黒一点の職場で

　　　　　　　　　　　　　　　黒一点の職場で
　高校生の芝原元気一七〇程の背できめ細な肌に大きな二重の目と赤い奇麗な唇にショートの黒髪の彼はアルバイトをはじめた。
　そのアルバイトは地元で有名なスイーツの店だったが。
「へえ、男お前だけか」
「店長さんも皆か」
「若い女の人だけか」
「そうなんだな」
「ちょっと前まで何人かいたらしいけれどね」
　男のスタッフもとだ、彼は学校でクラスメイト達に話した。
「学校を卒業してね」
「皆辞めてか」
「それでスタッフ募集してて」
「面接に来た男の人お前一人で」
「それでか」
「今お店にいるスタッフはね」　
　それはというのだ。
「僕一人だよ」
「それは凄いな」
「周りは若い女の人だけってな」
「ハーレムだよな」
「もう最高だな」
「いやいや、それがそうでもなくて」
　芝原は自分の置かれた環境について羨ましそうに言う友人達に対して少し苦笑いになってこう言った。
「皆仲いいし僕にも優しいけれど」
「それじゃあ問題なしだろ」
「職場の雰囲気いいならな」
「女の人の喧嘩って酷いらしいしな」
「それにいじめられもしてなかったら」
「それでもね、女の人ばかりだろ」
　元気は微妙な顔で話した。
「やっぱり男の人の目が少ないと」
「ああ、うちだってな」
「うちの学校の女子だってな」
「うち元々女子高で女の子が八割だけれどな」
「男の目少なくてな」
「結構あけっぴろげになるよ、それがね」
　どうにもというのだ。
「見えるものが見えても」
「それで見えてもな」
「別に嬉しくないよな」
「風呂上がりのおばちゃんみたいな仕草だと」
「全然な」
「それで見えても見るなって言われるのがヲチだしね」
　見られる方としてはというのだ。
「そうだしね」
「そうだよな」
「そうなるよな」
「どうしてもな」
「いいものじゃないな」
「そう、それに」
　さらに言うのだった。