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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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迷宮

 
前書き
今回の競技のモデルもわかる人にはわかります。
何なら競技パートもバトルパートも全部モデルがあるので悪しからずm(__)m 

 
シリルside

『大魔闘演武二日目!!本日のゲストは評議院よりカミューニさんです』
『どもども』

昨日のゲストは運営側からリュシーさんが来ていたけど、今日も例に漏れずカミューニさんがゲストに来ているらしい。

「今回のゲストは全員評議院から出るのかな?」
「そうかもね」

世界的に放送されていることを考えても変なことを言いそうな人をゲストにするわけにはいかないのかもしれない。もちろん全く関係ない人を呼ぶのは解説にも影響が出るから難しいのだろうけど、カミューニさんなら問題ないだろう。

「それでは早速、大魔闘演武二日目を始めて行きますカボ」

闘技場の真ん中でそう宣言したのは大魔闘演武公式キャラクターのマトー君。てっきり昨日いなかったから引退したのかと思ってたけど、健在なようでどこか安心した自分もいる。
















第三者side

「知ってる?あれの中身この国の国王らしいわよ」

仮面を被っている長い髪をした女が隣にいるショートヘアの女へと話しかける。それを聞いた彼女は驚いたような、何をやっているのかと呆れているような声で返事していた。

「正確には前国王だ。今は娘にその座を譲っている」
「ほぅ、そうだったのか」
「なんで知らないんだよ」
「興味がないからな」

一方の男三人はどこか気が抜けたような会話をしている。しかし、すぐにある疑問に至ったのかショートヘアの女性が問いかけた。

「なんで昨日はあれ、いなかったんだ?」

カボチャの被り物をしているマトー君を指さしながらそんなことを言う。それにロングヘアの女性は首をかしげ、大男も首を横に振る。

「あいつが配慮したみたいだぞ。俺たちの正体を探ろうとする奴が出ないようにな」

長身の男の言葉に全員が納得したような反応を見せる。それを受け全員が笑っている中、隣にいる男二人よりもやや背の低い人物はタメ息をついていた。

「それなら最後まで参加させなければ良かっただろうに」


















シリルside

『本日二日目の競技パートは迷宮(ラビリンス)です!!』
「迷宮?」
「迷路ってことかな?」

前回の大魔闘演武では魔力を使って様々なステージを作り上げていたことを考えると今回はそれと同じようなもので競技場を作るのだろう。そんな推察をしていると、マトー君が手を挙げて全員の視線を集める。

「ルール説明は私から。今回はこちらの迷宮を使って行っていくカボ」

そう言って彼が手を振ると地面から巨大な壁が大量に浮かび上がってくる。待機場所は闘技場全体を見渡せるためそれが次第に建物のようになっていることはすぐにわかった。わかったけど・・・

「迷宮?」

当初想定していたのは迷路とは少し違うというか、上からみる限りは迷宮というよりもいくつもある部屋に扉が付けられているところを見るとRPGのクエストのような印象を受ける。

「皆さんにはこの中に入りそれぞれのゴールを目指していただくことになりますカボ」
「それぞれのゴール?」

マトー君の言い回しに顔を見合わせる俺たち。それは他のギルドも同様なようで、ざわつき始めているのがここからでもわかった。

「それぞれってことは、ゴールは共通ではないということか?」
「その通りですカボ」

全員が感じていた疑問を投げ掛けたのはエルザさん。ゴールが人によって異なるということは、難易度も変わってくるということか?それだとフェアじゃないような・・・いや、タイムラグバトルも大概だったけどさ。

「それだと難易度に差が生まれないか?」
「その点についてはご安心ください。スタート地点とゴール地点はそれぞれ別々ですが、そこに行き着くまでの解き方は統一されておりますカボ」

つまりスタートもゴールもバラバラで難易度に差が出ることはないということか。でもこれのどこが迷宮なんだ?ただゴールに進むだけの単純なゲームに見えるけど・・・

「ゲームが始まったらターン制にて参加者にはゴールを目指して進んでいただくカボ。開いている扉を開ければそのままターン続行、閉まっている扉を開いた場合はそこでターン終了、次の参加者へ交代となりますカボ」

各部屋には扉が四つずつ付いている。それも角の部屋や壁沿いになっている部屋にも同様に扉が四つ付いているということは、どこがどの部屋かこちらからはわからないようになっているんだ。

「全員で一斉に進むわけじゃないのか」
「順番も大事になってくるわけね」

前回の伏魔殿(パンデモニウム)の時のようにくじ引きででも決めるのだろう。ただ、あの時とは異なり今回は先に進めればそれだけ有利になると考えられる。

「あれ?でもそれだと・・・」
「??」

選手を決めてからのくじ引きになるのだろうと思っていたところ、ウェンディが何かに気が付いたらしく口元を抑えていた。そしてそれを見計らったかのようにマトーくんが話し始める。

「お気づきの方もいると思いますが、今回はこちらの迷宮を使っていきます。つまり、進んでいけば他のギルドと遭遇する可能性もあるわけカボ」
「遭遇したらどうなるんだ?」

ウェンディが気付いたのはこれか。確かに進んでいけばどこかで他のギルドの人と遭遇することはあるだろう。その時は当然ただ通りすぎるわけではないらしい。

「敵プレイヤーと遭遇した場合はその場で30秒間のバトルを開始します。30秒間で敵プレイヤーを気絶、もしくはより長い時間地面や壁に手を付かせた方が勝利となるカボ」
「勝つとどうなるんだ?」
「その場で待っていた側が勝利した場合は相手のそのターンを奪いゲームを進行できますカボ。反対にターン中だったプレイヤーが勝利した場合は対戦した相手のターンまで回った場合、そのターンを獲得することができるカボ」
「えっと・・・つまり?」

やや複雑な説明になったためカナさんが訳がわからなかったようでこちらを見るけど、俺もいまいちわかっていなかったため文章力に長けているルーシィさんへと視線を向ける。

「例えばAのターン中にBと遭遇したらバトルになる。そのバトルでBが勝利した場合はAのこのターンを奪って迷宮を進むことができて、さらに自分のターンに入ったらまたそこでも進行できる。Aが勝った常葉町そのままターン続行、その後本来Bが進むはずだったターンが来た場合そのターンもAが進めるってことよ」

つまり遭遇してバトルを行えばより多くのチャンスが巡ってきて先にゴールしやすくなる。ただ、負けた場合はターンが減ってしまい勝ちの目が薄くなると言うわけか。

「さらに、もしバトル後のターンで進めなかった場合、その部屋に二人が留まることになりますが、そこにまた別のプレイヤーが来た場合は三人でのバトルとなりますカボ。その場合も同様のルールになりますのでご注意くださいカボ」

同じ部屋に人が集まれば集まるほどターンの獲得のチャンスは増える。ただ、連戦になると魔力の消耗などもあるからそこも配慮しなければならない。ただ進むだけじゃないのが意外と厄介かもしれないな。

「聞けば聞くほど厄介だね」
「意外と頭を使うゲームになるかもしれませんね」

カナさんの言う通り予想よりも遥かに頭を使う上に魔力もものをいうことを考えると昨日の単純なバトル系の競技と違って難しさが増している。

「各部屋での扉の選択時間は1分となりますカボ。それでは各ギルド、メンバー選出を行うカボ」

昨日と同様だが、事前にルールがわかっている状態でのメンバー選出は気にするところが多いため慎重になってしまう。さてさて誰が出るのが有効なのか、俺たちは話し合うことにした。

















カミューニside

全てのチームが参加者の選出に迷っているようで話し合いに時間がかかりそうな様子。それを見て隣に座るチャパティがこちらへと話題を振ってくる。

「今回の競技はカミューニさんが提案したとのことでしたが、いかがですか?」

今回・・・その言葉に思わず笑いが溢れそうになる。今回の大魔闘演武の競技もバトルパートも全て運営(おれたち)が決めているんだから、今回というのは間違っているような気もするが、こいつはそのことは知らないだろうし突っ込むのは野暮だろう。

「昨日は純粋に力をぶつけ合ってもらったからなぁ。今日はその分頭も使ってもらうぜ」

もちろん魔力もと付け加えると会場から感嘆の声が漏れ出る。そりゃあ大魔闘演武なんだから魔力をぶつけ合って闘ってもらわなきゃ、見てる側からしても退屈だろ?それに世界的に放映されてるわけだし、ただ知力を競うだけでは飽きられてしまう。

「スタートとゴールもカミューニくんが決めたのかい?」
「あぁ。ルートもルールも全部決めさせてもらったぜ」
「何か攻略法とかあるんですか?」

二人の質問があまりにも狙い通り過ぎて口角が上がる。俺はそれに気付かれないように口元を隠しながらしばらく迷っている風を装うと、各ギルドの様子を見ながら答える。

「どこも迷ってるみたいだから、ヒントをいくつかやろうかな」

そう言うと数人の魔導士たちの視線がこちらに向いたのがわかる。あのルールだけでは心許ないだろうし、この提案は皆にとって有益になるだろう。

「ルートは一本道、行き止まりはない」

迷宮とは名ばかりで本当は進む道さえ見つけられればトラップもなくただ進み続けることができる。まぁ、その正解を見つけることがもっとも難しいことではあるんだが。

「全プレイヤーが必ず全ての部屋を通るように設計されているし、その進み方は三通り。しかもそのうちの一つは一回しかないから実質は二通りになってる。こんなところかな?」

不測の事態に備えて全員が必ず全ての部屋を通るように作られている。つまりどの順番、どのルートになっていても全ての魔導士と戦う可能性があるということだ。もちろん、わずかなタイミングの差でそらを回避することも可能だが。

「三通りの進み方とは?」
「それはてめぇらで推測しろよって話」
「そうなるだろうね」

これでも十分すぎるヒントは与えているだろうし、全員がそれなりには進めるようになっただろう。ただ、何も考えずに進むと同じ迷宮を進む敵の餌食になる可能性もあることを考慮しなければならない。

「さてさて、誰が出てくるかなぁ?」


















レオンside

「誰が出るのが正解かな?」

カミューニさんからのヒントで完全な手探りから少しは進展したような気もするが、それでもまだまだ未解決なところが多い。しかも一本道ということは四つの扉のうち正解は一つ。一つは自分が入ってきた扉だから除外されるが、それでも3分の1だ。なかなか難しいゲームになってしまう。

「俺かシェリアが適任か?」
「私が行きたいであります!!」
「でもユウカも行けそうじゃない?」
「私が行きたいであります!!」
「いや・・・俺の魔法はパートナーがいた方が助かるからなぁ」
「私が行きたいであります!!」
「そうだね。戦闘にも気を付けなきゃ行けないからね」
「私が行きたいであります!!」

頭がいいリオンくんとシェリアの二択かと考えていたところ、隣でずっと手を挙げて指名を待っている少女が痺れを切らしたのか、俺の腕を引っ張ってくる。

「サクラじゃダメだろ」
「なんでですかぁ!?」

その少女とはもちろんサクラ。ずいぶんこの競技に出たそうにしているけど、こいつは破天荒なところがあるからこんな頭を使う競技で出すのは気が引けるんだが・・・

「そういえば昨日シェリアさんと裸で何ーーー」
「あぁ!!サクラでいいかもね!!」
「う!!うん!!あたしもそれでいいかも!!」

とんでもないことを暴露してこようとした少女の口を抑えながら話題を切り替える。シェリアも彼女の手を抑えながら俺と同様な意見のようで賛同してくれた。

「いや・・・だがうちは出遅れててーーー」
「ジュビアさんとグレイさんいい雰囲気でしたね」
「すまん・・・俺はもういい・・・」

昨日の夜のことを話しているんだろうが、相当堪えていたらしいリオンくんはガックリと項垂れて戦意喪失してしまった。これによりうちの競技パート参加者はサクラになったわけだが・・・

「明日からが本番かなぁ」
「いや・・・バトルパートから巻き返さなきゃ」

意気揚々と闘技場へと降りていく少女の背中を見ながらタメ息が止まらない。こいつをメンバーに入れなければならなかったうちの層が恨ましい・・・

















第三者side

「え!?もう一夜さんが出るんですか!?」

腕組みをしてイヴの言葉に力強く頷く人物。彼のその進言には青い天馬(ブルーペガサス)全員が目を白黒させていた。

「うむ。この競技なら彼らと戦える可能性があるからね」

一夜の視線の先にいるのは昨日仲間であるタクトを戦闘不能にした狩猟豹の頭(チーターヘッド)の面々。彼は昨日のことを相当怒っているらしく、そのような提案をしてきたのだ。

「でもリザーブ枠は一回しか使えないんですよ?」
「構わないさ。君たちならこの後の戦いも必ず切り抜けてくれると信じているからね」

その言葉に全員が顔を見合わせ、嬉しそうに笑みを浮かべる。ギルドでもっとも力のある彼から認められていることが心から嬉しいのだろう。

「わかりました」
「タクトの仇、お願いします」
「うむ。行ってくる」

全員の承諾を受けたことで意気揚々と闘技場へと降りていく一夜。その背中を見送る青い天馬(ブルーペガサス)の面々は大歓声で彼を送り出した。


















シリルside

『各ギルド続々と選手が決まっていきます!!いかがですか?ヤジマさん』

人魚の踵(マーメイドヒール)からはベスさん、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)からはサクラ、青い天馬(ブルーペガサス)からはリザーブ枠を使っての一夜さん、四つ首の番犬(クワトロケルベロス)からはロッカーさん、そしてあの狩猟豹の頭(チーターヘッド)からはグレイティスという大柄の男性が出てきている。

「どうする?」
「頭を使うならルーシィが良さそうだけど・・・」

一方うちはなかなか人員が決まらない。その理由は先程のカミューニさんのヒントを深読みしすぎてしまい、なかなか手を挙げられなくなっているのだ。

「全部の部屋を通るってことは全員と戦う可能性があるのか」
「でもルートは違うんですよね?なら運が良ければ誰とも当たらないかも」

もし遭遇した場合は30秒間のバトルが始まるが、この制限時間ならそこまで魔力の激しい消耗はないだろう。ただ、それが連戦になると辛いところがある。下手したら一部屋進むごとに敵と遭遇することすらありえるルールなのが厄介だ。

「私が行きます」

誰が適任なのか考えていたところ手を挙げたのはウェンディ。だが、それを見て納得してしまった俺たちがいる。

「確かにウェンディなら頭もいいし」
「構造次第だけど、敵が近くにいたら匂いでわかるかも」

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であるウェンディは鼻もいいし末っ子だったこともあり周りに気を配っているからか頭もいい。魔力もここ最近様々な出来事があったせいでかなり上がっているし、連戦になっても大丈夫だろう。

「頑張ってね!!ウェンディ!!」
「うん!!任せて!!」

どこか自信に満ちているウェンディを送り出す俺たち。その後、残っていたギルドも選手の選出が終わり、いよいよ順番を決めるくじ引きになったのだが・・・

「それでは皆さん、お好きなくじを引いてくださいカボ」

マトーくんから手渡されたくじを引いた参加者たちは困惑した表情を浮かべていた。ただ、その理由が何かはこちらからはわからない。

「皆さんくじは引いたカボね?それでは大魔闘演武二日目競技パート|《迷宮》、スタートカボ」

それだけマトー君が言うと全員が迷宮内へと自動転送される。そしてさらに転送されたみんなを見て俺たちはますます困惑することになるのだった。







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
大魔闘演武二日目スタートです。ぶっちゃけ競技パートはそこまで乗り気ではないのですが、バトルパートに早くたどり着けるように頑張ろうと思います。 
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