ドリトル先生の落語
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第六幕その八
「具体的には文学のお話を」
「私の芸名ですけど」
また春琴さんが言ってきました。
「春琴って春琴抄ですよね」
「谷崎潤一郎の作品ですね」
「それから取られてるんです」
「そうなんですね」
「師匠があの人のファンでして」
谷崎潤一郎のというのです。
「師匠お弟子さんにはあの人の作品にちなんだ名前付けるんで」
「それで貴女はですね」
「春琴になりました、本名はジェーン=オリビアっていいまして」
本名のお話もするのでした。
「ロンドン生まれなんですが」
「芸名はですか」
「春琴です」
こちらのお名前だというのです。
「それで活動させてもらってまして」
「谷崎潤一郎のお話をです」
上林さんも言いました。
「春琴にお話してくれませんか」
「あの人のお話をですか」
「そうです、イギリスの方から見た」
「僕も谷崎潤一郎は読んでいます」
先生は微笑んで答えました。
「日本を代表する文豪の一人ですね」
「左様ですね」
「独特の耽美がいいですね」
「はい、師匠もそれが好きでして」
春琴さんも言います。
「落語のネタには使えへんですけど」
「お笑いにはですね」
「あまり、まあ美食倶楽部なんて作品はです」
この作品のお話もするのでした。
「おもろいですけど」
「それでもですね」
「耽美とはまたちゃうので」
「それで、ですね」
「あの人のそうしたお話を聞きたいんですが」
「あの人のプライベートでも」
「それで他にも日本のお笑いのことを」
こちらもというのです。
「同じイギリス生まれとして」
「聞きたいのですね」
「はい、お願い出来ますか」
「僕でよければ」
笑顔で応えた先生でした、それで谷崎潤一郎や先生が観た日本のお笑いのことをお話しました、そのお話の後で。
春琴さんは唸ってです、喫茶店のミックスジュースを飲みつつ言いました。
「いや、谷崎潤一郎って色々あったんですね」
「はい、美食家で大食漢でして」
「料亭で出版社の人達にご馳走になって」
「それで執筆のお話しようと思ったら」
出版社の人達がです。
「食べさせてもらっただけだと思って」
「意気揚々として帰ったんですね」
「そうでした」
「そんなことがあったんですね」
「これは落語のネタになりますね」
「はい、これはええです」
春琴さんは笑顔で応えました。
「私古典落語もやりますけど」
「創作落語もですね」
「してまして」
それでというのだ。
「いや、そうしたお話はです」
「落語のネタになりますね」
「しかも私の芸名がです」
「春琴さんなので」
「丁度ええです」
まさにというのです。
「ほんまに」
「そうですか」
「それで日本のお笑いのことも詳しいですね」
このことにも感心する春琴さんでした。
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