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X ーthe another storyー

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第四十話 憧憬その十三

「桜塚護のことは」
「そう思われますか」
「うん、そしてね」
 そのうえでというのだ。
「君は僕達と一緒にいられるよ」
「皆さんと」
「そうなれるよ」
「僕はずっと一人でした」
 微笑んでいるがそこに少しばかりの寂寥を込めて話した。
「受け継いでから、そして」
「三人になって」
「また一人に戻り」
「今は僕達と一緒にいるね」
「温かく楽しいです」
 今自分がいる場所はというのだ。
「非常に。ですが」
「それでもだね」
「僕はそうします」
「僕達の中にはいないんだね」
「もう少しだけいさせてもらいたいですが」
「ずっとではないんだね」
「ええ。ただ牙暁君にもです」
 また目を開いている彼を見て話した。
「甘味屋さんに案内させてもらいまして」
「お汁粉化善哉をだね」
「ご馳走したかったです」
「他の皆と一緒に」
「これから紹介させてもらいますが」
「僕はずっと夢の中にいるから」
 だからだとだ、牙暁は星史郎のその申し出にこう返した。
「食べることはないから」
「いいのですか」
「うん、無理だからね」
 それはというのだ。
「いいよ」
「そうですか」
「気持ちだけ受け取らせてもらったよ」
「それで充分ですか」
「うん、しかし君は」
 また星史郎を見て話した。
「実は誰かを」
「ないですよ」
 目まで微笑んでの返事だった。
「ですから僕が誰かを好きになることは」
「ないんだね」
「人の痛みを感じることもです」
 このこともというのだ。
「ないですよ」
「そうした心だったね」
「ですから」
「君はやっぱり嘘吐きだね」
 このことをだ、牙暁は星史郎自身に告げた。
「何処までも」
「自覚していますよ」
「そして自覚してだね」
「嘘を言います、ですがその嘘も」
 それもというのだ。
「最後のそれを吐く時がです」
「来ているんだね」
「その相手は決まっています」
 既にというのだ。
「最早」
「彼だね」
「どうでしょうか、ですが」
「それでもなんだ」
「それも最後です」
 嘘を吐くこともというのだ。
「桜塚護もで」
「そのことは素直に申し上げます」
 桜塚護のことはというのだ。
「僕も」
「そしてそのうえで」
「嘘を吐くことも」
「終わりだね」
「嘘を吐くのも疲れますしね」
 こうも言うのだった。 
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