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イベリス

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第百十二話 九月が進みその十

「そうした世界であり小山さんの人相から見るご性格も考えますと」
「裏の世界にはですか」
「入れば」 
 その時点でというのだ。
「不幸になります」
「そうなりますか」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「これからもです」
「真面目にですね」
「生きていって下さい」
「そうすれば幸せになれますね」
「はい。真面目に生きて」
 そしてというのだ。
「その中で遊ばれることもです」
「いいですね」
「遊びもです」
「いい遊びと悪い遊びがありますね」
「遊び自体は悪いものではありません」
「昔遊んでないで働けとか勉強しろとか言う人いましたね」
「そんな人こそ碌でも遊びに浸っているものです」
 速水は咎める様な声で述べた。
「家族をほったらかしにして」
「それで自分は遊び惚けて」
「まともでないものです、適度にいい遊びをすることです」
「遊びに溺れないことでしょうか」
「その通りです、遊びで気分転換や英気を養うことをして」
 そしてというのだ。
「そのうえで、です」
「お勉強やお仕事をですね」
「していくことです」
 そうすべてきだというのだ。
「あくまで」
「そういうことですね」
「はい、よく遊びよく学べです」
「いいことは」
「働くだけの人という人もいますが」
 世の中にはだ、中にはそうした人もいるのだ。
「随分と杓子定規で融通が利かず面白みのない」
「そんな人ですか」
「そうした人になったりします」
「お仕事だけだと」
「そしてお仕事を離れると」 
 その時はというと。
「もう何もない」
「定年とかになったら」
「そんな人もいます」
「何かそれはそれで嫌そうですね」
「事実空虚と言えば」
 速水は咎める様な声をそのままにして咲にさらに話した、右目だけでなく髪の毛に隠れている左目でも見て話すのだった。
「空虚としかです」
「言えないですか」
「そうした人生です」
「そうなんですね」
「こうした人生を送りますと」
 それならというのだ。
「残念です」
「空虚だから」
「人間は色々なものを知った方がいいのです」
「遊びもですか」
「はい、それは趣味もであり」
 そしてというのだ。
「趣味も遊びと言えばです」
「遊びですね」
「兎角色々なことをです」
「知ってこそですね」
「人生はいいものになります」
「だから私もですね」
「いい遊びをです」  
 こう言えるものをというのだ。
「真面目に生きる中で」
「していくことですね」
「悪い遊びは麻薬だったり不倫だったり暴力だったり」
「そんなものですね」
「こんなもので楽しんでいいことはありません」
 速水は断言した。 
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