イベリス
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第百二十二話 知れば知る程その五
「乗り越えられます」
「そうですか」
「一人では無理でも」
「頼れる人がいてくれたら」
「必ずです、ただ一人よがりになれば」
速水はこれまで見て来た人達のことからも話した、そこには無念や悲しみといったものもあってそういったものも思い出してのことだ。
「その時はです」
「よくないですね」
「それで救われる時もです」
「救われないこともですね」
「ありますから」
「そうですか」
「折角です」
悲しい顔で言うのだった、ここでは。
「相談出来る人がいて」
「お話すればですね」
「助かっていたというのに」
「お話しないで」
「それで、です」
悲しい顔のままでの言葉だった。
「最悪の事態にです」
「自殺とかですね」
「はい、そんなことをしてしまった人もです」
「ご存知ですか」
「こうした仕事なので」
それ故にというのだ。
「お会いしてお話したこともです」
「ありますか」
「占い師はお話を聞くこともです」
このこともというのだ。
「お仕事なので」
「お話をですか」
「して欲しかったのですが」
「そうしなくて」
「私以外の人にもです」
頼れる人達にというのだ。
「お話をして下さい」
「わかりました」
「その時どうにもならないと悲嘆しても」
それでもとだ、速水は咲に話した。
「乗り越えられます」
「失恋も」
「悲嘆だけでなくです」
速水は咲にさらに話した。
「人は絶望、苦悶、憎悪、憤怒といった感情もです」
「乗り越えられますか」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「前に進めます」
「そうですか」
「ですから失恋しても」
「乗り越えることですね」
「一人で無理なら」
それならというのだ。
「今お話させてもらった通りです」
「そうですか」
「そしてです」
咲にさらに話した。
「落ち着いたらまた」
「また、ですね」
「新しい恋にです」
そちらにというのだ。
「生きることです」
「そうするといいんですね」
「はい、それでなのですが」
話が一段落したところでだった、速水は咲にあらためて言った。
「紅茶が飲みたいので」
「煎れますね」
「いえ、私が煎れさせてもらいます」
咲に微笑んで述べた。
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