『曹徳の奮闘記』改訂版
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第八十四話
それから、風呂に入って綺麗さっぱりにした馬謄達三人は玉座にて美羽と面会をした。
「……良いのじゃな馬謄殿?」
「あぁ構わない。私らを十分に活用させてくれるのは袁術軍しかないと思ったからね。蜀は却下だがね」
馬謄は頷いた。
「なら構わないのじゃ。これから宜しく頼むの」
「任せておきな」
美羽の言葉に馬謄は頷いた。
「私の真名は翡翠だ」
「良いのか? 真名を妾に預けて?」
「これからは袁術が主君だからね」
「成る程の。なら妾の真名は美羽じゃ」
そしてそこからは皆で真名の交換が始まるのであった。
「ねぇ美羽。新しい武将も入った事だし今日は飲まない?」
雪蓮が酒瓶を持ちながら美羽に言ってくる。
ちなみにその後ろでは酒飲みズが竹に直訴の紙を付けて訴えている。
なお酒飲みズは星、夏蓮、雪蓮、祭、霞、零だ。
「……雪蓮、自分の仕事はしたのかや?」
「う」
美羽の指摘に雪蓮の表情が固まる。
「ほぅ……」
美羽の言葉を聞いた冥琳の表情が怒りの表情に変わる。
後ろにいた酒飲みズは雪蓮の失態にブーイングをしている。
「ちなみに祭と霞もしてないけどな」
「「ちょ」」
俺がポツリと呟いた言葉に二人がいらん事を言うなという表情をするけど冥琳の表情がだんだんと変わってくる。
……これは酒飲みズも死んだな。
「何を合掌しとんねん長門ッ!!」
「いやなに……幸運を祈るだけや」
「怒られるの決定なのッ!!」
そろそろ自覚しなさいあんたら。
「……まぁ良いのじゃ。許可しよう」
『は?』
……マジですか美羽さん?
「で、でもさ美羽。まだ仕事は片付けて無いんだからさ……」
「構わないのじゃ」
あっさりと言う美羽さんでした。
「ぃやったーーーッ!! 美羽ありがとうーーーッ!!」
雪蓮が美羽に抱きつく。
「わぷ、それで雪蓮。条件があるのじゃ」
「条件? 何々?」
「酒は飲ましてやるからその代わりに仕事の量は三倍に増やすのじゃ」
『………』
……美羽の言葉に皆が固まった。
「……立派になられて……」
「……そろそろ泣く展開止めないか七乃?」
俺は泣いている七乃に言う。
「え? み、美羽。そ、それは流石にやり過ぎじゃないかしら?」
雪蓮が慌てる。
「妾は蜂蜜水を飲むから別に構わないのじゃ……まぁそこまで雪蓮が言うならば別のを考えよう」
「別の?」
「そうじゃ……今残している仕事を二刻で終わらすのはどうじゃ? 仕事が終わらせたら酒を飲んでも良いのじゃ」
美羽がにこやかに言うけど、確か雪蓮の量はかなり残ってるはずじゃあ……。
『是非それで御願いしますッ!!』
途端に酒飲みズが叫ぶ。
「見事過ぎる最敬礼やと……」
普段からちゃんとしとけばええのに……。
「今から我等は死地に入るッ!! 行くぞォッ!!」
『オォォッ!!』
雪蓮の叫びに酒飲みズは雄叫びをあげて部屋に向かった。
「敵は本能寺にありッ!!」
「……長門、それは違うよな?」
「何となく言いました。電波感じたし」
去っていく酒飲みズにそう叫んだ俺に焔耶がツッコミを入れた。
だって何か電波来たし。
「……これが普段から出来ていれば……」
冥琳が頭を押さえながら溜め息を吐いた。
「……頑張れ冥琳……」
「……何か面白いところだな」
翠がそう呟いたのであった。
それからの二刻、雪蓮達はある意味での戦争をしていた。
二刻が過ぎて俺と焔耶が雪蓮達の戦争する部屋に行くと、雪蓮達はやりきった表情をしながら死屍累々となっていた。
「無茶しやがって……」
ネタを呟きながら俺と焔耶は雪蓮達を宴会場へと移送した。
ま、一応仕事はやったからな。
「では新たな仲間の加入を祝って……乾杯なのじゃッ!!」
『乾杯ッ!!』
今は宴会中だな。
「……酒が……酒がこんなにも美味しいなんて……」
「全力で片付けたかいがあったものじゃな……」
雪蓮が涙を流しながら酒を飲み、祭は遠い目をしながら飲んでいる。
「……日頃からしていればいいものを……」
冥琳が頭を押さえながら溜め息を吐いた。
「……冥琳、今日は飲めや。愚痴は聞いたるからな」
俺は冥琳の御猪口に酒を注ぐ。
ちなみに酒屋の親父が作ったどぶろくですはい。
「……私の愚痴は多いぞ?」
「覚悟はしてるよ」
それから二刻は冥琳の愚痴を聞いていた。
「聞いてるのぉ長門ぉ」
「聞いてる聞いてる」
俺の目の前には泥酔したロッタがいる。
ロッタはこれまた酒屋の親父が作ったスルメを食べながら言う。
くっちゃくっちゃ五月蝿いわ。
ちなみにこのスルメは酒のつまみとして呉で爆発的な人気をしている。
俺はチーズやビーフジャーキーがええんやけど、流石に酒屋の親父も作れないらしい。(酒屋を営みながら肴も作ってるからな)
材料があれば作れるらしいけど……手配してみるか。
「ん? 翡翠が見当たらないな」
さっきまで雪蓮と飲んでいたのに……。
探しに行くか、ついでに厠に行きたかったしな。
後書き
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