イベリス
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第百二十一話 毎日見たいのでその十
「そもそも自分はこうだった、昔はそうだったとかな」
「過去のことで」
「今の時代のことじゃないしな」
それにというのだ。
「昔が間違ってることだってな」
「ありますね」
「そうだよ、むしろ暴力がまかり通る様な状況こそな」
「おかしいですよね」
「昔がおかしかったんだよ」
そうなるというのだ。
「そういうのも時代が進めばわかるんだよ」
「暴力が間違っているってことも」
「今兎跳びしないだろ」
「だってあれ膝痛めますから」
足腰を鍛えるどころかとだ、咲も答えた。
「もう誰もしないです」
「昔はしてたんだよ、俺が子供の頃位になくなってな」
「膝を痛めるだけだってわかって」
「鉄拳制裁の教育だってな」
「人にトラウマとか植え付けるだけで」
「何の意味もないってな」
「むしろ逆効果ですね」
「トラウマ植え付けるんだからな」
暴力を受けた相手の心にだ。
「そうなるだけだからな」
「駄目だってですね」
「わかったからな」
だからだというのだ。
「時代が進んで」
「昔が間違っていたんですね」
「そうだよ、おかしいってわかったことに固執するなんてな」
そうしたことはというと。
「あからさまにな」
「馬鹿なことですね」
「そうだよ、馬鹿だよ」
マスターは忌々し気に言い切った。
「そうしたこと言う奴が本物のな」
「そうした人ですか」
「自分も殴られてたから我慢しろじゃないんだよ」
「殴った人がおかしかったんですね」
「ああ、だからDV旦那や彼氏からはな」
「逃げることですね」
「どうしようもない時はな」
逃げるしかない時はというのだ。
「もうな」
「そしてそこで逃げるなっていうのは」
「無責任で馬鹿だよ」
「そうですね」
「嬢ちゃんもそんな相手とはな」
まさにというのだ。
「出会ったらな」
「逃げることですか」
「我慢しろなんて言う奴は無視してな」
そうしてというのだ。
「いいよな」
「逃げることですね」
「大怪我したり死んで何になるんだ」
暴力を我慢してというのだ。
「一生の傷、女の子だと顔にな」
「傷を受けたら」
「どうするんだよ」
「そう思うと怖いですね」
「我慢しろとか言う奴はわかってないんだ」
そうしたことがというのだ。
「だからな」
「無視して」
「心ある人に相談してな」
「決めることですか」
「ああ、暴力に我慢なんてな」
これはというのだ。
「本当にな」
「言うことじゃないですね」
「痛みを知っていたらな」
殴られるそれをだ、これは拳のことだけでなく口の場合もある。言葉の暴力もまた実に凶悪なものであるのだ。
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