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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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アーティストとエンジニア:三限目『技術開発の裏側』

 
前書き
技術発展の裏側では
いつも誰かが犠牲になっている。 

 
(グランバニア城:地下・開発室)
ラッセルSIDE

「実はリューナ……依頼が後先になってしまったが、君にはまだやってもらいたい事があるんだ」
既に新しい製品開発の事で頭の中がいっぱいになっているリューナに陛下から更なる依頼が舞い込んできた。
大丈夫か?

「本当はね、もう少し落ち着いてから頼もうと考えてたんだけど、お前がその先へ行ってしまったからさ……順序が違っちゃった(笑)」
「わ、私が……先に……?」
未来を先取る美少女って事か?

「うん。僕的には動画よりも先に、音声に関しての技術を先行させたかったんだ」
「音声技術……? お言葉ですが陛下、MP(ミュージックプレイヤー)だけでも十分に未来的開発だと考えます。その先の技術があったとしても、そちらを優先するのは性急すぎだと思いますが」

「いや、そうでもないよ。今ある物だけだと、興味がある人間にしか行き渡らない。興味の無い者に手を出させてこそ、市場が広がると思いませんか?」
「仰りたい事は何となく理解出来ますが……」
理解出来るの? 凄いな!

「少しでも理解出来ているのなら問題無い。要するに、今後の為に情報を発信する装置を作りたいと思っているんだ」
「じょ、情報を……発信……!?」
全然解らん。

「“ラジオ”を作りたい」
「ラジオ……ですか?」
何ですかそれは?

「リューナにはこれまで色々と開発をしてきてもらった。本当にありがとう。でもまだまだ発展は途中。重要なのは作ってきた新たな技術を、一般の人々にも使用してもらえる環境が大事だと思わんかね?」
“かね?”と言われましても……

「その手始めがラジオ。この装置はお前に託し解析を続けてたMH(マジックフォン)の、音声を遠くへ飛ばす部分に特化した装置だ。簡単に言えば音声だけを発信する装置と、それを受信する装置の二種類を作ってもらいたい」
「……発信する装置と受信する装置は別で良いんですか?」

「良いんだよ、情報を広める装置にしたいだけだから送受信は必要無い。こう考えてくれ……文字で情報を伝える新聞(多少の挿絵あり)の音声版だと」
「新聞の音声版ですか!?」

解りやすい。
新聞に書かれている事に疑問や反対意見があったとしても、直接新聞に言う者は居ない。勿論言うかも知れないけど、それが相手(新聞社や記者)に伝わるとは思ってないだろう。如何しても伝えたいのなら、新聞社に直接乗り込むはずだ。

「勿論さ、小さな機械一つで何千万・何億という人々に伝播させるなんて無理だと思う。でもね大型の機械を開発できれば、大勢に発信させる事は可能だと思う。そんな訳でリューナには大型の音声発信装置……『放送装置』を作ってもらいたい」
「お、大きく出ましたねぇ……発信するってとこが一番難しいのに」

「このぐらいで萎縮されては困るなぁ……僕はまだその先を考えてるんだよ」
「まだあるんですか!?」
流石のリューナも大声を出す(笑) 珍しい。

「あるさ。だから先刻(さっき)言ったろ……『依頼が後先になった』って」
「つまり……如何(どう)言う事ですか?」
リューナに理解出来ない事なんだから、俺に理解出来なくても問題ないよな?

「お前の顔付きからするに、もう既に動画に関しての大まかな構想は出来てるんだろ? 要はその動画も放送できる様にしたいんだ」
「ま、まだ音声の発信さえも出来るか否か解ってないのにですか!?」

「だからまだ言うつもりはなかったんだけど、天才美少女は新たなる技術に飢えていて先走っちゃったから、順序関係なく今になっちゃったんだよね」
「だって……色々……開発……したいんだもん……」

やっべ! 可愛い!!
普段は大人びた態度でクールなのに、お義父様の意地悪な言葉に少しむくれていじけてる。
俺や陛下のみならず、話を聞いていた女性軍人のグリーバー伍長も微笑ましく見詰めている。

「でね……偶然ではあるんだけど、丁度良い事にアーキちゃんって軍の広報課でしょ」
「は、はい。小官は広報課で勤務しております!」
そうなの、全然知らなかった。道理で俺みたいなか細い腕だと思った。

「広報課って事で、軍内外に向けて色んな事をアナウンスする事が多いと思う。だからさ……我が国初、いや世界初のアナウンサーになってみないかい?」
「ア、アナウンサー……ですか? それは一体……」

「基本的に現段階の広報活動だって、アーキちゃんが自ら原稿を考えてる訳じゃないでしょ。誰か、まぁ上層部が考えた事を原稿に落として、それを人々の前で発表している。それをラジオや、今後開発される“テレビ”でやってほしいんだ」
「テ、テレビ!? それはこれから開発を進めていこうとしている動画を発信する装置の事ですか?」
突如出てきた新たな言葉に動揺を隠せないリューナ。

「正確には“テレビ受信機”だね。先に開発してもらうのは“ラジオ放送機”と“ラジオ受信機”だ。その後で“テレビ放送機”と“テレビ受信機”を作ってもらう。この二つが出回れば、今まで作った物やこれから作り出す製品等を宣伝して、人々の購買意欲を増進させる事が出来る。重要な事だよ」

「つ、つまり私は世の中の人々に情報を伝達する係になれと?」
「うん、そうだね。情報伝達だけじゃないけどもアナウンサーになってほしい」
方やリューナには更なる開発に尽力する様言い付け、方やグリーバー伍長には未知なる業種を務めより言う。陛下のお考えは常人にはキツすぎる。

「現在グランバニアは人口が飽和状態になっている。世界が平和へと落ち着き、この国を発展させる事を最優先して外国からの移民も大幅に受け入れてきた事が大部分だが、凄まじいベビーブームが巻き起こった事も要因だ。世界が平和になればこそのブームだし、嬉しい事ではあるのだが、人口が増えれば働き口が必要になるし、その為には正しく経済を回す事の出来る仕事が必要になる。その一旦で“ラジオ局”や“テレビ局”が重要になる。それその物も働き口として活用できるし、そこから更なる働き口候補が生まれる希望にもなる」

「へ、陛下は……そんな重要な事を……私の様な、しがない女軍人に託されるのですか?」
「まさか! 頼みはするが、託しはしない。重要な部分は僕や宰相とか偉いヤツに任せれば良いんだよ。君等は言われた事をやれば良い。その際失敗しても、それは必要な失敗であり、それらを後進の者に伝えれば良いんだ。皆は嫌ってるけど、宰相は優秀なんだぜ」

「いえ、嫌ってますけど優秀なのは存じてます。だから余計嫌いなんです」
「解る~!」
女性陣が何か共感し合ってる。仲が良い事は良い事だよね。

「じゃぁリューナもアーキちゃんも僕に協力してくれるって事でOK?」
「勿論OKです! その点は拒否などしておりません! 不安があっただけで……」
「私もOKです。ですが本当に開発できるのか……まだ不安は拭えません」

「天才美少女でも不安かぁ……」
「私は努力型天才美少女ですから、時間を掛ければ何とかなるかも知れないと自負してますが、流石の私も美少女から美女……もしくは美熟女になるやもしれません」

「大丈夫……そんなに時間はかからないさ」
「そうでしょうか? 陛下は私を買い被りすぎですわ」
自分の娘だからなぁ……少しは贔屓目に見ちゃうんだろう。

「と言うのもね、ラジオもテレビも武闘大会までに運用したいんだよ」
「私の話を聞いてました? 時間がかかると言ったんですよ」
「聞いてました。だから最悪な状況も考慮に入れてます」
「最悪な状況?」

「うん。最悪……アリアハン王に頭を下げて技術提供をお願いする!」
ア、アリアハンって……元々は天空人だけで構成されてた新国家だろ!?
しかもその王様って元々はマスタードラゴンって言われてる神様だったと思う……って言うか、そう言われてる。

「そ、それは本当に最悪ですわね。陛下があのヒゲメガネに頭を下げるなんて……許せませんね!」
話しの流れからすると今リューナが言った『ヒゲメガネ』ってアリアハン王のマスタードラゴン様の事だよな? 良いのかそんな人物をヒゲメガネなんて称して?

「おいおい、そこの美少女!? 何で僕があのマヌケに頭を下げなきゃならないんだい?」
「はぁ? ですが今ご自分で仰ったじゃないですか。アリアハン王に頭を下げると……」
言ったよね。間違いなく言った……俺も憶えてるよ。

「『誰が』とは言ってないだろ(笑)」
「で、では誰が頭を下げるのですか?」
リューナに下げさせるのか?

「言ってるだろ……我が国の宰相閣下は優秀であると(笑)」
「なるほど……優秀でありますわね」
「小官も今気付きました……宰相閣下の優秀っぷりに! 好感度も上がりますね」
有能でもメチャクチャ嫌われてる人間を傍に置いておいた意味がここで発揮されるのか!

「はい! 希望が見えて参りました♥」

ラッセルSIDE END



 
 

 
後書き
余談ですが

昔、漫画家の柴田亜美さんが
ご自身の作品の中で
仲の良い友達の声優さんである
緑川光さんの事を漫画にしてた事を思い出しました。

漫画の中で緑川光さんご本人が自分の事を
「グリーン・リバー・ライト」と評してました。

柴田亜美さんの作中での事ですので、
現実で緑川光さんが言った事かどうかは解りません。

なんか今回の作品でソレを思い出しました。 
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