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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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旅館×温泉

 浜辺での一夏さん強奪ビーチバレー(本人未公認)は結局並み居る生徒たちの山を全て蹴散らした織斑先生と山田先生の勝ち。
 いやもう最後の方なんてほかのクラスメイトの方々全員コートに入ってるのに織斑先生のサーブで蹴散らされるなんていう漫画みたいな状況でしたよ。
 そんなこんなで時間は夜7時半。今は夕食の時間で全員浴衣姿で大宴会場という大広間を3つ広げた場所にいます。
 4クラス全員合わせて約120名。大広間3つでも結構ギリギリですね。
 ちなみに席は正座して座る座敷席と普通にイスで座る席があります。IS学園の特徴からすれば当然ですよね。正座が出来るのは日本人くらいですから。私もイス席です。
 ちなみに座敷席の一夏さんの右隣にはシャルロットさん、左隣には鈴さん、離れた位置に箒さん。全然関係ない位置にのほほんさんや1組の日本人の方々は座っています。って鈴さん? そこ1組の席なのにどうやって陣取ったんですか?

 私の右隣はラウラさんで左隣はセシリアさんです。
 ラウラさんは正座は平気ですが一夏さんの隣に座れなければわざわざ行く必要が無いとのコト、セシリアさんはそれでも一時座敷にいましたが、料理が来る前に諦めて今はこちらにいます。

 そしてメニューはお刺身と小鍋、山菜の和え物2種類、赤だしのお味噌汁とお新香という純和風!

 いっただっきまーす!

「はむ」

ムグムグ……キュピーン

「お、美味しいですわね……」

 あ、言われる前にセシリアさんに言われた。
 このお刺身の何とも言えない歯ごたえ!最初は魚を生で食べるのが信じられないといっていたセシリアさんでさえ今はお箸をぎこちなくですけど確実に動かしています。
 それにしても……

「ラウラさんお箸の使い方うまいですね」

「うむ。本国にいるときに教官に手ほどきしてもらってな。それ以来こういう機会があるかもしれんと練習していたのだ」

「なるほど。生魚も大丈夫なようですし色々習ったんですね」

「サバイバル演習では肉を生で食べることもあったからな。そこは訓練しているからどうってことはない」

 ええ~……そういう意味じゃなくて……

 食事は滞りなく終了。途中一夏さんの周りが騒がしくなって一夏さんと鈴さんが織斑先生に叩かれてましたけどそれだけですね。
 そう言えば箒さんは結局海岸にはいませんでした。やっぱり恥ずかしかったんでしょう。分からなくは無いですけどねその気持ち。

 部屋に戻った後は消灯までは自由時間です。
 そこは疲れていても10代女子。遊びに余念はありません。今も皆さんの鞄から遊び道具が出てくるわ出てくるわ。
 人生ゲーム、ツイスターゲーム、トランプ、UNO、花札?っていうのは何か分かりませんが持てる限りの遊び道具を並べています。

「はあ、せっかく織斑君と遊ぼうと思ってたのにまさか織斑先生と相室とはねえ」

「ですわねえ……」

「つまんなーい!」

 櫛灘さんの言葉にセシリアさんとのほほんさんが言います。
 そうなんです。一夏さん曰く、何でも最初は個室の予定だったそうなのですがそれだと女子が大勢押しかけると考慮して一緒になったんだとか。まあ男女ですけど実の姉弟ですし何も起こらないと確定しているからでしょう。
 虎穴に入らずんば虎子を得ず、とは言いますがそれは手に入る確率があるからこそ。失敗が確定しているのにやる人はいないでしょう。

「しょうがない! 大貧民やるよ!」

「「大貧民?」」

 相川さんの言葉に私とセシリアさんが首を傾げます。んー、何か嫌な響きなゲーム名……

「え! もしかしてカルラとセシリアって大貧民しらない!?」

「大富豪って言っても!?」

「え、ええ。私は知りません」

「私もですわ」

 というよりそれ同じゲーム名なんですか。何で真逆の言葉が同じゲームとして成り立っているんでしょう?

「そう、じゃあ丁度いいわ! ここで日本発祥の最強トランプゲームを説明しましょう!」


――――――――――――――――――――――――――――――


「おりゃあ! ジョーカー! これで私の番で最後の一枚を切って私の上がりだ! ひょーひょっひょひょ!」

 櫛灘さんがジョーカーを切りました。やっと役に立ちますね。

「何勘違いしてるんです?」

「ひょ?」

「まだ皆さんがパスしたわけじゃないんですよ?」

「なーに言ってんの! ジョーカーに対応できるカードなんてある訳ないじゃない!」

 普通ならですけどね。ルールさえ覚えていればこのカードは手札に残していますよ。

「スペードの3で」

 特別ルール、スペードの3はジョーカーを切れる。

「ぬあ! カルラが持ってたの!?」

「というわけで私の番なので4の2ペアで上がりです」

 最後に残ってた2枚を場に出して私の手札は0。

「ぐあああああ! またやられたあ!」

「何で今日ルール覚えたばっかりの二人がこんなに強いのよ!」

 ちなみに私は2番手で、1番はセシリアさんです。

「代表候補生の名は伊達じゃないってコトね! 相手にとって不足はないわ!」

「はやー、二人とも強いー」

 参加者は私、セシリアさん、櫛灘さん、相川さん、のほほんさんの5人。

「ふむ、中々こういうのも面白いですわね。まあ? それでも私に勝つにはまだまだのようですけど」

 現在3回やってセシリアさんは全て1位の大富豪です。私は3連続富豪でその下はずっと入れ替わり立ち替わり。

「結局半分運で半分駆け引きなんだけどねー」

 今回大貧民だった相川さんがカードを配ってくれて、手札を確認します。んー、可もなく不可もなく、って感じですね。

「これこそ私に相応しい手札ですわ! さあ、大貧民の方! カードをお渡しになりなさい!」

「くっそー!」

 相川さんがカードを2枚セシリアさんに差し出します。これがきつくて面白いところですよね。勝つ人はずっと勝ちますし負ける人は負け続ける。かなりシビアなゲームです。だからこそ面白いんですが。こんなゲームを今まで知らなかったのはもったいないですね!

「では私はこれで」

「うっそ! これで一番弱いカード!? セシリア強すぎ!」

 セシリアさんが出したカードを見て相川さんが叫びます。何と言うかセシリアさんのカードって最初からイカサマ無しなのにすごい強いんですよね。いつも圧倒的強さの手札で上がってしまうので誰も追いつけないんです。

「カルカルー、カードカード」

「あ、はい。じゃあ私はこれで」

「私のー、愛のー、ハートの2をあげるのですー」

「で、ですからのほほんさん。カード言っちゃだめですってば……」

「あ、ごめんー、えへへへ」

 何故かのほほんさんは誰に対しても渡すカードを声に出してしまうんですよね。もう癖みたいで……

「おー、ハート6ー。いいねー。カルカルとの相思相愛ー」

 それで自分に渡されたカードも声に出してしまうのですからあまり勝負事には向かない性格ですよね。
 ハートは完全に偶然ですからそういうのは止めてください。

「ぬがああああ! 初心者に負けてられるか! 徹夜でデュエルだ!」

 櫛灘さんがそう叫んで隣の相川さんが大きく頷きます。

「いつでも勝負になりますわ! 勝つのは私ですもの」

「いいでしょう。いくらでもかかってきてください!」

 セシリアさんと私がそう言うと4回目の勝負が始まりました。ルール上1回目以外は大貧民からなので相川さんからですね。

「じゃあ私から行くわよ! おりゃ! 3のスリーカード!」

「パス」

「パースー」

 あ、私ですね。

「では6の3カード」

「ふふふ。9の3カードですわ!」

 隣のセシリアさんがカードを出します。

「ぱ、パス」

「パスしかない!」

「パースー」

 わ、また回ってきた。んー、じゃあ出しましょう。

「クイーンの3カードで」

「キングの3カードでどうですの!」

 わ、これは流石に……

「パスです」

「あら、パスですの? では私は2のスリーカードで」

 これパスしかないじゃないですか!

「あら? これも皆様パスですの? では1のスリーカードでまた私が大富豪ですわね!」

「「「「ついていけない!!!」」」」

 まあさっきからこんな感じで……セシリアさん滅茶苦茶強いです。

「おい、カルラ、セシリア。教官が呼んでいるぞ」

 この声は……ラウラさん?

「待ってくださいませ!」

「今いい所ですので後で行きますと伝えてください!!」

「う、うむ……分かった」

 こんな負けっぱなしじゃ私も抜けられませんよ!

 結局大富豪は合計30回近くやった挙句20回以上セシリアさんが大富豪で圧勝。その内5回は私、3回が相川さん、2回が櫛灘さんが大富豪でのほほんさんは0。
 そう言えば……織斑先生の呼び出しが…あったような? もうラウラさんが呼びに来てから2時間近く経ってますし……もういいんですかね?
 現在時刻は大富豪後の消灯時間一時間前の夜9時。セシリアさんは終わった後ラウラさんの言っていた通り部屋を出ました。私はというと…

「えへへー、独り占めー……っと」

 今の格好はタオル一枚だけ体に巻きつけて更衣室にいます。
 扉を開けると目の前にあるのはもうもうと湯気を吐き出す露天風呂。
 いわゆる逃げです。どうせ一夏さんのことでしょうし……

 空には丸い月が静かに輝いていて幻想的です。日本の露天風呂で一人で月を見る。風流とか雅とか言うんでしょうね。
 本当は朝日が見たかったんですけど明日は忙しいですし今日は夜で我慢しましょう。

 うん、やっぱりこの時間は誰もいない。

 巻いていたタオルを入り口の棚に置く。日本ではタオルをお湯につけるのはNGらしいですからね。作法は守らないと。
 一度体を流して……お湯に足を入れます

チャプ……

 静かな水音共にちょうどいい温度のお湯が足を暖めてくれる。
 少し歩いて海が一望できる位置まで来ると座って大きく伸びをします。

「ん~……」

 気持ちいいなあ……
 この露天風呂は東側に面していて朝は朝日が昇ってくるのを見ることが出来るようになっています。
 最終日は早朝に来ようかな…

 私は首から下げられている指輪を持ち上げて月に掲げ、その指輪の中に月が入るように持って来てみます。金色のそれは月の光を反射してまるで指輪自体が輝いているように見えますね。

「えへへ、月みたい……」

 やってて少し恥ずかしいや。

 そう感じて顔をお湯につけてブクブクと泡を立てます。こういう広いお風呂って童心に帰りますよね。って言っても私そこまで年取ってませんけど、こういう行動をしたくなります。

 そんなことをやっていると……

ガラガラ

 後ろから扉の開く音が聞こえました。誰か来たのかな?

「はあー……久しぶりだと肩凝るなあ」

 こ、このため息の声色って……男の人!?

 誰もこないと思って混浴のところ入ったのが裏目に出ました!
 あ、あわわわわ! と、とりあえず隠れないと!

 慌てて露天風呂の中にある飾りの岩の後ろに身を潜めてしまいます。

「んー! やっぱ露天風呂は気持ちいいよなあ」

 声の主は予想通り、というより考えたら旅館の人も全員女性なんですから男の人は一夏さんしかいないんですってば!
 わ、わ! どうしよう! と、とりあえず気づかれないように出て行かないと……

「ん? タオル? 誰かいるのか?」

 しまったぁ! 入り口の棚に置きっぱなしだった!

「んなわけないか。時間が時間だし忘れ物だろ。それに俺がいるのにわざわざ混浴に入る奴もいないだろうし……」

 すいません。完全に忘れてました……

 一夏さんはそう言ってタオルを持って中に……って! 置いていってくださいよ!
 再び戻ってきた一夏さんの手にはやはりタオルは無く……片付けてきたようです。
 そういうところはいい人なんですけど……いい人なんですけど!

 忘れ物だと思うならそのままにしてくださいよぉ……これじゃあ体隠せないじゃないですか……

「というわけで改めて……っと」

 一夏さんがお、同じ湯船にぃ! あわわわわ……どうしよう! どうすればぁ!

バシャバシャ

 音を立てながら一夏さんがこちらに……! えーとえーと! どうすればいいんです!? 誰か助けてぇ! おかーさーん!

「ふう……」

 あれ?

 近づいてくる水の音がちょうど岩の反対側で止まりました。
 ど、どうやら一夏さんは岩の反対側に背中を預けて座ったみたいです。良かったぁ~……でも……これどうしましょう。出られませんし動けません。
 前に一夏さんお風呂好きだって言ってたし、しばらくはこのままかなあ……

「しっかし千冬姉もきついよなあ。マッサージ上手いならたまには褒めてくれたっていいのに」

 愚痴のように聞こえた一夏さんの呟きは、それでいて満足そうな声色だ。
 マッサージかあ。そう言えば幼少の時にはお父さんによくやってあげたなあ。今思ったら身体大きすぎて全然効いてなかったと思うけど気持ちいいって言ってのは嬉しかったなあ。
 でも一夏さん万能ですね。家事も料理も出来てその上マッサージも上手いとか、世の女性が羨む家事スキル持ちの男性です。これであの鈍感スキルさえなければ言うこと無いんですけど。

「お、月出てるじゃん。反対側の方がよく見えるか?」

 って! ちょっと待って待ってー! こっち側来るの!?
 私は一夏さんの足音に合わせて岩の反対側に移る。

「おおー、綺麗な満月だな。うん? 少し欠けてるから満月ではないのか」

 よし! こっちなら少し行けば更衣室!
 でも立つと水音立ちますよね……潜るしかないんですが……もしくは一夏さんが出るまで待つか。

 正直言います。男との人と同じお湯に入ってる時点で羞恥心はマッハなんです! 一刻も早くこの露天風呂から逃げたいんですよ!
 というわけでここで私の選ぶ選択肢は一つのみ! 潜って逃げます!

 考えれば後は実行のみ。音を立てないように潜るとそのまま淵に向かって進む。
 お湯の中で一回反転して後方確認も忘れない。よし、一夏さんはまだ向こう側!

 お湯から顔を出してもう一度確認。後は素早く更衣室へとダッシュ。
 ここからはもう気づかれても構わない! あの位置からなら音を聞いて振り返る前に中に入ってドアを閉めるまでは余裕です!
 今まででの人生で最高の速度でドアまで走ると更衣室のドアを開けて、

ガラ!

「ん? 誰か来たのか?」

 一夏さんが見る前に閉める!

ピシャ!

 み、ミッションクリアー……とりあえず近場にあるタオルを巻いて身体を覆うと女子側に入ることでその場にへたり込んでしまいます。
 助かったー……

 露天風呂入ったのに全然心休まりませんでした。むしろ疲れました……
 ノタノタと下着を身に着けて再び浴衣に着替え更衣室を出ます。

「あら? カルラさん?」

「セシリアさん、箒さん」

「また入っていたのか?」

 セシリアさんと箒さんにばったりと遭遇。どちらも織斑先生の部屋からの帰りなのでしょう。

「どうして来なかったんだ?」

「いえ、嫌な予感がしたので」

「まあ……それは間違っていませんわね」

「うむ。あの台詞を直接聞かなかっただけまだマシか」

 そうしてセシリアさんと箒さんは深々とため息をつく。あの台詞って何なんでしょう。気になりますけどわざわざ聞く必要もないでしょう。好んで火の中に入りたくは無いです。

「とりあえず戻りましょうか。もうすぐ消灯時間ですし」

「ああ、そうだな」

「ですわね」

 そう言って私たちはその場を後にし……

「あれ、箒とセシリア……にカルラ?」

 こ、この声は!!!
 
 ゆっくり、ゆっくりと後ろを振り返るとそこには身体からわずかに湯気を出している浴衣姿の一夏さんがいました。き、着替えに時間をかけすぎましたか。

「い、一夏! 露天風呂だったのか!」

「いいいい、一夏さん!? こんな時間に奇遇ですわね!」

 抜き足差し足忍び足……

「いや、さっきも部屋で会っただろ。そう言えばカルラはなんでここにいるんだ?」

 ギクッ!

「え……まさか……」

「カルラさんも露天風呂……一夏さんも露天風呂……?」

「まさか……一緒に?」

 うわー! うわーーーーーー! やばいやばいやばい!

「カルラさん?」

「カルラ? どういうことか説明してもらおうか……」


ガシッ!


 逃げようとしていた私の両肩が掴まれました。振り返ると……笑顔なのにしっかりと頭の上に青筋を浮かべたセシリアさんと箒さんが…… 

「お、おーい。3人とも?」

「一夏さん! 助け……ムガムガ!」

 唯一の良心に縋ろうとするもその望みも口を両側から塞がれることで防がれてしまいます。

「ああ、一夏。お前は気にするな」

「ええ、一夏さんはその反応から今回は何も関係してないようですし」

「え? おい、どういう……」

「さ、行こうか」

「夜はこれからですわね」

「ム、ムガーーーーーーーーー(いやーーーーーーーーー)!!」

 私は悪くないのにー! 
 

 
後書き
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