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星河の覇皇

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第八十五部第一章 国防省への忠告その三十七

「そしてその人物が敵だ」
「連合にとって」
「英雄は敵になるとこれ程難儀な存在はない」
「ブラウベルグ然りですね」
 カバリエは千年前のエウロパに出た英雄の名前を出した、エウロパでは今も国父と讃えられている人物だ。
「あの御仁には連合は苦しめられました」
「エウロパが完全に独立したが」
「それは全てあの御仁が行いました」
「何度も、いや千回は暗殺計画を立てて実行に移したがな」
「一度も成功しませんでした」
 成功しなかったからこそ生きていた、それが何よりの証拠だ。
「見事なまでに」
「そうだった、今のエウロパを築いた」
「あと一歩で完全に連合の軍門に降っていましたが」
「それをさせずにな」
「連合に対して立ち向かいエウロパを立ち直らせ」
「そしてエウロパを独立させた」
「恐ろしい御仁でした」
 まさにとだ、カバリエは語った。
「千年経ってもまだ言われる程です」
「そうだ、実にだ」
「ブラウベルグは強敵であり」
「連合にとっては忌むべき人物だった」
「左様でしたね」
「そう思うからだ」
 だからだというのだ。
「私は今言うのだ」
「敵に英雄が出ること程厄介なことはない」
「実にな」
「だからこそですね」
「ギルフォード総統もな」
「何とかしたいとですね」
「実は考えている」
 カバリエに語った。
「その様にな」
「では暗殺を」
 謀略の中でも最も剣呑なものも出した、連合ではこの謀略は実は殆どない。多くは政治的スキャンダルを暴き失脚させる。
 だが相手が相手なのでだ、カバリエは話に出したのだ。
「そちらを」
「出来ればそうしたいが」
「出来ないですか」
「連合とエウロパには交流がない」
「だからですね」
「あの国に工作員を送り込むことも容易ではない」
「マウリアから潜入させるにしても」
 カバリエはこのルートも出した。
「それでもですね」
「マウリア人なら行き来出来るがな」
「エウロパにも」
「マウリア人を買収して工作員に仕立ててもな」
 そうしてもというのだ。
「それでもだ」
「国家元首である総統に近付くとなると」
「困難であるしな」
「それにですね」
「ギルフォード総統の周りは護衛が多く」
 ガードを固めていてというのだ。
「身辺のことにもだ」
「気をつけていますか」
「その様だからな、例えば食事もな」
 これもというのだ。
「非常に気をつけているらしい」
「毒見もですね」
「しているそうだし服や靴もな」 
 こうした身に着けるものもというのだ。 
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