英雄伝説~西風の絶剣~
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第88話 銀の襲撃
side:リィン
コリン君が姿を消した翌日、俺達は再びコリン君を探そうとしていた。
「絶対になにか情報を得るわよ!」
「ああ、何が何でも情報を得ないとな」
やる気を見せるエステルに俺も同意する、まんまと保護すべき民間人を誘拐されたとあっては遊撃士の名に廃るし敵にいいようにされてしまったら猟兵としても恥だ。
勿論それを抜きにしてもコリン君は助け出さないといけない。とはいえ何があるか分からないし依頼もあるので全員では探せない、そこでメンバーを分けたのだが……
「アガットさんがこちらに来るのは意外でした」
「ティータを放ってはおけねえし人探しは慣れている、いいからさっさと探すぞ」
俺にエマ、ラウラにフィー、エステルに姉弟子、ティータにアガットさんがそのメンバーだ。他の仲間達も依頼のついでに聞き込みをしてくれる事になっている。
「なら二人組になって探しましょう、まずは町で聞き込みね」
「ああ、昨日は聞けなかった話も聞けるかもしれないからな」
俺達はそう言って別れて街の中を聞き込みする事になった。俺はエマと共に情報を探していると早速良い情報が聞けた。
「赤い髪の小さな男の子?それならさっき買い物をしたエーデル百貨店で見かけたわよ?」
「えっ本当ですか!?」
「ええ、あんな小さな男の子が一人でいて大丈夫なのかしらって思ったからよく覚えているわ」
「ありがとうございます、早速向かってみます!」
町に住む女性から有益な情報を貰った俺とエマは急いでエーデル百貨店に向かった。
「確かこの辺りで見かけたって言っていたよな?何処だ……」
「リィンさん、あそこに!」
エマが指を刺した方に別の入り口から出ようとするコリン君の姿だった。
「コリン君、待ってくれ!」
「おい、危ないだろう!こんなところで走るな!」
俺達は急いで合流しようとするが男性にぶつかりそうになってしまった。
「ごめんなさい!迷子を捜していて……」
「そうなのか?焦る気持ちは分かるが気を付けてくれよな」
「はい、本当にすみませんでした」
俺とエマは男性に頭を下げて外に出る。
「どこだ?」
辺りを見渡すがコリン君の姿は見えない。
「見失ったのか?」
「子供の足ならまだ遠くに入っていないはずです、辺りを探しましょう」
俺とエマは辺りを探す、エマの言う通り子供の足で直には遠くには行けないはず……!
「いた……!」
コリン君は別の区域に行こうとしているのを見つけた俺とエマは急いでその後を追う。だが……
「おかしい、なんで全力で追いかけているのに距離が縮まらないんだ!?」
俺はエマをお姫様抱っこしてまでして全力でコリン君を追いかけているが一向に距離が縮まらない。
「エマ、あれは本物のコリン君か?」
「はい、魔術で確認してみましたがおかしな点は見つかりません。恐らく本物かと……」
「じゃあ素であんなに早いって言うのか?子供の足の速さじゃないぞ!」
いつの間にか町を出てしまい街道を走る俺はふとあることに気が付いた。
「これ誘い込まれてるな……」
「えっ?」
「町から離れているし明らかに人気のない所に向かっている」
俺は距離の離れたコリン君を見ながらエマにそう話す。
「なら戻った方が……」
「あれが本物のコリン君なら逃げたりしたら結社に何をされるか分かったもんじゃない、それに結局振出しに戻るだけだ。なら罠だとしても突っ込むしかない」
「分かりました、私もリィンさんと一緒に行きます!昨日はお役に立てませんでしたけど今日こそは貴方の力になりたいんです」
「ああ、頼りにしてるぞ」
俺達は意を決してコリン君が入っていった森の奥に向かった。
「コリン君!」
コリン君に声をかけると彼はフラッと地面に倒れこんでしまう。
「リィンさん、コリン君の様子が変です!早く容体を見ないと!」
「ああ……っ!」
俺はなにか嫌な予感を感じ取り太刀を抜きエマを庇う、すると金属音と共に何者かが姿を現した。
「えっ?」
「この!」
惚けるエマを尻目に俺は太刀で防いだ大剣を持つフードの人物に投げナイフを投げる、しかしそれらはすべて回避されてしまった。
「完全に気配を隠していたはずだがよく不意打ちに気が付いたな」
「そうじゃなきゃとっくに死んでる世界で生きてきたからな」
俺はエマを庇うようにフードの人物と対峙する。
「お前も結社の一員か?」
「結社?違うな。私の名は『銀』、依頼によってお前の命を奪わせてもらう」
「銀だと!?カルバート共和国で伝説になってるあの暗殺者の!?」
俺は銀という名を聞いて驚いた。裏社会で生きていて銀の名を知らない奴はいない、それくらい有名な暗殺者なんだ。
「そんな奴が何で俺を狙う?誰に雇われた?」
「それを喋ると思うか?」
「なら喋らせてやる!」
俺は太刀を構えて技を放った。
「『孤影斬・乱』!!」
俺は四回太刀を振るい飛ぶ斬撃を連続で放つ、銀はそれを大剣による薙ぎ払いでかき消した。
「紅葉切り!」
俺は太刀を居合の構えにして奴の懐に入ろうとする。当然銀は俺から距離を取ろうとするが……
「はぁっ!」
「ッ!?」
俺は居合を放つふりをして持っていた太刀を銀に投げつけた、まさかの行動に奴は一瞬硬直したが見事な身のこなしで太刀を回避する。
「破甲拳!!」
俺は銀に接近して奴の胸に破甲拳を打ち込んだ。奴は咄嗟に右腕を差し込んで防御するが大きく後退して体勢を崩してしまう。
「今だ!」
俺は太刀を拾いあげて銀に斬りかかった。
「ぐっ!?」
だが足に鋭い痛みが走り俺は動きが止まる。
「死ね」
その隙を狙い懐から短剣を出した銀が俺の胴体に目掛けて突きを入れようとする。
「イセリアルキャリバー!」
だがエマの放った光の剣が銀に襲い掛かった。攻撃を中断した銀は身をひるがえして剣を回避する。
「済まないエマ、助かったよ」
「リィンさん、大丈夫ですか!?」
「ああ平気だ、コレが刺さっていたみたいだな」
俺は足に刺さっていた物体を抜いて確認する、それは棘のようなものだった。
「まきびしか、初めて見たぞ。俺達猟兵は足元の罠対策に靴に鉄板を仕込んでいるんだが……」
「軽い鉄板くらいなら貫ける特注の鉄で出来ている」
「なるほど、対策はバッチリか」
いつの間にか姿を消していた銀が丁寧に説明してくれた。
「リィンさん、魔法で姿を追ったのですが見つかりません……!」
「銀は伝説の存在だと言われている、そういったオカルトにも詳しいのかもしれないな」
エマは魔術で銀を見つけようとしたが駄目だったらしい、恐らく何かしらの対策がされているのだろう。
(まさか銀が出てくるとはな、一番良い方法はコリン君を連れて森から出る事だが隙が無い。それに万が一撤退されたら俺は奴の襲撃に常に怯えなければならなくなる、出来ればここで何とかしたいが……)
俺は残月の構えになり思考を巡らせる、まさかこんなタイミングで伝説の暗殺者である銀に狙われるとは思っていなかったからかなり焦っている。
「昨日といい今日といいなんでこうもヤバい奴に狙われるんだ?」
「おしゃべりとは余裕だな」
「っ!」
右斜めから殺気を感じた俺は残月でカウンターを取る、しかし……
「丸太!?まさか噂の『変わり身の術』か!?伝説の暗殺者は「ニンジャ」だったのか!?」
「ニンジャではない」
「うおっ!?」
俺が切ったのは丸太だった。変わり身の術を見た俺はつい興奮してしまった、なにせカルバート共和国で男の子に憧れられるニンジャをこの目で見られるとは思っていなかったからだ。
背後からクナイを投げつけられたが身をひねって回避する。
「くそっ!男の夢を壊しやがって!」
「リィンさん、ニンジャって一体……」
「話は後だ!エマ、伏せていろ!」
俺はエマをしゃがませて炎を纏った太刀を振るう。
「『火竜一閃』!!」
昨日新たに使えるようになった技で広範囲を斬り付けた、2本の木が横に斬られてゆっくりと倒れていく。
銀は咄嗟に回避したようだがフードの一部が切れていた。
「ぐっ、情報にない技をこうも出してくるとは……昨日までとは別人だな」
「はっ、そりゃリサーチ不足だな!」
銀は驚くが俺も驚いている、アリアンロードが開放してくれた潜在能力は俺を確かにパワーアップさせてくれた。
恐らく銀は俺の情報を調べていて使うクラフトも把握していたんだろうがまさか一日で新たなクラフトを編み出してくるとは想像もつかなかったんだろうな。
もし俺が銀でもそんな予想は付かない、銀が驚くのも無理はないな。
「螺旋撃!!」
俺は威力、範囲をさらに大きくした螺旋撃で追撃する、銀はフードを切られながらも巧みな身のこなしで被害を最小限に抑えた。
(くそっ、まともに当たらない!)
今はなんとか押せているが流石は伝説の暗殺者、決定打を当てられない。
「ふっ!」
すると銀は鉤爪を投げつけてきた、俺はそれを回避するがその陰にもう一つの鉤爪が隠されていて俺の太刀に絡みついた。
そして信じられない膂力で俺を自身に引き寄せる。
「『龍爪斬』!!」
そして大剣で薙ぎ払うように攻撃を仕掛けてきた、俺は鬼の力を解放してその場に踏みとどまり攻撃を回避する。だが腹を少し掠めてしまった。
「アステルフレア!!」
エマが青い炎を杖から出して銀に攻撃する、だが銀はそれをジャンプして回避してエマに何かを投げつけた。
「『爆雷符』」
「えっ……」
凄まじい速さで投げつけられたお札のようなものからエネルギーを感じた俺はエマの元に急いで向かい彼女を抱き上げて大きく飛んだ。
その瞬間お札から凄まじい爆発が生まれて俺達は吹き飛ばされてしまった。
「ぐっ、知らない暗器ばかりで厄介だな……」
「リィンさん、私を庇って……!」
「この程度猟兵なら日常茶飯事さ、それよりも奴から目を離すな」
右腕に怪我を負ったがこのくらいは問題ない、俺はエマを下ろして銀を警戒する。
「『麒麟功』」
銀の闘気が膨れ上がり戦闘力が大きく上昇した、鬼の力のように自身を強化するクラフトか!
「『鬼疾風』!!」
「『影縫い』!!」
俺と銀の姿が消えると辺りから太刀と大剣がぶつかり合う金属音と共に風が巻き起こった。俺の鬼疾風に付いてくるとは凄い速さだ!だが負けていられない!
「はあぁぁぁぁぁぁっ!」
「ふうぅぅぅっ……!」
お互いに気合を入れて武器を振るい相手の隙を伺う、この勝負は一瞬の隙を捕えた方が勝つ!
「早すぎて目では負えない……!?」
エマの目には何かの影が高速で動いているようにしか見えないだろう、俺はエマやコリン君を巻き込まないように注意しながら戦いを続けていく。
(……今だ!)
俺は相手の速さより少し速度をわざと遅らせて攻撃をずらす、そしてカウンターを放った。
「残月!」
「ぐうっ……!?」
俺の放った一撃は奴の大剣を吹き飛ばした。
「貰った!」
俺は時雨で銀の心臓を突こうとした。
「ぐあっ……!」
だが体に大きな痺れを感じてしまい足を止めてしまった。
「ようやく効いたか」
銀はそう言うと俺に接近して発勁を腹部に叩き込んできた。
「がはっ!」
俺は大きく吹き飛んで地面に横たわった。
「そうか、毒が塗られていたのか……!」
「この大剣には毒が塗ってある、即死はしないが体の自由を奪う毒だ。先ほど掠めた時にすでに勝負はついていたんだ」
「さっきまでの速度合戦はわざとだったんだな、毒が身体を回るのを待っていたのか……」
俺は毒で意識を失いかけてしまう。
「リィンさん!」
「エマ……逃げろ……」
俺はエマにそう言うと意識を失ってしまった。
―――――――――
――――――
―――
side;エマ
「リィンさん!」
私は倒れてしまったリィンさんに駆け寄ろうとしますが銀と呼ばれる暗殺者に道を塞がれてしまいます。
「このっ!」
私は杖を振るい攻撃しますが簡単に止められてしまいお腹に軽い打撃を受けてしまいます。でもその一撃で私は動けなくなってしまいました。
「ううっ……」
「お前はターゲットに入っていない、大人しくしていれば殺しはしない」
銀は冷たい声でそう言います。
「でもリィンさんは殺すんですよね?そんな事はさせません……!」
私は痛むお腹を押さえながら立ち上がりました。
「リィンさんは私のお母さんを助けてくれた恩人なんです!そんな彼を殺そうとするのを黙ってみてられる訳がありません!」
「……そうか、なら話は別だ」
銀は大剣を構えて私に振り下ろそうとします。しかしそこに魔法の障壁が現れて私を守ってくれました。
「なにやってるのよ、あんたは!」
「セリーヌ!?」
私を守ってくれたのは使い魔であるセリーヌでした、セリーヌは唯の猫ではなく人間の言葉を話すことが出来ます。
「エマ、あんたの我儘を我慢してたけどこれ以上は無理よ。そいつの事は諦めなさい」
「セリーヌ!そんな……!」
「煩い!大人しくしてなさい!……ほら、この子はもう関係ないからさっさとそいつを殺してどっか行きなさいよ」
セリーヌはリィンさんを見捨てるつもりだと分かり私は障壁を解除しようとしますがお腹の痛みで集中できずにそれは叶いませんでした。
「……唯の猫ではないようだな、だが私には関係ないことだ。仕事さえ済ませれるのならその少女に危害は加えない」
銀はそう言うと大剣を構えてリィンさんの元に向かいました。
「お願い!止めてください!その人を殺さないで!」
「……済まない」
銀はそう言うとリィンさんの首に目掛けて大剣を振るいました。私は最悪の光景を見たくなくて目を閉じてしまいました。
「ぐっ……!?」
でも聞こえたのは銀の苦しそうな声でした。恐る恐る目を開けてみると……
「リィンさん!?」
なんと意識を失っていたはずのリィンさんが起き上がって銀のお腹に太刀を突き刺していたんです。
「馬鹿な、毒は効いていたはず……!」
「確かに全く効いていないわけじゃない、でもこのレベルの毒は人体実験の際に何回も身体に入れられたから耐性が出来ているんだ」
リィンさんはニヤリと笑いながら毒に耐性があると言いました。じゃあ最初から意識を失っていなかったと言う事ですか!?
「ぐっ、次はこうはいかない……!」
銀はそう言うと煙玉と閃光弾を投げて視界を遮ってきました、そして気が付くと姿を消してしまっていました。
「……気配が完全に遠のいた、逃げたか。敵ながら見事な判断力だな」
リィンさんはそう言うと太刀をしまい私の元に来ました。
「エマ、大丈夫か?けがはしていない?」
「リィンさん、毒は?」
「ん?ああ毒?それなら問題ないよ。まったく効かないわけじゃないけどこの程度なら死ぬはしないさ」
「……馬鹿!」
「おわっ!?」
感極まった私はリィンさんに抱き着いてしまいました。
「馬鹿馬鹿!リィンさんの馬鹿!私リィンさんが殺されてしまうって本当に怖くて……!」
「ごめんな、怖い思いをさせてしまって……やっぱりギルドに残っていてもらった方が……」
「そういう事をいっているんじゃありません!」
「えっ?」
私に怖い思いをさせたから怒っていると思っているリィンさんに私はそうじゃないと言いました。
「私が怖かったのは自分が殺されると思ったからじゃありません!リィンさんが死んでしまうのが怖かったんです!」
「エマ……」
「フィーちゃんやラウラさんがどうしてあんなにも貴方を心配するのかが良く分かりました!貴方は無茶ばかりする!放っておけば死んでしまいそうで怖くて仕方ありません!」
「あはは、エマにもそう言われちゃうか……」
「言いたくもなりますよ、リィンさんの馬鹿……」
泣く私をリィンさんは困ったように笑みを浮かべて頭を撫でます、そんなリィンさんに腹を立てながらも私は彼の胸の中で泣き続けました。
そして少しして冷静さを取り戻した私は『セレネスブレス』でリィンさんを治療し始めました。
「エマ、これは?」
「今毒を消しています、少しジッとしていてください」
そして私はリィンさんを治療しました。
「おおっ体のしびれが取れた!」
「一応後で医療機関に行ってみてもらってくださいね、魔法も完璧ではないので」
「ああ、分かったよ」
呑気に笑みを浮かべるリィンさんに溜息を吐きながらも私もつられて笑みを浮かべました。
「ところでエマ、そっちのセリーヌなんだけどただの猫じゃないよな?」
「えっと……」
「いいわエマ、どうせいずれはバレていたし」
リィンさんがセリーヌの事を聞いてきたのでどう説明するか悩んでいると、セリーヌの方から話を切り出しました。
私はセリーヌに説明を任せてリィンさんの治療に専念することにしました。
(お母さんやお婆ちゃんにリィンさんを紹介しても今後も一緒についていきましょう。リィンさんを放ってはおけませんから)
私はそんな決心を内心でしてチラリとリィンさんの顔を見ます、ちょっと可愛い系の顔ですが今は勇ましくてカッコいいです。そんな顔を見ていたらドキドキしてきちゃいました。
最初はお母さんを助けてくれた恩人で慕っていました、でも今は放っておけない危なっかしい人になりました。
(私、本気でリィンさんの事が……事が終わったらフィーちゃんやラウラさんに相談してみましょう)
私はそう思うと何故か胸が温かくなり嬉しくなってしまいました。リィンさんと一緒に旅をする、そんな未来を想像しながら私はリィンさんを治療していきます。
side:リィン
俺はエマを慰めた後セリーヌに自己紹介をされている。猫が喋ったことは驚きだが幽霊と会ったりしたこともあるのでリアクションを取る程は驚いていない。
「初めましてリィン・クラウゼル。私はセリーヌ、エマの使い魔よ」
「リィン・クラウゼルだ。よろしく」
「……なんか普通に挨拶を返されたけど猫が喋ってるのに驚かないの?」
「確かに驚いたけどそれ以上に驚くことを沢山経験してきたから今更猫が喋ったくらいじゃね……」
「なんか私が軽んじられているみたいでムカつくわね」
セリーヌにジト目で文句を言われるが仕方ないだろう、それ以上に大変な事がいっぱいだったんだから。
「さっきアンタを見捨てようとしたことは謝らないわよ、エマの方が大事だからそうしただけ。アンタなんて助ける気はこの先も一切ないからそのつもりでいなさい」
「セリーヌ!」
「構わないよ、別に俺とお前は親友でも家族でもないからな。気にもしていない」
「そう、ならいいわ」
「ごめんなさい、リィンさん。セリーヌはちょっと口が悪くて……」
「大丈夫だよ、エマ」
エマがセリーヌを叱ろうとしたが俺は手を振って謝らなくていいよと合図をした。
「さて、それよりもコリン君の方を確認しないと。怪我とかなければいいんだけど……!?」
俺はコリン君の方に視線を向けるとなんと彼の周りに霧が集まって姿を隠し始めたんだ。俺は急いでコリン君に接近するが間に合わず彼は霧と共に消えてしまった。
「くそっ!」
俺は拳を握り込み悔しさのあまり歯ぎしりをするがグランセルから大きな爆発音が聞こえた。
「な、なんですか!?」
「分からない、ただ異常事態が起こったのは間違いないだろう。エマ、急いで街に戻るぞ!」
「はい!」
銀の事も含めてギルドに報告しないといけないが嫌な予感がする、俺は不安を胸にしまい込んで急いで街に戻っていった。
―――オリジナルクラフト紹介―――
『火竜一閃』
居合から放たれる神速の紅き一撃。広範囲に素早く攻撃できるので牽制や反撃、集団戦など幅広い場面で使える。
駆除解除、炎傷60%、封技30%。
『影縫い』
目にも止まらぬ速さで相手を翻弄して背後から急所を突く死の一撃。
即死50%、混乱20%。
元ネタは『イース10』のアドルのスキル『ライトニングセイバー』。
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