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イベリス

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第百十四話 近付きたいその十一

「末路は一つです」
「悲惨なものですね」
「憎しみは自分の命を蝕む様に焼いていくので」
「蝕むんですか」
「そうです、そうしたものなので」
 だからだというのだ。
「やがてはです」
「自分自身をですか」
「燃やしてしまい」
 そうしてというのだ。
「そのうえで、です」
「悲惨な末路ですね」
「復讐鬼の末路は一つです」
 速水はまた言い切った。
「そう言わせて頂きます」
「そういうことですね」
「このお話は下手をすればその人はそうなっていました」
「復讐鬼にですか」
「そしていい結末を迎えませんでした」
「そうだったんですね」
「本当に幸運でした」
 咲にあらためて話した。
「裏切らないお友達と後で恋人が出来て」
「幸せですね」
「はい、覚えておいて下さい」
 ここでだった。
 速水はまず一呼吸置いた、そのうえで咲を見て断る様にして言った。
「人は憎しみに心を支配されるとです」
「復讐鬼になって」
「その末路はです」
「悲惨なものしかないんですね」
「そうです、人は憎むこともありますが」
 この感情を知らない人間はいないのではなかろうか、喜怒哀楽というがそこに憎しみというものを入れてもいい程に人にはよくある感情だ。
「しかしです」
「それに心を支配されると」
「その時はです」
「悲惨な末路ですね」
「途中で憎しみを忘れられるといいですが」
「そうじゃないとですね」
「末路は決まっています」
 悲惨なものにというのだ。
「憎しみを晴らしてもです」
「まだですね」
「憎しみは心に残り」
「自分自身を燃やしていきますか」
「蝕む様に、そして燃え尽きれば」
「そこで終わりですね」
「常に憎んでいますと心に負担もかかります」
 こうしたことも話すのだった。
「そして歪んでいきます」
「だから末路はですね」
「いいものではなくなります」
「心も歪むので」
「そして最後はです」
 それはというのだ。 
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