X ーthe another storyー
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第三十六話 隻眼その十一
「案外ね」
「早いか」
「そうかも知れないわ」
「そうなることを願う」
これが神威の今の返事だった。
「それならな」
「そう、前向きにね」
「考えることか」
「最悪の事態を考えてもね」
それでもというのだ。
「それでいてよ」
「前向きに考えることか」
「そうすればね」
「いいか」
「そうよ。私もそうしてきたわ」
火煉自身もというのだ。
「色々あったけれど」
「それでもか」
「神父様にも救われて」
務めている教会にいる彼にもというのだ。
「そう考える様になったわ」
「そうなったか」
「だからね」
「俺にもか」
「そう考えてくれることを願うわ」
こう神威に言うのだった。
「本当に」
「ならそうなる様にしよう」
神威は考える顔で述べた。
「前向きにな」
「考えていくわね」
「そうしていく」
火煉に答えた。
「これからはな」
「ならそうしてね」
「必ずな」
「それじゃあ昴流さんについてもですね」
護刃も笑顔で言ってきた。
「前向きに考えて」
「そうしてだな」
「笑顔でお迎えして」
彼が退院した時はというのだ。
「パーティーを開きましょう」
「そうしよう」
「明るく」
「そして目のこともな」
「きっとですね」
「治る」
今は見えなくなったがというのだ。
「そうなる」
「移植を受けて」
「きっとな」
「そうですね」
「それならな」
「前向きに考えてやっていきましょう」
「これからもな」
護刃に微笑んで応えた、そうしてだった。
天の龍の者達は昴流の退院の時を待つことにした、彼等は戦いの後で新たな考えに至ることが出来た。
その彼等を見てだった、牙暁は夢の中で北斗に話した。
「彼の目は治るよ」
「そうなのね」
「今は見えなくなったけれど」
それでもというのだ。
「やがて」
「角膜手術を受けて」
「そしてだよ」
そのうえでというのだ。
「再び」
「見える様になるのね」
「右目もね」
「目ならね」
北斗は牙暁の話を聞いて微笑んで言った。
「私だってね」
「君も?」
「うん、実は登録してたの」
「そうだったんだ」
「それで私の角膜はずっと使われていないみたいなのよ」
「それなら」
「実は星ちゃんにって登録したけれど」
俯いて残念そうに微笑んで話した、両手を後ろで組みながら。
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