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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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アーティストとエンジニア:一限目『相手の気持ちを察する』

(グランバニア城下町:中央地区:アマン・デ・リュムール)
ラッセルSIDE

先程、芸高校(芸術高等学校)の音楽講堂で陛下が、ピエッサさんとアイリーンさんの協力で新しい楽器のお披露目と、その弾き手を募集する発表会が終わった。
客席から見てても判ったが、かなりの人数が興味を示しており、希望者は結構な数になるだろう。

俺の目の前で紅茶を飲んでいる超絶美少女も、自身が開発に携わった楽器が好評だった為、とても嬉しそうにしていた。
こんな超絶美少女で魔道技術の天才が俺の彼女……いやフィアンセだなんて嬉しすぎる!
先程のお披露目会で陛下にイジられた為、俺達の仲を周知する事が出来たのも嬉しい。

はぁ~……
ここ最近、良い出来事ばかりで語彙力が低下している。
フィアンセ(リューナ)の為に、知的な男で居たいのだけど……

「紅茶のお代わり要る?」
リューナのティーカップが空になってる事に気付いたウェイトレスが、気さくに話しかけてくる。
「ありがとうリューノ。でも、もういいわ」
喉の渇きは潤っていたのか、お代わりを遠慮した。

このリューノと呼ばれたウェイトレスは、リューナの腹違いの妹だ。
確かにとんでもなく美少女だとは思っていたが、父親が同じなのだから当然の事なのだろう。
因みに父親は……国王陛下である。
母親に関しては詳しくは聞いて無い……でもまぁ、陛下はおモテになるから、その方も美人である事に疑いない。

「何か元気無いわね? どうしたの」
リューノさんに指摘され、俺は思わずリューナの顔を見詰める。
何時も通り超絶美人だが、元気が無いのか?

「ちょっと……ねぇ……新しい開発の事で……行き詰まってて」
「え!? 君でも行き詰まるの?」
全然そんな感じに見えてなかったから、俺は驚き聞き返してしまった。

「ちょっとラッセルさん! リューナだって人間なんですよ。そんな万能なワケないでしょう! ってか、その様子だとリューナの状況に気が付いて無かったみたいね。彼氏として如何なんですか……それ」
面目無くて何も言い返せない。

「先日言った私の彼氏ですけど……性格は悪いけど、そういった事柄には即座に気が付いて相談に乗ってくれるんですよ! 以前も私の偽者が現れた時も、一瞬で私が本人である事に気付きましたからね」
偽者が現れる状況がどんなのか解らないが、洞察力は凄い人なんだな。

「確かにあの男なら直ぐに人々の状態を察するでしょうけど、あの男は解っててあえて無視する様な性格の悪さでしょ。とてもじゃないけど彼氏にするべき男じゃないわね」
「う、うるさいわね……」
俺は会った事無いが、本当に嫌われてる男みたいだな。

「と、兎も角……素人の俺で力になれるのなら、協力は惜しまないよ。勿論、機密事項に触れるのであれば聞くわけにはいかないけど、そうじゃない範囲であれば話すだけ話してくれないかな?」
「そうね、私も相談に乗るわよ」

「ありがと」
太陽と同列くらいの眩しい笑顔でお礼を言われ、俺の目と心は失明の危機!
幸せすぎて、何時(いつ)か反動が押し寄せてくるのではないか、怖くもある。

「まぁ二人には話しても構わない事なんだ……もう関係者だから」
「って事は、おと……陛下関連?」
『お父さん』と言いかけて慌てて訂正する。確かにこのカフェには無関係の人も大勢居るし、不用意な事は言えない。

「だとしたら、ここでは話せないわね」
「じゃぁ俺のアトリエに行く? “アトリエ”なんて偉そうに言ってるけど、城内にある作業部屋だけどね(笑)」
城内と言うだけあって、密室にすれば室内の会話は外に漏れない。相当な爆音で音楽を奏でない限りね!

「じゃぁ私は協力出来そうに無いわね。まだ仕事中だし」
そう言って俺の飲みかけのコーヒーカップを回収して精算を促すリューノさん。
こういう所に血筋を感じる。





(グランバニア城)

カフェで会計を済ませた後、俺はリューナと共に自分のアトリエへと向かう。
だが目的地に着く前に予想外の人物と遭遇する。
と言っても、(ここ)で遭遇しても不思議ではない人物……陛下である。

俺が予想外と思ったのは……多分だが、まだ芸高校(芸術高等学校)では新楽器の受講受付をしている最中だろう。
俺等が芸高校(芸術高等学校)を出る直前に見えた事務局は、受講希望者の人集りが出来ていたから。

だけどよく考えたら希望者の受付だけをして、後日に選抜すれば良いだけの事だし、受付自体は事務局の職員が行うのだし、陛下がご自身の家に帰ってきてても変な事ではないな。
寧ろ金曜の夕方に職場へ出向いてくる俺の方が違和感がある。

「あれ? 何でお前等、この時間に出仕してきてんの? もう一時間もしない内に今日の……と言うか、今週の業務は終わりだよ。公共施設ってのは、そういう時間に関してはキッチリしてんだから(笑)」
「あ、いえ……リューナが新しい開発に行き詰まってるみたいなので、相談に乗ろうかと……まぁ俺に出来る事なんて愚痴を聞くくらいかもしれませんけど」

「なるほど。それで機密保持の為も含めて、お前のアトリエに美少女を連れ込もうって魂胆?」
「何一つ間違ってませんけど、誤解が生まれそうな悪意ある言い方ですね。陛下はご存じないかも知れませんが、俺は彼女(リューナ)のご両親に挨拶を済まし、公認の仲になってますから!」

「え~! 王様初耳(笑)」
彼女の父親が目の前の人物なのだが公にするわけにはいかないので、周囲で働いてる兵士やメイド等に聞こえる様にすっ惚けてみせたが、陛下も合わせて驚いてみせる。
俺達3人は笑ってしまう。

「じゃぁ僕も相談に乗ろうか?」
「よ、よろしいんですか!? お忙しいのでは?」
流石のリューナも驚いてる。

そりゃそうだろう。
金曜の夕方ともなれば、明日・明後日の土日にキッチリと休みたい者等は、仕事を残さない様に追い込みを掛けている状況だろう。
そういう事であれば最終的な決裁権を持っている国王陛下に仕事が集中するのは自明。

「大丈夫。この国には優秀な宰相が居るから、アイツんとこに仕事が溜まって滞るだけだよ。誰も困らない(笑)」
「い、いや……そ、それは宰相閣下が困r「なるほど! でしたらお願いできますか陛下!?」
不本意だが宰相閣下の事を心配しようとしたのだが、それを遮りリューナが陛下の提案に飛びついた。

「よ~し、じゃぁ決まり! アイツに見つかる前に、お前のアトリエにしけ込もうぜ」
まるで同年代の友人と会話する様なノリで俺のアトリエに向かう国王陛下。
この人、本当にお孫さんまで居る方なんだよね?





(グランバニア城:二階・宮廷画家アトリエ)

俺のアトリエ……
片付いてるとは言えない状態の中、陛下は適当に物を退かして座るスペースを確保する。
そして促される様に俺等も空いてる椅子に腰を下ろし、会話状態の準備が整う。

勿論、最初に話し出したのはリューナ。
何せ彼女の新研究の事なのだからね。
んで、内容というのも……

「お父さんのアイデアとアドバイスで、MSV(マジック・スチール・ヴィジョン)MP(ミュージックプレイヤー)を開発できたけど、その先の物を何か作れないかと考えたんだけど、思う様にいかなくて……」
「う~ん……具体的に如何様な物を想像してんの?」

「そうね……私が想像してるのは、写真と音を融合させる……みたいな。う~ん……何て言えば良いんだろ? 写真を撮った時の周囲の音を一緒に録音して連動させて……う~ん……でも動かない(写真)に対して音は常に変化するし……う~ん……」
俺には連動させるって発想だけでも凄いと思うけど……

「何だ、もう答えは直ぐそこじゃん(笑)」
「何所がよぉ!」
自分には見当も付いてない状態を“直ぐそこ”と言われ、リューナが珍しくむくれる。やっぱりお義父さんには、こういう表情をするんだな。

「だからね、連続して沢山写真を撮って、それに音声を連動させれば良いんだよ。僕としては(いず)れ作って貰おうと思ってタイミング見計らってたけど、リューナから提案されるとはビックリ♥ (つい)でに開発を進めちゃおっか?」

俺には全然想像も出来ないが、陛下には何やら考えてた事があるらしい。

ラッセルSIDE END



 
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