英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第159話(最終幕終了)
~幻想機動要塞・外郭~
「い、一体何なのですか、アレは……!?」
「ヴァリマールのように見えますが………」
「そもそもヴァリマールはこっちにいるから、ヴァリマールではないとは思うけど……」
「見た目もそうだが、纏っている瘴気らしきものからして、間違いなくヤバイ相手だな。」
突如現れた異形のヴァリマールを目にしたイングリットは困惑し、リシテアとエーデルガルトは考え込み、クロードは警戒した様子で異形のヴァリマールを見つめた。
「そんな……ありえない………!あの機体から感じる力は”イシュメルガ”だ……!」
「何ですって!?」
「一体どういう事!?現に奴が滅ぼされたからこそ、皇太子も”贄”から解放されているのに……!?」
ある事に気づいて信じられない表情で声を上げたジョルジュの言葉を聞いたその場にいる全員が血相を変えている中サラは厳しい表情で声を上げ、セリーヌは厳しい表情で異形のヴァリマールを睨んだ。
ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ(オオオオオオオオオオオオオ)――――――ッ!!
「き、気のせいでしょうか……?あの機体からお兄様の声が聞こえませんでしたか……?」
「え、ええ……他の声と混じってはいたけど、私も兄様らしき声が聞こえてきたわ。」
「――――――うむ、あの機体の中にいる内の片方は”リィン”で、あの機体も”我自身”だ。」
「ヴァリマール、それは一体どういう事だ!?」
再び聞こえて来た異形のヴァリマールの咆哮を聞いて何かに気づいたセレーネとエリスが戸惑っているとヴァリマールが驚愕の事実をその場にいる全員に伝え、ヴァリマールの言葉を聞いたリィンは真剣な表情でヴァリマールに訊ねた。
「”もう一体の我”の核の中を分析してみたが、あの機体は間違いなく我――――――”灰の騎神”で、中にいる人らしき生命体は”リィン”だ。」
「な…………」
「本人達が私達の目の前にいるのに”もう一人のリィン”と”もう一体のヴァリマール”って一体どういう事なのよ……!?」
ヴァリマールの説明を聞いたリィンが絶句している中アリサは困惑の表情で声を上げ
「ヴァリマールさん、先程あの機体の”核の中にいる片方は兄様”と仰いましたが、”もう片方は何者”なのですか?」
「それは――――――」
「それについては俺達の方から説明させてもらうぜ。」
ある事が気になっていたエリゼがヴァリマールに訊ね、訊ねられたヴァリマールが答えようとしたその時クロウらしき幽体がミリアムらしき幽体と共にその場に現れた。
「ハアッ!?お、”俺”だと!?」
「えええええええええええええっ!?ク、クロウとボクがもう一人いる~~~~~~~!?」
「こ、これは一体……それにあちらのクロウさんとミリアムちゃんは”幽体”のようですが………」
二つの幽体の登場にその場にいる全員が驚いている中クロウとミリアムは信じられない表情で声を上げ、エマは戸惑いの表情で突如現れた二人が幽体である事にすぐに気づいた。
「ほええっ!?ここが”幻想機動要塞”って事は”巨イナル黄昏”が起こっている状況だよね?なのに”ボク”が生きてみんなと一緒にいる事もそうだけどルーファスに殺された”槍の聖女”までみんなと一緒にいるって、一体”そっち”で何があったの~!?」
「んなっ!?マ、マスターが……!?そっちこそ、一体どういう事なのか先に説明しやがりなさい!」
「!待って。先程そちらの”白兎”は”マスターがルーファス・アルバレアに殺された”って言ったわよね……?」
「確か”本来の歴史”とやらでは、マスターは”相克”でシュバルツァー達と戦い、敗れた後は”マスターの隙をついたルーファス・アルバレアによって止めを刺された”との事だったが……」
「なるほど、そういう事ね………恐らく貴方達は”並行世界の零の至宝による改変前の歴史のⅦ組メンバー――――――”全ての元凶”を滅ぼす為に高確率で犠牲になったⅦ組メンバー”なんでしょうね。」
自分自身やリアンヌに気づいて驚きの声を上げたミリアムの幽体の言葉を聞いたデュバリィは驚いた後血相を変えて説明を要求し、ある事に気づいたエンネアとアイネスは真剣な表情を浮かべ、レンは興味ありげな表情で二つの幽体を見つめて自身の推測を答えた。
「そ、それって……!」
「本来の歴史で可能性が高かったクソッタレな結末になっちまったシュバルツァー達か。」
「でも、そのリィン達が何で突然わたし達の世界に現れたの?」
「ま、まさかとは思いますがあたし達の世界ではない”あの子”によるものなんじゃ………」
「ええ……状況を考えると間違いなくそうでしょうけど、どうして”あの子”が………」
「キーア、未来の貴女ならば何か知っているんじゃないですか?」
「―――――いるんでしょう?貴女にどんな考えがあったかわからないけど、例え改変した世界とはいえ、”今の世界にとっては並行世界の人達”を関わらせたのだから、その”因果”にしてしまった貴女が今の世界の人達にその理由を説明する責任があるよ。」
レンの説明を聞いて察しがついたトワは不安そうな表情を浮かべ、アッシュは厳しい表情で呟き、フィーは真剣な表情で考え込み、ある事に気づいたノエルとエリィは複雑そうな表情を浮かべたその時、ティオに真剣な表情で訊ねられたキーアが真剣な表情で周囲を見回して何者かに対しての指摘をした。
「貴女に言われなくても、元々そのつもりだったよ。」
するとその時女の子の声が聞こえた後白髪のキーア――――――かつて”零の至宝”として覚醒した姿のキーアが姿を現した!
「キ、キーアちゃん………!?」
「し、しかも”その姿”は………」
「おいおいおい、どうなってんだ!?”零の至宝”の力をほとんど失っちまったキー坊はもうその姿にはなれないはずだろう!?」
「いや――――――君は俺達の世界でもなく、俺達にとっての未来の世界でもないキーア――――――”本来のゼムリアから今のゼムリアへと改変した並行世界のキーア――――――零の至宝”なんだろう?」
3人目のキーアの登場にユウナは驚き、零の至宝としての覚醒した姿の3人目のキーアを目にしたリーシャは不安そうな表情を浮かべ、ランディは困惑の表情で声を上げ、全てを察したロイドは真剣な表情で3人目のキーア――――――”零の至宝”キーアに確認した。
「世界は違ってもやっぱりロイドだね。――――――貴方達の推測通り、”私”は無限に存在する”零の至宝”の中でもゼムリアを今の世界へと改変した”零の至宝”だよ。」
「キーアちゃんが無限に存在するってどういう事~~!?」
「並行世界は様々な”もしも”によって無数に枝分かれしていますから、当然その無数に枝分かれしている並行世界にもそれぞれ”零の至宝に覚醒したキーア”がいるという事です。」
「それよりも今の状況についてです。キーア、まさかとは思いますがこれも貴女の”因果改変”によるものなのですか?」
”零の至宝”キーアの答えを聞いて混乱しているシャマーラにセティが説明し、エリナは真剣な表情で”零の至宝”キーアに事情の説明を要求した。
「ううん、この世界の”巨イナル黄昏”はエイドス達によって”全ての元凶”が滅ぼされる事で解決した――――――それが私が改変した本来の今の世界だったけど、”本来の世界”と違って”メンフィル帝国――――――ううん、ディル=リフィーナの人々による介入”を始めとした様々な想定外で追い詰められたイシュメルガの”焦り”が、”碧の大樹”、”巨イナル黄昏”によって急激に活性化した霊脈が今目の前にいるイシュメルガ――――――つまり、並行世界のイシュメルガを繋げてしまったの。」
「イシュメルガは元々”至宝”のぶつかり合いによって生まれてしまったもの。それが”碧の大樹”と”巨イナル黄昏”という二つの”奇蹟によって”並行世界の同一存在との繋がり”という”新たな奇蹟”へと発展しまったのか……」
「フム、私を含めてこの場にいる大半の人達は話の内容は半分も理解できていないが、とりあえず”そちらにとっても想定外の事態”という事は理解したかな。――――――それで?君は私達に何をして欲しくて、並行世界の弟弟子達を私達の前に出してきたのかな?」
”零の至宝”キーアの説明を聞いてある程度理解したローゼリアは重々しい様子を纏って呟き、シズナは静かな表情で呟いた後真剣な表情を浮かべて訊ねた。
「私にとっても想定外の事態になったとはいえ、こうなってしまった以上貴方達にとっての並行世界のイシュメルガを滅ぼして、リィン達を助けてあげて。リィン達を助ける為に私も責任を取って、少しだけ力を貸すよ。」
「ほえ!?」
「何……!?」
「それは別にいいけど、まずは並行世界のリィン君達の状況をあたし達に教えてよ!あたし達は並行世界のリィン君達は”全ての元凶を滅ぼす為に犠牲になる確率が高かった”という事しか知らないのよ?」
「そうだね………まずは、並行世界のリィン達が自分達を犠牲にしてまで滅ぼした”全ての元凶”が今もなお滅んでいない事を含めた事情を知る必要もあるだろうね。」
シズナの問いかけに対する”零の至宝”キーアの答えを聞いた幽体のミリアムとクロウが驚いている中エステルはヨシュアと共に真剣な表情で事情の説明を要求した。そして幽体のクロウとミリアムは自分達の世界でのオズボーンやイシュメルガとの決着後の事を話した。
イシュメルガに勝利した事によってイシュメルガの持っていた力と同時にイシュメルガの悪意である呪いそのものを一身に受けたリィンはヴァリマールもろとも黒の持つ呪いに蝕まれることになった。
しかしそれは、呪いを葬り去る絶好の機会であった。そう判断したリィンはヴァリマールごと大気圏外に飛び立った後、何もない宇宙空間でイシュメルガとの喰らい合い――――――『無限相克』を続けていて、ゼムリアでの”相克”が終わった事でそれぞれ消滅の時が近かったのでリィン達と共に大気圏外へと飛び立ったクロウとミリアムは”喰らい合い”を続けるリィンが己の意識を保てるように、傍で応援を続けていた事を説明した。
「そ、そんな……!”そちら”のリィンさん達は”全ての元凶”を滅ぼす為に――――――世界を救う為に、そのような悲惨な運命に陥ってしまうなんて……!」
「リィンさん………おねえちゃん………」
「”そちら”の私達はさぞ無力感や絶望を感じているだろうね………――――――だったら、私達が代わりに彼らを救い、真のハッピーエンドを”そちらの私達”に届けてあげようじゃないか!」
「はい……!」
「”そちら”の私達の無念は、私達が晴らしてみせる……!」
「問題は”救い方”だな。」
「幽体の二人の救い方には見通しがついているが、イシュメルガに侵食されているリィンをどうやって救うかだな………」
事情を聞き終えたアルフィンは悲痛そうな表情を浮かべ、アルティナは辛そうな表情を浮かべてそれぞれ異形のヴァリマールと幽体のミリアムを見つめ、疲れた表情で呟いた後真剣な表情で言葉を口にしたオリヴァルト皇子の決意にセドリックは決意の表情で頷き、ラウラは決意の表情で呟き、ある問題点に気づいたミュラーは複雑そうな表情で呟き、アルゼイド子爵は静かな表情で問題点を口にした。
「あら、それに関しては何の問題もないじゃない。――――――何せ本来の歴史の中で低い可能性の歴史――――――”改変前の歴史でリィンお兄さん達が助かって黄昏を乗り越えた歴史”を識っている張本人が目の前にいるのだから。」
「あ……」
「確かに、”零の至宝”となった事で数多の因果を識ったキーアならば当然、リィン達を救った方法も識っておるだろうな。」
アルゼイド子爵が口にした問題点に対して意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンは”零の至宝”キーアを見つめ、レンの言葉を聞いたプリネは呆けた声を出し、リフィアは真剣な表情で呟いて”零の至宝”キーアを見つめた。
「うん、勿論識っているし、その方法も今すぐに教えるよ。でも、その前に準備だけしておくね。」
レン達の推測に頷いた”零の至宝”キーアはその場で集中した。するとエリオット達B班とクロチルダ達紅き翼に力を貸していた結社の面々、更にティータが転位によってその場に現れた!
「え?い、一体何が……って、みんな!?」
「強制転位!?――――――なっ!?」
「ふえっ………?」
「ティータ!?」
「なっ!?ミリアムとクロウが二人いるって、どういう事だ!?」
「それにあの”悪しき風”を纏ったヴァリマールらしき騎神は一体………」
転位によってB班のメンバーと共にその場に現れたエリオットは突然の出来事で困惑した後トワ達に気づくと驚きの声を上げ、自分達が転位で連れてこられた事に驚いたクロチルダは周囲を見回して状況を確認すると驚きの声を上げ、困惑の表情で声を上げたティータを目にしたアガットは驚きの表情で声を上げ、幽体のミリアムとクロウに気づいたマキアスは信じられない表情で声を上げ、異形のヴァリマールを見つけたガイウスは真剣な表情で呟き
「B班のみんな……!」
「それに姉さん達も……!」
「軽くではありますが、わたくしの方からキーア様によって突然連れてこられて事情がわからない皆様にも状況を説明させて頂きますわ。」
B班の登場にトワとエマは信じられない表情で声を上げ、シャロンは静かな表情で新たに転位してき面々に説明の申し出をし、現在の状況を説明した。
「まさか最後の最後で、”影の国”以来の非常識な出来事が起こるとはね………今の状況こそ、まさに空の女神による運命の悪戯ね。」
「だから、何でもかんでも私のせいにしないでくださいって言っているでしょう!?というか、私よりも”零の至宝による運命の悪戯”という言うべきである事に何故気づけないのですか!?」
「エイドス、今はそんな事を気にしている場合じゃないから。」
「相変わらずどんな状況でも、本当にブレない女神なの。」
「ううっ、すみません……!」
「そこでフィーナさんが謝る必要はないと思うのですが………」
事情を聞き終えて溜息を吐いたシェラザードの言葉を聞いたエイドスは顔に青筋を立てて反論し、その様子を見たアドルは疲れた表情で指摘し、ジト目で呟いたノイの言葉を聞いて申し訳なさそうに謝罪するフィーナにエレナは冷や汗をかいて指摘した。
「ア、アハハ……とにかく、事情はわかりました。」
「本来の歴史では叶うはずがなかった未来を引き寄せる………まさか、こんなとんでもない”奇蹟”を私達の手で実現させる羽目になるなんてね。」
「だけど、私達ならできるはず!」
「フハハハハハ、最高のカーテンコールを我々の手で実現しようではないか!」
「そうやなぁ。ここまで来たら、そないな結末にせえへんと後味悪いからなぁ。」
「それで、俺達は何をすればいい!?」
エイドス達の様子を苦笑しながら見ていたアネラスは表情を引き締め、苦笑しながら呟いたルシオラの言葉に続くようにアンゼリカが真剣な表情で答え、ブルブランは高々と笑い、ルクレツィアは静かな笑みを浮かべて呟き、ユーシスは真剣な表情で”零の至宝”キーアに訊ねた。すると”零の至宝”キーアはリィンに視線を向けてある助言をした。
「リィン。”剣仙”と貴方の本当のお父さんの”教え”。それを今思い出して。」
「え…………」
”零の至宝”キーアからの助言を受けたリィンは呆けた声を出したが、ふとある人物達の言葉を思い返した。
激動の時代において刹那であっても闇を照らす一刀たれ。おぬしと魂を共有する同志たち、魂を継ぎし者たちならばできるはずじゃ
己を捨てて他を活かすのではなく、己も他を活かすのを最後まで諦めるな
「!!ヴァリマール、すぐに俺を中に入れてくれ!」
「了解した。」
剣仙の手紙に書かれていた内容の一部と別れ際のオズボーンの言葉を思い出して何かを閃いたリィンは目を見開いた後ヴァリマールに声をかけ、声をかけられたヴァリマールはリィンを核の中へと入れた。
「エイドス、リィンがイシュメルガを引きはがした時に”大地の聖獣”から預かっていた”檻”を空に投げて。」
「エイドスさんが”大地の聖獣から預かっていた檻”ってもしかして……」
「!………もしかしたら、大地の聖獣はこの時の為に、”アレ”を私達に託したのかもしれませんね。――――――わかりました。」
”零の至宝”キーアのエイドスへの指示を聞いて心当たりがあるナユタは目を丸くし、目を見開いたエイドスは静かな表情で呟いた後了承の答えを口にした。
「他のみんなは戦術リンクでヴァリマールにみんなの力を送ってあげて!それとヴァリマール以外の全ての騎神達の力もヴァリマールに送ってあげて!」
「おおっ!!」
「来て――――――”白の神機”ヴァイスリッター!!」
「応えて―――――”金の騎神”エル・プラドー!!」
「顕現せよ――――”銀の騎神”アルグレオン!!」
「来な―――――”蒼の騎神”オルディーネ!!」
「出でよ――――――”紅の騎神”テスタ=ロッサ!!」
「出番だぜ――――――”紫の騎神”ゼクトール!!」
”零の至宝”キーアの次の助言にその場にいる全員は力強く答えてそれぞれのオーブメントに搭載されている”戦術リンク”を発動してヴァリマールに自分達の力を送り始め、起動者達――――――エリゼ、エリス、リアンヌ、クロウ、セドリック、ランディはそれぞれの騎神や神機を呼び寄せて核の中へと入ってそれぞれの力をヴァリマールに送り込み始めた。
「す、凄い……!”黒”以外の全ての”騎神”達がヴァリマールに力を貸してくれているなんて……!」
「幾ら並行世界とはいえ、まさかこんなとんでもない光景を目にすることができるとはな。」
その様子を見ていた幽体のミリアムは驚き、幽体のクロウは苦笑していた。
「感じる、みんなの力を………」
一方ヴァリマールの中にいるリィンは全員から送られてくる力を感じた後ヴァリマールに霞の構えをさせ
「我は彼、彼は我……なれと汝は、我等に非ず………八葉一刀流、七の型”無”――――――”無想神気合一”!!」
そして異形のヴァリマールに新たなる奥義を叩き込んだ!
「”それ”が君が”到った新たなる境地”なんだね――――――見事だ、弟弟子。」
それを目にしたシズナは嬉しそうな表情を浮かべてリィンに対する賞賛の言葉を口にしたその時
「オオオオオオオオオオオオオッ………!!」
「今です!!」
異形のヴァリマールからイシュメルガの咆哮が聞こえた後異形のヴァリマールから黒い瘴気の塊が離れ、それを目にしたエイドスは小さな”何か”を空へと投擲した。すると異形のヴァリマールは翼を生やしている事を除けば元の姿のヴァリマールに戻り、更にヴァリマールの中から疲弊している様子の白髪のリィンが現れた!
「リィン……ッ!」
「マジかよ……本当にリィンからイシュメルガを引きはがしちまいやがった……!」
白髪のリィンの登場を目にした幽体のミリアムは嬉しそうな表情で声を上げ、幽体のクロウは信じられない表情で奥義を放ったヴァリマールを見つめた。
「みんな、油断するな!――――――ここからだ!」
するとその時奥義を放った後ヴァリマールから現れたリィンが仲間達に忠告すると、エイドスが投擲した小さな”何か”はイシュメルガを閉じ込めた後、巨大な異形の化物へと変身した!
「こ、これが……!」
「起動者と分離されて実体化した”イシュメルガ”の思念体……!」
「そして聖獣の”檻”に封じられる事で巨大な力と融合した……エイドス様達の神術を除けば、”この次元で滅ぼせる唯一の形態として!”」
思念体であるイシュメルガが聖獣の力による”檻”によって実体化した姿――――――イシュメルガ=ローゲを目にしたセリーヌは驚き、エマとルフィナは真剣な表情で声を上げた。
オノレエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!人ゴトキガ赦サヌゾオオオオオオオオ!!!
「ぐうっ………!」
「なんという霊圧……!」
「へえ?少しは楽しませてもらえそうだね。」
「いや、そんな事が言えるのは”魔神”のフルーレティさん達や”神”のフィアさん達だけなんですが……」
「ちょっ、私にとっても幾ら何でも”アレ”は結構ヤバイ相手だよ~!?」
イシュメルガ=ローゲは怨嗟の咆哮を上げ、咆哮によって感じる凄まじい霊圧にエリオットとガイウスは思わず呻き、興味ありげな表情を浮かべて呟いたフルーレティの言葉に冷や汗を指摘したリリカの言葉を聞いたフィアは表情を引き攣らせて指摘した。
「い、幾ら何でもあまりにも巨きすぎないか……!?」
「ヴァリマールたちは………」
敵の巨大さにマキアスは不安そうな表情を浮かべ、フィーは敵を警戒しながらヴァリマール達に視線を向けた。
「出力、急激に低下……」
「済まぬ…………奴を引きはがす時に持って行かれたようだ………」
「チッ、そうなるのかよ……!」
それぞれ地面に膝をついた騎神達と共に自分達の状況を報告したオルディーネとヴァリマールの報告を聞いたクロウは舌打ちをして厳しい表情で敵を睨み
「どれだけ図体があろうと、”実体”があるのならば滅せられる。」
「ああ。それに”影の国”での俺やリウイ達の”裏の試練”での”最後の相手”と比べれば、あの程度”余裕”だ。」
「セ、セリカ様……さすがに比較対象にするのがおかしいと思うのですが……」
「そもそも”影の国”を経験していない人達からすると、意味不明でしょうが。」
静かな表情で呟いたジェダルに続くように呟いたセリカの言葉を聞いたシュリは冷や汗をかいて指摘し、エステルはジト目で反論した。
「フッ、だが確かにセリカさんの言う通り、言葉通り全員が力を合わせて戦った影の国の裏の試練の最後の相手と比べれば見劣りするし、あの時にも劣らないメンツが揃っているから、臆する必要はないね。」
「ああ。しかも今回は”戦場がゼムリア大陸ならば無類の強さを発揮できる、空の女神”もいるからな。」
「あの程度の相手でしたら、私の力がなくても皆さんで滅せられるとは思うのですが………まずは、空中でも戦えるように足場を用意しますね。」
静かな笑みを浮かべて呟いたオリヴァルト皇子の言葉にジンは頷いてエイドスに視線を向け、視線を向けられたエイドスは苦笑した後自身の力を使ってイシュメルガ=ローゲの周囲に足場を用意した。
「Ala ad eum locus(彼らをあの地へ)!」
足場を確認したローゼリアは転位魔術でリィン達をそれぞれの足場へと転位させた。
「この戦いで、全てを終わらせましょう!」
「それぞれの未来の為にも!」
「双界の人々よ、異なる世界の悪しき神に思い知らせてあげなさい――――――”人の力”を!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
そしてナユタ、アドル、エイドスの号令に力強く答えたリィン達は戦闘を開始した!
イシュメルガ=ローゲの力は強大であったが、”神殺し”や空の女神を含めた複数の”女神”達に歴戦の英雄達に加えて、かつては敵対組織の最高幹部やエージェントとして強敵であった結社の使い手達や内戦と連合・エレボニアとの戦争によって著しく成長を遂げた若き英雄達。そんな彼らが全員協力して戦い続けた結果イシュメルガ=ローゲは耐えられず、自身の実体から離れて異空間に逃げようとしたが――――――
「―――――逃がさないよ。」
”零の至宝”キーアが自身の力を解放してイシュメルガの異空間を一瞬で消滅させた後、イシュメルガの思念体の周囲に無数の”鎖”を発生させてイシュメルガの思念体の動きを封じ込めた。
「エステル、ロイド、リィン!並行世界のそれぞれの故郷で起こった”至宝”の事件解決の中心人物でもあった並行世界の貴方達の代わりに、貴方達が”止め”を刺して!」
「「「ああ(ええ)っ!!」」」
”零の至宝”キーアの呼びかけに力強く答えたエステルは背中に一対の白き翼を生やして異空間から取り出した神槍を構え、ロイドは全身に竜の頭を形成した闘気を纏って突撃の構えをし、リィンは抜刀の構えで力を溜め込んだ。
「その身に刻みなさい!神技!ニーベルン――――――ヴァレスティ――――――ッ!!」
「これで決める!ライジング、サァ――――――ン!!」
「この剣で未来を切り開く!無想――――――覇斬!!」
「イ、イヤダイヤダイヤダイヤダ、クルナクルナクルナ、オノレエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
それぞれの大技で襲い掛かって来た3人を目にしたイシュメルガは恐怖と焦り、怒りが込められた咆哮をした。そして3人の大技は同時にイシュメルガに命中し
「ァ――――――」
3人の大技が命中したイシュメルガは呆けた声を出した後イシュメルガの思念体は真っ二つに分かれて霧散し、消滅した!
「これで終わった……のよね……?」
「ああ。並行世界のシュバルツァーの髪がその証拠じゃねぇか。」
イシュメルガが消滅する様子を見て呆けた様子で口にしたエレインの言葉に頷いたヴァンは並行世界のリィンへと視線を向けた。すると白髪だった並行世界のリィンの髪の色は元の黒色に戻った。
「あ………」
「並行世界のリィンの髪の色が……!」
「僕の時のように呪いが消えた事で”贄”としての変化も元に戻ったんでしょうね。」
髪の色が戻った事に気づいた並行世界のリィンは呆けた声を出し、それに気づいたアリサは驚きの表情で声を上げ、セドリックは安堵の表情で並行世界のリィンの状態について口にした。
「クク――――少しばかりビジュアルが被ってからなぁ。最後に戻ってくれてよかったぜ。」
幽体のクロウが呟き、それを聞いたその場にいる全員が幽体のクロウに視線を向けると幽体のクロウとミリアムの全身が透け始めた。
「へ、並行世界のクロウとミリアムの身体が透けて……!」
「まさか並行世界のイシュメルガを滅ぼした事で………」
透け始めた幽体のクロウとミリアムの様子を目にしたエリオットは驚きの表情で声を上げ、察しがついたガイウスは複雑そうな表情を浮かべた。
「ああ。元々俺達はこの世界にとっては”部外者”だし、何があったのかは知らねぇが、どうやら”そっち”の俺とミリアムは消えないようだから、2年前のような湿っぽいのはナシにしようぜ。」
「ふふっ、そうだね。並行世界のみんな、ボク達の世界の方のリィンの事をよろしくね。」
「待ってくれ、二人とも……!やっと……やっと呪いが消えたのに、俺達の世界ではないこの世界で俺は一人でどうすればいいんだ……!?」
「「兄様………」」
「お兄様………」
「………………」
それぞれ満足げな笑みを浮かべている幽体のクロウとミリアムを目にして辛そうな表情を浮かべて声を上げる並行世界のリィンの様子を目にしたエリゼとエリス、セレーネは辛そうな表情を浮かべ、リィンは目を伏せて黙り込んでいた。
「なに、そのように諦めよくする必要もなかろう。」
するとその時並行世界のヴァリマールが立ち上がり
「ヴァリマール……」
それに気づいた並行世界のリィンは呆けた様子で相棒を見つめていた。
「来るがよい、我が同胞よ。最後の刹那――――去りゆく前に集おうではないか。」
「よかろう。」
「承知しました。」
並行世界のヴァリマールの呼びかけに対していくつかの声が返ってくると”黒”以外の並行世界の騎神達が全てその場に顕現した!
「なっ……!?」
「並行世界の騎神達……!」
「”巨イナル一”となったイシュメルガを滅ぼした事で元に戻った……?」
並行世界の全ての騎神達の登場にマキアスとクルトは驚きの表情で声を上げ、ミュゼは信じられない表情で推測を口にした。
「うむ、その通りだ。」
「まるで長き夢を見ていたかのようだな……」
「ですが”七の相克”は果たされ”巨イナル一”の呪いも解けました。」
「遥か昔から蝕み続けていた我らの呪いを解いた事、感謝する――――――並行世界の英雄達よ。」
「”黒”はあの末路を辿ったが……今はそれを寿ぐことにしよう。」
「……なんという……」
「壮観極まりないが……」
それぞれ言葉を口にした並行世界の騎神達を目にしたシグルーンとゼルギウスは呆けた様子で呟いた。
「これで”条件”は揃ったね。――――――アリサ、今がフランツから伝えられた”成果”を果たす時だよ。」
「!!エイドス様、ロゼさん!並行世界と私達の世界、それぞれの”クロウ”と”ミリアム”を人間に戻す為にどうか力を貸して下さい!」
”零の至宝”キーアに促されたアリサは血相を変えた後エイドスとローゼリアに懇願の表情で話しかけ
「ぬ?空の女神はともかく、何故妾にまで……」
「―――――具体的に何をしてほしいのですか?」
アリサの懇願にローゼリアが戸惑っている中エイドスは静かな表情で訊ねた。
「ローゼリアさんは”焔の眷属の長”として……エイドス様は”大地の眷属の長の代役”として、並行世界の騎神達に対して『焔と大地、それぞれの至宝の” 秘蹟プログラム”を発動、残留エネルギーを生体素子に変換、合わせて概念空間の”剣”を実体化する』という要請を命じて下さい!」
「事情はわかりませんが、今は時間が惜しいようですから、彼らを救う為にも力を貸しましょう――――――並行世界の騎神達よ、”大地の眷属の長の代役たる空の女神”として要請します―――――― 大地の至宝の秘蹟プログラム”を発動、残留エネルギーを生体素子に変換、合わせて概念空間の”剣”を実体化させなさい!」
アリサの代わりに答えたジョルジュの嘆願を聞いたエイドスは並行世界の騎神達に呼びかけを行い
「へっ……?」
「…………………………」
それを見ていた幽体のミリアムは呆けた声を出し、幽体のクロウは信じられない表情を浮かべていた。
「ま、まさか……」
「ま、今の言葉の意味を考えたらその”まさか”だろうな。」
一方その様子を見守っていたイングリットは信じられない表情を浮かべ、イングリットの言葉に対してクロードは苦笑しながら答え
「暗黒時代の魔導師たちが追い求めて止まなかった禁断の領域。でも、女神の二つの至宝の最後の力を掛け合わせれば多少の無理も通る……」
「フフ、そのような裏技が可能とは夢にも思わなんだぞ。ならば、妾も続かなければじゃの。並行世界の騎神達よ、焔の眷属が長として要請する。”焔の至宝の 秘蹟プログラム”を発動、魂魄と修復されし肉体を馴染ませ、合わせて”剣”の魂魄を固定せよ!」
クロチルダの説明を聞いたローゼリアは苦笑した後エイドスに続いて並行世界の騎神達に呼びかけをした。
「応――――――!!」
そしてエイドスとローゼリアの呼びかけに応えた並行世界の騎神達全てから光が放たれるとそれぞれの”クロウ”と”ミリアム”は光に包まれ
「お、おい……」
「二つの……力……?」
「へへっ、まさか向こうにとっての並行世界の俺達まで受けられるとはな。」
「後でボク達が並行世界のボク達にお礼をしなくちゃダメだね。」
光に包まれた幽体のクロウとミリアムが困惑している中事情を知っているクロウとミリアムは苦笑していた。
「……暖かいね………」
「うん、それにとんでもないよ……」
並行世界の騎神達が発生させている光の余波を受けていたミントは心地よさそうな表情を浮かべ、ツーヤは驚きの表情で呟き
「キーア、もしかしてあれは……?」
「うん………キーアがシズクの目を治したのの凄い版みたいだねー。」
光の効果を察したロイドに訊ねられたキーアは頷いて答えた。
「な、なんだったんだ……ったく、今度はスマートにあばよと行くつもりだっつーのに……」
光が収まった後幽体だったはずの”クロウ”は地面に膝をついて困惑していたが、すぐに立ち上がって周囲の者達の視線が自分に集中している事に気づいた。
「……って、なんだ?ジロジロと見やがって……いったい何が――――――!どうして……消えかかってたのが……それにこの髪……身体の様子も………」
周囲の視線に困惑していた”クロウ”だったが、すぐに幽体で消えかかっていた自分が実体を取り戻している事や髪の色が戻っている事に気づいた後自分の心臓の部分に手を当てると心臓の鼓動を感じた。
「クロ、ウ……」
「血色もそうだが……髪も元のグレーに戻っている……」
”クロウ”が不死者から人間に戻った事に”リィン”は呆然とし、ラウラは信じられない表情で呟いた。
「やったあああああっ!!」
「グスッ……本当によかった………学院に帰ったら、内戦の時に約束した”罰”をしてもらうから覚悟してもらうよ!」
「”内戦の時の約束した罰”って………って、オイ!?まだ覚えていやがったのかよ!?」
「フッ、当然じゃないか。むしろ掃除当番だけじゃ足りないくらいだよ。――――――勿論クロウだけじゃなく、ジョルジュも覚悟してもらうよ。」
「ハハ……できればお手柔らかにお願いするよ……」
そしてエリオットは嬉しそうな表情で声を上げ、涙ぐみながら呟いたトワの言葉を聞いたクロウは一瞬何のことかわからなかったがすぐに心当たりを思い出すと冷や汗をかいて表情を引き攣らせながら声を上げ、クロウの様子に口元に笑みを浮かべて指摘したアンゼリカはジョルジュに視線を向け、視線を向けられたジョルジュは苦笑していた。そして二人のクロウの様子に続くようにその場にいる多くの面々は二人のミリアムに視線を向けた。
「あはは……なんかとんでもない事が起きたみたいだけど……なんか眠くなっちゃった……ゴメン……ちょっと落ちるね……」
「ほえっ!?ちょ、ちょっと~!これ、ホントに大丈夫なの~!?」
”ミリアム”は実体を取り戻した”クロウ”と違い、幽体のままではあったがその存在は保っており、自分達に起こった出来事に戸惑った後眠りにつくと光の球体となって”リィン”の傍にあった”根源たる虚無の剣”の中に入り、それを見たミリアムは慌て始めたが
「大丈夫……眠っただけみたいです。」
「概念兵器の実体化………とんでもなさすぎでしょ。」
”ミリアム”の状態がわかっていたエマは安堵の表情を浮かべながらミリアムの心配は無用である事を伝え、セリーヌは目の前で起こった”奇蹟”に驚きの言葉を口にした。するとその時並行世界の騎神達が透け始めた。
「”そちら”のヴァリマール達は――――――行ってしまうんだな?」
並行世界の騎神達の様子を見て並行世界の騎神達が消えようとしている事を察したリィンは僅かに寂しげな笑みを浮かべて訊ねた。
「フフ、”巨イナル一”を御するのが元より我らの役目でもあった。」
「それが成し遂げられた今、存在を消滅させるのみでしょう。」
「”巨イナル一”を発生させず”黒”を滅ぼした事で、存在し続ける事ができる”そちら”の我らの事をどうかよろしく頼む。」
「ああ、任せてくれ。」
並行世界のオルディーネとアルグレオンが満足げに語った後に頼まれた並行世界のゼクトールの言葉に対してリィンは頷いたが
「……………………」
自分達の”相棒”が消えるという事実に”リィン”は辛そうな表情を浮かべて目を伏せて顔を俯かせた。
「胸を張るがいい。我が起動者――――――いや”相棒”よ。」
しかし並行世界のヴァリマールに声をかけられた”リィン”は目を見開いて顔を上げて並行世界のヴァリマールを見つめた。
「かつての起動者の息子―――足掻きながらも前に進むおぬしを支え、成長を見守れたのは得難き日々だった。機械であるこの身にとっても実に誇らしく、胸が躍るような。リィン、私はお前を誇りに思うぞ。」
「俺も楽しくて………本当に誇らしかった。ありがとう、相棒――――――お前の事は忘れないよ。」
そして相棒との別れの言葉を交わした並行世界のヴァリマールは他の並行世界の騎神達と共に消滅した。
こうして………リベール王国を巻き込み、更には世界中をも巻き込もうとしたメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国による世界大戦は完全に終結した。戦争終結後、手術が成功したユーゲント皇帝がマスコミを通じて復帰を宣言した。合わせてエレボニアがメンフィルによる”保護”を含めた様々な敗戦後のエレボニアに対しての条約を承諾した事、暗殺未遂は連合の仕業では無かった事、”アルスター襲撃”がオズボーン率いる”主戦派”の謀によるリベール王国への冤罪である事、更には”百日戦役”勃発の原因である”ハーメルの惨劇”についての”真実”が全世界に発表され………国内では大混乱が、国外では非難の嵐が巻き起こることとなったが――――――エレボニア総督に就任したリィン・シュバルツァー将軍を含めたメンフィルによるエレボニア総督府やレーグニッツ知事が暫定首班となったエレボニア政府が精力的にそれをフォローしていくのだった。
まるで悪い夢から覚めたかのような多くのエレボニア帝国軍に、国民。一方、”アルスター襲撃”と”百日戦役”の件でリベール王国では当然のようにエレボニアへの激しい非難が巻き起こるが――――――幸い、ゼムリア大陸の唯一神である”空の女神”エイドス直々によるエレボニアに対するフォローの宣言と、”リベールの異変”で混乱に陥っていた所にリベールの都市の一つであるロレント市を襲撃しようとした猟兵達を迎撃・殲滅したメンフィル帝国がエレボニアを保護した事があったのが大きかった。アリシア女王もクローディア王太女と共に慎重に対応し、不満を可能な限り抑える方向へと持っていく。エレボニアに対し、メンフィルがエレボニアに科した賠償金程ではないにしてもそれでも天文学的な賠償金を要求する方針が伝えられ……それにエレボニア政府が政治対処することとなった。(なお、賠償金はエレボニア王家・政府に対する敗戦によるメンフィルへ支払わなければならない賠償金とは別の負債という形で、メンフィル帝国政府・皇家が賄う事となった。)
対外的な困難を乗り越えつつ、更に大変なのは混乱を極める国内事情だった。戦争を扇動したオズボーン宰相の死も公表され、抑圧されてきた貴族が反動で動こうとする一方……民衆はその動きに反発、王族が両者を何とか抑える事に。――――――しかし、皇帝でありながら、宰相の野心を見抜けず重用し続けた結果エレボニアを敗戦に追いやり、多くの戦死者を出し、衰退させ、更には”帝国”であったエレボニアが”王国”に格下げになってしまったという事実によってユーゲント三世の判断も取り沙汰され………アルノール王家もまた厳しい立場に置かれることとなる。そんな中、セドリック王太子やオリヴァルト王子が真摯に国民に向き合い……また、アルフィン元王女が連合とエレボニアの戦争の序盤に内戦の件でのメンフィル帝国への償いの為に皇族としての地位を失う事を自らメンフィル帝国に申し出た上、シュバルツァー将軍の専属侍女として仕え、宰相によって暴走したエレボニアを止める為に家族や祖国の国民達に”裏切者”という悪名で蔑まれる事を覚悟してでもシュバルツァー将軍達と共に最後までエレボニア帝国軍と戦った事実が国内外に知れ渡り……国内外の信用を少しずつ取り戻して行くのだった。
また、クロスベルが独立し、メンフィル帝国と共にエレボニアの領土の一部を奪ったという状況を受けてジュライでも独立の気運が出て来たが………一方で10年近い経済特区としての成長などの理由で帰属維持を主張する勢力も。場合によっては新たな火種になりかねず、関係者にとっては頭の痛い問題となっていた。
なお、鉄血の子供達の異名でオズボーン宰相直属の部下だったクレア・リーヴェルト少佐と戦後その身柄をリベール王国から引き渡されたレクター・アランドール少佐は逮捕を免れ――――――それぞれ情報局・鉄道憲兵隊の責任者として国内の混乱収拾に尽力することとなった。………ただし、両組織とも、政府直属の立場は失い、メンフィル帝国によって保護期間中はメンフィル帝国から派遣される監視組織に監視され、いずれ新たな形で再編される事が決定していた。遊撃士協会は地位を取り戻し、各地の支部が3年ぶりに復活する流れとなった。大陸各国から高位遊撃士も派遣され、エレボニア各地の様々な混乱の収拾に協力してゆく。
そして………ヴァリマールと共に大気圏外へと飛び立った後数ヶ月に及ぶイシュメルガとの互いの存在の”喰らい合い”によって心身共に疲弊していた事で、並行世界の騎神達の消滅後緊張の糸が途切れた事で意識を失い、昏睡状態に陥った並行世界のリィン・シュバルツァー――――――”リィン”が二ヶ月後ウルスラ病院の研究棟にある特別な病室にてようやく目を覚ました――――――
後書き
これにて最終幕終了です。ようやく閃4本編を終わらせる事ができました………後は後日譚で、後日譚は多分5~6,もしかしたらそれ以下の話数で終わると思います。ちなみにわかっているとは思いますが、今回消えた騎神達は改変前のノーマルエンドの騎神達ですから、本編の騎神達はちゃんと存在し続けています。なお、今回のイベント、戦闘BGMは原作通り閃4の”未来へ~”かエターニアの”eternal mind”、東亰ザナドゥの”Earnestly Advance”のどれかだと思って下さい♪
ページ上へ戻る