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第百話 彼岸を過ぎてその六

「本当にね」
「今じゃ関西でも普通に食うよ」
「そうよ、ただね」
「ただ?」
「昔は本当にね」
 関西ではとだ、かな恵は成海に話した。
「食べなかったらしくて」
「食いものじゃないとか言う人もいたんだよな」
「もう納豆美味しいとか言ったら」
 関西でというのだ。
「とんでもないもの食べるってね」
「思われたんだよな」
「ゲテモノどころか」
 関西で納豆の扱いはだ。
「腐っててね」
「発酵させてるんだけれどな」
「もう人間の食べものじゃない」
「そう言う人本当にいたんだよな」
「今でも。関西以外の地域の人でも」
「嫌いな人は嫌うしな」
「癖が強いのは事実だし」
 匂いも糸を引いていることもだ。
「それでね」
「嫌いな人は大嫌いだな」
「けれどあったら」
 その納豆がというのだ。
「それだけでね」
「いいおかずだよ」 
 成海は言い切った。
「タレかけて掻き混ぜて」
「ご飯にかけたら」
「もうそれでな」
「充分なおかずなのよね」
「しかも身体にもいいしな」
 納豆はというのだ。
「余計にな」
「いいのよね」
「ああ、だから納豆自体は」
 弁当に入れるには向いていなくともというのだ。
「食っていこうな」
「お互いにね」
「おうどんとかお蕎麦にかけても」
 ご飯だけでなくだ。
「結構な」
「いけるし」
「納豆はいい食いものだよ」
「私もそう思うわ、お酒にも合うのよね」
「大豆だしな、元々」
「そうそう、何か納豆見ながらスクワットしつつビール飲んだら」
 その様にすればとだ、かな恵は考える顔で話した。
「物凄く酔うそうよ」
「なにだよその飲み方」
 成海はかな恵が話したその飲み方に眉を顰めさせて問い返した。
「一体」
「こうして飲んだ人いるらしいの」
「普通に飲めよ」
 真顔で即座にこの言葉を出した。
「そんな変な飲み方するよりな」
「そうよね」
「変過ぎるだろ」
 成海はこうも言った。
「幾ら何でも」
「私もそう思うわ」
「そうだろ、納豆をおうどんとかお蕎麦にかけてな」
「それで飲んでもね」
「いいだろ、というか飲みながら身体動かすって」
 今度はスクワットのことを言った。
「駄目だろ」
「だから早く酔う為にね」
「そんな変なことしたんだな」
「何でもこの飲み方した人は」
 かな恵は自分の記憶を辿りつつ成海に話した。
「麻薬やってて」
「その時点で駄目過ぎるな」
「反省しないで階段から落ちてね」
 そうしてというのだ。 
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