インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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演習にて……
翌日、俺が教室に行くとクラスメイトたちがこっちに冷ややかな視線を向ける。
(ああ。昨日の試合か………)
どうやら代表候補生を雑魚呼ばわりしただけでなく、女の顔面を殴った後に力で物を言わせるような勝ち方をした俺にいい感情を持っていないみたいだ。
「かざみ~ん」
この間延びした女を除いて。
「お前なぁ、俺がどんな立場かわかってきただろ」
「うん。かざみんが実は寂しがり屋さんだってこともね~」
「アリもしない事を捏造するな」
「恥ずかしがらなくていいよ~」
「恥ずかしがってない」
何を考えているんだ、こいつはと真剣に怖いと思う。
なぜ何を考えてこいつは俺に接してくるんだ? 俺といてもメリットなんてないと言うのに。
「お兄ちゃん、高い高い~」
「ああ。わかった。ほら、高いたかーい―――じゃねぇ! 俺はお前の兄じゃねぇっての!!」
思わず釣られてやってしまい、お兄ちゃんの部分を否定するとほんの少し泣きそうになっていたのを見逃さなかった。
「じゃあ、弟?」
「いや、それはないな。というか仮にお前が縁者だとしても姉とは絶対に認めない」
こんな間延びした女を姉とは認めたくない。
「では、1年1組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
そしてSHRでクラス代表は決定したと伝えられた。
「って、ちょっと待て! 何で俺がクラス代表なんだ!?」
「それはわたくしが辞退したからですわ!」
辞退する意味がわからない。
「まあ、勝負はあなたの負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから。それは仕方のないことですわ」
と言えるほどの実力はないだろうが。
「それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして、“一夏さん”にクラス代表を譲ることにしましたわ。やはりIS操縦には実戦が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いに事欠きませんもの」
そしてクラス中からオルコットを賞賛する声が上がる。
「そ、それでですわね、わたくしのように優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂げ―――」
「あ、悪い。俺は祐人に教えてもらうから」
一夏の唐突のKY発言にその場に沈黙が訪れた。
(おそらく、同じ男子だと言う点でそう言ったんだろうな………)
それをどう解釈したのか、オルコットはこっちを睨みつけた。
「で、ですが―――彼はわたくしよりも経験が浅いですわよ?」
「だな。俺は別に強くなろうとか思ってないからオルコットに機動を教えてもらえ。確かお前、剣一本だけだろ」
銃を持っているならまだしも、一夏の場合は剣一本。接近戦しかできないとなれば数多の弾丸を避けるために複雑な軌道を覚えておいて損はない。
(まぁ、本当に強くなるにはそれこそ軍に教わり篠ノ之束の弟子になってISの整備の仕方などを覚えておいた方がいいと思うけど……)
そんなことを思いながら後の光景を眺めていた。……何故か篠ノ之はこちらを睨んでいたが。
■■■
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット。試しに飛んでみせろ」
4月も下旬になり、今日も平和に授業を受けていた。
「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」
先生! 一夏は素人です。
「集中しろ」
どうやら一夏はまだ展開できておらず、再び注意をされていた。というか、右腕を突き出して左手で掴むって、ほかに展開方法はなかったのか?
「よし、飛べ」
一夏の展開が終わると同時に織斑先生は合図し、二人は上昇するが、
「何をやっている。スペック上の出力では白式の方が上だぞ」
「そうは言っても、なんだかんだ言って一夏は素人ですからね」
「どうにかしろ」
「……ゲームとか参考にさせます? SF関連ならそれなりに参考になると思いますよ」
とまぁ、簡単に教えてみる。上ではオルコットが一夏と話をしていて嬉しそうにしていた。
「まぁ、ISについては代表候補生が詳しいですからね。生身ならともかく」
「だな。それにお前は相手を撃つことに躊躇いがない」
「……キツイっすね。あれでも装甲に直撃させただけですよ」
すごいことに、オルコットのISは思いのほか早く修復した。どうやらイギリスの整備員がやってきたらしい。
「一夏っ! いつまでそんなところにいる! 早く降りてこい!」
俺は声の主を見てため息を吐いた。
「何をやっている。馬鹿者が」
もちろん。言うまでもなく叩かれているが。
それに最近では、篠ノ之が何故かISでの練習に積極的に参加している。
(恋の障害は、多いほうが燃えるということか?)
まったく別の意味に解釈しそうだな。今の。
「織斑、オルコット、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10cmだ」
『了解です。では一夏さん、お先に』
そしてさすがは代表候補生といった具合に急下降を成功させる。
(やっぱり、代表候補生は一味違うね~)
これからは篠ノ之は生身を、オルコットはISといった感じにしよう。それなら篠ノ之もチャンスが作られる。
俺は端でその予定表を作っていた。
―――ズドォォンッ!!!
何事かと思ってそっちを見ると、穴を開けた一夏の姿があった。
「………すまないが風宮、馬鹿の代わりに手本を見せてくれ」
「……わかりました」
俺はディアンルグを展開しようとすると、
「あ、風宮くん。ヘルメットは外さないといけませんよ」
そう言ってウィッグを外した。当然、まとめていたネットも外す。
(ここ数日はずっと付けることが癖になっていたからな………)
中から色素が抜けた銀髪が現れる。その姿に周りが唖然とした。
そんなことを構わずに俺はディアンルグを展開して宙へと浮き、200mぐらい登ってそこから急下降―――完全停止を行った。
『………』
その姿を見て全員は沈黙した。
「……風宮。次は武装展開だ。織斑、オルコットもやってみろ」
「了解」
俺は以前見せた状況を思い描いて射撃武器を展開した。もちろん、エネルギーは装填済み。
オルコットもライフルを展開しているが、横に向けていたため注意された。
一夏は展開速度が遅いと注意。だから、素人ですって。
「風宮、オルコット。近接武器を出してみろ」
俺はそれらを収納し、俺はビームソード《炎閃》を二本展開した。
「―――ああ、もうっ! インターセプター!」
何故オルコットは武器の名前を叫んでいるんだろう。
「…何票かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」
「じ、実戦では近接の間合いには入らせません! でるから、問題ありませんわ!」
「ほう。織斑と風宮に簡単に懐を許していたようだが?」
「あ、あれは、その……」
この後、一方的にオルコットに責められた。
「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ」
「……祐人」
「後で俺と本音にパフェ奢れ」
「わーい」
おかしい。率先して帰っていた本音が釣れた。パフェというものは絶大な力を持っているようだ。
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