X ーthe another storyー
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第三十話 勇気その九
「是非ね」
「そうして欲しい位だね」
「姉さんはずっと苦しんできて」
彼女のことも話した。
「そしてね」
「今もだね」
「そうしているから」
だからだというのだ。
「何とかして」
「苦しみから解放したいね」
「姉さんだけだったから」
庚は辛い顔と声になって話した。
「身内で優しくしてくれたのは」
「庚は夢見じゃなかったからね」
「ええ、姉さんが夢見であって」
それでというのだ。
「皆姉さんばかりを大切にしていたわ」
「まして丁は目が見えないし耳も聞こえないし」
「まともに動くことさえ出来ないから」
そうした身体だからだというのだ。
「尚更ね」
「皆彼女を見て」
「姉さんだけを大事にしてね」
「貴女は無視されたね」
「人が付いてくれてお金も不自由しなかったわ」
「けれどだね」
「身内からの関心も愛情もなかったわ」
このことは悲しそうに話した。
「ただお金と人があるだけで」
「それはそれで寂しいね」
「まるで砂漠にいる様だったわ」
庚はその頃を思い出しつつ話した。
「もうね」
「そしてそんな中でだね」
「姉さんだけは。心を送ってくれて夢の中でも」
「貴女に接してだね」
「愛情を注いでくれたわ」
そうだったというのだ。
「ただ一人ね。だから」
「それでだね」
「私も愛情を持っているから」
それ故にというのだ。
「何としてもね」
「あの人を助けたいね」
「そしてそれがね」
「貴女の本当の目的だね」
「人間がいても地球は滅びないわ」
「地球はそんな小さなものじゃないね」
「悲鳴をあげていてもね」
それでもというのだ。
「それは表面のことで」
「卵の殻だね」
「中身が詰まった卵のね」
「ほんの一部で」
「人間は所詮と言っていいわ」
「そうした存在だね」
「その人間が何をしようともね」
例え、そうした言葉だった。
「大したことじゃないわ」
「そうだね」
「だからね」
それでというのだ。
「私はね」
「人間を滅ぼすつもりはないね」
「ええ、地球は地球の力でよ」
それ自体でというのだ。
「救われるわ」
「そうなるね」
「そして人間に愛情はないか」
庚はこのことも話した。
「私は人生を楽しむこともしていて」
「さらにだね」
「皆も好きよ」
「僕達もだね」
「ええ、今言った通りだよ」
「それが答えだね」
「だからね」
それでというのだ。
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