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イベリス

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第百二十二話 知れば知る程その十一

「最初は苦くてもな」
「お砂糖とかを入れるとですね」
「変わるってこともな」
 このこともというのだ。
「覚えておくことだよ」
「そうですね」
「何も入れないなら苦くても」
 そうしたものでもというのだ。
「工夫でな」
「甘くなりますね」
「そうさ、だから甘いコーヒーを飲みたいならな」
 そう思うならというのだ。
「お砂糖を入れたりしてな」
「工夫することですね」
「それで工夫したらな」
「甘くなって」
「そちらも楽しめるんだよ」
「そういうことですね」
「ただな」
 ここでだった、マスターは。
 面白そうに笑ってだ、咲にこうも言ったのだった。
「タレーランみたいな人間にはな」
「政治家としてですね」
「フーシェみたいにもな」
 もう一人の謀略家である彼の様にもというのだ。
「ならない方がな」
「いいですよね」
「能力は高くてもな」
 それでもというのだ。
「流石にな」
「洒落になっていないですね」
「政治の世界は色々あるって言ってもな」
 俗にそう言荒れてもというのだ。
「幾ら何でもな」
「その人達はですね」
「極端過ぎるからな」
「悪過ぎますね」
「ああ、極悪非道って言ってもな」
 最大限の否定の言葉であることは言うまでもない。
「まだ足りないからな」
「だからですね」
「あ、本当にな」
「その人達みたいにはですね」
「ならない方がいいさ、どちらも最後は信用されなかったしな」
「謀略ばかりだったから」
「忠誠心もなかったしな」
 ナポレオンに対するそれもだ。
「二人共な」
「なかったんですね」
「全くな、だから何度もな」
「裏切ったんですね」
「ナポレオンをな」
「よくあんな人裏切れましたね」
「そして何度裏切られてもな」
 マスターはナポレオンの立場になっても話した。
「二人共有能だったからな」
「使ってたんですか」
「ああ」
 そうだったというのだ。
「というか二人以上にな」
「有能な人がですか」
「いなくてな」
「それも凄いですね」
「だからな」 
 それ故にというのだ。 
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