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ハッピークローバー

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第九十五話 蚊に刺されないことその二

「ぼうふら食べるから」
「そうよ、金魚とかね」
「貯水池に飼うのよね」
「そうしたらね」
「蚊が自然と減るわね」
「そうなるのよ」
「そういえばね」
 ここでかな恵はこんなことを言った。
「昔に比べて蚊が減ったみたいよ」
「そうなの?」
「昔に比べて」
「お祖父ちゃんが言うには」
 父方の祖父のことを言うのだった。
「昔はもっとね」
「蚊が多かったの」
「日本は」
「そうみたいよ」
 クラスメイト達に話した、自宅生の娘にもタイの娘にも。
「これがね」
「そうなのね」
「昔は日本もっと蚊が多かったの」
「田舎なんか」
 自然が豊かな場所はというと。
「夏になったらうじゃうじゃ出て」
「油断したら刺される」
「そうなったの」
「蚊帳と蚊取り線香で」
 この二つでというのだ。
「もうガチガチにね」
「身を守ってたのね」
「蚊から」
「刺されたら痒いし」 
 蚊の嫌われる理由の一つである。
「病気も怖いから」
「日本にも日本脳炎あるしね」
「マラリアは殆どなくても」
「それでね」
「蚊は馬鹿に出来ないのね」
「絶対にね」
 いつもの穏やかな口調だが確かなものがそこにはあった。
「お祖父ちゃん言ってたの、何でもひいお祖父ちゃんが戦争に行って」
「ああ、そこでなのね」
 タイの娘はすぐに察した。
「マラリアになったのね」
「助かって生きて帰ったけれど」
 それでもというのだ。
「毎年決まった時期にね」
「あれでしょ」
 タイの娘はかな恵に言った。
「ぶり返したんでしょ」
「そうだったって言ってたの」
「マラリアってそうなのよ」
 タイの娘はさらに言った。
「ぶり返すのよ」
「毎年みたいに」
「そう、だからね」
 そうしたものだからだというのだ。
「余計にね」
「怖いのよね」
「そう、厄介な病気なのよ」
「死ぬ可能性も高いし」
「その蚊に刺されないこともね」
「大事なのね」
「そうよ、ただうちの学校の寮って」
 タイの娘はこうも話した。
「蚊少ないわね」
「そうなの」
「あまり見た記憶も刺された記憶もないわ」 
 こうかな恵に話した。
「子供の頃からそれぞれの寮で暮らしてるけれどね」
「どの寮も蚊が少ないの」
「この学園お池も運河も多くて木も多いのに」
 蚊が多くなる要素が揃っているがというのだ。
「それでもね」
「それあれよ」
 自宅生の娘が言って来た。 
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