FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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戦略と経験値
前書き
弱虫ペダル結局杉本選手になれないのかと思うといたたまれないし、なんかこの感じ三年連続で同じような展開にするんじゃないかと危惧してる自分がいます。
一年目が神作だっただけにこのままだと本当にアンチになってしまいそう・・・|ョω・`)マァナラナイケドナ
レオンside
闘技場の中央部で向き合う二人。一方は小柄ながら周囲にいるものにもわかるほどはっきりとした高い魔力を有し、一方は背丈こそ高いもののまるで魔力を感じず・・・にも関わらずそれを感じさせないほどの強い殺気を纏っている。
「どうなると思う?レオン」
隣にいた少女は不安そうな声で問いかけてくる。それも無理はない、なぜならここまで狩猟豹の頭に関わった6人全員がこの場に姿を現しておらず、医務室に籠っているのがわかっているからだ。ただ、一夜は恐らく念のための治療も兼ねているのだろうから、一概に全員が戦闘不能状態とは言い切れないが。
「普通に戦えばシリルに勝ち目はないだろうね」
「やっぱりそうだよね」
昨日の戦いぶりを見る限りスカイシーの正体はあいつで間違いない。そしてあいつは一切のブランクも感じさせないほどの力を保有したまま、昨日は妖精の尻尾・・・いや、フィオーレでも指折りの魔導士である二人を難なく倒したのだ。シリルも相当強くなっているしいいものを持っているが、とても勝てるビジョンが思い付かない。
「ただ、可能性がないわけではないのかもしれないな」
「え?」
「どういうことですか?」
横から顔を覗かせたサクラが困惑しているシェリアに変わって問いかけてくる。俺もあくまで憶測なため自信はないが、自分なりの考えを答えた。
「シリルは選手選出の時間が始まったらノータイムで出てきた。これは何かしら勝算がなければできないはず」
「言われてみれば・・・」
しかもシリルは相手の出方を見る間もなく出てきた。端から見ればこの短い試合時間の中で勝利を掴むためにお互いにもっとも力のある魔導士を出してきたと思われる。だが、見方によってはシリルが出てきたことにより、開会式から絡んでいたあいつが引きずり出されたとも見ることができる。
(ただ、それでもシリルが勝てるとは到底思えないけど・・・)
何かあるとは思うけど、どうやってもシリルが勝てるビジョンが見えてこない。ただ、それにも関わらず余裕の笑みを見せている少年の姿が妙に気になり、目を離せなくなっていた。
ソフィアside
「う~ん・・・」
自信満々な様子のシリル。ただ、あの子の勝利を期待している人は少ないんじゃないかなと思う。
「どう?カグラ」
「う~ん・・・どう考えてもスカイシーの優勢だと思うんだが・・・」
「やっぱりそうだよね」
昨日のスカイシーの戦いぶりを見る限りシリルでは・・・ううん、恐らくこの大会に出ている魔導士で勝てる人はいないんじゃないかと思う。そのぐらいあの人は圧倒的で、格の違いを見せ付けられる。
「でもどこかで見たことある気がするんだよなぁ・・・」
開会式でシリルが肩車してもらってたから、たぶん知り合いなんだろうけどどこで知り合った人物なのかは全然わからない。最近シリルと遊ぶ機会少ないからなぁ・・・何とかしてあのお尻ソフィアのものにできないかな?
「始まるみたいだよ」
「お手並み拝見といこう」
ただ、この状況なのにカグラさんは妙に楽しそうにしてる。昨日も相手があのチームだと決まった途端に参加を決めてたし、相当シリルに興味があるんだなぁ。それともまだあのお祭りの負けたの気にしてるのかな?気になるけど聞いたら聞いたで怒られそうだから大人しくしておこっかな。
ウェンディside
『それではこれより二日目!!バトルパート第一試合フェアリーガールズシリルvs狩猟豹の頭スカイシーの試合を始めます!!』
そのアナウンスと共に両者が所定の位置にて戦う構えを見せます。スカイシーさんは銅鑼が鳴ったらすぐさま突進するつもりなのでしょう、いつでも動き出せるような構えになっておりシリルは・・・
「え?」
彼を見た瞬間、思わずそんな声が漏れ出ました。彼もすぐに動き出せるようにしているのはわかるのですが、それがあまりにも極端なのです。相手よりも早く飛び出したいと言う気持ちが全面に出ているのか、片手を地面について相当な前屈みになっています。
「どういうこと?」
「先手を取る必要がある戦法ということでしょうか?」
カナさんもジュビアさんもシリルのあまりにも前傾姿勢に困惑。すると、今度はスカイシーさんが動きを見せました。
「え?」
先程まで自身から仕掛けようとしている様子だった彼はその状態を解きます。まるでシリルがどのように攻めてくるのか見届けるために、受け身の姿勢になったように感じました。
『それでは・・・始めカボ!!』
両者の体勢が決まったところでマトー君が合図を送り、大きな銅鑼の音が響き渡ります。その銅鑼が鳴ったか否かのタイミングで案の定シリルは動いていました。
「速い!!」
すでに敵の真っ正面へと移動している水の竜。ですが、相手はあのギルダーツさんとラクサスさんを圧倒する力の持ち主。正面突破を許してくれるとは考えられません。
『シリルたん速い!!』
『あっという間に間合いに・・・』
『だが・・・』
ここからどうするのか全員が固唾を飲んで見守る中、シリルの取った行動に私たちは目を疑うことになるのでした。
第三者side
正面へと現れた少年。まるで瞬間移動したのではないかというほど素早い動きを見せる少年を見ても、この男は一切動揺することはなかった。
(また一段と速くなったな。だが、正面突破を俺が許すと思っているのか?)
このままならそのまま攻撃を仕掛けて来ても対応は容易にできる。ここから何か動きを見せるのかはたまた力で押し切れる算段があるのか、男はギリギリまで見極めることにしていた。
「水竜の・・・」
両手に水を纏った少年はそれを男の右側へと持ってくる。これにはわずかながらに困惑したものの、想定の範囲内とも言えた。
(利き手側からではなくあえて逆側からの攻撃。意外性はあるが、決め手になるとは思えない。
両手を合わせることで彼が生み出せる魔法は顎一種類のみ。それも頭に入っているため対応は難しくない。しかし、ここで彼の予想とは異なることが起きた。
(!!テイクバックが短い)
予想していた攻撃よりも少年の腕の起動が自身から見て近い位置を通っているのだ。本来ならば最大限の力を発揮するために腕を大きく振る必要のあるその攻撃を彼はあえて短い距離で放ってきた。つまり・・・
(狙いは頸動脈付近か!!)
少年は技の威力ではなく人間の急所になり得る部位を叩くことで一撃必殺を狙ってきたと男は考えた。ギリギリまで見極めに時間を有していたこともありタイミングは際どい。しかし、わずかに男の腕が先に自身の首もとを守った。
(ここからカウンターをーーー)
その一撃を受け流しこちらが仕留めようと待ち構えていたが、少年の腕は自身が読みきった起動に入ってこない。それどころか予期していた攻撃とは異なり、自身に接近したそれはいまだに握り合わされていなかった。
(なんだ?)
何か新たな技があるのかとも考えたが、それでもここから切り返せるとは微塵も考えられない。それほど少年の動きは止まることを考えているとは思えないほど早く、減速していなかった。だが、それが彼の狙いであることに男は気付けなかった。
パンッ
「え?」
『は?』
「なんだ?」
捉えるかと思われた少年の攻撃。しかし、それは予期せぬ形で終わった。男の首もとへと届くかと思われたそれを少年は手を広げ勢いよく叩き合わせたのだ。これには見ていた全員が意味がわからず唖然としている。
「くっ」
だが、それは遠目から見ていた傍観者たちのみの反応。この戦いの最中にいた男はこの猫だましを想定しているはずもなく、彼の手のひらから響き渡った音に無意識に身体が反応し、対局へと流れた。
「もらった!!」
ガードを固めた反対側へと流れた身体。それを少年は待っていた。着地した左足で地面を蹴ると素早く身体を回転させ、今度は右足へと魔力を移動させる。
「しまっーーー」
まるで全てを予期していたかのような少年の切り返しの速さを見て男はようやく彼の狙いに気が付いた。だが、すでに自身の身体は彼の攻撃へと自然と流れており、衝突は免れない。
完全にしてやられた男はあとは自身の身体に彼の蹴りが入るのを待つしかなかった。そのはずだった。だが、彼の培ってきた経験と技術はその絶対に不可能だと思われた反応を無意識に成し遂げていた。
ゴッ
響き渡る鈍い音。会場全体にそれが響き渡ると同時に、一人の身体が地面へと自然落下する。
「はにゃ~・・・」
顎を捉えられたことにより脳震盪を起こしているのか完全に目を回している水の竜。それを見下ろしている男は首もとからわずかに流れる血を拭うと、嬉しそうに笑みを溢していた。
ウェンディside
『しょ・・・勝負あり勝負あり!!』
「えぇ!?」
地面に倒れ込んで動けなくなっているシリル。それを見ていた私は思わずそんな声が漏れ出てしまいました。
「え?何が起きたんですか?」
「いや・・・なんて言えばいいのかな?」
わずか数秒の中に様々な出来事が凝縮されていたことで困惑している私たちは全員が顔を見合わせ首を傾げています。それは会場にいた皆さんも同様で、何がなんだかわからず微妙な雰囲気が流れています。
『これは・・・どういう展開だったんでしょうか?ヤジマさん』
『うむ・・・』
実況のチャパティさんはもちろん、解説のヤジマさんもこの戦いがどのようなものだったのか、説明に困っている様子です。ただ、そんな中この人だけは全てを理解しているようでした。
『狙いはよかったんだけどなぁ、シリルも』
ゲストとしてやってきていたカミューニさんです。彼は何やらシリルのあの謎の行動の意味を理解していたようで、そのようなことを言い放ちます。
『狙いとは?カミューニさん』
『スタートからシリルは駆け引きを仕掛けてたんだ。まずはあの明らかな前傾姿勢。あれをすることでシリルは自分が何かしらの策略を持っていて、そしてそれを仕掛けるために相手よりも速く動きたいと言う意思をわざと見せたんだ』
試合開始前からどよめきが起こる程前のめりになっていたシリル。確かに彼のその姿を見て、スカイシーさんも攻めの姿勢から受け身の姿勢に変わっていました。
『スカイスーくんをあそこに留めるためにあの姿勢を取っていたというわけだね?』
『そ。次にあの猫だまし。あれもあれで意味がある』
敵に防御姿勢を取られたことで咄嗟に不意を突ける選択をしたかに思えたあの行動も、実際には違ったらしい。言われてみると、そのあとのシリルの切り返しは前もって準備していたと言いたくなるほど鮮やかで、そして滑らかなコンビネーションでした。
『あの猫だましがなければ、相手の体勢は崩せない』
『ですが、体勢を崩すなら寸止めでもよかったのでは?』
『いや・・・』
そこまで来てヤジマさんもようやく全貌が見えてきたのか、閉ざされていた口を開きました。
『寸止めではどうやっても途中から攻撃の速度が落ちる。それをスカイスーくんは見逃さないということじゃろ?』
『そうだ。だが、猫だましなら勢いよく手を叩かなければならない分絶対に腕の速度は落ちない。となるとその攻撃で仕留めに来ていると相手は考えて防御、もしくはカウンターを取る行動に出るわけだ』
ギルダーツさんとラクサスさんを倒したあの人なら、シリルのパンチの速度が落ちたり・・・遅くなっていても対応できてしまいますし次の攻撃を予期するきっかけになっていたかもしれません。そう考えると、シリルの行動は全て意味を持っていたのだとようやく理解してきました。
『しかもあの一手は普通の攻撃では起こりえないものがある』
『起こりえないもの?』
『音だよ、音』
ようやくわかってきたと思っていたところなのに、カミューニさんの新たな説明によりまたしても訳がわからなくなります。音が一体何をもたらすというのか、私たちは彼の説明に耳を澄ませます。
『通常の攻撃は自身に到達するまでは何も起きないが、あれなら攻撃が到達していなくても音が鳴る。しかもそれは戦いの最中、通常なら起こりうるはずがないもの。そんな予期していないものが起こったら本能的に顔を背けてしまう』
その結果、スカイシーさんは反射的に身体が逆方向へと流れていました。攻撃を当てていないのに主導権を握り、相手の体勢を崩す。もしこれが本当にシリルの狙い通りなら、あまりにも準備が万端です。
『そして敵の体勢が崩れたところで、シリルは着地の力も使って身体を半回転させる。しかも初手が利き手側じゃなかったから、今度の一撃はもっとも威力の出せる利き手側になる』
あとはシリルは反撃することもできなくなった相手へと攻撃を与え仕留めるだけ。解説されると考えられていて、そして効果的である戦法であることが理解できます。ですが、ここでの結果は違うものになっていました。
『まぁ誤算があったとすれば、スカイシーの能力の熟練度が高かったことと、シリルのリーチが短かったことかな?』
本来ならもうスカイシーさんはただやられるしかなかった立場のはずなのに、彼の闘争本能がそうさせたのでしょうかその拳を振り抜いてきました。さらにはここで浮き上がる問題が二人のリーチの差。頭一つ分以上離れている二人が互いに攻撃を繰り出したことで、シリルの脚が張り込むよりも早くスカイシーさんの拳が彼へと突き刺さり、勝敗を覆してしまったのです。
『まぁ結果だけ見れば奴の勝利だが、内心穏やかじゃねぇんじゃねぇの?あいつは』
そう言っているカミューニさんでしたが、スカイシーさんの表情は笑っているように見えました。ただそれはあまりにも不気味で、何を考えているのかわからなくなってしまうほどに。
第三者side
ジュビアに背負われて闘技場を後にするシリル。その姿を見届けた男はその身体能力を使い、高い壁を飛び越え仲間たちの待つ待機場所へと戻ってきていた。
「お疲れ様」
「やっぱり安定ね、あんたは」
そんな彼を温かく迎え入れる三人。だが、それに応えることなく男は通りすぎると、後ろの壁へともたれ掛かるように背をつけ、そのまま座り込む。
「仕留め損なった」
「「え?」」
彼が言いたいことがわからず顔を見合わせた後、その場から担ぎ出される少年の方を見る女性二人。確かに気を失ってはいるが、その様子から彼が自分たちの狙っていた状態になっていないことを察するのに時間はかからなかった。
「様子見しすぎたんじゃない?」
「かもな」
「私はその方がいい。これで明日、私があいつを倒せばいいだけだからな」
「ふふっ。そうね」
本来の役割を果たすことができなかった彼を誰一人として責め立てることはない。むしろこの結果の方がありがたいとばかりに二人の女性は笑みを浮かべている。
一方、戦いを終えた男は自身の手についた血液をなおも見つめ、一つ息をつく。
「やはりお前は強くなれるな」
そう言った彼の表情は嬉しそうにも見えたが、どこか悲しげなようにも見える。彼は戦った少年と彼の姿を見守っている金髪の少年をチラリと見た後、その場を離れるために立ち上がる。
「その姿を見れるかは、わからんがな」
後書き
いかがだったでしょうか。
次からもバトルの消化になって行きますが、結構対戦カードは凝ってると思います。まぁだから試合時間を短くして文章力がないのを誤魔化してるんですが|ョω・`)ソレモスキル
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