イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百十二話 九月が進みその七
「とても。いい人と出会えましたね」
「あっ、実は」
あの警察官のことを思い出してだ、咲は答えた。
「そうなんです」
「やはりそうですか」
「まだお名前も知らないですが」
その警官のことをさらに話した。
「とても素敵な人です」
「そうですか、出会いはです」
それはとだ、速水はここまで聞いて述べた。
「時として人の運命を変えます」
「そこまでのものですね」
「そうです、ですから」
それでというのだ。
「出会いは大切にして下さい」
「いい出会いはですね」
「悪い出会いは避けて」
出会ってもというのだ。
「そしてです」
「大切にすることですね」
「はい」
まさにとだ、速水は話した。
「そうされて下さい」
「そうします」
咲もそれはと答えた。
「絶対に」
「そうすればです」
速水はさらに話した。
「小山さんは幸せになります、ただ」
「ただ?」
「出会いは時として残念な結果にもなります」
「残念な」
「ですが」
それでもというのだった。
「そうなってもすぐに気を取り直すことです」
「すぐにですか」
「暫く泣いてもいいですから」
「気を取り直すことですか」
「沢山泣いて飲んで」
そうもしてというのだ。
「そしてです」
「忘れることですね」
「悲しさを、そして」
「また幸せに過ごす」
「残念な出会いもです」
これもというのだ。
「人は忘れられます」
「そうなれますか」
「はい、小山さんもです」
咲もというのだ。
「必ずです」
「残念な結果に終わっても」
「それでもです」
「それを忘れられますか」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから」
「私もですか」
「そうした時が来れば」
「泣いてお酒を飲んで」
「その時は好きなだけ飲んで下さい」
そうしろというのだった。
「是非」
「お酒ですか」
「お酒はそうした時の為のものでもあります」
速水は微笑んで話した。
「ですから」
「飲むといいんですか」
「未成年ですが」
それでもというのだ。
「私はそうした時はです」
「店長さんは言われないですね」
「実は私も飲んでいましたから」
「未成年の時から」
「煙草は吸いませんが」
笑って言うのだった。
「ですがお酒は好きで」
「それで、ですね」
「よく飲んでいまして」
未成年の時からというのだ。
ページ上へ戻る