イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百十五話 知りたいことその八
「その辺りは難しいんだよ」
「そうですね」
「だから書ける時にな」
「書くことですね」
「そうしないとな」
さもないと、というのだ。
「駄目だよ」
「急死ってありますね」
「それ覚えておいてくれよ」
咲に真顔で言ってきた。
「本当にな」
「何時どうなるかわからないですね」
「人間はな」
その一生はというのだ。
「生きてると絶対に知り合いの人が急にってな」
「あるんですね」
「それがない人っていないだろうな」
こうも言うのだった。
「生きていて一度もな」
「周りの人が急にってことがない人は」
「本当に急死ってあるんだよ」
現実にというのだ。
「今日元気だった人がな」
「急に、ですね」
「朝起きてなんてな」
昨日の夜は元気でもだ。
「それでもな」
「朝起きたら」
「自分だってな」
他の人に限らずというのだ。
「何時どうなるかな」
「わからないですね」
「そうだよ、明日のことはわからないんだよ」
それが人間の一生なのだ、兎角人間の一生程わからないものはないのだ。
「それでな」
「小説もですね」
「書けるうちにな」
まさにそのうちにというのだ。
「書かないとな」
「駄目ですか」
「さぼったりしてな」
そうしてというのだ。
「だらだら過ごしてな」
「書けるうちに書けないで」
「そのまま書けなくなってな」
「それで未完は」
「最悪だよ、書かない作家さんもいるだろ」
「いますね」
咲は嫌そうな顔で答えた。
「実際に」
「そうだろ」
「ラノベの人で」
ある作家を思い出して話した。
「何作品もほったらかしで」
「そのままか」
「二十年はほったらかしで」
そうした状態でというのだ。
「やっと書くの再開して」
「あれだろ、それだけ放っておいたらな」
作品をとだ、マスターは言った。
「どうにもならなくなってるだろ」
「はい」
咲は実際にと答えた。
「作家さんが劣化していて」
「それでだよな」
「もうどうしようもない」
「駄作にか」
「なってました」
そうだったというのだ。
「本当に」
「そうなることもあるな」
マスターもそれはと返した。
「そんな何十年も書いてないとかな」
「作品を」
「その作品も古くなってな」
放置されている間にというのだ。
ページ上へ戻る