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イベリス

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第百十八話 次第に知っていってその二

「そうした風でした、ですが」
「あの人は違って」
「そうした人は全くです」
 こう言っていいまでであったのだ。
「いませんでした」
「そうでしたね」
「軍務では几帳面で規律に厳しかったです」
 そして兵士達には優しかった。
「ですが家庭では」
「いいご主人でお父さんだったんですね」
「非の打ちどころのないまでに誠実な」
「そうですか」
「もっともこの人は公人でも真面目でしたが」
「公私関係なくですか」
「ですがプライベートでは公の場では見せない顔をです」
 そうした一面をというのだ。
「見せていました」
「そうなんですね」
「兎角勤務中とプライベートは違うので」
「実際どうした人間関係か」
「そのことを考えて理解することも」
 そうしたこともというのだ。
「大事です」
「そうですか」
「はい、そして」
 それにというのだ。
「何があっても」
「それでもですか」
「気を落とされても」
 速水は彼女に見せた彼女を占ったカードのことから話した。
「忘れる、ふっ切れる様なことをされて」
「そうしてですか」
「前に進まれて下さい」
「くよくよしないで」
「そうです」
 こう言うのだった。
「宜しいですね」
「そうですか」
「前に進んでこそです」 
 そうであってこそというのだ。
「いいのですから」
「人はですね」
「はい、何かあった時は」
 咲に優しい微笑みを浮かべて話した。
「ご両親にお話されるか私でよければ」
「お話していいですか」
「私は小山さんの雇い主ですし」
 その立場だからだというのだ。
「それにそれがお仕事です」
「占い師の」
「はい」
 まさにというのだ。
「ですから」
「そうした時はですか」
「お話して下さい、お店の人ですから無料で」
「占ってくれますか」
「そうしたこともです」
「してくれるんですね」
「はい」
 そうだという返事だった。
「そうさせて頂きます」
「そうですか」
「ですから何かがあって気落ちしても」
「誰かにお話して」
「そして吐き出したいものを吐き出して」
 そうもしてというのだ。
「そしてです」
「そのうえで」
「忘れる、吹っ切る努力をされて」
「前にですね」
「進まれて下さい」
「わかりました」
 それならとだ、咲も頷いた。 
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