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第九十二話 酷い親戚がいないことその七

「そうした人になったのよ」
「何もないのに自分がこの世で一番偉いって勘違いした」
「そんな人になったのよ」
「いや、親御さんが悪いのね」
「そしてその親御さんもね」
「そんな人ね、いやそんな人達が親戚にいないで」
 一華は心から思って言った。
「よかったわ」
「そうね」
「まあ困った人もいるけれど」
 一華は腕を組んでこうも言った。
「中には」
「酒乱の人とかね」
「幹夫叔父さんね、けれど叔父さんも」
 その酒乱の人もというのだ。
「酔って大声出して裸になるだけで」
「絶対にお外で飲まないけれどね」
 店ではというのだ。
「兄さんもそのことはわかってるし」
「そうよね、普段は真面目に働いてるし」
「偉そうでもないわね」
「全くね」
「不満とかもあまり言わないし」
「その人達よりずっとましね」
「正直言ってね」
 母は眉を顰めさせて娘に語った。
「この人達は人間のレベルですらないわ」
「人間以下ね」
「人間未満よ」 
 そこまで酷いというのだ、残念ながらこうした輩が存在しているのもまた人間社会なのである。その悪い一面と言えば言い過ぎか。
「もうね」
「犬畜生って言うの?」
「餓鬼ね」
「それって生きもの以下よね」
「畜生道の下でしょ」
 畜生道が生きものの世界である。
「餓鬼の世界は」
「餓鬼道ね」
「そこによ」
「いるのね」
「そう、この親子はね」
「人間どころか」
「だってどっちも人に寄生してね」
 そうしてというのだ。
「生きて来たし生きて来ているのよ」
「だから」
「そう、その親御さんもね」
 この母親もというのだ。
「まともに働いてないで」
「それでなのね」
「遊んでばかりだったけれど」
「家族のお金でそうしていたのね」
「そうしてね」
「生きていたのね」
「それでお金にもガメつくて」
 そうしてというのだ。
「不平不満ばかりよ」
「人の家に上がり込んで大飯食べたりもして」
「そうもしてね」
「図々しくもあったのね」
「あんた図々しい人嫌いでしょ」
「嫌いよ」
 一華の返事は一言であった。
「それだけで友達でいたくないわ」
「そうでしょ、そうして親子共々生きてきたから」
「餓鬼ね」
「そして餓鬼になったら」
 人減でなくというのだ。
「この人達みたいに誰が何をしても変わらないのよ」
「そんな性根のままね」
「人間として成長することはね」
「ないのね」
「ずっと碌でもないままよ」
 そうだというのだ。 
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