妹と義弟の将来」に安心したのか、その年の秋には、ギャリス・ブラウドラム参謀総長が招集した「南方遠征部隊」にみずから志願したのでした。

 時空管理局における「次元航行部隊」の前身は各管理世界の海軍であり、一般に佐官以上の階級ともなると、単なる「年功序列」だけではなかなか昇進することができません。元々が軍組織であるからには、やはり、ある程度は「戦功」が必要なのです。
 しかし、カラバス連合との三年戦争が終結してから、すでに十年以上もの間、管理局は国家規模の「戦争」を全く経験していません。
 もちろん、平和であること自体はとても良いことなのですが、実のところ、三年戦争以降の時代は、多くの艦長たちにとって『いくら戦功を()げたくても、「犯罪組織を掃討する」か、「指定ロストロギアを確保する」ぐらいしか戦功など挙げようが無い』という、いささか困った時代でもありました。しかも、それらの手法は、どちらも「戦争をして戦功を挙げること」に比べれば随分と効率の悪い、地道な功績の挙げ方です。
 そのため、新暦34年の9月に、ギャリス・ブラウドラム参謀総長がゼブレニオ・バローグ総代らの了承の許に「遠征への参加」を(つの)ると、ほんのわずかな日数で、充分な数の艦長たちがその呼びかけに応じたのでした。


 さて、旧暦の時代の統合戦争によって〈中央領域〉が平定された後、管理局の勢力はその領域の外側へと、いわゆる〈辺境領域〉へと拡大して行きました。
 そして、北方および東方へは割と容易に拡大することができ、また、三年戦争が終結した後には西方にも順調に拡大して行った訳ですが……管理局の勢力は長らく、南方にだけは上手く拡大することができませんでした。宗教的な情熱に基づく抵抗が、予想以上に激しかったからです。
 もちろん、南方の諸世界も決して一枚岩では無く、幾つもの宗教が林立し、互いにいがみ合っていたのですが、それらの諸宗教は、少なくとも管理局の側から見れば、いずれも「邪教」と呼んで構わないほどの「異形(いぎょう)の宗教」でした。

『我々の神だけが「唯一にして絶対の神」であり、この宇宙全体の「造物主」であり、他の連中が崇めている対象など、みな「神の名を(かた)る悪魔」でしかない』と、何の根拠も無く一方的に決めつけ、『だから、異教徒はみな「悪魔崇拝者」であり、この世から抹殺されて当然の存在なのだ』と本気で主張するイカレた宗教もありました。
 また、『肉体は魂の牢獄(ろうごく)である』と考え、『だから、魂をその牢獄から解き放ってやることこそが正義なのだ。一方、新たな牢獄を作り、そこに新たな魂を閉じ込めることは、この上も無い罪悪である』と主張して、殺人を正当化し、不妊手術や去勢を強く()し進めるキチガイ宗教もありました。
 他にも、極端な血統主義に基づいて「一夫多妻や近親婚」を奨励するヘンタイ宗教や、「あからさまな男尊女卑」を正当化するダメダメな宗教や、生身の人間である開祖を「()(がみ)様」として(あが)めるカルト宗教など、「ベルカ系の穏健な宗教」とは決して(あい)()れることの無い異常な宗教ばかりです。

 管理局は、(こよみ)が新暦に切り替わった直後から、それらの諸世界にあらかじめ「秘密諜報員」を数多く潜入させており、『管理世界の一員になれば、そうした「伝統的宗教の恐怖や束縛」からは解放されるのだ』という話を(ひそ)かにそれらの世界の一般民衆の間に広めていました。いわゆる「プロパガンダ戦」です。
 その甲斐(かい)あって、新暦20年代のうちに「一連の政変や改宗を経て、管理世界の一員となった世界」も幾つかあったのですが、それらの世界に隣接した旧来どおりの諸世界は、実にしばしば、それらの管理世界を「裏切り者」と見做(みな)して、国交断絶や経済制裁などの手段に訴えました。
 そして、30年代に入り、それらの手段があまり(こう)(そう)していないと解ると、そうした諸世界の中には、ついに軍事的な強硬手段に訴える世界も現れます。
 しかし、それこそは、管理局の「思うツボ」でした。
 管理世界が管理外世界から軍事的に攻撃を受けているのであれば、その管理世界を助けるため、管理局もまた軍事的な手段に訴えることが「正当化」できるからです。

 こうして、新暦34年の末、『南方の管理世界からの救援要請に応じて』という名目で、相当数の艦隊が辺境領域の南方へと進攻しました。
 実のところ、「この進攻作戦の是非」については、管理局〈上層部〉の中でも意見が割れていたのですが、『進攻は、もう少しプロパガンダ戦を先に進めてからにするべきだ』という慎重論を、ギャリス・ブラウドラム参謀総長を始めとする強硬派が『数で押し切った』という形です。
【なお、「三脳髄」の関心は、あくまでも「北方のベルカ世界」に向けられており、彼等は当時、南方の情勢には何の関心も持っていなかったようです。】


 そして、そうした「名目上の目的」は、翌35年の春には早くも達成されました。
(やはり、艦隊同士が普通に正面からぶつかり合うような戦闘に限って言えば、この次元世界にはもはや管理局に(かな)う勢力など何処にも存在していないようです。)
 そこで素直に艦隊を引き上げておけば良かったのですが、管理局の遠征艦隊は調子に乗って、「より抜本的な解決」のために、現地では「神聖十字軍」などと呼ばれている「どの国家にも所属しない、カルト的な某宗教結社の私設軍」の追討を開始し、やがて予想外の反撃に()いました。
窮鼠(きゅうそ)、猫を()む』とは、(まさ)にこのことでしょう。
 同年の秋、管理局の遠征艦隊は「悪行の限りを尽くしながらも『神聖~』と自称する邪悪な武装集団」とその背後にある宗教結社とを、ついに殲滅しました。
 しかし、そうした一連の戦闘で管理局が支払わされた犠牲も、決して小さなものでは無かったのです。

 クレスト艦長(37歳)の艦も、同35年の6月には、狂信者どもの特攻を受けて爆散していました。クレストの殉職は、誰にとっても全く予想外の出来事です。
 ミッドでは、その凶報が届いた直後に、マリッサ・ハラオウン・ラッカード(23歳)は不意に体調を崩し、間もなく流産してしまいました。
 その後、ニドルスは、再び小児(こども)の頃のように病気がちになってしまった愛妻マリッサの健康にも気を配りながら、義理の姉に当たるルシア(32歳)とその一人息子クライド(9歳)のことも、間近に見守り続けるようになります。

 同年の10月には、遠征艦隊も順次、南方から帰って来ましたが、その艦船の総数は七割以下にまで減ってしまっていました。乗組員たちの表情もみな一様に暗く、とても「凱旋」などという雰囲気ではありません。
 大きな敵をひとつ(たお)しはしたものの、当初の想定と比較すれば『今回の南方遠征は、事実上の失敗だった』と言われても仕方が無いほどの状況です。
 ギャリス・ブラウドラム参謀総長(中将)を始めとする強硬派の将軍たちは、みな「引責辞任」に追い込まれました。
 そして、同年の末にはゼブレニオ・バローグ総代(上級大将)までもが早期の引退を表明し、「将軍の席」が幾つも同時に空席となってしまったため、翌36年の3月には、管理局の〈上層部〉で「かつてない規模の」大幅な刷新人事が実行されます。
 その人事によって、ミゼット・クローベル提督(57歳)は参謀総長に就任。レオーネ・フィルス提督(55歳)は新たに中将となった上で法務長官に就任。また、ラルゴ・キール大将(53歳)は上級大将となって管理局の第7代の「総代」に就任しました。
(ニドルスにとっては、ミゼット・ヴェローネがいよいよ「気軽には会うことのできない存在」になってしまった形です。)


 そして、新暦38年に〈管40グザンジェス〉の第三大陸で「ディファイラー事件」があった後、39年には、マリッサがようやく一女リゼルを出産しました。
 しかし、彼女は翌40年の3月、昨年にリゼルが生まれたちょうどその日に、28歳の若さで病死してしまいます。
 これ以降、何年かの間、使い魔のジェルディスは「リゼルの母親代わり」を務めたのでした。

【なお、41年には、テオドール(54歳)の父親と弟と甥が(あい)次いで病死したため、テオドールは急遽(きゅうきょ)、執務官を引退して、ダールグリュン家の「第11代当主」となりました。
 これによって、彼の長子ベルンハルト(32歳)は唐突に「次期当主」という立場に置かれてしまい、彼の妻リアンナ(31歳)もまた「夫とは家格の釣り合っていない妻」と見做(みな)されるようになってしまい、夫婦そろって随分と苦労をしたようです。
 もちろん、二人の長子ハロルド(7歳)もまた、突然の状況の変化に戸惑いながら「悩みの多い幼少期」を過ごして行くこととなります。】

 また、新暦42年には、ニドルス艦長は32歳で二等海佐に昇進し、大型艦を任されるようになりました。
 この頃から、次元航行部隊の艦船はまた充分な数となり、管理局は状況に応じて辺境領域にも「それなりの戦力」を自在に投入できるようになります。
 そのため、ニドルスもしばらくは職務で多忙な日々を送っていたのですが、翌43年の8月には、全く思いがけず、義理の姉ルシアが40歳で病死してしまいました。
 突然の訃報を受け、ニドルスも大急ぎでミッドに帰って来ましたが、葬儀そのものには間に合いませんでした。葬儀にも参列したジェルディスやリゼル(4歳)と合流し、急ぎ「先ほど建てられたばかりのルシアの墓」へと向かいます。
 その墓前で、ニドルス(33歳)は初めてリンディ(16歳)と出会いました。義理の甥クライド(17歳)から「士官学校の後輩」と紹介されるまでもなく、彼とは「特別な仲」なのだろうと見当がつきます。
 ニドルスはその場で、甥クライドに『この先、もし本当に困った状況(こと)になったら、他の誰かを頼る前に、まず俺を頼れ』と言って、それを約束させました。
 そして、リンディはその「約束」の言葉をずっと覚えていたのです。

 それから、五年後。新暦48年の春に、クライドは22歳の若さで艦長となり、すぐにリンディと結婚しました。もちろん、ニドルスも、リゼルやジェルディスとともに二人の結婚式に招待され、喜んで出席します。
 その直後に、ニドルスは見るからに幸福そうな二人の姿に安心して、また長期の巡回任務に就きました。
 夏になってミッドに戻って来てから、ニドルスは初めて『自分が出かけている間に、今度はリンディの側に「身内の不幸」があった』と知らされましたが、彼女は夫の愛に守られて、その悲しみを無事に乗り越えたようです。
【この(くだり)に関しては、また「キャラ設定2」で述べます。】

 また、新暦51年の初頭に、ニドルス(41歳)は次のような話を伝え聞きました。
 ヴェナドゥスの遺産を継承したゼレナ・ベルミードは、昨年の夏、ヴェナドゥスを享年のとおりに22回忌で祀り上げにした後、その年の秋には、彼女自身もまた「内縁の夫」とともに車の事故で死亡したのだそうです。
 ニドルス自身にとっては、それ自体はもう「どうでも良い話」でしかありませんでしたが、その年(51年)には、ミッド地上で一連のテロ事件が発生しました。
 クロノが生まれて間もない頃に、ハラオウン家の家屋も「彼等とは何の関係も無い爆破テロ」の巻き添えを(くら)って、物理的に炎上し、丸ごと消失してしまいます。
 一家三人は外出中で無事でしたが、クライドはこの一件の直後に「親から相続したその土地」を手放し、愛妻とともに「自分が艦長を務める艦の中で」一人息子を育てることにしたのでした。

 なお、同51年には、ミゼットの兄夫婦(76歳)とその養子リスター(50歳。実は、ミゼットの実子)もまた、リスターの妻や一人息子(未婚)とともに、爆破テロ事件の犠牲者となりました。しかも、リスターの娘たちはすでに二人とも他家に(とつ)いでいたため、形式的には、これによって「クローベル本家」は断絶となります。
 しかし、実質的には、ミゼットの弟(妻とともに死亡済み)の長子(45歳、リアンナの実兄)が分家筋として一族の財産や権益を継承しました。
 ミゼット(72歳)は、事前にそれらの相続権を放棄しており、その甥とも『ごく疎遠な間柄』となっていたので、彼女自身はもう『事実上、天涯孤独の身の上になった』と言っても過言では無い状況でした。

 そして、翌52年の3月、ミゼットたち三人は「引責辞任」も同然に現役を引退し、〈三元老〉となりました。
()しくも、同年の1月にミゼットの夫の「30回忌・祀り上げ」が終わった直後のことです。)
 同年の11月には、ニドルスの両親もまた30回忌で祀り上げとなりました。

 さらに、新暦54年の11月にクライドまでもが28歳で殉職した後、翌55年の1月に、ニドルス(45歳)はリンディ(28歳)から「あの日の約束」のとおりに頼られて、クライドの一子クロノ(4歳)を預かりました。
 そして、クロノが10歳で入局するまでの6年余、ニドルスはジェルディスやリゼル(16歳)とともに、この「亡き妻の孫甥(まごおい)」をガンガンと鍛え上げてゆくことになります。
【なお、翌56年には、かつてニドルスの艦で機関長を務めていたガルス・ディグドーラ(32歳)が三等海佐に昇進し、新たに某艦の艦長となりました。この人物は72年に48歳で、クロノ(21歳)と「同期の」提督となります。】


 さて、ニドルスは、個人的には「生涯、(いち)艦長」でいたかったのですが、クロノが10歳で無事に入局した後、翌62年の春には、とうとう断り切れなくなって、52歳で遅まきながら提督となりました。
(背景には、元老ミゼットからの強い推薦(すいせん)があったようです。)
 そして、翌63年の春には、娘のリゼルが24歳で艦長に、また、クロノはわずか12歳で執務官になりました。
 また、65年の6月には、ニドルスはリンディらとともに、義兄クレストを30回忌で祀り上げにしたのですが、その直前に、彼は元老ミゼットからも直接に「南方遠征」を頼まれていました。
【先に「第1章 第4節」で述べた「あの(ひと)」というのは、ミゼット・ヴェローネ・クローベルのことです。】

 ニドルスとしては、リンディの〈闇の書〉探しにも手を貸したかったのですが、彼の立場では、ミゼットからの依頼や〈上層部〉からの命令に逆らう訳にも行きません。
 ニドルスは、義兄クレストの祀り上げを終えると、すぐに艦隊を組んで〈辺境領域〉の南部へと向かいました。
 敵は、『考えようによっては、30年前の「神聖十字軍」よりもなお性質(たち)の悪い』邪悪な宗教結社〈邪竜の巫女〉です。

 そして、新暦68年の3月には、ニドルスは一旦ミッドに戻り、28歳で早死にした妻マリッサを28回忌で「祀り上げ」にしました。
 しかし、翌69年の10月下旬には、ニドルスは敵の「卑劣な罠」にハマって、御座艦(ござぶね)を撃沈され、多数の乗組員やジェルディスとともに殉職してしまいます。
 彼の享年は59歳でした。

 後に、リゼル艦長(30歳)は自分の夫と娘を捨ててまで、増援部隊に参加して父親のやり残した仕事を引き継ぎ、新暦74年の10月には、ついにその邪悪な宗教結社を殲滅して、その掃討作戦を完了します。
 こうして、彼女は翌75年の春に、その功績によって提督(一等海佐)に昇進し、新たに建造されたXV級の次元航行艦〈テルドロミア〉を御座艦(ござぶね)として(まか)されたのでした。

 
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