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イベリス

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第百十八話 次第に知っていってその三

「そうした時は」
「そうしてくれますね」
「絶対に」
「そうして下さい、幾らその時辛かったり苦しかったりしても」
 速水はここでは達観した顔と声で話した。
「必ず終わります、塞ぎ込んでもしてはならないことがあります」
「自殺ですね」
「そうです」
 その通りという返事だった。
「それだけはです」
「してはならないですね」
「自殺をしますと」
 速水はその場合を残念そうに述べた。
「最悪の結果です、絶望したまま人生を終えるのですから」
「絶望したまま」
「それはまさに最悪の死で終幕です」
「人生の」
「ですから」
 それでというのだ。
「何があってもです」
「自殺はですね」
「してはいけないです」
 こう言うのだった。
「その為にもです」
「お父さんお母さんかですね」
「私にでもです」
「お話をして」
「何でも吐き出して下さい」
「お姉ちゃんにお話してもいいですね」
 従姉の愛のことも思い出して言った。
「そうしても」
「勿論です」
 速水は即座に答えた。
「信頼出来る支えてくれる人なら」
「誰でもですね」
「そうした時は頼ることです」
「そうするといいんですね」
「そしてそうした人が困った時は」
 速水はその時のことも話した。
「小山さんがです」
「お話を聞くことですね」
「そして支えることです」
「それが大事ですね」
「そうした時は逃げないで」
 そうしてというのだ。
「その人のお話をです」
「聴くことですね」
「アドバイスが出来れば出来るべきですが」
「しなくちゃ駄目じゃないんですか?」
「いえ、お話を聞いてくれる人がいるだけで」
 まさにそれだけでとだ、速水は話した。
「その人は有り難いです、小山さんもそうですね」
「そうですね、お話を聞いてくれるなら」
 それならとだ、咲も自分のことに当てはめて考えて頷いた。
「それだけで」
「違いますね」
「気が楽になります」
「そうです、ですから」
「お話を聞くだけでもですか」
「いいのです」
 そうだというのだ。
「それだけでも」
「そうなんですね」
「ですから」
 それでというのだ。
「そうした人が困っている時は」
「アドバイス出来なくても」
「聞くだけでもです」
「いいんですね」
「左様です」
「そうですか、大事なことは逃げないことですね」
「お話を聞くことは向かい合うことです」
 その人と、というのだ。
「そうしてくれる人がいるだけで」
「助かりますね」
「ですから」
「その時は私がですか」
「聞いて下さい」
「そうします、逃げないです」
 咲は速水に答えた、毅然としたその口調には決意がありそれを自覚してそのうえでさらに言うのだった。 
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