お嬢さんかお転婆か

「ふわりはふわりだし乱暴な子はね」
「血統書あっても乱暴だよな」
「そうよ、実際あの人達は性格どうとか言って捨てたでしょ」
「碌に見ないでな」
「ふわりの性格は変わってなかったけれどね」　
　その実はというのだ。
「そうだったしね」
「そうだよな」
「血筋はね」
「関係ないな」
「雑種でもお嬢さんはお嬢さんでしょ」
「そうだよな」
「性格次第よ」
　そうなるというのだ。
「それでふわりの性格はね」
「どっちかか」
「どっちでもないでしょ」
　こう息子に言うのだった。
「女の子であっても」
「女の子か」
「犬でふわりの年齢だともう大人だけれど」
　それでもというのだ。
「女の子らしい性格でしょ」
「そうだよな、言われてみたら」
「上品なお嬢様か遊び好きのお転婆か」
「どれかじゃなくてか」
「ふわりの性格は敢えて言うなら」
　そうすればというのだ。
「女の子よ」
「そっちか」
「そうだと思うわよ」
「そうだな、女の子だな」　
　父は妻の言葉に頷いた。
「言うなら」
「親父もそう言うんだな」
「その方がしっくりこないか」
「それもそうか」
「だからな」
　それでというのだ。
「ふわりを女の子としてな」
「これからも一緒にいればいいか」
「ああ、俺達の娘でな」
「俺達の妹だな」
「そうした娘だ」
「そうだな、じゃあふわりそろそろ帰るか」　
　洋介は両親との話が一段落したところでそろそろその時間になったのを見て泳いでいるふわりに声をかけた。
「身体拭いてな」
「ワンッ」
　ふわりも素直に鳴いて応えた、そしてだった。
　プールから出て洋介に身体を拭かれた、その間尻尾を振りながらもじっとしている彼女は女の子らしいと洋介も思ったのだった。


お嬢さんかお転婆か　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２３・９・２２