ドリトル先生の落語
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第七幕その八
「江戸、昔の東京は人口の半分がお侍だったからね」
「武士の人達ですね」
「そうだったからね」
そうした人口配分だったからだというのです。
「落語にもだよ」
「武士の人達がよく出て来るんですね」
「そうなんだ」
「成程、そういうことですか」
「逆に大坂はお侍さんが少なくて」
そうした街でというのです。
「五十万いても数百人位しかね」
「武士の人達がいなかったんですか」
「東西の奉行所と」
「あれっ、奉行所は」
トミーはそちらもと言いました。
「確か」
「ああ、江戸は南北でね」
先生はすぐにそちらのお話もしました。
「大坂と京都は東西だったんだ」
「そうだったんですか」
「それでその東西の奉行所と」
そしてというのです。
「大坂城代と周りの人達が大坂にいて」
「そうしてですか」
「それにそれぞれの藩で詰めている人位で」
「合わせて数百人ですか」
「それ位だったんだ」
「五十万のうちの数百人ですか」
「圧倒的に少なくてね」
大坂のお侍の人達はというのです。
「それでなんだ」
「落語でもですか」
「上方落語ではお侍の人達はあまり出ないんだ」
「そういうことですか」
「何しろ大坂じゃ一生お侍さんを見たことがない人がいたんだ」
「そこまで町人の人が多かったんですね」
「ほら、織田作さんの作品も」
今は幽霊になって大阪の街で楽しく暮らしているこの人もというのです。
「町人の人達ばかり出るね」
「ああ、そうだね」
「当時の大阪のね」
「庶民と言っていい人達ばかりで」
「お侍さんみたいな人達は出ないね」
「そうよね」
「同じ大阪でも司馬遼太郎さんは歴史を書いているから」
それでとです、動物の皆に先生は今度はお野菜の和え物を食べつつお話します。そこには細かく刻んだ昆布も入っています。
「お侍さんも出るけれどね」
「まあ歴史ものだとね」
「やっぱりそうなるね」
「あの人が書いていたのは歴史ものだから」
「どうしてもそうなるね」
「けれどね」
それでもというのです。
「大坂はそうした街でね」
「お侍さんが凄く少なくて」
「落語にも出ない」
「そうなんだね」
「そうなんだ、そして食文化も違うんだよ」
改めてこちらのお話もしました。
「大坂と江戸はね」
「何かね」
その食文化の違いについてです、ダブダブは言いました。
「おうどんのおつゆが違うのよね」
「あっちのおつゆ辛いんだよね」
食いしん坊のガブガブが応えました。
「真っ黒でね」
「いや、墨汁みたいとは聞いていたけれど」
ホワイティも言います。
「本当に黒かったね」
「薄口醤油じゃなくて」
「あちらのお醤油でね」
チープサイドの家族はそちらのお話をしました。
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