黒崎一護の異世界物語
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◇許嫁と戸籍と月村と
「それじゃ一護君」
忍はニンマリと笑みを浮かべながら一護に囁く。
それはまるで悪魔の囁きのようだ。
「な、なんだ?」
流石の一護も嫌な予感がするのか、背筋に寒気が走り頬をひきつらせる。
「契約はすずかと結んでもらうとして、すずかと一緒にいてあげてね」
「どういう訳だ?」
「すずかは私達とは違ってまだ子供だからね、一護君が離れちゃったら寂しくて泣いちゃいそうだから♪」
忍よ………語尾に音符が付いているぞ?
「お姉ちゃん!!」
すずかが顔を真っ赤に染め上げ勢いよく立ち上がる。当然だろう、いきなり実の姉に寂しく泣いちゃうから(今は)同い年の(気になる)男の子に一緒にいてあげてなど凄く恥ずかしいことである。
すずかのそんな態度に忍はニヤリと悪どい笑みを浮かべ、すずかの耳に口を近付ける。
「すずか、あなた一護君が(友達として)気になっているでしょ?」
「っ////」
ニュアンスが微妙に違っているように聞こえるのは気のせいなのだろうか。
一人置いてきぼりになっている一護はノエルとファリンと仲良くなっている。
「なぁノエルとファリンはロボット何だよな?」
「はい。正確には」
「だけどな?俺が気になっていたのは霊圧を感じられないのに魂があるからだ」
「私達に魂………ですか?」
ノエルとファリンは戸惑ったような顔をする。それも仕方がないだろう。いきなり機械人形だと思っていた自分達に魂があると言われたのだから。
「あぁ。魂があるのに霊圧が感じられないからな?ん~霊力のコントロールが巧いのか?外に漏れる霊圧を自身の内に指向性を持たせている……のか?だけどんなこと簡単に出来るか?俺は出来ねぇしな」
難しそうな顔をしながら何かを考えている一護。その真剣な表情にノエルとファリンは人知れず顔を薄く赤く染めながら待っている。
「なぁノエルにファリン」
「どうしたんです?」
ファリンは首を傾げる。
「霊力の扱い方を覚えないか?」
「「へ?」」
「何時でも俺が近くに居れる訳がねぇからな。時間稼ぎの為にも二人には覚えてほしいからな」
「ですが、死神でないと虚には太刀打ち出来ないのでは?」
「それは違うぞノエル。虚には霊力の籠った攻撃しか通用しない、つまりは霊力が籠っていれば例え銃火器でもダメージを与えられるって訳だ」
「へぇ~~て、事はですね?私達でもお嬢様を守れちゃうって事ですか!!」
ファリンが文字通り飛び上がり一護の顔に接触する程にまで顔を近付ける。
「あ、あぁ。俺も死神代行で他人に教えた事なんてねぇから分からない所もあるけどな」
近すぎるファリンに頬をひきつらせながらも一護は答える。
そんな光景にノエルはむっとしてファリンにチョップを叩き込む。
ドゴッと良い音を出して倒れるファリン。一護はふぅと溜め息を吐いてソファーに体を預け、未だコソコソしている忍とすずかに顔を向ける。
「今の一護はすずかと同い年なのよ?つまりはすずかにも十分可能性があるってことなのよ!!」
「で、でもお姉ちゃん。一護君は高校生何だよ?私とじぁ釣り合わないよ………」
まぁそうだろう。方や現役高校生の男子。方や今年小学生になる女子。釣り合わないにも程がある。どちらかと言えば忍とのほうが釣り合うだろう………それが、本来の姿であればの話だが。
「何言ってるのよすずか。一護君は今はすずかと同い年なのよ?それに人間ってのは精神は体に引っ張られると言うんだから十分すずかにも可能性はあるのよ?」
「あっ」
忘れていたすずか。自分(達)を受け入れてくれた衝撃があまりにも強すたのだからまぁ仕方がないだろう。
「中身は高校生だから大人な雰囲気を出しているからノエルやファリンも怪しいからね。多分一護君は将来モテモテな女ったらしになるわよ?第一夫人の地位を取りなさいすずか」
「第一夫人?女ったらし?」
まだ小学生にも上がっていないすずかには厳しすぎただろうか?
「見なさい一護君を」
「?………っ!?」
忍が指で隣を差す。その方向をすずかも追い、目を大きく開く。
「はい、あ~んしてください一護君」
「え?あ、いや……ひ、一人で食えるから……な?」
ファリンが一口大に切った苺のショートケーキを一護にあ~んしてあげている。
一護は気恥ずかしさからか、それとも他の理由があるのかは分からないが頬をひきつらせる。
「………………」ゴゴゴゴ
因みにノエルから暗黒闘気が立ち上ぼり、それが一護の霊圧を上回る程にまで膨れ上がっているからか一護の顔が真っ青になっている。
「………………」ゴゴゴゴ
その光景を見たすずかの目からハイライトが消え、妖しくクスッと微笑む。
流石の忍もそんな魔性の雰囲気を醸し出すすずかにやり過ぎたかと思ってフォローしようとするが、恐怖からか口が動かない。
「ファリン」
「はい?どうかしたのですかお嬢様」
一護にケーキを差し出しながらすずかに対して返事をする。ファリンが鈍いのか分からないが、すずかが纏うオーラに気が付いていないようだ。
「次で良いからわたしにもやらせてくれるかな?」
好意を抱く一護の前だからか素直にそう言うすずか。暴力で奪うなどもっての他である。
「畏まりました。それでははい、あ~んして下さい一護君」
「…………(汗)」
食べないと終わらないと悟ったのか、一護は顔をひきつらせながらも口を開け食べた。
「っ!?美味い」
「えへ。よかったですよ」
美味しいと言ってくれた為にファリンも若干顔を赤くさせながら喜ぶ。
高級品だからか今まで食べたケーキの中でも一番美味い。
「はい。一護君あ~ん」
続いてすずかもニコニコ笑いながら一護の口にケーキを近付ける。
「う、あ……あ~ん」
未だ気恥ずかしいのか若干顔を赤くさせながら食べた。
「………その……わた、私も……よろしいでしょうか?」
後ろで無表情でファリンを睨んでいたノエルも羨ましさからか、顔を赤くさせながらすずかに聞いてみる。
「ノエルの好きなようにしていいよ」
すずかから了承?が取れたノエルは一護とお互い顔を赤くさせながらケーキを口に近付ける。
「その………一護様。あ、あ~んして……くださいませ」
一護は口を震わせながらそのケーキを食べた。
「お、美味しかったでしょうか?」
「あ、あぁ今まで食べたケーキの中でも一番美味い」
一護は気恥ずかしさを誤魔化す為に紅茶を飲む。
「それじゃあそろそろ真面目な話しに入るわね」
紅茶も入れ直し、それぞれ席に座ったのを確認した忍が口を開く。
「あぁ」
頷く一護。忍も頷く。
「まずは記憶消去に関しては一護君が覚えていてくれるから良いとして、一護君。君此れからどうするつもりなの?」
「それを悩んでいるんだ。並行世界だから戸籍何てねぇし、子供だからバイトだって出来ねぇ」
頭を掻く。それも仕方ない。金と戸籍が無ければ生きていけない。
「だから私にいい考えがあるんだけど?」
一護のその悩みに忍はニマリと悪巧みしていますと言っている顔で一護に言う。
「いい考え?」
「そう。私達のこの家で暮らさない?」
「………はあ?」
流石に一護も疑問の声を出す。
「私達は一護君に命を救われて、一護君の事情を唯一知っていて、私達の秘密も知っていて、契約もしてくれたんだから。戸籍も私が責任持ってぎぞu……造っておくから。どう?良いこと付くしでしょ」
「…………だが、悪いしな」
「全然構わないわよ。ねぇ三人も一護君と一緒に暮らすことになっても別に構わないわよね」
答えが判りきっている癖にそう尋ねる忍。
「わたしは……別にいいよ?」
「そもそも断る理由がありません」
「一緒にお風呂入りましょうね」
「「それは羨ま……不潔だよ(です)ファリン」」
「と、言う訳で全員一致でようこそ一護君。月村家へ」
「あ、ちなみにすずかの許嫁ね一護君」
「はあぁぁぁぁぁ!!!」
突如始まった月村家居候生活。これから一護は幾つフラグを建てるのだろうか………。
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