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ボロボロの服を着ていた娘が

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第二章

「お母さんはどうかしら」
「いい人ね」
 母は彼の穏やかな顔立ちと雰囲気そして目も見て答えた。表情や雰囲気以上に穏やかでこれ以上なく優しい光を放っている。
「その人ならね」
「大丈夫?」
「ええ、きっとね」
「あの、それでなんですが」
 その淳史が言ってきた。
「お身体が弱いと聞いたので」
「それでなの」
「僕の両親は健康で姉夫婦が同居しているので」 
 それでというのだ。
「よかったら」
「一緒に住もう、お母さん」
 娘も言って来た。
「そうしよう」
「いいのね、そうして」
「お母さんさえいいなら」
「それじゃあね」
 母も頷いた、そうしてだった。
 弘美は淳史と結婚し澄江と同居した、そしてだった。
 三人でマンションに住んで夫婦共働きで働き澄江は在宅ワークをはじめたが。
 娘が今着ている服を見てだ、母は言った。
「昔はボロボロの服をつぎはぎして着てたけれど」
「お母さんもね」
 娘も今の自分の服を見て言った、普通のセーターとスラックスだが普通の店で買ったばかりのものである。母も同じ様な服だ。
「そうね」
「食べものも住む場所もね」
「あってよかったわね」
「よかったの」
「あるだけね、けれど今はもっとよくなって」
 娘はそれでと笑顔で話した。
「私最高に幸せよ」
「そうなの」
「お母さんもいてくれたしね、ずっと」
「迷惑かけたわね」
「かけてないわよ、二人でいられてね」
 母娘でというのだ。
「私幸せだったわ、衣食住だってあったし」
「それで今は」
「淳史さんもいてくれてるし」 
 真面目で優しい夫がというのだ。
「最高よ」
「あの状況で幸せって言えるから」
 それでとだ、母は思った。
「あんたは今みたいに凄く幸せになれたのかしら」
「そうなの?」
「ええ、そんな娘を持って」
 ボロボロの服を着てもあるだけと思えた娘をというのだ。
「お母さんも幸せよ、じゃあこれからもね」
「幸せに暮らすのね」
「そうしていきましょう」
 こう言うのだった、そしてだった。
 一家は孫息子も出来てさらに幸せになった、だが澄江は自分は最初から幸せだとわかった。ボロボロの服を着ても着られるだけ、自分がいてくれているだけで幸せだと思って行ってくれた娘と一緒に暮らせて。


ボロボロの服を着ていた娘が   完


                   2023・8・18 
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