仮面ライダーAP
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夜戦編 蒼き女豹と仮面の狙撃手 第1話
前書き
◆今話の登場ライダーと登場ヒロイン
◆アレクサンダー・アイアンザック/仮面ライダーSPR-30ミサイルスパルタン
北欧某国の陸軍中将であり、かつては陸軍最強の精鋭特殊部隊「マルコシアン隊」を配下に置いていた人物。現在は絶海の孤島である海上要塞「シャドーフォートレス島」に左遷されており、自身の野望のために密かにノバシェードと繋がっていた。仮面ライダーのシルエットを想起させる試作強化外骨格を着用しており、銅色の仮面と白銀のボディが特徴となっている。当時の年齢は56歳。
◆ミロス・ホークアイザー/仮面ライダーSPR-27スナイパースパルタン
北欧某国の陸軍少佐であり、旧シェードの元改造被験者でもあった狙撃手。現在は絶海の孤島である海上要塞「シャドーフォートレス島」に左遷されており、自身の死に場所を得られる機会を求めてノバシェードと繋がっていた。仮面ライダーのシルエットを想起させる試作強化外骨格を着用しており、青い仮面と漆黒のボディが特徴となっている。当時の年齢は32歳。
◆忠義・ウェルフリット/仮面ライダーオルバス
アメリカでは騎馬警官として活躍していた父の影響で警察官となった、ハーフの青年。明朗快活でお調子者だが、真っ直ぐな心根の持ち主でもある好青年。天才女性科学者・一光博士が開発した仮面ライダーオルバスに変身する。当時の年齢は21歳。
※原案はX2愛好家先生。
◆真凛・S・スチュワート
ノバシェード対策室の元特務捜査官であり、ヘレン・アーヴィングの同僚にして師匠のような存在だった日系アメリカ人。気高く凛々しい才色兼備の女傑だが、独断専行が災いして対策室から追放されてしまい、それ以降は裏社会で活動する女探偵として独自にノバシェードを追っている。青いチャイナドレスによって強調された白い太腿には、投擲用のダガーナイフを装備している。当時の年齢は27歳。
スリーサイズはバスト116cm、ウエスト62cm、ヒップ105cm。カップサイズはK。
――2020年7月下旬深夜。北欧某国領海内に位置する海上要塞「シャドーフォートレス島」は、凄絶な戦場と化していた。
この当時、ノバシェード対策室所属のヘレン・アーヴィング捜査官が、裸より恥ずかしい格好でこの島に潜入して来ていたのである。島中に鳴り響く警報、轟音、爆音、銃声。その全てが、ノバシェード構成員の巣窟と化していたこの島を脅かしている。
『侵入者を発見! 直ちに侵入者を排除せよ! 繰り返す、侵入者を発見――!』
緊急警報のアナウンスが薄暗い地下要塞の全域に鳴り響き、野戦服姿の兵士達が物々しい重火器を構えながら、通路を慌ただしく走り抜けて行く。そんな彼らの喧騒を他所に、独り悠々とした佇まいで歩みを進めていた「司令官」は――ある1人の若き将校と相対していた。
「……ホークアイザー少佐、どこに行くつもりだ。侵入者の始末に向かえと、私は確かに命じたはずだぞ」
2m近い巨躯と荘厳な覇気を纏うアレクサンダー・アイアンザック中将。この島の司令官である彼は漆黒のマントを靡かせ、眼前の将校を鋭く射抜いている。「侵入者」ことヘレン・アーヴィングの抹殺に動いている他の兵士達とは真逆の方向に歩み出していた将校に、彼は訝しげな視線を向けていた。
「えぇ。今まさに、その『侵入者』の始末に向かっているところです」
「なに……?」
一方、195cmという長身の持ち主である若き将校――ミロス・ホークアイザー少佐は、アイアンザックの迫力を前にしても涼しげな微笑を浮かべている。その全身は青と黒を基調とする強化外骨格に覆われており、彼が小脇に抱えている仮面は、アイアンザックが纏っている旧時代の遺物と同じ意匠が施されていた。
さらにその背中には、身の丈を超えるほどのサイズを誇る大型の特殊狙撃銃が装備されている。ボルトアクション式レバーの存在が窺えるその狙撃銃は、持ち主の鎧――「スナイパースパルタン」と同じ青基調に塗装されていた。
――約11年前の2009年に起きた、旧シェード北欧支部との武力衝突。その戦場において歴史に名を刻むほどの活躍を果たした、この北欧某国の象徴たる絶対的な「英雄」が居た。アイアンザックの元弟子にして部下でもあった、ジークフリート・マルコシアン大佐だ。
彼が率いていた最強の陸戦部隊「マルコシアン隊」は、当時の陸軍が開発した試作強化外骨格「スパルタンシリーズ」の鎧を纏い、旧シェードの怪物達に敢然と立ち向かったのだという。だが、その戦いで部隊は隊長のジークフリートを除き全滅。スパルタンシリーズの試作機全ても大破し、開発計画の責任者だったアイアンザックはこのシャドーフォートレス島に左遷された。
そして唯一生き残ったジークフリートも、「エンデバーランド事変」と呼ばれたこの戦いの後に退役し、消息を絶った。それから約10年後――すなわち今から約1年前に当たる、2019年頃。旧シェードの改造被験者達による自助組織を前身とする武装集団・ノバシェードは、明智天峯を筆頭とする首領格3名を新世代ライダー達に倒され、混迷の時を迎えていた。
そんなノバシェードの混乱を抑えつつ、幹部格の1人として組織の一部を纏めていた天才科学者――斉藤空幻は突如、このシャドーフォートレス島で燻っていたアイアンザックに接触して来たのである。無知な世界にスパルタンシリーズの真の素晴らしさを教えてやらないか、と。そんな悪魔の誘いに、アイアンザックは容易く乗せられてしまったのだ。
そして、この島で開発されたのが――アイアンザックが夢に描いたまま、机上の空論となっていた「ミサイルスパルタン」。そして旧シェードとの戦いで一度は破壊された試作機の一つに当たる、「スナイパースパルタン」だったのである。
ミサイルスパルタンの基本形態に当たる外骨格はアイアンザックの物となり、スナイパースパルタンの外骨格はホークアイザーの鎧となっている。旧時代の外骨格を装着している2人の男は、一触即発の空気の中で視線を交わしていた。
艶やかな銀髪を靡かせる絶世の美男子。そんなホークアイザーの左眼に装着された漆黒の眼帯と、その周りに残っている深い傷跡は、彼が歩んで来た戦いの歴史を強く物語っている。だが、そんな彼の飄々とした佇まいに、アイアンザックは眉を顰めていた。
「……対策室の手先の他にも、この島に潜り込んで来たネズミが居たというのか?」
「司令もご存知の通り、この島のレーダーやソナーは老朽化が著しく、我々に言わせればほとんど使い物になりません。……『私の眼』でなければ、見逃してしまうところでしたな」
「……」
「あぁ、ご心配には及びません。部下達にはすでに、これも司令の指示であると伝えております。……あなたの目が『節穴』だとは、誰も思ってはおりませんよ」
眼帯に覆われた左眼を指差しながら、ホークアイザーは冷ややかな微笑を浮かべてアイアンザックの傍らを通り過ぎようとする。そんな彼を鋭く睨み付けたアイアンザックは懐から水平2連銃を引き抜き、真横を通ろうとしたホークアイザーのこめかみに銃口を突き付ける。
しかし銀髪の美男子は、動じることなく右眼でちらりとアイアンザックの方を見遣っていた。撃てるものなら撃ってみろ、と言わんばかりの態度にアイアンザックの青筋が浮き立つ。
「……貴様のそういう、何もかも見透かしたような『眼』が気に食わん。旧シェードの玩具にされていた敗北者が、偉そうな口を叩きおって。その旧式外骨格を貴様に預けたのは間違いだったようだな」
「おやおや……こんなところを兵に見られては混乱の元になるのでは? 司令官たるもの、大局を見誤ってはなりませんな」
「……その侵入者とやらを片付けたら、直ちに前線の部隊と合流しろ。私の命令は絶対だ……いいな」
「えぇ……もちろんですとも」
いけ好かない存在ではありつつも、その「実力」はアイアンザックも認めているのだろう。彼は忌々しげにホークアイザーを睨み付けながらも2連銃を下ろし、そのまま重々しい足音と共に立ち去って行く。黒マントを靡かせるその後ろ姿を見送った後、ホークアイザーも彼とは真逆の方向へと歩み出していた。
「……奇遇だな、司令。俺も……あんたの存在が昔から気に食わない」
やがて、不敵な笑みを浮かべて本性を露わにした彼は。左眼を覆っていた眼帯を剥ぎ取り、道の端へと投げ捨てながら――通路の先にある出口へと向かって行く。眼帯が外された左眼は妖しい輝きを放っており、その瞳には照準線を想起させる模様が刻まれていた。
◆
「……変わり映えのねぇ戦闘員の群れ。そろそろ飽きたが……付き合ってやるか」
島の海岸線付近に位置する、対空機銃等が設置されているエリア。その地点に降下した仮面ライダーオルバスこと忠義・ウェルフリットはエンジンブレードを手に、迎撃に現れた兵士達を次々と切り捨てていた。燃料タンクへの引火による大火災に飲み込まれた戦場。その地獄絵図に、兵士達の断末魔が轟いている。
(……仮面ライダーオルバス。新世代ライダーの一員であり、ジャスティアタイプの運用も任されている期待のホープか。なるほど、奴の性格にはぴったりのキャンプファイヤーというわけだ)
ホークアイザーが通路から出た先は、その火災現場を観測出来る山の斜面であった。専用の大型狙撃銃を担ぎながら、闇夜の山林へと足を運んだ彼は、双眼鏡の役割を果たしている左眼の能力で、オルバスの戦闘を遠方から観測している。彼が最初に「目視」で発見したヘリコプターは、すでに島から一旦離れてしまったようだ。
通常、狙撃手は観測手との2人1組で行動するものなのだが、彼は旧シェードに改造された左眼の能力により、観測手の役割もある程度こなしながら任務を遂行出来るのだ。左眼だけを改造された元被験者である彼もまた、人間社会に拒絶されこの島に流された「厄介者」の1人なのである。
そして左遷された先でアイアンザックと出会ったことが、彼にとっての最大の「契機」となってしまった。この島に配属された陸軍部隊とノバシェードの癒着を経て「再始動」されたスパルタン計画。その本命であるミサイルスパルタンとは別に「再生産」されたのが、今まさにホークアイザーが装着している旧式外骨格――「スナイパースパルタン」なのだ。
(……だが、少々目立ち過ぎたな。派手な火災のおかげで暗視装置を使うまでもなく、お前の姿がよく見える。俺に死に場所を与えてくれる相手はどうやら……お前ではなかったらしい)
胸部装甲に「SPR-27」と記載されている、青と黒の外骨格。その鎧を纏っていたホークアイザーは鉄仮面を被り、顎部装甲を手動でガシャンと閉鎖する。すると緑色の右眼と赤い左眼が妖しく発光し、全身から蒸気がブシュウと噴き出て来た。腰部に巻かれた、エネルギータンクの役割を持つベルトも眩い電光を放ち、外骨格の「起動」を報せている。
赤い左眼は前方に突き出たスコープ状となっており、ホークアイザーの能力をさらに補強する機能が備わっているようだ。装着前よりもさらに高い倍率でズーム出来るようになった彼の眼は、激しい戦闘を繰り広げているオルバスの姿をハッキリと捉えている。
(仲間を大勢殺ってくれた礼だ。お前のような派手好きには不似合いな、呆気ない死をくれてやる)
背中に装備していた大型狙撃銃を構えたホークアイザーは、左眼でオルバスの動きを観察して風の流れを読みつつ、右眼で狙撃銃のスコープを覗き込む。ホークアイザー自身の技量と改造人間としての能力を活かし、彼はオルバスの頭部に狙いを定めていた。
「……ッ!?」
だが、死に場所を求める孤高の狙撃手は引き金を引くことなく――その場から飛び退いてしまう。彼が身を隠していた茂みに、数本のナイフが飛んで来たのだ。
(奴以外の侵入者が他にもッ……!?)
仮面の内部に搭載されたAI補助機能による索敵能力。その範囲外から投げ込まれた刃に、ホークアイザーは瞠目する。ナイフが飛んで来た方向から即座に「伏兵」の位置を推測した彼は、素早く狙撃銃を構えるが――怪しげな影はそれ以上の疾さで、山林を駆け抜けていた。
だが、その姿は見逃していない。ウェーブが掛かった艶やかな黒髪に、扇情的な青いチャイナドレス。スリットから覗いている白く肉感的な美脚に、ふわりと舞い上がった裾から窺えるTバックのパンティ。そして規格外の大きさを誇る超弩級の爆乳に、細く引き締まった腰つき。むっちりと実った安産型の爆尻。
(あの女、間違いない……! 対策室から除名されたのではなかったのか!? なぜ奴がこの島にッ……!)
ノバシェード対策室きってのエースと恐れられていた、最強の特務捜査官――真凛・S・スチュワート。その存在をノバシェードから知らされていたホークアイザーは、予期せぬ「第3の侵入者」の出現に驚愕していた。
対策室から追放されたという情報はブラフだったのか。それとも、個人的な恨みでこの島に来るほどの狂人だったのか。いずれにせよ、このまま野放しにしておくわけには行かない。彼は素早く標的を切り替え、真凛の影に狙撃銃を向ける。
「んはぁっ、はぁっ、はぁんっ……!」
一方、真凛は何らかの重火器らしきものを背負っているためか、僅かに呼吸を乱していた。豊満な爆乳と爆尻をばるんばるんと弾ませ、くびれた腰を左右にくねらせながら山林の中を走り抜けて行く彼女は、その柔肌から淫らな匂いの汗を散らしている。
「……これで一つ『貸し』よ、仮面ライダーオルバス……!」
海中からこの島に潜入していた彼女の肢体はじっとりと濡れそぼっており、チャイナドレスの生地がぴったりと柔肌に張り付いている。その凹凸の激しいボディラインはありのままに浮き出ており、爆乳と爆尻の躍動をこれでもかと強調していた。
(……オルバスを助けようとしたのがお前の運の尽きだったな、スチュワート。その背中の重火器が命取りだッ!)
そんな真凛の背中に照準を合わせたホークアイザーは、重火器ごと撃ち抜こうと引き金に指を掛ける。「GG-02サラマンダー」のカスタムパーツであるこの重火器には、強力なグレネード弾が装填されている。ホークアイザーの銃弾が命中すれば、誘爆は避けられないだろう。
(終わりだッ――!?)
だが、またしても彼は狙撃の好機を逃してしまう。仮面に搭載された索敵能力が、さらなる「侵入者達」の存在を感知したのだ。そのセンサーが反応したということは、「侵入者達」は索敵範囲外からナイフを投げて来た真凛よりも、さらにホークアイザーの近くに居ることを意味している。
(新世代ライダーが4人、だと……!? まさか、スチュワートがこの島の情報を奴らに……!? くそッ、味な真似を……!)
しかもセンサーの表示によれば、その数は4人。その上、全員が「仮面ライダー」だというのだ。どうやらホークアイザーが居る山林の斜面を下った先にある海岸線から、この島に上陸して来ていたらしい。
このまま真凛を狙撃すれば、銃声と爆炎で間違いなく4人にこちらの存在がバレてしまう。そうなれば、旧型外骨格であるスナイパースパルタンの防御力では、火力で押し切られてしまう可能性が高い。改造人間とは言っても、左眼以外は生身。それにスパルタンシリーズの基本性能は、新世代ライダー達の最新式外骨格には遠く及ばない。発見されて接近戦に持ち込まれれば、まず勝ち目は無いだろう。
(ならばッ……!)
となれば。真凛とオルバスを一旦見逃してでも、今は間近に迫ろうとしている4人の新世代ライダーを始末せねばならない。ホークアイザーは再び標的を変更し、この島に上陸して来た侵入者達に狙いを切り替えるのだった。
「……悪いわね。こんなところで死なせてはならない子がいるのよ」
そんなホークアイザーの様子を横目で一瞥しつつ、真凛は小さく呟く。対策室の武器庫からサラマンダーを盗み出し、この島に単独潜入していた彼女は、オルバス以外のライダー達にも島の情報を流していたのだ。
事前にこの国の現国王から、このシャドーフォートレス島の全情報を渡されていた真凛は、ホークアイザーのことも最初から熟知していたのである。そのため、ホークアイザーに対抗出来る見込みのあるライダー達にも、この島に来るように仕向けていたのだ。
「……大丈夫よ、あなた達ならきっと勝てるわ。そのために、私が呼び寄せたのだから……」
自分の目的に「利用」される形になった4人のライダーに対して、何とも思っていないわけではない。それでも王族の血を引く姫君であり、大切な後輩でもあるヘレンを救うためには、手段を選んではいられなかったのだ。
憂いを帯びた表情を浮かべながらも、真凛は迷いを振り切るように前を向く。そのまま乳房と桃尻をたぷんたぷんと弾ませながら、彼女はホークアイザーが通っていた通路の入り口に飛び込んで行った。そんな彼女の様子を横目で見遣りながら、ホークアイザーは忌々しげに侵入者達の方へと視線を移す。
(……いいだろう、こうなれば1人残らず片っ端から始末して行くだけだ。まずは貴様達から血祭りに上げてやるぞ、仮面ライダー!)
斜面の上に立っているホークアイザーは、下から登って来る新世代ライダー達よりもかなり有利な位置に居る。ここからの狙撃戦で、自分が負ける要素などない。その確信を胸に、ホークアイザーは再び愛銃を構え直すのだった。
後書き
今話から始まる夜戦編では、前章の孤島編で描かれたシャドーフォートレス島事件の「裏側」を描いて行きます! なので孤島編と同じ時期のお話になりますのでご了承ください!m(_ _)m
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