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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第10話 1人の男と1人の女の子、遊園地に行く

新暦74年3月………




「遊園地行きたい!!」

新年も過ぎ、なのはもすっかりベルバイン家に馴染んでいた。そして3月のとある日、特に用の無いバルトとなのははテレビを見ながら談笑していた。

そんな中、ヴィヴィオがチラシを持ってきて叫んだのだった。

「遊園地か………」
「行かねえぞ」
「何で!?行きたい行きたい!!」
「やかましい!!休日は体を休めるから休日って言うんだよ!!」
「バルトはいつも休めてるじゃん!!」
「いつもじゃねえよ!!」

しかし傭兵の仕事をやっているバルト、不規則な仕事の日々。
確かに5日連続で休みなんて日もあった。

とは言え全く仕事をしていない訳でも無く、昨日もとある管理世界で暴れている原生生物の鎮圧をしてきた後だった。

「そうですね………行きませんかバルトさん?私も行きますので、それなら負担も軽いですし、1人でお留守番していたときもあったのですからたまにはいいじゃ無いですか」

バルトが仕事をするようになってヴィヴィオが1人で家にいることが多くなった。そんな状況になってもあまり文句を言わないヴィヴィオ。
なのはは元々何処かに連れていってあげようかと思っていたのだった。

なのはにそう言われ、バルトは考える。
そして………










「ふんふ~ん!」
「ご機嫌だねヴィヴィオちゃん」
「うん!!凄く楽しみ!!」

「…………はぁ」

2日後、なのはも休みでバルトも何もない(ヴィヴィオがなるべく1人にならないようになのはに1ヶ月のスケジュールを教えている)為、ヴィヴィオのお願いを断る事が出来ず渋々了承したのだった。

「バルトさん、ため息ばかり吐かないでください!たまには良いじゃないですか」
「だってよ………何でこの歳で遊園地で遊ばなきゃいけないんだよ………」
「バルトさん、若いのにじじくさい事言わないでください!」
「バルトおじいちゃん?」
「……………帰る」
「えっ、ちょっと!?」
「ごめんごめんバルト!!」

真っ直ぐ入口に戻ろうとするバルトを慌てて止めるなのはとヴィヴィオだった………












「なんやあれ!?遊園地に来た親子にしか見えないで!!」
「なのはも一生懸命オシャレしてるね………」
「なのはやるわね………」

「えっと………みなさん?」

そんな3人をこそこそ追跡する影が4つ。
はやて、フェイト、加奈、大悟である。

「俺さ、今日加奈と遊園地に来る予定だったんだけど………」
「来たじゃない」

一言そう言って再び3人の追跡に集中する。

「はぁ………」
「まあまあ、加奈ちゃんを選んだ事が運のつきなんや」
「はやて、それは聞き捨てなら無いわね。私達、一応管理局のベストカップルよ?」
「いやいや、そのうち加奈ちゃんのプレッシャーに耐えきれなくなって家出するで」
「まあプレッシャーはキツいけどね………」

そう大悟が呟くと、加奈に睨まれ、小さくなる。

「大変だね」
「………まあでもそんな加奈を含めて全てを好きになったんだ。どんなことをされても嫌いにならないよ」
「………生意気」

そんな大悟の言葉にそう一言返した加奈だったが、耳は真っ赤になっていた。

しかしそんな加奈の反応は他の2人には気がつかれる事はなく、

「ドMや………」
「ドMだね………」

はやてとフェイトの中で大悟の立ち位置が決まったのだった………











「バルト~!!」
「ヴィヴィオちゃん!!身を乗り出しちゃ駄目だって!!」

パラシュートがついたかごに乗り、上がっていくなのはとヴィヴィオ。
ベンチに腰かけて休んでいるバルトに手を振っていた。

「全く、空に上がっていくだけなのに何が楽しいんだか………」

そんな事思いながら大きく寄りかかり目をつむる。

「ふぅ………」

再び目を開けると立ち上がり、上着のポケットからタバコを取りだし、すぐ近くにある喫煙所で吸い始めた。

「まあ、ゆっくり一服出来るのは良いかもな」

自宅では吸わせてくれないヴィヴィオとなのは。
外で吸っても直ぐに呼び出されたり、そのまま捨てるとなのはがうるさかったりとゆっくり吸える事がなかった。

「ああ………癒されるわ………」












「顔がニヤけてる………」
「私も初めて見たよ………」
「あんな顔もするのね………」
「でも何かワイルドでかっこいいなぁ………」

「「えっ!?」」
「大悟、あんな感じでタバコぷかぷか吸ってたら分かってるわよね………?」
「いや、俺はタバコは無理。煙だけでも苦しい位だから………」
「ああ、何かヘタレって感じやもんな………」
「分かる分かる」
「事実でもあんまり言わないでくれない?本人が可哀想でしょ?」

「あの………加奈さん、貴方の言葉が一番心に響くのですが………」

そんな大悟の言葉は加奈には届く事が無く、

「だったらもっと頑張りなさい」

と釘をさされてしまったのだった………











「ねえねえお腹減った!!」

散々遊んだヴィヴィオは元気を有り余らせていたが、空腹は感じるらしく、大きな声で2人に言う。

「そうだね、そろそろお昼だし、ご飯にしよっか」
「だな、俺も腹減ったわ」
「………バルトさんはタバコ吸ってばかりじゃ無いですか。いい加減にしないと制限しますよ」
「おい、俺の楽しみを奪うつもりか?それは絶対に許さんぞ!!」
「じゃあほどほどにしてくださいね。別に意地悪で言ってる訳じゃ無いんですから………」
「ちっ………」

「………」

そんなやり取りをしているなのはとバルトをじっと見るヴィヴィオ。

「ん?どうしたのヴィヴィオちゃん?」
「仲が良いね2人共。もしかして私より仲が良いかもね!!」
「えっ!?そ、そんな事無いよ………ね、バルトさん?」
「全くだ、どう見ても俺を縛ってるだけじゃねえか………勘弁してくれ………」
「………」
「な、何だ?何で睨まれなくちゃいけないんだ?」

なのはに睨まれ、たじろぐバルト。

「う~ん大人って難しい………」

そんな2人を見て、ヴィヴィオが呟いたのだった………













「子供って怖いね………」
「かなり直球やったね………」
「純粋すぎる故、怖いもの知らずなのね………ってあれ?大悟は?」
「さっきトイレ行ってくるって行っちゃったよ。あれ?でも長すぎるような………」

そんな事を思い、フェイトは周りを見回すとトイレの前で人だかりが出来ていた。

「サインください!!」
「僕も!!」
「私も!!」

「あっ、ちょっと落ち着いて………」
「何してんやあのバカ………」

大悟はトイレの前で沢山の人に囲まれ、サインをねだられていた。
あまりの多さと勢いに断ることが出来ず、慌てながらサインを書いている。

「ねえねえバルト、なのはお姉ちゃん!!あそこに沢山の人がいるよ!!」
「あれ?本当だ」
「あん?何かイベントやってるのか?」

騒がしい人だかりに気がついた3人は様子を見にそっちに向かっていく。

「あのバカ………!!」
「や、やばいやん!!バレてまう!!」
「帰っちゃおうか………」
「だけどあのバカ、責められたらバラすわよ!!」
「ど、ど、ど、どないしよう………」

そうやっている内に3人は大悟の所に行ってしまい………

「あれ?神崎君」
「あん?エース・オブ・エースか」
「ええっ!!じゃあこのヘタレっぽい人が管理局さいきょーなの!?」

「あはは、久しぶり高町………」

そんなキツいヴィヴィオの言葉に苦笑いしながらなのはに挨拶する神崎だった………











「で、何でここにいるの?今日お休み?」
「あ、ああ。今日は休みで遊園地に遊びに来たんだ」
「1人で………?」
「えっと………」

横目ではやて達が隠れている近くの茂みを見ると、少し顔を出したはやてが顔をブンブン振っていた。

(ばらさないでって事?でも1人で来てるってただの寂しい人なんだけど………)
(いいやん、今更!!昔と比べてみ、昔はもっと酷かったで!!)
(いや、黒歴史の事は出さないでくれ、お願いだから………)

念話で会話する2人。
しかし動揺している大悟は周りから見ると挙動不審な男にしか見えない。

そんな大悟を冷めた目で見ていたバルトとなのはだったが、ヴィヴィオだけ違い、

「ねえねえ、バルト」
「何だ?」
「あそこの茂みに隠れてこっちを見てる人がいるけど………」

そうバルトに声をかけた。

「………だな」
「でしょ?」
「さてどうするか………取り敢えずしょっぴどくか?」
「うん、何か悪いことを企んでたら駄目だもんね」
(まあ大方何処で知ったのか分からねえが、人気のあるあのエース・オブ・エースの様子を見にきただけだろうが………くだらねえ事してやがる………)

そう思いながらため息を吐くバルト。
ゆっくりと歩き、はやてに近づく。

「おい」
「はい?何です………!!」
「うん?ハラオウンか」
「こ、こんにちわ………」

「全く何をしてるんだお前ら………?」
「え、えへへ………」










「紹介しますね、こちら私の友達、八神はやてちゃんです」
「ふぁ、ふぁやてです」
「………」
「大丈夫はやてお姉ちゃん?」

大きく腫れた頬を右手で抑えながら自己紹介するはやて。なのはに受けたオハナシの傷は酷く、その痛みのせいでちゃんと名乗れなかったが心配したのはヴィヴィオだけである。

あの後全員移動し、広い芝生の場所になのはが持ってきたレジャーシートを敷き、みんなで昼食を取りながら話していた。
因みにはやて達4人は購買で買った食事である。

「しかし久しぶりだなフェイト」
「はい、最近行く暇が中々取れませんでしたから………」
「どうだ調子は?」
「はい、やっぱり大変だけど毎日頑張ってます」
「そうか」

「………」
「ふ~ん」
「ほうほう………」

対してフェイトと仲良く話すバルトにそんな2人をじぃっと見つめるなのは。
そんな3人を加奈と大悟が少しニヤつきながら見ている。

「さて、どう思います加奈さん………?」
「いやぁ………もしかしたら親友の男争奪戦があるかも………」
「ハラオウンも満更じゃなさそうだしね………結構押され弱い?」
「バルトさんもフェイトに興味津々って感じだしね」
「それを面白くなさそうな顔で見る高町の顔も完全に恋する女性の顔だね………」
「大悟も分かるようになった?」
「好きな人が出来たら分かるものさ」
「兄さんは相変わらずだけどね………」
「零治がおかしいだけさ………」

はぁ………と互いにため息を吐く2人。

「でな………」
「ねえねえバルト」
「ん?何だヴィヴィオ、今大事な話を………」
「あれって何………?」
「ん?」

ヴィヴィオの指を差した先には空に浮かんでいる鎧が………

「神崎!!」
「う、うん………少し違うけどあれは………俺が戦ったバリアアーマー!!」

はやてに呼ばれ、大悟がそう答える。
そんな事を話している他にも多数現れた。
全部で7機出現した。

「はやてこれって………」
「こんなん知らんよ!!一体誰が………」
「ああっ………!!」

そんなことをを話しているとそれぞれ下に向け、銃口を向けた。

「みんな!!」
「うん!!」
「了解や!!」
「加奈!!」
「分かってる!!エタナド!!」

瞬時にバリアジャケットになった加奈がフェアリーを展開し、発射しようとしたバリアアーマーの射線上に展開した。

「サークルシールド!!」

三基事に三角形に展開したフェアリーはバリアーを展開し、フェアリー達は破損しながらもバリアアーマーの5機の砲撃を防いだ。
………が、2機の攻撃は防ぐ事は出来ず、その砲撃は遊園地のジェットコースターとメリーゴーランドに直撃する。

「行くよ!!」
「うん!!」
「これ以上被害は出させへん!!」
「加奈は………」
「舐めないで、フェアリーが無くたって戦えるわ!!」

そう言って5人は空へと向かう。

「なのはお姉ちゃん!!」
「お前は黙って待ってろ。アイツ等は問題無い、管理局でも最強と言っていい魔導師達だからな………それより問題は………」

「………」
「お前はクレインの所の戦闘機人………」

木の影から現れた女性はフェリアに似た戦闘機人。しかし違っているのは眼帯をしておらず、スタイルが大人の女性である。

「私のドクターを知っている………?まあいい、私の目的はそこの少女、悪いが渡してもらう」
「私………?」
「おいおい、こんなガキが目的とは………クレインはよほど暇と見える」
「貴様がその子の保護者と見えるが本当に何も知らないのか?その子の力、生まれた意味を………」
「生まれた意味………?」
「私の力………?」

「………しかし冥王教会の動きを偵察してくるように言われただけなのに、思わぬ土産があるとは………」
「この騒動は冥王教会が………なのにクレインと無関係………?」
「………余計な事を喋り過ぎたな。悪いがその子を渡してもらおう!!」

そう言うと右の手の甲にブレードを展開する戦闘機人。

「ナンバー3クロネ、敵を撃破後、目標を捕獲する」
「ヴィヴィオ、お前は近くの木にでも隠れてろ!!」
「う、うん!!」

はやて達が戦っている空中の下、バルトとクロネの戦いが始まった………













「サークルバインド!!」
「でやあ!!!」

バインドで縛ったバリアアーマーの敵を大悟が大剣で叩き斬る。
そんな単調な戦いながら2人は2機のバリアアーマーを倒してしまう。

「動きづらい………AMFってこんなに体が重く感じるなんて………」
「加奈の場合は余計だからね。フェアリーをずっと展開している以上、更に負担は増すさ」

破損していたフェアリーを3基だけ修復を集中し、短い時間で再展開した加奈。
そのおかげでバインドで縛る事が出来た。

「大悟は平気そうね………」
「俺の場合は魔力がバカみたいにあるから普段より少し多めに使えば問題無いさ」

そう言いながら他の5機と戦っている3人の所へ向かう2人。
あの7機は砲撃を一斉に行なった後、それぞれバラバラに分かれるように移動した。
まるで何かを探すように。

それぞれ3機に1人ずつ付き、他の2機は加奈と大悟が追っている。

「大悟、どう見る………?」
「敵の思惑がイマイチ分からない。少人数だけで来たって管理局に検挙されるだけだろうし、何で砲撃魔法を発射して散開したのか………まるで誰かを探すみたいに………まさか………ヴィヴィオ!?」
「えっ!?あの子!?」
「もしかして聖王のクローンだって気がついて………」
「でもヴィヴィオちゃんがいた場所にはどのバリアアーマーも向かって無いわよ?」
「………そういえばそうだね。………まあ取り敢えず検挙すれば分かることだし、早く終わらせよう」
「そうね」

そう決めた2人は更にスピードを上げて追うのであった………









「ふん」
「くっ!?」

バルトの拳をブレードで受けとめるクロネ。
しかしその衝撃で2メートルほど後ろに吹き飛ばされた。

「何故デバイスも無しにそんな動きが………」
「ふん、そんな自分で考えろ!!」

そのまま追撃するために拳を突き出すバルト。
そんな攻撃をクロネは横転し、躱した。

「中々機敏だな」
「戦闘機人を舐めるな!ISコンバートフォース」

クロネはそう言うと淡い蒼い光に包まれる。

「何をする気だ?」
「それは受けてみれば分かる………行くぞ!!」

駆け出したクロネはさっきとは段違いなスピードでバルトを襲う。

「何!?」

ブレードの横一閃を体を逸らして避けるバルト。
更にその避け際にカウンターで懐に拳を打ち込んだ。

「うぐっ!?」
(ん?手応えがさっきよりある………だと?)

悶えたクロネはバックステップで距離を取った。

「迂闊だった………まさか反撃されるとは………」
「予想以上の速さとあの脆い防御力………お前のISはまさか………」
「ISコンバートフォース」

更にISを使うクロネ。
今度は赤く光が纏う。

「はあ!!」
「遅い!!」

ブレードを躱すと同時にカウンターを決めるバルト。

「ぐうっ!?」
「ダメージは無い!!」
「くっ!?」

拳に痛みを感じたバルトは一瞬動くが止まるが、何とか首を曲げ、斬り付けようとしたクロネの攻撃をかろうじて避けた。

「お前………」
「相当戦いなれているな………貴様は一体………」
「お前等のドクターは俺の顔も忘れたのか?」
「顔………?いや、確かにある人物に似ている様に見えるが幾分若すぎる………いや、だがもしそうなら確かにその強さも………お前はまさか………」

「バルバドス、出番だ」
『我を使うか?今まで使ってこなかった主が?』
「奴は完全に消し去りたいんでな。あのガキンチョを守るには目に付けられるのは避けたい」
『了解した。我の力存分に使うがいい』
「そうさせてもらう。バルバドス、セットアップ」

バルトがそう言うと体に銀色の甲冑が、そして右腕には自身と同じ大きさ程ある銀色の斧が現れた。

「バルバドス………まさか本当に………」
「さあな。そんな事よりさっさと殺し合おうぜ!!」
「ば、馬鹿な………お前はあの時に確実に………」
「ボルティックランサー!!」

そんな驚愕の表情でいるクロネに雷の槍を複数展開し、一斉に発射するバルト。

「くっ、ワイドプロテクション!!」

向かってくる雷の槍に気がついたクロネは慌てて広範囲に白色のシールドを張った。
しかしそんなシールドを難なく貫いた槍達はそのままクロネに襲いかかった。

「ちっ、やはり魔力を………勢いを失った槍じゃ駄目か………」

クロネに当たった槍達だったが、その攻撃はダメージを与えるにはほど遠く、当たった瞬間消え去った。

「くっ、クロスバインド!」

クロネはバルトをバインドで十字に挟んで身動きが取れないようにする。

「よし、これで!!」

動きを止めたのを確認したクロネはブレードを大きくし、その剣先を向け突撃する。

「………なめるなよ、はあああああ!!!」

大きな怒声と共にバルトから大量の雷が放出され、バインドを破った。

「何っ!?」
「行くぜ雷哮、ボルティックブレイカー!!」

斧に貯まった雷を斧を降り下ろすと同時に向かってくるクロネに向かって放出した。

「ぐううっ………!!」

直撃する寸前にシールドをなんとか張ることが出来たクロネ。
しかし威力は凄まじくシールドを破壊されないように抑えるので背一杯になっていた。

「負けて………たまるか!!」
「いや、お前の敗けだ」

ボルティックブレイカーが終わった瞬間、声が後ろから聞こえ、振り替えるとそこには斧を振り上げているバルトがいた。

「さあ、チェックメイトだ。覚悟しな………」
「お前は本当に………」
「剛雷激震、クリティカルブレード!!」

雷が貯められた斧で地面に突き刺す様に振り下ろすバルト。
その一撃は雷の激しい音を響かせながらクロネを斬り裂き、地面に叩きつけた………









「驚いた、ほぼ人間の体なんてねえじゃねえか………」

体を大きく斬り裂いたバルトの攻撃。
しかし斬り裂いた場所から出血は無く、中は全て金属で出来ていた。

「わ、私達も………試作品なのだ………」
「モルモットだな」
「バリアアーマー………ブラックサレナ………そしてアンドロイド………」
「アンドロイド?」
「ドクター済みませんでした………」

クロネはそう言い残し、完全に機能を停止した。

「バリアアーマー、ブラックサレナ………それは知っているが最後は何だ………?」
『主、高エネルギー反応だ。その小娘爆発するぞ』
「ちっ、証拠隠滅ってか!!範囲は!?」
『狭い………がかなり高威力だ。逃げることをお勧めする』
「ちっ、何がお勧めするだ!!このクソデバイス!!」

慌ててその場を離れるバルト。

「ヴィヴィオ!!」
「あれ?バルトどうしたのそんなに慌てて………」
「いいから来い!!」

無理やり抱きかかえたバルトはそのまま空へと飛ぶ。

「バルバドス!!」
『………ここなら問題無い』
「よし!!」
「わあ………空飛んでる!!」

先程のアトラクションとは違う空に興奮するヴィヴィオ。
その後直ぐ後に大きな音が鳴り響き、先程までバルトが戦っていた場所に大きなクレーターが出来ていた。

「………マジか」
「なのはお姉ちゃん達来ちゃうね………」
「これをどうごまかすか………」
『戦闘か?』
「そうなったら遠くの管理外世界に移る羽目になるな」
「私嫌!!なのはお姉ちゃん達と離れたくない!!」
「だがな………」

「バルトさん!一体何があったんですか!?」

そんな会話をしている内になのは達が爆発に気がついてこっちにやって来たのだった………










「死亡?」
「そうや、バリアアーマー解いたと同時に全員心臓マヒで………」
「口止めってことか………」

あの後、陸の部隊がやって来て犯人達の護送と事後処理を行い、なのは達はその説明をした後、7人で事件現場から少し離れた場所で話をしていた。

「それよりヴィヴィオちゃんよく無事だったね。大きな爆発があったときは本当に心配したよ………」

そう言ってなのはがヴィヴィオを力一杯抱きしめる。

「私は大丈夫だよ、バルトもいたし………それよりなのはお姉ちゃんは大丈夫だったの?いつも家でぐうたらしてばっかだから心配したよ」
「ぐ、ぐうたらなんてしてないよ!!ちゃんと家事とかやってるでしょ!?」
「え~でも終わったらソファによく寝て…フガッ!?」
「ヴィヴィオちゃんそれ以上は駄目!」

慌ててヴィヴィオの口を塞いだが、聞いていた他の皆の視線は温かい。

「あれ?突っ込まないの?」
「い、いや………私達の予想以上だなって………ねえフェイト、大悟」
「う、うん………」
「なのは、お幸せに………」

「えっ?うん、ありがとう」

大悟達の反応がイマイチ飲み込めないなのはだったが、取り敢えずお礼を言ったのだった。

「………で、バルトさん。一体何があったか教えてくれへんか?」

そんな中、5人と少し離れた場所で珍しくはやてがバルトと真面目な話をしていた。緊迫した空気が2人を包んでいる。

「さっきも言ったろ?奴等は爆弾を隠し持ってて、それに気がついたからわざわざ逃げてきたんだろうが………」
「そんなの嘘やね。あんなクレーターを作るような爆弾の資料なんて見たこと無いし、ただの質量兵器の爆発とは違うんや。まるで過剰なエネルギーを爆発させたような………」
(………なるほど、捜査官なだけはあるな………)

そんな事を思いながらもはやてと問い詰めを流しながら答えるバルト。

「そんなの新種の爆弾って事だろ?気にしすぎだ。それに俺だってよく分かってないんだ。何せヴィヴィオを連れていくのに精一杯だったからな」
「そうやったね………ごめんなさいバルトさん………」

ヴィヴィオの名前を出した途端、ハッとするはやて。その後深々と謝った。

「へえ………意外と素直だなガキンチョ」
「な、何頭撫でてるんや………歳だってそんなに変わってないんやから子供扱いせんといて………」

照れながらはやてがバルトの手を払う。

「いやな、どうもフェイトやなのはと比べて体型やすることが子供っぽいからついな………」

そんなバルトの言葉に固まるはやて。

「………なんや、どうせ私は幼児体格や!!性格やってガキですよ!!ランキングでも全てランク外やし、しいてはノリに付き合ってられへんとか………管理局の野郎どもは芸人根性が無い奴ばかりや!!」
「お、おう………」

変なスイッチが入ったのかバルトに怒鳴り散らすはやて。

「なあなあ、私って面倒な女なんかな………自惚れている訳じゃ無いんやけど私って結構可愛いと思うんや………」
「あ、ああそうだな………」
「じゃあ何でやん!?家の家族の子達はランキングに入ってんのに何で私だけなん!?他にも友達もみんな入ってるのに、私だけなんよ………ねえどう思うん!?」
「ちょ、なのは、フェイト変われ………」

「「………………」」

「おい、無視すんなこのやろう!!」
「ちゃんと聞いてるんか!?」

(くそ………もう絶対遊園地なんて来るか………!!)

はやてに体を揺すられながらそう思うバルトだった………













「ドクター、クロネが………」
「ああイクト、クロネは何者かに倒されたみたいだね、自動で発動する爆発をこちらでも確認した」

深々と椅子に座っているクレイン・アルゲイルにイクトが資料を持ちながら話しかけた。

「まさかあの聖王教会の残党に?」
「いや、恐らくは違うだろう。あんなポンコツのバリアアーマーではクロネを倒せないよ。それにもしあの場にいた管理局の魔導師が倒したのなら報告が上がってくる筈………」
「なるほど、報告が無い以上、彼等では無いと………」
「私達の存在を知っているのは黒の亡霊の仲間達はスカリエッティの一味、そしてエース・オブ・エースの神崎大悟と同じ武装隊に居る佐藤加奈。だが後の2人はバリアアーマーの戦闘を行なっていたと報告書にあった。2人もシロだ」
「ですが、黒の亡霊もスカリエッティもここ何年姿も活動報告もありません」
「ああ、だとするとそれらとも別だと言う結論になりそうだね」

椅子から立ち上がったクレインは近くのディスプレイを立ち上げた。

「聖王教会の残党………ヴェリエ教皇がいつまでも管理局に付きっきりで教会を放置していた所為で、誰か他をリーダーに仕立て上げて活動を再開しているみたいだね」
「何が目的だったのでしょうか?」
「恐らく秘密を知っている者の排除って所かな?」
「ヴェリエ様から何か指示は?」
「彼らを上手く利用してアンドロイドとマリアージュシステムの改良を進めろと連絡があった。一体何を考えているのか………」
「ドクター………」
「イクト、そんな心配そうな顔をしなくていいよ。私は私のしたいようにしている、今の所はね。もし彼がその邪魔をする存在になるのなら………」
「やはりあの計画を?」
「ああ。天使の子守唄、『エンジェルソング』を発動させる。その為にも早く見つけなければね………」

クレインの見つめるディスプレイ、そこにはシリンダーの中に入った今より少し小さいヴィヴィオが写っていた………  
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