マングローブ林がなくなり
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第一章
マングローブ林がなくなり
かつてマレーシアはイギリス領インドシナという名前でイギリスの植民地であった。
この頃イギリス人達は当然この国を支配していたが。
「マンブローブ林だが」
「ああ、厄介だな」
「あそこには悪い虫が多いからな」
「あそこからマラリアが出るしな」
厄介なこの病気がというのだ。
「困ったものだ」
「マラリアに感染すると困る」
「本当にな」
「だから何とかしたいが」
「それも難しいな」
「しかもだ」
マラリア等の感染症の原因となる虫が多く棲息しているだけでないというのだ。
「あそこは鬱蒼としているからな」
「海賊の隠れ家には最適だ」
「だから入江の方に海賊が集まる」
「それで奴等の隠れ家にする」
「そうした意味でも厄介だ」
「困った場所だ」
マングローブ林となっている入江の方を見て言うのだった。
彼等にとってマングローブは厄介者だった、それでだった。
出来るだけ近寄らない様にした、そうしているうちに時代は変わり。
第二次世界大戦が起こり日本軍が現地のイギリス軍を恐るべき勢いで一掃しそこに元からいた人達を独立させた。
そうして日本に友好的な政権をもうけると共にだった。
独立の気概を教えた、するとこの戦争で日本が負けてもだった。
「独立するぞ」
「もうイギリスに従うものか」
「俺達は俺達でやっていくんだ」
「俺達の国を造るんだ」
こう言ってだった。
戻って来たイギリス相手に戦いそして勝った、そのうえで独立したが。
独立してそれで終わりではない、さらにだった。
「産業を興すんだ」
「豊かな国になるんだ」
「そして力をつけるんだ」
「そうしたら二度と支配されないぞ」
「発展するんだ」
こう口々に言ってだった。
彼等は今度は国家の発展に力を注ぐ様になった、そして。
「マングローブ林の木も使うか」
「発展にはエネルギーが必要だしな」
「マングローブの木が薪や炭になる」
「それを使うんだ」
「そして生活を向上させるんだ」
「産業にも使うぞ」
こう言ってだった、彼等はマングローブ林に向かってだった。
そこにある木々を伐採し薪や炭にしていった、それだけでなく。
「ここは餌が多いしな」
「海老の餌が豊富だな」
「ならここで海老を養殖するか」
「それで外国に売るか」
「これも産業になるぞ」
「木を資源にして林の跡地を海老の養殖場にする」
「一石二鳥だな」
「全くだ」
マレーシアの人達はこう言ってだった。
今度は海老の養殖場を設けていった、それでその養殖場の建設に日本から技術者も呼ばれたのだが。
その中のスタッフであった日本の水産会社の社員である居蔵悠一丸い顔と細い目を持つやや太った身体の一七二センチ位の黒髪の彼は地質や水質調査の後で現場の責任者であるムアーウィア=ラシール褐色の肌に痩せた身体に黒目がちのきらきらした目を持つ一七〇位の背で痩せた身体に癖のある黒髪の彼に言った。
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