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神々の塔

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第三十五話 道教の神々その九

「ちゃうかったな」
「そやねんね」
「司馬遷さん始皇帝さんの時代とちゃうし」
 司馬遷が若い頃まだ始皇帝の頃に生きていた人が残っていた位だった。
「幾分仕入れた知識もな」
「その頃の事実とちゃう」
「そやったかもな」
「あの人は絶対に秦が嫌いやった」
 リーも言うことだった。
「史記を読むとな」
「そやねんね」
「それでや」
「秦への記述が批判的で」
「それで始皇帝さんにもな」
「批判的やねんね」
「その一面はあったやろな」
 こう言うのだった。
「司馬遷さんも人や」
「人やと好き嫌いがあって」
「それがどうしても出るわ」
 その書いたものにだ。
「あの人は侠が好きやったし」
「漢気とかやね」
「一本気な人や豪傑が好きで」
 それでというのだ。
「負けた人に何処か優しい」
「敗れ去った人達やね」
「暖かい目で見てて」
 そうしてというのだ。
「その結末を残念そうに書いてたりするわ」
「そうした人で」
「秦については嫌いで」
「どうしても批判的になったんやね」
「そやろな」
「そういうことやね」
「驪山陵は項羽さんが暴いたが」
 リーもまた彼のことを話した。
「項羽さんは好きやったな」
「あの人も大概やけどな」
 中里が言って来た。
「その行いは」
「敵に容赦せんでな」
「二十万の兵生き埋めにしたりな」
 秦の降った彼等をだ。
「秦の皇族を皆殺しにしたり」
「阿房宮を焼いてな」
「驪山陵も暴いて」
「兎角非道模した」
「そやけどな」
「あの人は項羽さんが好きやった」
 そうであったというのだ。
「史記に出て来る人の中でもな」
「項羽さんは特に有名な人の一人やな」
「その文章もな」 
 項羽について書かれた項羽本紀である。
「かなりのもんや」
「力が入ってて」
「特に四面楚歌の場面はな」
 史記において最大の名場面とさえ言われている、項羽がまさに自身の敗北と破滅を確信した時である。
「凄いわ」
「あの場面はな」
 中里も応えた。
「またな」
「名場面やろ」
「ああ、ほんま史記の中でもな」
「史記きっての名文とも言われてる」
 四面楚歌の場面はだ。
「司馬遷さんも力が入った」
「そやな」
「あの人は項羽さんが好きで」
 そしてというのだ。
「力が入ったとしかな」
「思えんな」
「確かに問題点も書いてある」
 その政治力のなさに苛烈で時として殺戮を行うことをだ。 
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