貧乏でも幸せ
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第一章
貧乏でも幸せ
小林家は貧しい、両親は共働きだが母久美子の実家の借金の肩代わりをしていてその返済に追われている。
その為何もかも切り詰めて生活している、何でも節約で服はユニクロのものをどうにもなくなるまで着てだ。
安いアパートでガスも水道も節約し生活用品や食べものは母がパートで働いているスーパーの特価や半額のものばかりだ。
そうした生活である、しかし。
一家の一人息子の新太小学六年で黒髪を短くし明るい黒く大きな目を持つ彼はよく両親に言っていた。
「食べられるものとお家と服があるだけでいいね」
「そう言ってくれるか」
「そうなのね」
「うん、毎日お風呂だって入られるし」
湯は十日は使うのが普通である。
「いいよ」
「そうなんだな」
「新太は今で満足なのね」
「だってね」
彼は両親に言うのだった。
「お金持ちでも清原さんのお家なんてね」
「ああ、あそこな」
裏で悪事を働いていると評判の市内でも嫌われ者の家の話になるとだ、父の春義も否定出来なかった。細面でやや茶色がかった髪で背は一七〇位で痩せている。顔は息子にそのまま異伝を受け継がせていることがわかる顔だ。
「あそこはな」
「評判悪いしね」
母も言った、息子に受け継がせた黒髪を後ろで束ねおかめ系の優しい顔だ。背は一六〇位でやはり痩せている。
「ご主人は浮気ばかりで」
「奥さんは浪費家でな」
「お家じゃ夫婦喧嘩ばかりで」
「皆嫌ってるしな」
「あんなお家見てたら」
息子は言うのだった。
「幾らお金あってもね」
「幸せじゃないな」
「喧嘩ばかりでな」
「嫌われていて」
「揉めていてな」
「あんな風になる位なら」
両親に真剣な顔で話した。
「今の方がずっといいよ」
「貧乏でもか」
「それでいいのね」
「だって僕達仲いいじゃない」
一家はというのだ。
「喧嘩しないで仲良くやってるね」
「ああ、それはな」
「有り難いことにね」
両親もそれはと答えた。
「出来ているわ」
「本当にな」
「それに」
良心はさらに話した。
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