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第二章
「直新陰流免許皆伝やな」
「そうだよ、滅茶苦茶強いんだよ」
同僚は武芸のことを話した、二人で舩中で話しているが福沢も彼も船酔いは全くしていない。元気なものだ。
「これがな」
「そやな」
「お主は居合だけれどな」
「ああ、わしはそっちやけどな」
福沢は自分の居合好きの話もした。
「そやけどな」
「あの人が剣術強いことはやな」
「聞いててな」
「そこからもやな」
「いけると思ったら」
それがというのだ。
「どうもな」
「船の中ではやな」
「全くやな」
それこそというのだ。
「何もや」
「出来んな」
「正直あれや」
福沢は苦い顔で述べた。
「今のあの人は何でもない」
「お荷物か」
「そや」
まさにというのだ。
「その通りや」
「そやな」
「ああ、いるだけのな」
「それやな」
「正直言うて他の人の方がや」
勝以外のというのだ。
「ずっとや」
「力になっているな」
「そや、正直期待外れや」
福沢は勝について嘆息して述べた。
「ほんまな」
「こんな役に立たんとはやな」
「思わんかった、ただな」
「ただ?」
「アメリカの人達がしってるさかい」
そちらの船員達がというのだ。
「今回の航海はな」
「アメリカまで行けるか」
「それは大丈夫や」
こう言うのだった。
「かなり大変な航海やが」
「それでもだな」
「それ自体はな」
「出来るか」
「勝さんがああでも」
全く役に立っていないがというのだ。
「それでもな」
「大丈夫か」
「頭があかんでも」
これが責任者の勝のことであることは言うまでもない。
「そやけどな」
「他の部分が大丈夫だからか」
「人やったらそれであかんが」
頭が駄目ならというのだ。
「そやけどな」
「船はか」
「頭挿げ替えられるからな」
「人ではないからか」
「一応頭はそのままやけどな」
勝のままだというのだ。
「そやけどな」
「別の人にやってもらうか」
「正直今度の航海にはおられへんが」
福沢は微妙な顔になって話した。
「榎本さんはな」
「幕府のか」
「あの人がおってくれたら」
それならというのだ。
「よかったかもな」
「あの人か、確かにな」
同僚もその話を聞いて頷いた。
「船酔いしないそうだし」
「よかっただろ」
「そうかもな、あの人どうも勝さんを嫌いだったが」
「今回は外されたけどな」
それでもというのだ。
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