ウルトラセブン 悪夢の7楽譜
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超兵器の証明
果てしなく広がる宇宙の中、一機の円盤が円盤の部隊に追われていた。
「くっ、こんな所で、死ぬわけにはいかない!」
追われている円盤を操縦している蟹のような甲殻を持つ宇宙人は円盤の部隊から放たれる光線を避け続けるが、多勢に無勢であり、ついに光線が円盤に直撃してしまい、宇宙空間故に発火こそしなかったもののエンジン部分に異常が発生してしまう。
「あれは!漸く地球に辿り着けたんだ!」
追われている宇宙人は地球を発見し喜ぶと、そのまま成層圏目掛けて速度を上げる。操縦席では機体の限界を告げる警報音が鳴り響くが、追われている宇宙人は構うものかと言わんばかりの勢いで成層圏へ突入し、自由落下の体勢を整えると、ついに円盤の動力源が完全に機能を停止し、円盤は地球の夜空の中に落下する。それを見た円盤の部隊は地球を背にして去ってゆくのだった。
翌朝になり、墜落した円盤と、円盤から放り出された宇宙人は都内の某所で発見される。
「君、もしかして宇宙人か!怪我はないか!?」
自衛隊員は宇宙人に話しかける。
「ここは…地球…ですか?」
宇宙人はたどたどしい日本語で質問する。
「そうだ!このままでは大変だろう。我々で保護する。」
「本当…ですか?」
「ああ!だから安心するんだ!立てるか?」
自衛隊員は宇宙人に手を差し伸べる。
「ありがとう…ございます。」
宇宙人は棘の生えていない鋏状の左手で自衛隊員の手を取り、立ち上がると自衛隊の輸送機に乗せられ、国際平和委員会の日本支部へ案内されたのだった。こうして、宇宙人は国際平和委員会によってメディカルチェックを受け、化学兵器の実験の痕跡があることから、すぐに治療を受け、1週間後には無事に歩けるまでに体力は回復した。それに合わせ、宇宙人に対するインタビューが生中継で全世界に放送されることになった。当然、マユカの通う高校でも話題は持ちきりになっていた。
「ねぇ、今夜の宇宙人へのインタビュー、観る?」
「当たり前じゃん。人間と友好的な宇宙人の話なんて、私初めてだもん!」
「そんなの、パパやママも初めてだよ!」
「たしかに!マユカも観るんでしょ?」
クラスメイトの話題はマユカにも振られる。
「うん、そうだね。私も観るよ。」
マユカは答えるが、クラスメイト達と異なり、乗り気ではない様子だった。
「どうしたの?こういう話で盛り上がらないなんて、マユカらしくないじゃん。」
クラスメイトも、不思議そうに見る。
「なんかあの宇宙人、ワケアリっぽい感じがするの。」
「ワケアリ?どんな感じの?」
「傷だらけで逃げてきたって話でしょ?そんなに傷だらけだと、二つ可能性が出てこない?」
「どんな可能性?」
「一つは、あの宇宙人が本当に危険な目に遭っていて、悪人から追われていた可能性。」
「もう一つは?」
「あの宇宙人の方が悪人で、私達を騙すために無抵抗のふりをしている可能性かな。」
「マユカは疑いすぎだよ。確かに、最近は何回も侵略目的の宇宙人が来たけど、早々毎回は現れないって。」
「その油断が命取りってこともあるでしょ。」
マユカとクラスメイトの会話をナリユキは横目に見る。
「なんだ、ナリユキも話に混ざりたいんか?」
男子生徒はナリユキに話しかける。
「そこまでじゃないよ。ただ、なんであんな傷だらけで逃げてきたのか気になっているだけ。」
「治安の悪い星だったんじゃねぇの?」
「それだけだとは思えないけど。」
「それも、今日のインタビューでわかる話じゃん。」
「それもそうだね。お父さん達も今日は早く夕食の準備をするから、今日は早く帰るよ。」
「んなの俺達だってそうだし。てか先生だって今日は早く帰りたいみたいな話してたぜ。」
放課後の駄弁りを済ませマユカ達は帰宅し、夕刻になり番組は始まった。
『皆さん、こちらは国際平和機構の日本支部の会議室になっております。いまから、日本支部長によるインタビューが始まります。』
アナウンサーの説明が終わり、カメラは日本支部長と宇宙人の席に向けられる。
『はじめまして、私は国際平和機構日本支部長の白倉と申します。まずは、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?』
日本支部長、白倉は自己紹介を済ませ、簡単な質問から始める。
『ゼクティアン星からやってきました、ゼクティアン星人と名乗るほうがいいでしょうか?』
宇宙人、ゼクティアン星人は種族名で名乗ることが適切が尋ねる。
『個人のお名前とかは、差し支えなければ伺っても良いですか?』
白倉は更に尋ねる。
『俺達バルクティアンに個人の名前はないんです。』
ゼクティアン星人は俯きながら答える。
『バルクティアンとは、どういう意味ですか?』
『俺達の故郷、ゼクティアン星はバルタン星人からの侵略を受け、星が乗っ取られてしまい、バルタン星人によって作られたのが、バルタン星人とのハーフの俺達、バルクティアンなんです。』
『詳しくお話を伺ってもいいですか?』
『はい、この星に来た目的を話す前に、ゼクティアン星に何が起きたのか、話す必要がありますので。ゼクティアン星は嘗ては豊富な資源と工業製品の製造に長けた豊かな星でした。俺が生まれる二十年も昔、バルタン星人の船団が現れ、ゼクティアン星の政府と防衛部隊を虐殺し、ゼクティアン星を支配してしまいました。母の話では、当時のゼクティアン星はサロメ星から購入した最新鋭の自律防衛武器を導入したらしいのですが、兵器開発に長けたバルタン星人の破壊兵器には無力だったようです。そうして星を支配されたゼクティアン星人に待っていたのは、バルタン星人の奴隷となることだったんです。男性は化学兵器の実験台にされ、女性はバルタン星人との子供を無理やり作らされました。そうして生まれた俺達は、バルクティアンと呼ばれ差別階級の扱いを受け、純血のゼクティアン星人より非道な実験のサンプルにされてきました。』
ゼクティアン星人の語った内容は、故郷の悲惨な現実であった。
『それはお辛い経験をなされてきたんですね。それで、地球へ来た目的とは、一体どのようなものですか?』
『俺は地球にあるお願いがしたくて、命をかけて地球に来ました。それは、地球にある超兵器R1号を譲ってもらいたくて、来訪した次第です。』
ゼクティアン星人は飛来した目的を話す。
『超兵器R1号、一体なんのことでしょうか?』
白倉はゼクティアン星人の言葉に疑問を抱く。
『とぼけないでくれ!星を一つ破壊できるほどの威力を持つ超兵器が地球にはあるという話を聞いていたから、俺は命がけでやって来たんだ!その超兵器がないなんて嘘はつかないでくれ!』
ゼクティアン星人は必死に伝える。
『ですが、超兵器R1号なんてものがあるなんて話は我々も聞いたことがありません。』
『無いなんてことはないはずだ!教えてくれ、どうして持っていないなんて嘘を言うんですか!』
『我々も、そんなものはないとしか答えようがありません。』
『それなら無いという証拠を出してほしい。それがないなら、俺は諦めきれません。ゼクティアン星にはもう時間がないんです。俺がこうしている間にも、ゼクティアン星はどんどんバルタン星人の前線基地にされていっているんだ。超兵器R1号の力で、ゼクティアン星を破壊する以外、もう手段が残されていないんだ。』
『だからといって、故郷を破壊するなんて、お母様が悲しみますよ。』
『母さんが悲しむ?母さんは目つきが悪いって理由で8年前にバルタン星人に殺された。母さんだけじゃない。友達も、そのお母さんも、みんなバルタン星人の科学実験や暇つぶしで殺された!死んだ仲間の仇を取るには、もうゼクティアン星を破壊する以外残っていないんだ!解ってくれ!』
『しかし、そんな物騒なものは持たないことは、24年前に確約しているので、我々にもそのような武器があることは把握できていない。』
その後も白倉とゼクティアン星人による対談が続いたが、お互いの話は堂々巡りとなる結果であった。
その夜、ダンの通信機器にマユカからのメッセージが届いた。
“モロボシさん、今日の番組でゼクティアン星人が言っていた超兵器R1号ってなんのことか、教えていただけませんか?お祖父ちゃんに聞いても話してくれなくて。”
メッセージを読んだダンは悩んだ。一宇宙人である自分が地球の内部機密を現地の少女に話すことは内政干渉に該当してしまうのではないかと。悩んだダンはメッセージを返す。
“キリヤマ隊長が話せない内容は、ただの隊員だった僕の口からも言えないんだ。”
やはり、自分が語ることは間違っていると思い、ダンはその旨を伝え、夜は明けるのだった。
翌日になり、学校では昨日の対談の話で持ちきりになっていた。
「昨日のあれ観た?」
「ああいう問題って、どこの星でも起きていることなんだな。」
「それよりさ、あの宇宙人が言っていた、超兵器ってなんのことだと思う?」
「わからねえよ。もしかして、実は議事堂が変形してミサイルになるとか?」
「んなメチャクチャなことあるわけ無いだろ。俺、オカ板を漁ってみたら、すごい都市伝説見つけちゃって!」
「勿体ぶらないで言えよ。」
「いやね、噂によると、今から五十年以上昔に、まだ地球が侵略行為を受けていたときに防衛手段として凄い兵器を作ったって話なんだ。」
「地球が侵略されていたなんて、お前SFの観すぎだろ。」
「嘘だと思うならキリヤマに聞けよ。なあキリヤマ、お前んちのじいちゃん、昔はウルトラ警備隊っていう悪の宇宙人から俺達を守るチームのリーダーをやっていたんだろ?」
男子生徒はマユカに話を振る。
「私が生まれる何十年も昔の話だよ。」
「それで、じいちゃんから超兵器の話とかって聞いたことない?」
「私も昨日聞いたけど、知らないって言われた。」
男子生徒の質問にマユカは素直に答える。
「ほらな、都市伝説なんてそんなもんだよ。陰謀論を語りたいやつが話しに尾ひれをつけて、ありもしないことをさもあったかのように作られるんだよ。」
話を聞いていた男子生徒は肩を叩きながら言った。そんな中でもナリユキは黙って俯いている。
「ソガ、あんまり元気なさそうだけど大丈夫か?」
男子生徒はナリユキの心配をする。
「大丈夫。」
ナリユキは返事をする。
「お前あれだろ?昨日のゼクティアン星人の話を聞いて落ち込んでんだろ?」
「たしかに。ナリユキは悪人なんていないってずっと言ってたもんな。」
男子生徒達は揶揄うように言う。
「人が人と争うなんて間違っているんだ。きっと、深い理由があるんだ。」
ナリユキは必死になって言い返す。そんなふうに話していると、
「授業始まるぞ、席につけ!」
教師の入室によって話は切り上げられたのであった。
放課後になり、マユカはダンと会っていた。
「モロボシさん、やっぱり私、昨日のゼクティアン星人の言っていたことが気になってしまいまして…」
「昨日も話したと思うけど、僕の口から直接話してはいけない内容なんだ。」
「…やっぱり、そういう内容なんですね。」
「どういうことだい?」
「昔、お祖父ちゃんが持っていた秘蔵の書類を見たことがあったんです。プロジェクト・ブルーとか太陽エネルギー計画とか、色々な書類を見て好奇心が刺激されたんですけど、ある2つの書類だけ、見ようとしたらお父さんに怒られたんです。一つはノンマルトとの資料。もう一つが、ギエロン星事案と記されていた書類でした。」
「隊長、忘れていなかったんですね…」
マユカの話を聞き、ダンはつぶやく。
「そのギエロン星については、私達は知りません。でもきっと、そこで何かがあって、超兵器は葬らないといけないことになったんだって、気づきました。」
マユカはダンのことをまっすぐ見つめながら言う。
「残念だけど、僕の口からは直接話せない。だから…」
ダンはマユカにテープレコーダーサイズの無線機を渡す。
「これは?」
マユカは渡された無線機に疑問を抱く。
「三日後の夕方、ゼクティアン星人と話す約束を取り付けてある。その時の会話をそれで聞いてほしい。」
ダンは無線機を渡した理由を説明する。
「わかりました。モロボシさん、その話、ソガ君にも聞かせて大丈夫ですか?」
マユカは対話のことで質問する。
「ナリユキ君になら、聞かせても大丈夫だ。」
ダンからの許可を受け、納得したマユカはダンと別れて帰宅したのだった。
それから三日後、放課後になりマユカはナリユキを引き止める。
「ソガ君、これから時間は空いている?」
「今日はすぐ帰るつもりだったけど、どうしたの?」
「ソガ君に聞いてもらいたいものがあるんだけど、大丈夫?」
「大丈夫だけど。」
「それなら、屋上まで来て。」
ナリユキの了承を得たマユカはナリユキを連れて屋上へ出た。
「それで、聞かせたいものって何?」
ナリユキの質問を受け、マユカは無線機を取り出す。
「いまからモロボシさんがゼクティアン星人と話をするんだけど、その会話がここに流れてくるの。ソガ君には、聞いてもらいたくて。」
マユカは無線機の電源を入れる。
“あなたが俺に会いたいと言っていた、ウルトラ警備隊に所属していたモロボシさんですか。”
“この間の対談は聞かせてもらったよ。君に話したいことがあって、今日は来たんだ。”
扉の開く音が聞こえ、ダンとゼクティアン星人はどこかの部屋へ入っていった。
「この間の話を聞いていたんだったら教えてくれ!超兵器R1号はどこに配備されているんだ!」
ゼクティアン星人はウルトラ警備隊員に聞けば解ることがあるのではないかと期待する。
「落ち着くんだ。あの計画は55年前、計画そのものが白紙になり、資料も全て焼却処分となったんだ。」
ダンは計画の結果を端的に伝える。
「なぜだ!あれだけ素晴らしい防衛設備を、どうして廃棄したんだ!」
「君は知らないだろう。超兵器が作られる過程で、一つの平和な星が理不尽に滅ぼされた現実を。君が生まれる数十年前、ギエロン星という灼熱の惑星があった。生物がいないだろうと思われたギエロン星は超兵器の実験台として使われ、超兵器の被弾によって爆散した。だが、そんな灼熱の惑星にも、必死に生きる生命はあったんだ!肉体の大部分を水分が占めるアメーバ状の生命体が。故郷を失った生命は、地球への報復のために、1体の怪獣となって、復讐しに来たんだ。解るかい?侵略されたくないという我々の思いが、我々自身を侵略者に変えてしまったんだ!どんな侵略者にも、帰る故郷はあるんだ。だから、星を破壊する威力の兵器など二度と持たないという誓いとともに、超兵器計画は封印されたんだ。」
ダンはゼクティアン星人に超兵器が現存しない理由を説明する。
「そんなものは綺麗事だ!お前達は自分を攻撃してくる者に情けをかけるのか!そんなことをすれば、侵略者の思う壺だ!相手はこちらの必死の抵抗を鼻で笑いながら踏みにじっていく。その末路がこれだ!見てみろ、俺の体の一部はバルタン星人のものだ。この姿を見て、ゼクティアン星人だと思ってもらえるか?無理だろう。だって、左腕はどう見てもバルタン星人のものなんだ。奴らは、自分の故郷を爆破しただけに飽き足らず、無力な惑星に次々と侵略している。その暴挙を止めるには、バルタン星人の根城となった惑星を破壊するしかないんだ!」
「それで、そのバルタン星人が逃げて、別の星を侵略したら、その星も破壊するのかい?」
「当たり前だ!侵略者を討たない限り、負の連鎖は永遠に続いていく!」
「それは、終わりの見えない競争のようなものだ。星を破壊すれば、多くの命が失われる。そうなれば、その報復のために、新たな星が犠牲になる。」
「なら、既に侵略された星の住民には犠牲になれというのか!」
「そうではない。攻撃を受けているなら、ウルトラマンに救援を求めるとか、方法はあったはずだ。」
「侵略者が侵略する際、初めにすることは何か解るか?外星との通信手段の排除だ。侵略されたゼクティアン星は最後まで救援信号を送った。しかし、破壊された設備では、誰も救援信号をキャッチできなかったんだ。お前達は、自分が同じ状況に追い込まれても、誰かの助けを信じるのか?」
「当然だ。それが、平和を信じるということだ。」
「そういうのを、この星では人任せとか、他力本願とか言うんじゃないのか!それでもし間に合わなかったらどうする!お前達は侵略者に“どうぞ私達を根絶やしにしてください”とでも言うんか?だとしたら、お前達はウルトラマンがいなければ滅んでいた欠陥人種だな!」
「そこまでのことは誰も言っていないだろう。落ち着くんだ。」
荒れるゼクティアン星人をダンは宥めようとする。しかし、
「折角ウルトラ警備隊員が話をしたいというから期待していたのに、とんだ期待はずれもいいところだ。こうなったら、なるべくやりたくなかった手段だが、仕方がない。俺達には時間がないんだ!」
ゼクティアン星人はそういうと、目映い光を放つ。日が沈んだ夜空にはその光は白く映り、その光から巨大化したゼクティアン星人が出現する。
「地球人類に告ぐ!今すぐ超兵器R1号を渡せ!もし拒否するならば、一時間毎にこの星の国家を一つずつ破壊する!」
ゼクティアン星人は棘の生えた右手の鋏を国会議事堂に向ける。
「こんなことをしても、何も変わらないだろう。デュワッ!」
ダンはセブンに変身する。
「デュワッ!」
セブンはすぐにファイティングポーズを取る。
「フォッフォッフォッフォッフォッ…」
ゼクティアン星人は鋏を構えて突進するが、セブンはそれを華麗に避ける。
「デュワッ!」
セブンはすかさずワイドショットを放ち、ゼクティアン星人に命中しそのまま倒れるが、ゼクティアン星人は脱皮することで攻撃を無力化し、右腕の鋏から日本刀のような刀を出現させ、握りしめる。
「デュワッ!」
セブンは刀を落とすためにアイスラッガーを飛ばすが、ゼクティアン星人は華麗な刀さばきでアイスラッガーを撃ち落とす。
「フォッフォッフォッフォッフォッ…」
ゼクティアン星人はそのままセブンににじり寄る。その時、セブンはふとあることを思い出す。そして、
「デュワッ!」
セブンはウルトラ戦士が覚える基本的な必殺光線、スペシウム光線をゼクティアン星人の右胸に放ち、命中させる。光線を受けたゼクティアン星人は刀を落とす。
「…そうだっな。バルタン星人はスペシウムに弱い遺伝子だったな。ああ、これで混血児を含めて、ゼクティアン星人の血筋は完全に途絶えたな。今日からゼクティアン星は、名実ともに第二のバルタン星になったな…覚えておくんだ。そして、あの時に超兵器を渡さなかったことを、後悔するんだな…」
ゼクティアン星人は怨み言のようにつぶやき、爆散した。それを見て、セブンはダンの姿に戻る。
「モロボシさん、ゼクティアン星人の言っていたことって、本当だったんでしょうか?」
ダンに駆け寄ったマユカはダンに質問する。
「今となってしまっては、誰にも分からない。だからといって、他の惑星の平穏を脅かしていいことの理由にはならないんだ。」
ダンは答える。すると、そこにナリユキが駆け寄ってくる。
「モロボシさん、俺、ずっと授業を受けていて、侵略者が来たら植民地にしてもらえばいいって思っていました。でも、今回の件で、何が正しいことがわからなくなりました。」
ナリユキは泣きながら言う。
「悩むといい。」
「えっ…」
ダンの言葉にナリユキは驚く。
「若いうちは、いくらでも悩むことができる。大人になると、悩みたくても悩めなくなる。間違っていても、ハイと頷いてやらなければならなくなる。悩めるのは、子供の特権だ。思い切り悩めば、それだけ大人になれる。」
ダンはナリユキの肩を叩くと、月明かりに照らされた夜の町並みへ歩いていってしまった。
「ナリユキ、ダンに会ったのか。」
ナリユキの後ろから、ソガが現れる。
「祖父さん。」
「ナリユキ、お父さん達がどうしてナリユキという名を与えたか聞いたことはあるか?」
「ない。」
「ナリユキ、お前の字は成幸、即ち自分の手で成し遂げなければ、幸せは訪れないという意味だ。」
「その幸せって、俺だけの幸せなの?」
「それを決めるのも、ナリユキ自身だ。」
「わかった。俺の名前の意味、教えてくれてありがとう、祖父さん。」
「おっ、ダンと話したことで、顔つきが良くなったんじゃないか?あいつの話は、為になることがあるからな。」
ナリユキとソガは肩を組む。2人の溝は、少しでも埋まったようだった。
後書き
悪魔の証明
悪魔は存在しないということを証明しろ、などのように“〜ではないこと”を証明することは不可能であり、証明しようがない中で責め立てる論法の一つ。このような論法を多用する人は嫌われやすいので注意が必要である。例えば、「多重国籍ではないことを証明しろ」という場合、国交のない国の国籍を所有していない証拠は出せないため、その可能性が微弱でもあるとして、証明しろといった側は執拗に攻めてくるからである。
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