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イベリス

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第百十四話 近付きたいその二

「安くも済んで」
「いいですね」
「あのお店のコーヒーは」
「むしろ私は紅茶の方がです」
「お好きですか」
「コーヒーもいいですが」
 それよりもというのだ。
「紅茶の方がです」
「だからお店でもですか」
「よく飲んでいます」
 紅茶をというのだ。
「そうしています」
「そうなんですね」
「はい」
「紅茶派かと思っていたんですが」
 店の中でよく飲んでいるからだ、咲は速水に対してこうしたイメージがありそれで今も首を傾げさせつつ言った。
「コーヒーもですか」
「そうです、ですがどちらかといいますと」
「紅茶ですか」
「そうです、尚」
「尚?」
「紅茶は日本です」
 自分の国のものだというのだ。
「やはり」
「そうですか」
「はい、お水がいいので」
「あっ、紅茶もお水ですからね」
「お湯に紅茶の葉を入れますね」
「ティーパックにしてもそうですね」
「ですからお水がいいと」
 それならというのだ。
「紅茶もです」
「美味しいんですね」
「それがお水が悪いと」
「紅茶も美味しくないですか」
「紅茶はイギリスのものですが」
「うちの学校のイギリスの子皆言います」
 咲は八条学園東京校にいる彼等のことを笑って話した。
「日本の食べものもお水も凄くよくて」
「逆にイギリスは、ですね」
「噂通りだと」
「そうです、私もそう思います」
「店長さんイギリス行かれたことあるんですね」
「何度か。ですが常に」
 咲に少し苦笑いになって話した。
「食事には苦労しています」
「お口に合わないですね」
「かなりオブラートに包みましても」
「美味しくないんですね」
「殆ど中華料理かハンバーガーかカレーをです」
 こういったものをというのだ。
「朝食とティータイム以外はです」
「召し上がられていますか」
「はい」
 その通りだというのだ。
「イギリスに行った時は」
「そうなんですね」
「ハリーポッターの食卓を見てもおわかりかと」
「ああ、学校の食堂で食べてますけれど」
「日本の学校の寮よりもです」
「控えめに言って粗食ですね」
「無料でもです」
 それでもというのだ。
「まあ無料でなければ」
「我慢出来ないですね」
「はい、イギリスは食べものはそうした国です」
「やっぱりそうですね」
「紅茶もです」
「日本のものの方がいいですか」
「私もそう思います」
 こう咲に話した。 
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